II.Shellの業績(下)
2.2006~2009年の業績推移 (上図参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-93dShell.gif)
2006年から2009年までの過去4年間の売上、利益、設備投資及び生産量(天然ガスを石油に換算した合計生産量)は以下の通りであった。
(1) 売上高
2006年に3,188億ドルであったShellの売上は2007年に3,558億ドル、2008年4,584億ドルと急激にアップしたが、2009年は一転して前年比39%減の2,782億ドルに急減し、2006年以前の水準に戻っている。
この4年間の売上の増減の最大の理由は、石油価格の急騰と急落によるものである。それは後述する生産量の変化を見ればよくわかる。すなわち生産量は2006年以降一貫して減少しているにもかかわらず2006年から2008年までは売上高が増加している。2009年は原油の年間平均価格が前年より大幅に下落し、さらに生産量も減少したため、売上高の落ち込みはExxonMobil(同社業績速報参照)よりも大きかった。
(2) 利益
Shellの利益は2006年の254億ドルから2007年には313億ドルまで増加したが、2008年には前年水準を下回り2006年とほぼ同じ263億ドルにとどまった。そして2009年はさらに悪化して前年の1/2以下の125億ドルとなった。2008年の利益が前年を下回ったのは3社(ExxonMobil、Shell、BP)の中ではShellだけであり、何らかの特殊要因があったものと考えられる。
売上高利益率は2006年、2007年は8%台であったが、2008年には5.7%に低下、2009年はさらに4.5%まで落ちている。
(3) 設備投資額
2006年、2007年の設備投資額はそれぞれ231億ドル及び241億ドルであったが、2008年には急激にふくらみ同期の利益額を大幅に上回る351億ドルに達した。2009年は業績悪化のため投資額も276億ドルに減少しているが、この額は2006年、2007年を上回っており、同年の利益の2倍以上というかなりの水準になっている。
設備投資のうち3/4は上流部門が占めており、ExxonMobil同様継続的な探鉱開発の投資を行っていることがわかる(ExxonMobilの項参照)。
(4) 生産量(石油及び天然ガスの合計生産量)
2006年に347万B/Dであった生産量はその後年々減少し、2007年には332万B/D、2008年325万B/D、2009年315万B/Dに減少している。このような生産量の低落傾向は2007年のサブプライムショック以降、世界景気が急速に冷え込み、その結果石油製品の販売量が減少したことが最大の理由である。
ただし三大石油会社の中でExxonMobil及びBPは2009年の生産量が前年の2008年のレベルより若干上向いているにもかかわらず、Shell社は生産量の減少に歯止めがかからない。同社が業績悪化にもかかわらず上流部門に多額の投資を維持している(上記参照)理由は、そのためと考えることができる。
(Shell編 完)
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