「エネミー・オブ・アメリカ」は、今日的日本現象をみる格好の映画でした。
いわゆる「共謀罪」法案の危惧とされる盗聴・監視社会のリアルを見ました。

20年前の1998年アメリカで製作された映画です。
弁護士・ディーンは、政治家暗殺の証拠映像を偶然、手に持たされてしまいます。
過去の恋まで、彼のプライバシーが監視され始めます。
映画は湖畔の岸辺に二人の人物が登場するところから始まる。
「あなたが賛成に回ってくれると、うまくいくのだが」とささやく人物。
「それはできない」と答えて車に乗ろうとする人物。
背後から近づいた男が首筋にナイフを突き立て、
車に押し込んで、そのまま湖に沈めてしまう。
テロ対策のための「通信の保安とプライバシー法」案をめぐって、
アメリカ連邦議会では議論が交わされていた。
この法案は、犯罪やテロを防止するものと説明されていたが、
一般市民のプライバシーを大幅に侵害する恐れがあった。
NSA・国家安全保障局の高官トーマス・ブライアン・レイノルズは、
反対派の議員フィリップ・ハマースリーを湖畔で暗殺を企て実行する。
ところが、殺害の一部始終が野鳥観察の無人カメラに録画されていた。
弁護士・ディーンが偶然、手に渡されたものは、この録画記録であった。
映画はこれから、当局による盗聴、パラポラアンテナや偵察衛星、GPS追跡通信車、
建物丸ごとスキャンレーダーやヘリコプターを駆使しディーンを追い詰めていく。
訳の分からないディーンは、過去の恋人まで洗い出されて、
妻とは険悪になり、プライバシーが丸裸にされていく。
盗聴、監視社会の恐ろしさがリアルに映し出されます。

いま日本でも国会で審議されている「組織犯罪処罰法改正案」。
公称「テロ等準備罪」。いわゆる「共謀罪」をめぐって賛否が渦巻いている。
野党、マスコミ(全てではないが)、日弁連が反対キャンぺーンを張っている。
「人権、思想の自由が脅かされる」「戦前回帰法案だ」と。
「考えたり、思っただけでは逮捕される」ことはあり得ないと、与党や当局者たち。
私たちはいま、日常的に、
街角のあらゆるところに設置されている監視カメラにさらされ、
クルマを運転すれば、Nシステムで46時中、撮影されている。
前や後ろ、隣りを走る車にはドライブレコーダーカメラが付く。
SNSで発信したり、つぶやいたり、いいね、をしたり、アクセスをする。
ATMでバンキングしたり、カードでお買い物をしたり、
スイカやパスモで外出したりする。それらは記録として蓄積される。
いま日本社会は、あらゆるところで、あらゆる行動が記録されている。
いわゆる「ビッグデータの蓄積」が進んでいる、とされています。
そして、何か事を起こせば、マイナンバーと連動して、
たちまちプライバシーは丸裸にされてしまう。
脳内妄想までスキャンされる時代が、近未来訪れるでしょう。
快調なスピードで展開するサスペンス・アクションの面白さと、
監視社会の恐ろしさを実感できる映画でした。
この時期、この作品をチョイスしたNHKに「いいね」。