Paul Bley / Footloose ! ( 米 Savoy MG 12182 )
1962年当時のインテリ白人の眼にフリーがどのように映っていたかがよくわかる演奏。冒頭にオーネットの曲を置いてこのアルバムのコンセプトを
説明しているわけだけど、結局、このオーネットの楽曲が一番わかりやすい演奏になっている。残りはカーラ・ブレイと自作を並べているが、
オーネットとブレイ夫妻の楽曲にはその骨格に大きな隔たりがある。ブレイ夫妻の楽曲は抽象的・内向的で、オーネットの楽曲は土着的・祝祭的で、
フリー・ジャズに対する感性がまったく違う。
このあと、ポール・ブレイはしばらく抽象音楽の世界を彷徨うことになるわけだけれど、このアルバムはまだ習作の域を超えていない。
旋律を丁寧に弾いている楽曲もあり、かなりの部分を手探りで進めている。正解のない世界で、ゆらゆらと浮遊している。
それに比べると、スティーヴ・スワローとラ・ロッカは迷いのないしっかりとした演奏をしており、ブレイの頼りなさとは対照的だ。リズム・キープを
するという大義名分の下で、適切な遊びを入れながら演奏を進めている。そのため、トリオの音楽としてはかなりがっしりとしている。
サヴォイはアーティストの自由な意向を尊重していたフシがあるレーベルで、オールド・タイムなものからニュー・ジャズまで、割と何でも寛容に
受け入れている。だから、ブレイのこういう演奏もポツンと残っているわけだ。ただ、これは売れなかったんじゃないだろうか。この後が続かない。
それがどういう内容であれ、聴き手にわかりやすく聴かせるのがあまり上手くはなかった人で、ここでもその傾向は出ている。こちらが理解しよう
とかなりの努力をしないと、なかなかその意図が汲み取りにくい音楽と言えるかもしれない。