(株価暴落で買収におびえるBPと「ホワイト・ナイト」を目論む産油国)
・リビア石油公社総裁:「BPは買い時」、リビア投資庁にBP株取得を進言。
*参考:マイライブラリー(前田高行論稿集)
・三大国際石油企業(ExxonMobil, Shell, BPの2009年業績比較
(株価暴落で買収におびえるBPと「ホワイト・ナイト」を目論む産油国)
・リビア石油公社総裁:「BPは買い時」、リビア投資庁にBP株取得を進言。
*参考:マイライブラリー(前田高行論稿集)
・三大国際石油企業(ExxonMobil, Shell, BPの2009年業績比較
(注)本シリーズ1~6は「マイライブラリー」に一括掲載されています。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
2.世界の天然ガスの生産量
(1) 地域別・国別生産量
2009年の世界の年間天然ガス生産量は2兆9,870億立方メートル(以下㎥)であった。前年の生産量は史上初めて3兆㎥を超えたが、09年は前年比2.1%減少し再び2兆㎥台に逆戻りした。BP統計で生産量が前年を下回るのは1970年以来初めてのことである(詳しくは下記(2)参照)。09年の生産量を地域別でみると欧州・ユーラシアが9,730億㎥と最も多く全体の33%を占めている。これに次ぐのが北米(8,130億㎥、27%)であり、これら2地域だけで世界の60%に達する。その他の地域はアジア・大洋州4,384億㎥(15%)、中東4,072億㎥(14%)、アフリカ2,038億㎥(7%)、中南米1,516億㎥(5%)であった。(図「地域別天然ガスの年間生産量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94aGasProductionByReg.gif参照)
各地域の生産量と埋蔵量(前章参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の40%を占めているが生産量では14%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の5%にとどまるのに対して、生産量のシェアは27%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。この結果、可採年数(埋蔵量を生産量で割った数値:R/P)は中東地域が100年以上であるのに対して、北米はわずか11年にすぎない。全世界の平均R/P(62.8年)を上回っている地域は中東のほかアフリカ(72.4年)及び欧州・ユーラシア(64.8年)である。このことから地域別に見て天然ガスの生産を拡大できるポテンシャルを持っているのは中東、アフリカ及び欧州・ユーラシア(特に中央アジア)であると言えよう。
次に国別に見ると、天然ガス生産国第1位は米国の5,930億㎥、第2位はロシア(5,280億㎥)であり、この2カ国の生産量が飛び抜けて多い。ロシアは02年以降08年までは米国をしのぐ世界一の天然ガス生産国であったが、昨年は前年比12%と大幅に落ち込み、3%増の米国に首位の座を明け渡した(両国の生産量推移については下記(3)参照)。これに続くのがカナダ(1,610億㎥)、イラン(1,310億㎥)、ノルウェー(1,030億㎥)である。6位から10位にはカタール(890億㎥)、中国(850億㎥)、アルジェリア(810億億㎥)、サウジアラビア(770億㎥)及びインドネシア(720億㎥)が名を連ねている。(表「国別天然ガス生産量ベスト20(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-94bGasProductionByCountry2009.xps 参照)
(2) 地域別生産量の推移1970~2009年)
(上図「天然ガス地域別生産量の推移(1970~2009年)」参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94cGasProductionByReg.gif)
1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後2008年まで一度たりとも前年生産量を割ることなく増加を続け、2008年には3倍の3兆610億㎥の生産量を記録した。しかし上記に述べたとおり2009年は史上初めて対前年比マイナスとなった。石油の場合は第二次オイルショック後に急激に需要が減退し、オイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要しており、これは天然ガスと石油の大きな相違点である。
地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の94%を占めており、残る6%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。1970年に6,630億㎥であった北米の生産量はその後微増にとどまっており、2009年に8,130億㎥となり、世界に占めるシェアも66%(1970年)から27%(2009年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,820億㎥から急速に伸び、1982年には北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の5割を占めるまでになった。しかし同地域の生産量は90年代以降伸び悩んでおり、2009年の世界シェアは33%にとどまっている。
一方、1970年には生産量200億㎥以下でシェアがわずか2%しかなかったアジア・大洋州或いは中東は、90年以降生産量が急速に増大しており、特にここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により発電用或いは家庭用燃料としての天然ガスの地域内の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、近年液化天然ガス(LNG)として市場を拡大しつつあることをあげることができる。
世界的にみると2009年は生産量が過去40年間で初めて前年を下回り天然ガスの生産拡大は踊り場に差し掛かったように見える。2008年までは対前年増加率3~4%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいることは間違いないが、今後は同じクリーンエネルギーとして原子力や再生エネルギーとの競合が厳しくなることが考えられる。天然ガスの将来がどのようになるか注視する必要がありそうだ。
(3) 主要国の生産の推移(1985~2009年)
天然ガスの主要生産国である米国、ロシア、カナダ、イラン、ノルウェー、カタール及びアルジェリアの6カ国について1985年以降の生産量の推移を見る。(図「主要国の天然ガス生産量の推移」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94dGasProductionByCou.gif 参照)
ロシアは1989年のソ連邦崩壊後、国内産業が混乱し、また需要家であるヨーロッパ諸国の景気が落ち込んだため天然ガスの生産は今世紀初めまで停滞していた。これに対してロシア以外の5カ国はほぼ例外なく年々生産量が増加している。特にイラン、カタールの中東湾岸諸国の伸びは目覚ましく、イランの場合は1985年の150億㎥が2009年には9倍増の1,310億㎥に達し、カタールも同じ期間に18倍になっている。
米国は1990年に5,000億㎥に達した後、2005年まで生産は停滞した。しかしその後急激に生産量が増えており2009年には6,000億㎥目前となりロシアを抜いて世界一の生産国となっている。これは石油価格の高騰に伴い天然ガスの開発生産に拍車がかかり、中でもシェールガスの商業生産が軌道に乗ったことが主な要因と考えられる。同じ時期にカナダの生産量が減少しているのは、米国が天然ガスの自給率を高めた結果米国への輸出が減少したためであろう。ロシアもカナダと同様生産量が急減しているが、これは需要家であるヨーロッパ諸国が天然ガス価格の上昇と景気の悪化によりロシアからの天然ガスの輸入量を減らしたことが原因である。
(続く)
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