(注)本シリーズ1~6は「マイライブラリー」に一括掲載されています。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
1.世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数
(1)2009年末の確認埋蔵量
2009年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は188兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は62.8年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。
埋蔵量を地域別に見ると上図のごとく中東地域が全世界の埋蔵量の40%を占めている(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-92aGasReservesByRegio.gif参照)。これに次ぐのが欧州・ユーラシアの34%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の74%を占めており、その他のアジア、アフリカ、南北アメリカなどはすべて合わせても全体の4分の1にとどまっている。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。
次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはロシアの44tcm、世界全体の24%を占めている。第二位はイラン(30tcm、16%)、第三位カタール(25tcm、14%)であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の54%に達する。4位以下、10位まではトルクメニスタン(世界シェア4.3%)、サウジアラビア(4.2%)、米国(3.7%)、UAE(3.4%)、ベネズエラ(3.0%)、ナイジェリア(2.8%)、アルジェリア(2.4%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は77%である。つまり世界の天然ガスの埋蔵量の8割弱が10カ国に集中しているのである。(詳細は「国別天然ガス埋蔵量ベスト20(2009年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-92bGasReserveByCountry2010.xps 参照)
(2)1980~2009年の埋蔵量及び可採年数の推移
(詳細は「天然ガスの埋蔵量と可採年数(1980~2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93aGasReserve&RP1980-.gif 参照)
1980年末の世界の埋蔵量は81tcmであったが、2009年末のそれは187tcmである。埋蔵量は2.3倍に増加しているが、これは1989年、2001年及び2008年の3回にわたる大幅な増加を挟みほぼ4期に分けることができる。即ち1980年代は年率4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は109tcmに達した(第1成長期)。そして1989年には対前年比12%と大幅に増加し、同年末の埋蔵量は122tcmとなった。その後1990年代は年間成長率がやや鈍り平均2%となり、1999年末の埋蔵量は149tcmであった(第2成長期)。2001年は前年比9.7%拡大して同年末の埋蔵量は169tcmに達したが、2002年以降2007年までは年間成長率が1%以下に停滞している(停滞期)。そして2008年には前年比4.5%増の185tcmとなっている(第3成長期)。これは中央アジアのトルクメニスタンで大型ガス田の発見があり埋蔵量が2007年の3倍強に拡大したこと及びオーストラリア、ベトナムなどアジア・大洋州で活発な探鉱活動が行われた結果である。
地域別の埋蔵量の構成を見ると(詳細はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93bGasReservesByRegio.gif 参照)、1980年は欧州ユーラシア地域が世界全体の41%を占め最も大きく、次いで中東地域が30%であった。この2地域が世界の埋蔵量の7割強を占める構図は2009年まで変わっていないが、欧州ユーラシア地域の比率は1990年代初めに43%まで上昇した後、徐々に低下し2009年末には34%になった。これに対して中東地域の世界に占めるシェアはほぼ一貫して増加し、2000年には世界最大の天然ガス埋蔵地域となった。そして現在(2009年末)では両者のシェアの差は7%に広がっている。
その他の地域に関しては北米地域のシェアは1980年以降大きく低下しており、同年に世界の12%を占めていたものが、2009年には5%に落ち込んでいる。これに対してアジア・大洋州地域は1980年に6%であったシェアが2009年には9%に増大しており、天然ガスの成長地域となっている。
可採年数については1980年から現在に至るまでさほど大きな変動は見られない(詳細は「天然ガスの埋蔵量と可採年数(1980~2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93aGasReserve&RP1980-.gif 参照)。80年代前半はほぼ60年前後で推移した後、90年代の可採年数は若干高い64~67年の水準で維持してきた。そして2001年には可採年数が1980年以降では最も高い年数(68年)に達した後、その値は年々低下して2007年には60年に落ち込んだ。現在は可採年数が上向き傾向であり、2008年は61年、2009年には63年となっている。これは景気後退で天然ガスの消費が鈍化する一方、数年前から活発化した探鉱開発の成果が埋蔵量の増加につながったためである。
(続く)
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