(注)本シリーズ1~6は「マイライブラリー」に一括掲載されています。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
6.世界の天然ガス貿易(その3):パイプラインとLNGの比較
(1)天然ガス貿易の推移(1997~2009年)
パイプライン及びLNGによる天然ガスの合計貿易量は1997年にはパイプラインによるものが3,220億立方米(以下㎥)、LNGが1,110億㎥の合計4,330億㎥であり、パイプラインとLNGの比率はほぼ3:1の割合であった。この後、天然ガスの貿易は年率5%を超える伸びを示し、2000年には5,000億㎥、2005年には7,000億㎥、2008年に8,000億㎥を超え、2009年には8,770億㎥に達している。
1997年当時に比べ天然ガス貿易全体では2倍強に増加しているが、近年はLNGによる貿易の伸びが大きく2007年には全貿易量に占めるLNGの比率は3割近くに上がった。但し2008年、2009年はパイプライン輸出の対前年比伸び率がLNGの伸び率を上回っている。(上図「天然ガス貿易:パイプライン vs LNG(1997~2009年)」。なお拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91aGasTradePlvsLNG(19.gif 参照)
(2)主要な天然ガス輸出国(2009年)
パイプラインとLNGを合わせた天然ガスの輸出が最も多いのはロシアの1,831億㎥(世界シェア21%)であり、第2位ノルウェー(989億㎥、シェア11%)の2倍近くに達している。ロシアは極東のサハリンで新たにLNGの出荷を始めたため前年より大幅に伸びている。
第3位の輸出国はカナダであり、同国はパイプラインにより922億㎥を輸出している。続くカタールは輸出量682億㎥(内訳、パイプライン188億㎥、LNG495億㎥)である。第5位のアルジェリアは527億㎥(内訳、パイプライン318億㎥、LNG209億㎥)を輸出している。同国はパイプラインとLNG輸出のバランスが取れており、他国の輸出がパイプライン又はLNGのいずれかに偏重していることに比べ特徴的である。ロシアからアルジェリアまでの上位5カ国で天然ガスの全貿易量の57%を占めている。
6位以下10位までは、オランダ497億㎥(全量パイプライン)、インドネシア357億㎥(パイプライン97億㎥、LNG260億㎥)、マレーシア307億㎥(パイプライン12億㎥、LNG295億㎥)、米国303億㎥(パイプライン295億㎥、LNG9億㎥)、ナイジェリア243億㎥(全量LNG)となっている。(詳細は「天然ガス輸出国Top20(パイプライン+LNG合計、2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-96cGasExpPl+Lng2010.xps 参照)
(3)主要な天然ガス輸入国(2009年)
パイプラインとLNGを合わせた天然ガスの輸入が最も多いのは米国で、パイプラインによる輸入930億㎥、LNG輸入128億㎥の合計1,058億㎥である。続く2位はドイツ888億㎥、3位は日本859億㎥であり、前者は全量パイプライン、後者は全量LNGによる輸入である。但し米国は303億㎥(前述)、ドイツは128億㎥を輸出しており、これを差し引くと日本が世界一の天然ガス輸入国と言うことになる。
4位から7位まではパイプラインとLNGの二本立ての輸入を行っており、4位イタリア(総量693億㎥、内訳:パイプライン664億㎥、LNG29億㎥)、5位フランス(同、491億㎥、360億㎥、131億㎥)、6位英国(同411億㎥、309億㎥、103億㎥)、7位スペイン(同360億㎥、90億㎥、270億㎥)の順となっている。8位は韓国(全量LNG)、9位トルコ、10位ロシアであり、このように輸入国上位10カ国のうち6カ国は西欧諸国である。(詳細は「天然ガス輸入国上位20カ国(パイプライン+LNG合計、2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-97cGasImporPl+Lng2010.xps 参照)
(天然ガス篇完)
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