石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(14)ガス価格 (完)

2023-08-26 | EIエネルギー統計

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0585EiWorldEnergy2023.pdf

 

5.天然ガス価格

(原油価格連動型の日韓価格とスポット調達中心の英独価格の明暗!)

(2)2013年~2022年の天然ガス価格の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01b1.pdf 参照)

 天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する[1]

 

 市場の自由取引にゆだねられた商品は一般的には価格が一本化されるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本や韓国では原油価格にスライドして決定されている。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。

 

 ここではJapan Korea Marker価格[2](以下日韓価格)、英国Heren NBP index価格(以下英国価格)、ドイツ平均輸入価格(以下ドイツ価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2013年から2022年までの推移を比較することとする。なお参考までに原油価格(ドル/バレル)も合わせて比較の対象とした。

 

 2013年の日韓価格は16.56ドル、英国価格10.64ドル、ドイツ価格10.73ドル、米国価格3.71ドルであり、当時の原油価格は108.66ドルであった。米国価格が最も低く、英国価格、ドイツ価格が10ドル台後半で、日韓価格が最も高かった。

 

 2014年から2016年にかけては原油価格が暴落したため、2016年のガス価格はいずれも大幅に下落した。中でも日韓価格は大きく下がり、2015年に7.45ドルと前年の2分の1近くになり、ドイツ価格(6.72ドル)あるいは英国価格(6.53ドル)との格差は縮まった。その後2017年、18年と原油価格は連続して上昇、日韓価格とドイツあるいは英国価格との格差は再び広まったが、コロナ禍の影響で2019及び20年に原油価格が下落すると、米国以外の価格も再び急落した。しかし、コロナ禍の終息、環境問題による天然ガスの需要増にウクライナ紛争が加わり、2022年には過去10年では例を見ないほど天然ガス価格が急騰している。

 

 2022年の日韓価格は34ドルに達し2013年の2倍以上に高騰している。またドイツ価格、英国価格も25ドル前後と10年前の2.4倍に達している。日韓価格を1とした場合、ヨーロッパの価格は0.7倍程度である。

 

 米国価格は2021年までは2ドル乃至4ドルの幅で安定していた。しかし2022年は6.45ドルと大幅に上昇、世界的なLNG争奪競争の影響が出ている。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] 東京ガスHPhttp://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/investor/ig1000.pdfより。 

[2] S&P Global社が北東アジア向けスポットLNGカーゴの価格を入着ベースで評価、発表しているLNG価格指標。(日本取引所グループJPXのHPより)

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(13)LNG貿易2

2023-08-25 | EIエネルギー統計

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0585EiWorldEnergy2023.pdf

 

(2) LNG貿易(続き)

(輸出トップを競うカタール、豪、米3カ国!)

(5-4) 2013年~2022年の国別輸出量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G02b.pdf参照)

2013年に3,268億㎥であったLNGの輸出量は、2015年までは停滞したが2017年以降増勢に転じ、2018年には4,300億㎥に達し、2021年には5千億㎥を突破、2022年の全世界の輸出量は5,424億㎥、2013年の1.7倍を記録している。

 

国別で見ると2013年当時はカタールの輸出量が1,058億㎥で、世界で唯一1千億㎥を超え、全世界の3分の1を占めていた。カタールに次ぐのがマレーシア(336億㎥)であり、第3位はオーストラリア(305億㎥)であった。ちなみにこの年の米国のLNG輸出量は2億㎥に過ぎなかった。

 

カタールは過去10年以上にわたり設備増強を凍結(モラトリアム)したため輸出量はほとんど増加していない。これに対してオーストラリアと米国は輸出が急増した。オーストラリアは2019年に1千億㎥の輸出体制を整え、2022年の輸出量は1,123億㎥に達し首位のカタールを急追している。オーストラリアをしのぐ勢いでLNG輸出大国の仲間入りをしたのが米国である。同国ではシェールガスの開発が急速に発展し、福島原発事故によるLNGの突発的需要増もあり設備はフル稼働の状況となった。

 

この結果、国別輸出シェアにも大きな変化が見られる。すなわちカタールは2013年のシェア32%をピークに毎年シェアは下降し、2021年は21%にとどまっている。一方オーストラリアのシェアは2013年の9%から2022年にはカタールと並ぶ21%までアップし、また米国は2013年の0.1%から2022年には19%と劇的に上昇している。

 

ロシアは2013年に145億㎥を輸出、2020年には400億㎥を超え、8.5%の世界シェアを獲得している。しかしウクライナ紛争による欧米の経済制裁のため2021年、22年と連続して世界シェアは落ちている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(12)LNG貿易1

2023-08-23 | EIエネルギー統計

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0585EiWorldEnergy2023.pdf

 

4. LNG貿易

(2017年以降急成長するLNG貿易!)

(4-1) 2013年~2022年の国別輸入量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G02a.pdf 参照)

 世界全体のLNG輸入量は2013年の3,268億㎥から2022年には1.7倍の5,424億㎥に増加している。2020年までは日本が輸入量世界一であり、2014年には10年間では最高の1,218億㎥のLNGが輸入されている。これは原発の運転停止のため火力発電用LNGの輸入が急増したことが主な要因である。しかし2015年以降はほぼ一貫して前年を下回っており、2022年には1千億㎥を切り(983億㎥)、2013年の8割にとどまっている。

 

一方、中国は毎年大きく増加しており、2013年の251億㎥が2021年1,099億㎥に増加、ついに日本を抜いて世界一のLNG輸入国になっている。2022年の輸入量は日本983億㎥に対し中国は932億㎥であり、日本がトップに返り咲いたが、世界景気が本格的に回復すれば今後は中国が世界最大のLNG輸入国になることは間違いないであろう。

 

日本、中国に次いで輸入量が多いのは韓国であり、4位フランス、5位スペイン、6位インド、7位台湾の順である。なお2013年から2021年まではインド、台湾が韓国に次ぐLNG輸入国であったが、2022年はフランス、スペインの輸入量が急増し順位に変動が生まれている。ウクライナ紛争のためロシアからのパイプラインによる天然ガス輸入が途絶し、その対応としてLNGの緊急輸入に踏み切ったことが最大の要因である。

 

上位3カ国はすべて極東アジアであり、その輸入シェアは47%に達している。LNGは輸出国の液化搬出装置及び輸入国の搬入ガス化装置に巨額の投資が必要であり、輸出入は一部の国に限定されている。但し最近では地球温暖化問題が重視され、石油より二酸化炭素排出量が少ない天然ガスの需要が増加、さらに今春のロシアのウクライナ侵攻によりLNG輸入を始めるヨーロッパ諸国が増えている。この結果、世界的にLNG争奪戦の様相を見せている。

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(11)生消ギャップ2

2023-08-22 | EIエネルギー統計

3.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率(続き)

(3-2) 天然ガス

(輸出余力2千億㎥超すロシア、年々高まるオーストラリア及び米国の余力!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01b.pdf参照)

 2013年におけるロシアの天然ガス生産量は6,145億㎥、消費量は4,249億㎥で、生産が消費を1,896億㎥万B/D上回っていた。カナダ、オーストラリアはロシアほど多くはないがやはり生産量が消費量を465億㎥及び256億㎥上回っていた。

 

 これに対して米国は生産量6,557億㎥、消費量7,070億㎥で、差引▲513億㎥を隣国カナダから輸入していた。中国及びインドも天然ガスの純輸入国であり、中国は▲501億㎥、インドは▲179億㎥それぞれ消費が生産を上回っていた。

 

 その後2022年までロシア、カナダ、オーストラリアは引き続き生産が消費を上回っている。このうちオーストラリアは生産が急拡大し、2022年の生産量は2013年の2.5倍、1,528億㎥に達した。この結果、オーストラリアの生産余力は2013年の4.3倍に拡大している。

 

2013年当時純輸入国であった米国、中国及びインドのその後の推移は対照的である。米国の改善が顕著であるのに対して、中国とインドは生産・消費ギャップが拡大している。米国は2013年に▲513億㎥であったギャップが年々縮小し、2017年にはついに生産が消費を上回り純輸出国に変わっている。さらに2019年にはカナダを上回る生産余力のある国になり、2022年の生産・消費ギャップはプラス974億㎥に達している。一方の中国とインドは逆にギャップが年々拡大し、2022年は中国が▲1,539億㎥(生産2,218億㎥、消費3,757億㎥)、インドが▲284億㎥(生産298億㎥、消費582億㎥)になっている。

 

(自給率100%以下だった米国と中国が2022年には111%と59%に二極化!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02b.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2013年以降の推移を見ると、まず2013年の自給率は米国93%、中国71%、インド63%であった。即ち米国は1割、中国は3割、そしてインドは4割を輸入に依存していたことになる。中国とインドはその後年々自給率が低下し、2022年には中国は59%、インドは51%に下がり、両国とも必要量の半分近くを輸入に頼っている。

 

これに対して米国の自給率は改善を続け、2017年には自給率100%を達成した。その後も生産の増加が消費のペースを上回り、2022年には111%となり、天然ガスの輸出国に変身している。前項の石油で触れた通り、米国の2022年の石油自給率は93%である。かつて米国は不足する石油と天然ガスを中東産油国とカナダ、ベネズエラに依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(2005年の自給率50%が2022年は101%に!)

(iii)米国の石油と天然ガスの自給率(1970~2022年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G03.pdf参照)

 1970年以降2022年までの半世紀強にわたる米国の石油・天然ガス自給率の推移を見ると、50年前の自給率は石油が77%、天然ガスは99%であり、石油と天然ガスを併せた自給率は86%であった。この当時米国では天然ガスはほぼ自給体制であり、石油の2割強を輸入に依存していた。

 

 天然ガスについては1980年代後半まで自給率100%であったが、1990年以降消費の拡大に生産が追い付かず自給率は徐々に低下し、2005年には82%まで下がった。しかしその後はシェールガス開発が急発展して生産量が劇的に増加、2015年には自給率が100%を超え、2022年には111%に達している。天然ガスについて米国はすでに輸出国の仲間入りを果たしているのである。

 

 同様に石油の自給率の推移を見ると1970年代後半には50%台後半に落ちている。その後1980年代半ばに67%まで回復したが、その後再び自給率は年々低下し、1994年に50%を割り2005年にはついに34%まで落ち込んでいる。即ち国内需要の3分の1しか賄えなかったことになる。しかし2010年以降はシェールオイルの生産が本格化し、自給率は急回復し、2022年は93%になっている。

 

石油と天然ガスを併せた自給率で見ると、1970年は86%であった。最近まで消費の主流は石油であったため自給率は石油に近く、例えば2005年の自給率は石油34%、天然ガス82%、合計ベースの自給率は50%であった。しかし、最近では石油と天然ガスの自給率の差が無くなり2022年の自給率は石油93%、天然ガス111%、合計ベースでは101%である。米国は炭化水素エネルギーの完全自給国になったわけである。

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(10)生消ギャップ1

2023-08-20 | EIエネルギー統計

3.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率

(3-1) 石油の生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2013~2022年)

(3-1-1)石油

 世界の石油生産国と消費国を並べると(表2-T01a及び表3-T01a参照)、米国が生産、消費量で共に世界一であり、中国(生産6位、消費2位)、サウジアラビア(生産2位、消費4位)、ロシア(生産3位、消費5位)など生産・消費の両面で世界のトップクラスの国が少なくない(日本やドイツのように消費が多く、生産がゼロの国はむしろ例外)。

 

 このような国について生産量と消費量のギャップを比較すると、生産量が消費量を上回る国とその逆のケースがある。生産量が消費量を上回る場合はその差が輸出され、逆に消費量が生産量を上回る場合はその差が輸入で埋め合わされることになる。また、生産量を消費量で割った数値をパーセントで表すと、100%を境にその国の石油自給率を示すことになる。

 

 ここではサウジアラビア、ロシア、米国、中国、インド、イラン及びブラジルの7カ国について2013年から2022年までの各国の生産量と消費量のギャップを点検し、また米国、中国及びインド3か国について同期間中の自給率の推移を見てみる。

 

(ギャップが急速に改善する米国、輸出余力を維持する露・サウジ!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01a.pdf参照)

 2013年における米国の石油生産量は1,010万B/D、消費量は1,799万B/Dでその差は▲789万B/Dであった。同様に中国は▲635万B/D(生産422万B/D、消費1,056万B/D、以下同じ)、インドは▲280万B/D(92万B/D、372万B/D)で共に石油の純輸入国であった。

 

 これに対してロシアは生産量1,081万B/D、消費量322万B/Dで差引759万B/Dの輸出余力があった。サウジアラビアの生産量と消費量はほぼロシアに並び、差引793万B/Dの輸出余力を有していた。イランはこれら2国よりは低いものの生産量が消費量を173万B/D上回り、ブラジルは消費量が生産量を54万B/D上回っていた。

 

 その後、中国とインドは消費が生産を大きく上回り、2022年には生産と消費のギャップは中国が▲1,018万B/D(生産411万B/D、消費1,430万B/D)、インドが▲445万B/D(同74万B/D、519万B/D)に拡大している。これに対して米国は生産が消費の伸びを上回り、2022年には生産と消費のギャップは▲137万B/Dに縮小、10年前より652万B/D改善されている。

 

 ロシアとサウジアラビアの輸出余力は2013年以降も大きな変化は無く、2022年はサウジアラビアが826万B/D、ロシアは763万B/Dである。イランも引き続き生産量が消費量を上回っているが、そのギャップはほぼ変わらず、2022年の輸出余力は191万B/Dである。ブラジルは深海油田の開発等による生産量の増強により、2010年には▲54万B/Dの消費超過であったが、2022年には逆に60万B/Dの生産超過となっている。

 

(10年間で大きく明暗を分けた米中の石油自給率!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02a.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2013年以降の推移を見ると、まず2013年の自給率は米国と中国がそれぞれ56%と40%で米国の自給率が16ポイント高かった。これに対しインドの自給率は25%にとどまっていた。即ち米国は4割強、中国は6割、インドは7割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2022年には中国は29%、インドは14%に下がり、両国とも石油の輸入大国になっている。

 

これに対して米国は過去10年間で急激に自給率が改善し、2021年には93%に達し、米国は石油の完全自給まであと一歩に迫っている。かつて米国は不足する石油を主として不安定な中東産油国に依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(9)消費量3

2023-08-18 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量(続き)

(2-3) 米国、中国、日本、インド4カ国の過去10年間の消費量推移

(日本を追い抜き格差広げるインド!)

(2-3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03a.pdf参照)

 2022年の石油消費量が世界1位から3位までの米国、中国、インド及び世界6位の日本について2013年から2022年まで10年間の石油消費量の推移を追う。

 

 2013年の米国の消費量は1,800万B/Dであり、中国1,060万B/D、日本450万B/D及びインド370万B/Dであった。米国は2019年に1,940万B/Dに達し、2020年はコロナ禍のため1,720万B/D強に急減したが、2022年には1,910万B/Dまで回復している。

 

 これに対し中国の消費量は2013年以降2021年まで一本調子で増加、2017年に1,300万B/Dを突破、2021年には1,490万B/Dに達した。2022年は過去10年間で初めて前年度を下回る1,430万B/Dにとどまり、それまで縮まる一方であった米国との格差が再び開く結果となっている。

 

 日本の消費量は長期減少傾向にあり、2013年には米国、中国に次いで世界3位であったが、2015年にはインドに追い抜かれ世界4位に転落した。その後さらにサウジアラビア及びロシアにも追い抜かれ、昨年の消費量は世界6位の334万B/Dであった。

 

(アジアの天然ガス消費をけん引する中国!)

(2-3-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03b.pdf参照)

 米国(2022年の天然ガス消費量世界1位)、中国(同3位)、日本(同7位)及びインド(同15位)の2013年から2022年までの消費量の推移を見ると、2013年は米国が7,070億立方メートル(㎥)、次いで中国が1,719億㎥、日本1,235億㎥、インド490億㎥であった。米国とその他3カ国の格差は4倍以上であった。その後中国の消費量は急ピッチで増加、2016年には2千億㎥、2019年には3千億㎥を突破、2022年の消費量は3,757億㎥を記録し、米国との格差は2倍近くに縮まっている。

 

 一方この間日本の消費量は2014年の1,248億㎥を天井にその後は年々減少し、2022年には1,005億㎥となり中国の4分の1に縮小している。インドは2013年の消費量490億㎥に対し2022年は582億㎥であり過去10年間の増加率は低い。

 

(まだまだ格差が大きい1位米国と2位中国!)

(2-3-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03c.pdf参照)

 石油とガスを合計した消費量を米国、中国、インド及び日本の4カ国で比較すると、まず2013年の消費量は米国が3,018万B/D(石油換算、以下同じ)である。中国は1千万B/Dを超えており(1,353万B/D)、日本とインドは663万B/D及び456万B/Dであった。米国は2019年に3,410万B/Dまで伸び、2020年はコロナ禍の影響で急落したが、2022年には3,430万B/Dに達している。

 

 中国は2021年まで一度も減少することなく同年の消費量は2,145万B/Dまで増加したが、2022年は若干減少し2077万B/Dにとどまっている。2013年に2.2倍であった米国と中国の格差は、その後年々縮小したが2022年の格差は1.7倍でありまだ両国の開きは大きい。

 

日本は石油、天然ガス共に過去10年間消費が減少しており2022年の消費量は507万B/Dで2013年を150万B/D以上下回っている。インドは天然ガス消費は停滞したが、石油消費は増加している。この結果合計消費量では2018年に日本を超え、その後格差は広がり2022年には日本を100万B/D以上上回っている。

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(8)消費量2

2023-08-16 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量(続き)

(2-2) 1970~2022年の消費量の推移

(1970年の消費量5千万B/D弱が50年後の2022年には1億B/D超え目前に!)

(2-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02a.pdf参照)

 1970年の全世界の石油消費量は4,540万B/Dであったが、5年後の1975年に5千万B/D台に、そして1980年には6千万B/D台と5年ごとに大台を超える急増ぶりであった。その後1980年代は横ばい状態であったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、2000年代前半には8千万B/D、2014年に9千万B/Dを突破した。2020年はコロナ禍の影響で消費が急減したが、2022年は1億B/D目前の9,730万B/Dに達した。

 

(1970年以降の半世紀で消費量4倍に急成長!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02b.pdf参照)

 1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥、2008年には3兆㎥の大台を超え、2022年の消費量は4兆㎥に近づいている。1970年から2022年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年と2020年の2回のみであり、52年間の増加率は4.1倍に達している。

 

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。これに加え最近では地球環境問題の観点からCO2排出量の少ない天然ガスの需要が増加している。天然ガス消費量が一貫して増加しているのはこのような特性によるものと考えられる。

 

(天然ガスの比率が27%から41%に!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02c.pdf参照)

 1970年から2022年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1970年の石油と天然ガスの消費量は石油が4,540万B/D、天然ガスは9,620億㎥(石油換算1,660万B/D)であった。合計すると石油換算で6,200万B/Dとなり、両者の比率は石油73%、天然ガス27%で石油の消費量は天然ガスの2.7倍であった。

 

 その後、半世紀の間天然ガスの消費量はほぼ右肩上がりに増加しており、2022年の合計消費量は石油換算で1億6,500万B/D(内訳:石油9,700万B/D、天然ガス4兆㎥)であり1970年の2.7倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は2.1倍、天然ガスは4.1倍と天然ガスの伸び率は石油の2倍であった。この結果、2022年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は59%対41%であり、天然ガスの比率は半世紀の間に14ポイント上昇している。

 

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(7)消費量1

2023-08-06 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量

(2-1) 2022年の国別消費量

(石油の二大爆食国、米国と中国!)

(2-1-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01a.pdf参照)

 2022年の世界の石油消費量は9,731万B/Dであり、前年の9,437万B/Dを3%上回った。国別で石油消費量が最も多いのは米国の1,914万B/Dであり、世界全体の20%を占めている。これに次ぐのが中国の1,430万B/D、シェア15%である。消費量が1千万B/Dを超えるのはこの2カ国だけであり、3位インド(519万B/D)と比べると米国は4倍、中国は3倍の消費量を誇っている。米国と中国は石油の爆食国であると言えよう。

 

 世界4位はサウジアラビア(388万B/D)、5位ロシア(357万B/D)、6位日本(334万B/D)である。7位から10位までの各国の順位と消費量は以下のとおりである。

 

 7位韓国(286万B/D)、8位ブラジル(251万B/D)、9位カナダ(229万B/D)、10位メキシコ(210万B/D)。

 

(世界の天然ガスの22%を消費する米国!)

(2-1-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01b.pdf参照)

 2022年の世界の天然ガス生産量は年産3兆9,400億立法メートル(㎥)であり前年(2021年)より3%少なかった。

 

 天然ガスの最大の消費国は米国であり、消費量は8,800億㎥、世界全体の22%を占める。同国は石油消費量も世界1位でありエネルギー消費大国である。2位はロシアの4,100億㎥、3位は中国の3,800億㎥である。これら3か国の世界シェア合計は4割を超える。4位はイラン、5位はカナダであり、6位サウジアラビアに続いて7位を日本が占めている。以上7カ国が消費量1千億㎥を超えている。その他10位までの国はメキシコ、ドイツ及び英国である。

 

 これら上位10カ国の顔触れを上記の石油と比較すると、米国、ロシア、中国、カナダ、サウジアラビア及び日本の6カ国は両方に顔を出しているが、イラン、ドイツ、韓国及び英国の4か国は石油または天然ガスいずれかの消費上位10カ国に入っていない。

 

(2022年の石油・天然ガス合計消費量は石油換算で1日当たり1.65億バレル!)

(2-1-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01c.pdf参照)

 2022年の天然ガス消費量生産量3兆9,400億㎥を原油に換算すると6,790万B/Dとなり、石油と合わせた消費量は1億6,500万B/Dであった。石油と天然ガスの比率は59対41で石油の方が多い。

 

 上述のとおり米国は石油及び天然ガスそれぞれの消費量が世界一であり、従って合計消費量も世界一である。同国の天然ガス消費量8,800億㎥を原油に換算すると1,520万B/Dであり、米国の石油・天然ガスの合計消費量は3,430万B/Dとなり、全世界に占めるシェアは21%に達する。米国に次ぐのが中国である。同国は石油消費量では世界2位、天然ガス消費量は世界3位であり、合計消費量は原油換算2,100万B/Dである。第3位はロシアで合計消費量は1,100万B/Dである。因みに石油と天然ガスの比率は米国の場合石油56%、天然ガス44%であるのに対して中国は石油69%、天然ガス31%、ロシアは石油34%、天然ガス66%である。米国は石油が天然ガスを少し上っているのに対して、中国は石油が全体の7割を占め、ロシアは逆に天然ガスが消費量の7割を占め3か国の消費形態は対照的である。

 

 4位以下の国と石油・天然ガス合計生産量(原油換算)は以下のとおりである。

 4位インド(619万B/D)、5位サウジアラビア(595万B/D)、6位イラン(586万B/D)、7位日本(507万B/D)、8位カナダ(438万B/D)、9位韓国(393万B/D)、10位メキシコ(376万B/D)

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(5)生産量4

2023-07-30 | EIエネルギー統計

1.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)

(1-3) 主要国の2013~2022年の生産量推移(続き)

(トップを独走する米国!)

(1-3-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03b.pdf参照)

 2013年から2022年までの天然ガス生産量の推移について、ここでは2022年世界1位、2位、3位の米国、ロシア及びイランに加え、同6位カタール、7位オーストラリアの5カ国の動きを見る。

 

 2013年の米国とロシアの天然ガス生産量はそれぞれ6,557億㎥及び6,145億㎥であり米国がロシアをわずかに上回っていた。しかし米国では前項に触れたシェール石油と同様商業ベースのシェールガス開発が軌道に乗り、生産量が急増、生産が低迷するロシアをしり目に2015年には米国の生産量7,400億㎥に達したのに対して、ロシアの生産量は5,800億㎥にとどまった。2017年以降、米国の生産がさらに加速する中で、ロシアも2021年の生産量が7千億㎥を超えたが、2022年にはウクライナ紛争による西欧諸国の輸入制限によりロシアの天然ガス生産量は急減した。同年の生産量は米国が9,786億㎥と1兆億㎥に近づいたのに対し、ロシアの生産量は10年前とほぼ同じ6,184億㎥にとどまっている。

 

 カタールとイランの生産量は2015年までほとんど同じであった。LNG輸出中心のカタールは2010年までにLNG年産7,700万トン体制を整え、長期契約により世界のLNG市場をリードしているが、供給過剰を回避するため新規設備投資を凍結する「モラトリアム体制」を取った。このため2010年代を通じて生産量はほとんど増えていない。これに対して1億人近い人口を抱えるイランは国内のエネルギー消費を賄うため天然ガスの生産を高めた。この結果2022年の生産量はイランの2,600億㎥に対しカタールは1,800億㎥となり、2013年に比べるとイランは1.7倍増加したのに対し、カタールは1.1倍の増加にとどまっている。

 

 カタールの生産量が停滞している間に意欲的な増産に取り組んだのがオーストラリアである。同国の2013年の生産量は600億㎥でありカタールの4割にとどまっていたが、2022年には1,500億㎥に拡大しカタールに迫っている。

(注、現在、カタールは「設備増強モラトリアム宣言」を撤回し、年産1億2千万トンを目指して設備の増強に着手、LNG輸出市場での主導権を回復しようとしている。)

 

(続く)

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(4)生産量3

2023-07-26 | EIエネルギー統計

1.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)

(1-3) 主要国の過去10年間の生産量の推移

(シェールオイル開発で米国が驚異的な生産増!)

(1-3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03a.pdf参照)

 ここでは石油生産量が世界1~3位の米国、サウジアラビア、ロシアに加え、米国の経済制裁のため石油輸出に苦しみ2022年の生産量が世界8位のイラン、及び近年深海油田の開発で生産量が増加傾向にある世界9位のブラジルの5カ国について過去10年間の生産量の推移を検証する。

 

 2013年の石油生産量はサウジアラビアが1,139万B/Dと最も多く、ロシアが僅差の1,081万B/Dで続き、米国も1千万B/Dを超える生産量であった。これに対しイランは361万B/D、ブラジルは211万B/Dであった。

 

 この後シェールオイルの生産が本格化した米国が生産量を大幅にアップしており、2014年にはサウジアラビア、ロシアを抜いて世界一の石油生産国になった。特に2018年から2019年にかけて同国の生産量は大幅に増加し1,600万B/Dを超え、2022年には1,777万B/Dに達している。

 

サウジアラビアとロシアの生産量はほぼ横ばい状態が続き、逆に2019年から2021年にかけては前年を下回る生産量にとどまっている。コロナ禍による世界的な石油需要の低迷のため両国はOPEC+(プラス)として価格下落を回避するための協調減産体制をとったためである。

 

 イランは2013年から2015年まで400万B/Dを下回るレベルで推移した後、2017年には485万B/Dまで回復したが、2020年には大きく減退し(312万B/D)、過去10年間では最も低い生産量となった。これは米国の経済制裁とコロナ禍の影響が重なったためである。2021年、2022年はコロナ禍が終息、生産量は365万B/D、382万B/Dと順調に回復しつつあるが、未だコロナ禍前の水準に達していない。

 

 ブラジルは深海油田の開発が軌道に乗り、2013年以降生産量が順調に増加した。即ち2013年に211万B/Dであった同国の石油生産量は、2015年に253万B/Dに増加、2020年には他の産油国の生産が減少する中で唯一前年を上回り300万B/Dの大台を突破した。2021年は世界的な石油需要不足のため同国の生産量も足踏みしたが、2022年には過去10年間で最高の311万B/Dにアップ、10年前に比べ100万B/D増加している。

 

(続く)

 

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