(石油と天然ガスは一体として考えるべきである!)
はじめに
BPの「BP Statistical Report of World Energy 2012」をもとに本シリーズで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。
石油と天然ガスは常温常圧の状態で前者が液体、後者が気体の違いはあるものの本来は同じ炭化水素エネルギーである(因みに固体の炭化水素エネルギーが石炭である)。石油は運搬・貯蔵等の利便性に優れ、また燃料や石油化学原料など多様な用途があるため従来から広く利用されてきた。
これに対して天然ガスは密閉状態で運搬・貯蔵しなければならず(密閉しなければ大気中に放散してしまうため)これまで生産地から消費地までのパイプラインが必要であった。しかもガス成分がメタン単体であるため用途はほぼ燃料用に限られていた。しかし最近ではガスを極低温で液化するLNGの製法が普及した結果、遠く離れた消費地に大量のガスを供給するLNG貿易が確立しつつある。LNG貿易は液化・運搬・再ガス化設備などの初期投資が巨額になることが難点であるが、世界的なエネルギー消費の増大により石油の代替エネルギーとして需要が拡大している。さらに天然ガスは石油に比較してCO2の発生量が少ないため環境問題の観点からも根強い需要がある。
このように見ると現在では石油と天然ガスを一体として取り扱う傾向が強くなっている。本稿で石油と天然ガスを合わせて論じるのはそのためである。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)として計算した。
1.世界の石油と天然ガスの埋蔵量
(2011年末の石油・天然ガスの合計可採埋蔵量は3兆バレル!)
(1)2011年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量
2011年末の世界の石油埋蔵量は1兆6,526億バレルであるが、これに対して天然ガスの埋蔵量は208兆立方メートル(以下㎥)であり、これは石油に換算すると1兆3,111億バレルである。石油の埋蔵量は天然ガスよりやや多く、両者を合わせた合計埋蔵量は2兆9,637億バレルとなる。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-1-G01.pdf参照)
これを地域別に見ると、中東は1兆2,984億バレルであり、世界全体の埋蔵量の44%を占めている。続く欧州・ユーラシアは中東の2分の1の6,360億バレル(21%)であり、この両地域で世界の埋蔵量の65%を占めている。その他の地域については中南米3,731億バレル(13%)、北米2,856億バレル(10%)、アフリカ2,238億バレル(7%)、アジア・大洋州1,468億バレル(5%)である。北米は昨年のシェアが5%であり6地域の中で最も少なかったが、今年はアフリカ、アジア・大洋州を上回っている。これはシェールガス、シェールオイルなどいわゆる「非在来型」と呼ばれ、これまで可採埋蔵量に算入されていなかった天然ガス或いは石油が加わったためである。
本シリーズの石油篇及び天然ガス篇で触れたそれぞれの地域別埋蔵量と比較すると、中東は石油埋蔵量が全世界の48%を占めているが、天然ガスのそれは38%である。これに対して欧州・ユーラシアの石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ全世界の9%及び38%であり、天然ガスが石油の4倍で中東とは逆の様相を示している。
(続く)
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