(注)本シリーズは「マイライブラリー」の下記URLで一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/ExxonShellBp.html
I.ExxonMobilの業績(上)
ExxonMobil、Shell及びBPは三大国際石油会社(International Oil Company, IOC)或いはスーパー・メジャーと呼ばれているが、これら三社の昨年第四四半期及び通年業績が相次いでホームページに公表された。
本稿では三社の公表資料の中から2010年度の売上高、利益、石油及び天然ガスの生産量並びに設備投資額を取り上げて分析するとともに、過去5年間(2006~2010年)の各社の業績の推移を見ることとする。そしてシリーズの最後に三社を横並び比較し、その優劣を検討して見る。
最初に取り上げるのはExxonMobil社である。(詳細は下記同社HPを参照)
http://www.businesswire.com/portal/site/exxonmobil/index.jsp?ndmViewId=news_view&ndmConfigId=1001106&newsId=20110131006211&newsLang=en
1.2010年の売上・利益・投資及び生産量
(1)売上高
ExxonMobilの2010年1-12月の売上高は383,221百万ドルであり、前年度の売上310,586百万ドルに比べ23%の増収であった。これは2009年が前年の原油価格暴落とリーマンショックの余波を受け2008年比で大幅に売上が落ち込んだことに対する反動と言える。後述するように世界景気が回復基調を示したことにより石油及び天然ガスの生産量は2009年を13%上回っており、また原油価格も回復したため23%の増収となったものである。
(2)利益(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-93aExxon1.pdf )
利益は30,460百万ドルであった。これは前年度(19,280百万ドル)の1.6倍であり、売上のアップ以上の結果となった。この利益額は日本円で2.5兆円程度に達し、国際石油企業の強靭さを見せつけたと言えよう。
利益の内訳を上流部門(原油生産)と下流部門(石油精製販売)に分け、さらにそれぞれを米国内と米国外に分けて比較すると、まず最も利益が多かったのは米国外の上流部門であり、全体の利益の65%の19,825百万ドルを稼ぎ出している。これに次ぐのが米国内の上流部門で利益額は全体の14%、4,272百万ドルであった。これらを合計すると同社の利益の実に8割は上流部門によるものであることがわかる。
これに対し下流部門はExxonMobil全体の利益の12%を占めるにすぎず、米国外で2,797百万ドル、米国内では770百万ドルの利益を計上している。同社は海外の上流部門の利益に依存していると言える。
(3)設備投資
2010年度の設備投資総額は32,226百万ドルであり、同社は利益額(上述)を上回る積極的な投資を行っている。投資を上流部門、下流部門、化学部門およびその他に分けると、上流部門には全体の85%を占める27,319百万ドルが配分されている。利益の源泉である上流部門に重点的な投資が行われていることがわかる。
(4)石油・天然ガスの生産量
2010年の石油と天然ガスの生産量は石油が一日当たり平均242万バレル(以下B/D)であり、天然ガスは日産121億立法フィート(以下cfd)である。石油の生産量はイラクに匹敵する生産量であり、天然ガスはイランよりやや少ない程度の生産量である。天然ガスを石油に換算し石油と合計した場合は445万B/Dとなるが、この生産量はメキシコ或いはノルウェーを上回る規模である。
石油生産量を地域別にみると、最も多いのはアフリカの63万B/Dであり、続いてアジア・大洋州60万B/D、米国41万B/D、欧州34万B/Dである。また天然ガスについてはアジア・大洋州が最も多く(49億cfd)、次いで欧州(38億cfd)であり、この両地域で全生産量の4分の3を占めている。
(続く)
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