Eric Dolphy / Conversations ( 米 FM FM-LP-308 )
私にはその良さがわからないエリック・ドルフィーだが、これは何かのついでに拾ったレコード。後発のVee Jay期プレスのようなので安かった。
私にとってドルフィーのレコードは教材的位置付けなので、ある程度の音質で聴ければそれでいい。これはやたらと音がいい。
この作品がファンの間でどういう評価になっているのかはよくわからない。他の有名なアルバムほどは言及されていないようなので、あまり評価
されていないのかもしれない。その理由は何なんだろう、興味はその1点に集約された。
A面の2曲は多管編成の祝祭的な雰囲気が満載で、ローランド・カークのレコードを想わせる。陽気な表情で演奏は進んでいく。アンサンブルを重視
した内容で、各リード奏者が持ち場で個性を発揮する。ウッディ・ショウだけが少し浮いているような印象があるが、それ以外はみんなドルフィーに
合わせた奏法をしていて、纏まりはいい。ただ、やはり曲想と各プレイの噛み合わせは悪く、これは私の感性には合わない。
B面は一転してムードが変わり、バス・クラとベースのデュオ、そして無伴奏アルトのブレイクで、こちらが本懐なのかもしれない。
ただ、どちらの曲も大人しい演奏で、アブストラクトな印象はなく、非常に端正で整ったプレイだ。出てくるフレーズはいつものドルフィーの
それだが、気迫で押し切るところがなく、芸術的に仕上げようと狙った感じで、ここで評価が分かれそうだ。こちらは悪くない、と思う。
A面は音楽を重視、B面は演奏を重視した編集という意図なんだろうと理解できる。そう考えた場合に、やはりドルフィーの考える音楽には共感が
持てないんだな、ということを再確認することになる。古い素材や曲想をドルフィー自身のスタイルで演奏するという狙いはよくわかるけれど、
その結果については「ちょっと違うよな」という感じで納得感は得られない。
一方、B面のような演奏力を前面に持ってきたものについては、なるほど、と腑に落ちるものはあり、いい悪いははともかく、ドルフィーの演奏だな
ということで違和感がないし、上手い演奏だなと思う。
ただ、いくら演奏が卓越していても、音楽としての感動を得ることができなければそれ以上気持ちが動くことはない。このレコードのわかりやすい
編集のおかげで、そのことを再確認することができる。私自身、ドルフィーの良さが理解できる日は果たしてやってくるのだろうか。