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雲南の書記と副書記5ー電力系の人・高厳

2017-04-16 10:58:10 | Weblog
写真は高厳が雲南省党書記着任時に各種電力プロジェクトが認可された文山州を流れるメコン河(瀾滄江)。

【北京中央の政治家とのつながり】
前回、雲南省党書記の年表を掲げましたが、その中で、中央の政争に巻き込まれた人が少なくとも二人います。一人が1995年から1997年の間、つとめた高厳。もう一人が、先ごろ死刑判決を受けた白恩培です。二人の経歴をじっくり見ると、共通するおもしろいことが分かってきました。まず、高厳からみてみましょう。

 高厳は1942年、吉林省の楡林出身。楡林は革命の聖地、延安のお隣の街です。学歴は長春電力学校卒業。中国共産党員として出身地の吉林省で吉林省長まで上り詰め、雲南省党書記となりました。
 雲南省党書記を辞した後は、さらに出世して国家電力公司総経理となっていたのですが、2002年に取り調べ対象となり、その年の9月にオーストラリアに逃亡。
 現在も逃亡中で、海外に逃亡した人の中で最高級官吏だったの一人です。2003年には中国共産党員を除籍させられました。

 彼の在任中の、国家主席は江沢民。
 当時、国家プロジェクトとして雲南から東南アジアへの交通回廊と電力開発に重点がおかれた時期です。1996年には「雲南が東南アジアと南アジアの国際道路を貫通して建設させることで中国を成る(雲南建設成中国面向東南亜、南亜的国際大通道)」構想が掲げられ、交通とエネルギー分野での領域展開と実務での合意がなされました。
 つまり中国の利益のために雲南が要(かなめ)となって東南アジアやインドに向けて交通インフラと電力インフラを整えるという構想です。おそらくこの国家プロジェクトのために高厳は、吉林省から、今まで縁もゆかりもなかった雲南省に党書記として赴任することとなったのでしょう。

 そして2002年に彼がかけられた嫌疑は雲南の企業の中でも全国的ブランドで知られるたばこ会社「紅塔集団」に雲南省書記時代にたばこ1万2800箱購入する契約をして、それを960万香港ドル(約1億3400万円)で売り、利ざやを稼いだ疑惑。党書記の嫌疑としては、最重要の罪とは思えない罪に思えます。
 ただ、表だって言われてはいないのですが、ここには中国の中枢の政治家に連なる罪となりうる、という点が重要なようです。

 当時の「紅塔集団」の副手には、李鵬の息子の李小鵬が、助手には李鵬の娘の李小琳が着任していていました。つまり李鵬に連なる嫌疑ということが深刻でした。

李鵬といえば鄧小平当時の国務院総理であり、その時、第2次天安門事件がおこった際に、武力で鎮圧したことで知られています。彼の後ろ盾は周恩来。中華人民共和国初代総理の周恩来は多くの孤児を養子としましたが彼もその一人でした。2003年に政界を退任していますが、高厳の失脚時期とぴったり同じ年です。これは偶然ではないでしょう。
(つづく)

参考文献:陳秋生主編『雲南財政研究報告(2008-2009)』(中国財政経所出版社、2009年)
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