(アジア・大洋州の天然ガス消費量は1970年の44倍に激増!)
(3)地域別消費量の推移(1970-2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G02.pdf 参照)
1970年に9,800億㎥であった天然ガスの消費量はその後1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。2013年の消費量は3.35兆㎥であり、1970年から2013年までの42年間で消費量が前年度を下回ったのは2009年の1回のみで毎年増加し続けており、43年間の増加率は3.4倍に達している。
石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGのいずれにしろ生産国と消費国がほぼ直結しており、また一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。
欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6つの地域の消費量の推移を見ると地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス消費量の66%は北米、30%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の96%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか4%にすぎなかった。
その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い越している。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を欧州・ユーラシアが占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2013年は1兆647億㎥と横ばい状態である。このため欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2013年には32%となっている。
これに対してアジア・大洋州の場合、1970年の消費量は146億㎥であり中南米(181億㎥)より少なかったが、その後アジア・大洋州の消費量は急増し、1980年には720億㎥と中南米、中東両地域に2倍以上の差をつけている。この増加傾向はさらに加速し、2000年には2,900億㎥、全世界のシェアの12%を占めるに至った。そして2013年は6,390億㎥でシェアも19%に上昇している。2013年の消費量は1970年の44倍であり、2000年と比べても2倍以上増加している。1970年と2013年の増加率では北米が1.4倍、欧州・ユーラシアが3.7倍であることと比較してアジア・大洋州の伸びが如何に大きいかがわかる。
北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。
(続く)
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