石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュースのもう一つの視点)イランとの独自外交に賭ける日本とオマーン(上)

2013-11-20 | その他

(注)本レポート上下は「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0288JapanOmanIranDiplomacy.pdf

 

 筆者は10年近くにわたりブログ「アラビア半島定点観測」および「内外の石油情報を読み解く」を続けている。ブログでは毎日GCC各国のインターネット版新聞(英文)を中心に内外の中東・石油関連の情報を収集し、重要な記事を紹介している。その多くは各国或いは各企業特有の情報であり他のニュースとの関連性は薄いが、時折異なる国・企業の複数のニュースに相互の関連性をうかがわせるものがある。ここでは「ニュースのもう一つの視点」というタイトルで関連記事をまとめて解説を試みる。取り上げるニュースは国際政治・経済の大きな潮流の中の小さな渦であり、潮流全体を変える力を持っていたかどうかは将来明らかになる代物であろう。

 今回は核開発疑惑と経済制裁をめぐり欧米の大国及び湾岸GCC諸国がイランと対峙する陰で日本とオマーンが独自の外交ルートで解決策を見出そうとしていることに注目した。まず最近のニュースをいくつか列挙してみよう。

・ カブース・オマーン国王、イランを訪問。就任直後のロウハニ大統領と会談。(8/25付けOman Daily Observer )
・ オマーンとイラン、今後25年間のガス供給契約締結。(8/28付けKuwait Times )
・ オマーン国防相イラン訪問、防衛問題で意見交換。(9/18付けOman Daily Observer )
・ 岸田外相、イランを訪問、ロウハニ大統領他と会談。(11/8-13, 外務省ホームページ )
・ 宮川外務省中東アフリカ局長、オマーンで同国外務省Secretary Generalバドル・ブサイディ氏と会談(11/15付けOman Daily Observer )

カブース国王、イランを訪問
 8月下旬、オマーンのカブース国王がイランを訪問、ハメネイ最高指導者及び就任早々のロウハニ大統領と会談した。新大統領が最初に迎えた外国元首であるが、それよりも世界が驚いたのは殆ど外国を訪問せずGCCサミットですら代理を送り込むことの多いカブース国王が自らテヘランに乗り込んだことである。ホルムズ海峡を挟むイランとオマーンは古くから交流があり、アハマドネジャド前政権時代も人道問題でオマーンが欧米との仲介役を果たすなど地道な外交が継続している。今回穏健派と目されるロウハニ大統領が誕生したことでカブース国王は新たな両国関係を築くチャンスと考えたに違いない。
 
 カブース国王訪問時に両国の間で軍事、文化、経済各分野に関する協定が取り交わされた。そして9月には国防相がイランを訪問、軍事協力について協議し、また情報相もメディア及び文化協力についてイラン側と話し合っている 。さらに両国の間で2015年から25年間にわたりイラン産天然ガスを供給する覚書も締結された。

岸田外相、イランを訪問
 一方日本からは11月初め岸田外相がイランを訪問している。ジュネーブでイランとEU3 + 3の核問題協議が行われたまさにその時であり、岸田外相は大統領、国会議長と会談、さらにジュネーブから帰国早々のザリーフ外相とも会談した。会談では日本イランの二国間関係のほか焦点の核協議で日本が果たすことのできる役割について意見交換がされた(詳細は外務省ホームページ参照)。

 岸田外相のイラン訪問後まもなく宮川外務省中東アフリカ局長がオマーンを訪れ、同国外務省Secretary GeneralのBadr氏と会談している。詳細は不明であるが、イラン核問題について日本・オマーン両国の協力の可能性を探り、さらにホルムズ海峡を共有するイランとオマーンがどのような話し合いを行っているかを確認したものと見られる。イスラエルによるイラン核施設の単独爆撃がささやかれる中でホルムズ海峡の安全航行問題が日本の重大懸念事項であることは改めて言うまでもない。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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