石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇3 埋蔵量(3)

2012-08-10 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0236BpOil+Gas2012.pdf

 

(過去20年の埋蔵量の伸び率は年平均2.4%、2010年は前年比+6%の高度成長!)
(3)1990年~2011年までの合計可採埋蔵量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-1-G02.pdf参照)
 1990年末の世界の石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ1兆275億バレル、126兆㎥(石油換算7,904億バレル)であり、合計埋蔵量は1兆8,179億バレルであった。因みに両者の構成比率は石油57%、天然ガス43%である(この比率は2011年まで殆ど変っていない)。

 1990年代を通じて埋蔵量は年率1%前後で漸増し1997年には2兆バレルを突破した。1999年には対前年比8.2%と大幅に増加し、その後数年間も3%前後の高い成長率を示し2003年に2.4兆バレルに達した後、暫くは成長率が年1%以下の微増にとどまった。しかし2007年以降は再び2%以上の高い成長率となり、特に2010年、2011年は対前年比でそれぞれ+5.9%、+3.8%であった。この結果2011年末の埋蔵量は石油1兆6,526億バレル、天然ガス208兆㎥(石油換算1兆3,111億バレル)の合計2兆9,637億バレルとなっている。

 1990年から昨年までの過去20数年間の平均成長率は2.4%である。次項(可採年数)に述べるとおり埋蔵量を生産量で割った可採年数は2000年以降むしろ上向き傾向にある。石油及び天然ガスの探鉱・開発活動が活発に行われ、生産量をしのぐ埋蔵量の追加があったことを示している。

 これは何と言っても今世紀に入り石油・天然ガスの価格が大幅に上昇したことにより、国営企業・民間企業のいずれを問わず石油・天然ガス上流部門に大きなインセンティブが働き、深海、極地などでの探鉱開発が活発になり、或いは米国のシェールガスに見られるように新しい開発生産技術が開花したことが大きな理由であろう。

(石油と天然ガスを合わせた可採年数は58年!)
(4)可採年数の推移(1980~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-1-G03.pdf 参照)
 2011年末の石油と天然ガス全体の可採年数は58年である。石油の可採年数54年よりも長く、天然ガスの64年よりは短い。1980年以降2011年末までの推移をみると、1980年の可採年数は37年であった。この年の石油の可採年数は30年であり天然ガスの56年のほぼ2分の1であった。当時は石油の埋蔵量が天然ガスの1.3倍であったが、生産量については石油が天然ガスの2.5程度であったため石油の可採年数が低く、石油と天然ガスを合わせた可採年数も石油に近い数値となったのである。

 その後、1980年代は石油、天然ガスの埋蔵量は共に増加したが、生産に関しては天然ガスが伸びる一方(天然ガス篇2-(3)参照)石油は停滞したため(石油篇2-(3)参照)、石油の可採年数が伸び、天然ガスのそれは停滞した。1990年代は石油、天然ガス共に可採年数は横這いとなり、両者を平均した可採年数も50年前後で推移した。2000年代前半の可採年数は2002年に56年のピークを記録した後、2008年には一旦51年に下がった。しかしそれ以降は再び可採年数は増加する傾向にあり、2011年末の可採年数は石油が54年、天然ガスは64年であり、石油と天然ガスを合わせた平均可採年数は56年となっている。

 上述の通り1980年末の石油と天然ガスの可採年数はそれぞれ30年、56年であり、両者の間には26年の差があったが、2011年末の両者の差は10年に縮小している。このことは石油と天然ガスの探鉱・開発及び生産のペースがほぼ同じであることを意味している。

(石油+天然ガス篇 埋蔵量完)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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