石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇7 生産量(3)

2014-08-06 | その他

(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)
(4)主な国の生産量の推移(2004~2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf 参照)
 2013年の天然ガス生産量が世界1,2位のロシア、米国、同4位、5位のカタール、カナダに英国(世界14位)及びオーストラリア(同19位)を加えた6か国について過去10年間(2004~2013年)の生産量の推移を追ってみる。

  ロシアの2004年の生産量は5,733億㎥でありその後徐々に増加し、2008年には6千億㎥を突破した。2009年に一時急減したものの2011年以降は6千億㎥台を前後の生産量を維持している。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショックで急減、その後持ち直したものの現在も冷え込んでいることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。最近ではウクライナ問題で西欧諸国は対ロ経済制裁を強化しつつあるが、これが国内ガス田の開発或いは西欧向け輸出にどのような影響を及ぼすか今後が注目される。このような状況に対してロシアは中国と天然ガス輸出契約を締結し、或いは極東でLNG輸出基地の増強に取り組むなど極東アジアへの輸出に力を入れている。

 米国の場合、天然ガス生産量は2004年の5,264億㎥から2005年には5,111億㎥に減少し1位のロシアとの差が拡大する傾向であった。しかし2006年以降は増勢に転じ2009年にはロシアを追い抜き世界一の天然ガス生産国になっている。2010年には6千億㎥を突破、2013年の生産量は6,876億㎥を記録、2003年に比較すると3割以上増加しており、同じ期間のロシアの増加が5%に過ぎなかったことと顕著な差がある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由である。天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後もこの2カ国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。

 カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、2006年以降、生産量の減少に歯止めがかからず2013年の生産量は1,548億㎥となりイラン、カタールに次ぐ世界5位に転落している。同国の生産量の減少は同時期の米国の生産量増加と軌を一にしたものである。即ち同国は生産したガスの多くをパイプライン網により米国に輸出してきたが、上記のとおり米国では天然ガスの生産が急増し自給率が向上した結果カナダからの輸入が減少しているのである。但しカナダは豊富な埋蔵量を有しており十分な生産余力があると考えられるため、今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。

 カナダと同様生産量が長期下落傾向にあるのが英国である。同国の2004年の生産量は1,058億㎥であったが、2013年には半分近い571億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、現在ではカタールからLNGを輸入しているほどである。

 これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2004年の生産量は392億㎥に過ぎなかったが、2013年には1,585億㎥に達し、わずかではあるがカナダを追い抜いている。カタールの場合殆どをLNGとして輸出している。LNG輸出には大規模な液化及び出荷設備が必要であるが、同国は積極的な設備投資を展開、年間77百万トンの輸出体制を整えており、これが生産急増の要因である。

 オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2004年の生産量はカタールとほぼ同じ353億㎥であったが、2009年には423億㎥まで拡大し、その後現在まで400億㎥台の生産を続けている。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量は飛躍的に増加するものと考えられる。

(天然ガス篇生産量 完)

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