写真は、タンジェの地元好みのレストランで出会ったプルーンと鶏肉の煮込み。料理も料理人も見るからに中東系だったが、お皿には「华国酒店」「RESTAURANTE」「JARDIN CHINO」の文字が。中国語のほうは花園レストラン、アルファベットはスペイン語でレストラン チャイニーズガーデンの意味。つまり同じこと。中国料理店のロゴ入り皿を、気にせず購入し、店用に使っているようだ。安さの秘密なのだろうか?
【大きな店より小さな名店】
すぐ近くの裏通りにある穴蔵のような小さなお店。白壁に小さく「スナック」とかかれた赤い看板のみが住居でないことを示しています。階段を降りると、床に撒かれた木のチップがよい香りを放ち、意外と清潔そう。
床に撒かれたチップ。雲南にも床に松葉を散らして、すがすがしさを出すレストランがあったことを思い出した。
お昼の時間を過ぎているため、店員さんは、食後の片づけに忙しそう。ここでラシードさんはお昼を頼んだので、私たちも同じものを頼みました。
これがとてもやさしい味。干しプルーンを入れた鶏肉の煮込みは、プルーンがほどけて、独特の酸味がいいアクセントになっています。それにフレッシュハーブティ。店の中の暗さと外の日差しの強烈さが異国情緒を誘います。
【モロッコの寅さん】
こうしてお菓子屋さんに戻りました。ラシードさんはさっそく2階に上がると、店員にたくさんの箱を持たせ、自分もひと箱抱えて降りてきました。
「これがおいしいんですよ。上等なんです」
とニコニコ顔。すでに一個、ほおばっています。中を開けると、サクサク系はなく、見た目以上にしっとり系のお菓子のオンパレード。バラの香りなど、香料も強めです。
カップルは
「あのう、サクサクのクッキーがいいんですけど」
と言っているのにラシードさんは全然聞かないで、そのまま自分の分をお会計。カップルも、山のような菓子箱を手に、悲し気に会計をしていました。
カップルには、かわいそうでしたが、ラシードさんの思い込みの激しい親切心は、なんだか日本の喜劇映画で出てくる下町のおじちゃんみたいで、おもしろい。俺はいいことをした、と固く信じているのです。
私たちも一箱買い、さりげなくさくさくクッキーも買いました。
味はラシードさんが頭から否定したウインドウにあったクッキーも特上詰め合わせもどちらもすばらしい。ラシードさんはバラなど(たぶん自然派の)香料が口いっぱいに広がるのが好みなのでしょう。甘さも見た目ほど強烈ではなく、自然に舌に溶け込みます。クッキーも、パリッとしたアーモンドの香ばしさとサクサクとした生地がたまらない。ベルギーのカップルも食べたかったろうな。