写真は宿舎の敷地で誰かが飼っていたヤギ。この子ヤギたちはこのコンクリートの台の上から外にほぼ出ない。お母さんヤギが回りにいてもいい素振りをした時だけ、降りている。
動きがあどけなくて、とにかくかわいい。とくにおかあさんヤギの周りにいるときののんびりとしたはしゃぎっぷりがおとぎの国のようなのどやかさ。
【いやしのヤギ】
アイランドホッピングのような非日常以外は、一日、英語学校に行って、予習復習の日々。これでは体がなまってしまうと、以前書いたように、宿舎の階段をひたすら昇ったり、敷地内をウオーキングしたりしていました。宿舎の外を歩くには適さない環境だったわけで、つまり外出がはばかられる日常でした。
学校は2週間単位で入校生、卒業生が入ってくるので、少し話せる人ができてもすぐにいなくなってしまいます。勉強に集中している人には関係ないのですが、テレビもないし、とくに話す人もいない。そんな時に安らぎを与えてくれたのはなんといっても動物たちでした。
ホテルと外をつなぐ門の横に垣根で囲われた空間があり、広い芝生が生えています。入ろうと思えば誰もが入れるのですが、タイヤが積まれていたり、つぶれた店舗のあとのようなコンクリートつくりの平屋の長屋のようなものがあったり。そこに人が住んでいるので、学校の人はほとんど足を踏み入れませんでした。
朝5時半ごろ、朝日で目が覚めて敷地内を散歩していると、ロータリーの緑地帯で薄明かりの中でうごめく小さな影。近づいてみると黒い子ヤギが熱心に草をはんでいます。驚いてしばらく様子を見てから近づいても一向に逃げる気配はありません。ひたすらくしゃっくしゃっと草をむしり食べているのでした。そして飽きるとぽてぽてと歩いてどこかに消えてしまいました。
あれは夢だったのかと窓の外を見ると、ロータリーの先の垣根で囲われた芝生に大きなヤギがみえました。親子でした。ひもでつながれた大きな体のおとなのヤギのまわりに子ヤギが3匹。ちびちゃんたちはひもでつながれておらず自由に動けます。うち2匹は本当に小さくて、ただ、置かれた場所にたたずんでいるだけ。私が朝に見た子ヤギはそれよりも齢が行っているようで、自由に跳ね回っていました。
あまりにかわいいので、しょっちゅう見に行っていました。小さなヤギたちは写真を向けると緊張して固まってしまいます。それがまたかわいいのですが、それでは子ヤギにはよくないので、はるか遠くから声をかけて徐々にならしていきました。日々、少しずつ距離が縮まるのがうれしくて、そのうちに芝生空間を通る作業員に、私自身が声を掛けられるようになりました。
ただ、じーっとヤギたちの芝生にたたずむとなにやらかゆくなってくるのが玉に瑕。どうやらノミがいるらしいのです。
セブ島には蚊がいないのが島の人たちの自慢の一つで、英語の男の先生にも「上半身はだかでいても全然、平気さ」と日頃の島の男たちの服装の理由の一端を説明されていたのですが、地面に寝転ぶことはないのでしょう。
(つづく)