(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf
5.世界の石油精製能力
(アジア・大洋州に世界の精製能力の3分の1が集中!)
(1) 地域別精製能力
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G01.pdf 参照)
2013年の世界の石油精製能力は日量9,493万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が3,128万B/Dと最も多く全体の33%を占め、次に多いのが欧州・ユーラシアの2,389万B/D(25%)及び北米の2,139万B/D(23%)であった。これら3地域で世界の精製能力の8割を占めている。その他の地域の精製能力と世界に占める割合は、中東(882万B/D、9%)、中南米(603万B/D、6%)、アフリカ(352万B/D、4%)である。
後述する通りアジア・大洋州の精製能力は1990年代後半に北米を追い抜き、さらに2000年代後半には欧州・ユーラシア地域を抜いて世界最大規模となったのであるが今後この傾向が定着するものと思われる。
地域別の精製能力と消費量(本稿3(1)参照)を比較するとアジア・大洋州、中東及びアフリカは共に世界全体に占めるシェアが同じである(アジア・大洋州:33%、中東9%、アフリカ4%)。しかし北米は精製能力シェア23%に対して消費量シェアは26%と消費量シェアの方が高く、中南米も同様に6%対8%と消費量シェアが高い。これに対して欧州・ユーラシア地域は精製能力シェア25%、消費量シェア20%であり、精製能力のシェアの方が高い。
原油は消費地でガソリン、ナフサ、灯油、重油などに精製され消費されるのが通常である(消費地精製主義)。従って地域内では消費量と精製量はバランスすると考えられる。アジア・大洋州、中東、アフリカでそれぞれのシェアが同じであることがそれを示している。それにもかかわらず欧州・ユーラシアと北米(そして中南米)それぞれのバランスに違いがあるのは、石油消費の先進地である欧州・ユーラシアが1970年代に精製能力を急激に拡張した結果、その後の石油消費の鈍化により過剰設備を抱えてしまったことを意味する。これに対して北米では不足する石油製品を西欧諸国から輸入することにより域内の精製能力を適正水準に維持し利潤を確保してきたと考えられる。
アジア・大洋州で精製能力と消費量がバランスしているのは発展途上国が多く、増大する石油の消費と精製設備の新増設が並行しているためであろう。但し後述するように(「製油所稼働率」の項参照)消費と精製能力のバランスは同じアジア地域においても日本が過剰設備を抱える一方、東南アジアでは慢性的な精製能力不足であるように国によって事情が大きく異なる。
(続く)
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