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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/ExxonShellBp.html
I.ExxonMobilの業績(下)
2.2006~2010年の業績推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-93bExxon.pdf参照)
2006年から2010年までの過去5年間の売上、利益、設備投資及び生産量(天然ガスを石油に換算した合計生産量)は以下の通りであった。
(1) 売上高
2006年に3,776億ドルであったExxonMobilの売上は2007年には4千億ドルを突破し、2008年には史上最高の売上高(4,774億ドル)に達したが、2009年には一転して前年比35%減の3,106億ドルに急減した。そして2010年には2006年の水準をやや上回る3,832億ドルに回復したが、2008年の史上最高額に比べ8割にとどまっている。
この5年間の売上の増減の主たる理由は石油価格の急騰と急落によるものである。それは生産量の変化(後述)を見ればよくわかる。すなわち2006年から2008年までの3年間は生産量が急減しているにもかかわらず売上高は増加しており、一方2009年は生産量が微増しているが売上高は急減している。そして2010年は生産量が過去5年間で最も多かったにもかかわらず、売上高は2008年及び2007年を下回っているのである。
(2) 利益
各年の利益額は2006年395億ドル、2007年406億ドル、2008年452億ドル、2009年193億ドル、2010年305億ドルであった。利益は売上と同様2006年から2008年まで増加し、2009年には一転して急減し、2010年は回復している。しかし2010年は売上高では2006年を上回っているにも関わらず、利益は下回っている。
2007年、2008年の売上高対前年比増加率はそれぞれ7.1%、18.0%であったのに対し、利益の増加率は2.8%及び11.4%と小幅にとどまった。2009年は売り上げが対前年比で34.9%と大幅に減少したが、利益はそれ以上の57.4%減となっている。2010年の対前年比増加率は売上高が23.4%増、利益は58.0%増であり、過去5年間の中では最も高い伸び率となった。
(3) 設備投資額
設備投資額は売上或いは利益のぶれとは関係なく毎年増加の傾向にある。即ち2006年は199億ドル、2007年209億ドル、2008年261億ドル、2009年271億ドル、2010年は322億ドルの投資が行われている。
2010年の場合、設備投資のうち85%は上流部門が占めており(前項参照)、ExxonMobilでは継続的に探鉱開発に力を注いでいることがわかる。石油及び天然ガスは再生不可能な資源であり、従って石油企業としては新規鉱区の獲得とその探鉱開発、既存油田の回収率向上、同業他社の買収などにより自社の資源量を維持し続けなければならない宿命がある。さらに新規鉱区の探鉱開発はリスクも高く、投資のリードタイム(回収期間)が長いため、長期的視野にたった投資が必要である。ExxonMobilの投資が毎年増加しているのはこのような理由のためと考えられる。
(4) 生産量(石油及び天然ガスの合計生産量)
2006年に424万B/Dであった生産量は2007年には418万B/Dに減少、2008年には4百万B/Dの大台を割り392万B/Dに急減、2009年も393万B/Dと横ばいの状況であった。このような生産量の急激な減少はいくつかの理由が重なったものであり、その一つは2007年のサブプライムショック以降、世界景気が急速に冷え込み、その結果石油製品の販売量が減少したことにある。さらに産油国における政治的な要因もあるものと考えられ、ExxonMobilの場合は、ベネズエラの石油国有化問題などの影響もあったと推定される。しかし2010年には445万B/Dと過去5年間で最も多い生産量となっている。これは探鉱投資による新規石油・ガス田の発見、或いは米国内のシェール・ガス権益取得などのM&A戦略の成果が現れたものであろう。
(ExxonMobil編 完)
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