(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載されています。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0172Bp2010.pdf
III.BPの業績(上)
(注)詳細は下記同社HP参照。
http://www.bp.com/extendedgenericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7066774
1.2010年の売上・利益・投資及び生産量
(1)はじめに
昨年のBPの業績はメキシコ湾における原油漏出事故が大きく影を落とした。4月20日MC252号試掘井の暴墳事故による原油の漏出は5ヶ月後に漸く止まったが、その間メキシコ湾に流出した原油は一説には490万バレルとされ、これは日本の1日の消費量に匹敵するものであった。
漂着原油の処理費用、漁業補償など外部に対する支払いはもとより、暴墳を止めるための救助井掘削など内部費用を含めBPには巨額の経費が発生した。このため7月27日の第2四半期決算は172億ドルの赤字という史上最悪の結果となった(詳しくは10月14日付け弊レポート「これからが正念場のBP」http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0157BpCrisis.pdf 参照)。
以下に概略するとおり今回発表された通年業績ではメキシコ湾原油流出関連費用(Gulf of Mexico oil spill response)として409億ドルが計上されており、税引前利益は55億ドルの赤字決算となった。ExxonMobilあるいはShellが好調な決算を発表したことに比べ(シリーズI, II参照)、今回の事故によりBPの受けた痛手は計り知れないものがある。
現在BPは事故に関する数多くの訴訟を抱えており補償総額が最終的にどの程度の規模になるかは全く予測がつかず、当分BPの業績に暗い影を落とすことは間違いないであろう。またBPは補償費用を捻出するため一部油田・ガス田の資産売却を進めており、これによって今後同社の石油・ガスの生産量が減少することは避けられない。今回の決算はBPの長期低迷の予兆と言えるかもしれない。
(2)売上高
売上高は297,107百万ドルであり、前年度の売上239,272百万ドルに対し24.2%の増収であった。これは石油価格が上昇したためであり、ExxonMobil及びShellも同様である。生産量については(5)に述べる通りBPの場合は前年(2009年)を下回っているのに対し、他の二社はいずれも生産量が前年を上回っている。このためBPの増収要因は石油価格の上昇のみによるものと言える。
(3)利益・損失
BPの2010年1-12月の損益は3,719百万ドルの損失であった。前年度を含め過去4年間がいずれも200億ドル前後の利益だったことに対し、BPは創業以来初めてとも言える大幅な損失を余儀なくされた。これは言うまでも無くメキシコ湾の原油漏出事故によるものである。
この特別損失を除けば、同社の上流部門及び下流部門はそれぞれ309億ドル、56億ドルの利益を計上しており、これはExxonMobilのそれより高く、Shellをはるかにしのぐ水準である。売上が3社の中で最も少ないことを考慮すると、事故が無ければBPの売上高利益率は3社中最も高かったであろうと考えられる。
(4)設備投資
2010年度の設備投資総額は23,016百万ドルであった。投資を上流部門、下流部門およびその他部門に分けると、上流部門には全体の77%を占める17,753百万ドルが配分されている。下流部門は4,029百万ドル(全体の18%)であり、その他部門は1,234百万ドル(同5%)であった。
(5)石油・天然ガスの生産量
2010年の生産量は石油が一日当たり平均237万バレル(以下B/D)であり、天然ガスは日産84億立法フィート(以下億cfd)である。天然ガスを石油に換算し石油と合計した場合は382万B/Dに達する。
石油生産量を地域別にみると、最も多いのはロシアの86万B/Dであり、続いて米国が59万B/D、欧州18万B/Dである。BPは石油生産の4割近くをロシアに依存しておりExxonMobil, Shellに見られない特色である。一方天然ガスについては米国が全体の3割弱を占める22億cfdと最も多い。
(続く)
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