石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇12 消費量(5)

2014-08-14 | その他

(ほぼ同量の米国と中国の需給ギャップ、シェールガス革命のあおりを受けるカナダ!)
(5)主要5カ国の需給ギャップ(自給率)
 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界6位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界4位である。そして英国は生産量が世界14位であり、消費量は世界10位である。ここではこれら5カ国(米国、ロシア、カナダ、中国及び英国)について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)と各国の天然ガス自給率を検証してみる。

(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G04.pdf 参照)
 5カ国のうちで生産量が消費量を上回っているのはロシアとカナダの2カ国だけであり、その他の3カ国(米国、中国、英国)は消費量が生産量を上回っている。つまり前2カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。

 5カ国の過去10年間(2004~2013年)の需給ギャップを見ると、2004年のロシアは生産量5,733㎥に対し消費量は3,893㎥であり、差し引き1,840億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割ったが、その後は再び1,800億㎥台に戻り2013年の需給ギャップは1,913億㎥と過去最大の規模になっている。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後の世界景気の回復と新たな国内ガス田の開発及び極東向けのLNG輸出開始により国内消費の伸びを上回る生産が行われていることを示している。

 カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に需給ギャップが年々小さくなっている。カナダの2004年の生産量は1,837億㎥、消費量は951億㎥で差し引き886億㎥の余剰生産であったが、余剰生産量は毎年減少し続け2013年には513億㎥になっている。2013年の国内消費量は1,035億㎥であったから10年間の消費の増加は84億㎥に過ぎない。従って余剰生産量の減少は輸出量の減少を意味しているのである。カナダの場合天然ガスの輸出は米国向けに限定されるため輸出量の減少は即ち対米輸出が減ったためである。それは次に述べるとおりとりもなおさずシェールガス革命により米国の生産量が急増したためである。

 2004年に米国は1,079億㎥の消費超過であった(生産5,264億㎥、消費6,344億㎥)。2007年まではほぼこのような状況が続いたが、2008年以降はギャップが急速に小さくなり2011年以降の需給ギャップは500億㎥以下に縮まっている。2013年のギャップは496億㎥であり中国とほぼ同じ水準まで改善している。シェールガスによる天然ガスの供給増は目を見張るものがある。

 中国の場合、2004年は生産量415億㎥、消費量397億㎥で天然ガスの完全自給国であった。しかし2007年には消費量が生産量を上回るようになり、需給ギャップは年々大きくなっている。2013年は生産量1,171億㎥に対し消費量は1,616㎥に達し、446億㎥が輸入されたことになる。この傾向は今後も続くと思われ、今年の需給ギャップは米国より悪化することは間違いないであろう。

 英国はかつて北海油田の随伴ガスにより国内の消費量を賄い2004年には84億㎥の輸出余力すらあったが、年々輸出余力は乏しくなり2008年には純輸入国に転落している。インドは2004年では既に26億㎥の生産不足で天然ガスの輸入国であったが輸入必要量は年々増大している。2013年の英国とインドの需給ギャップはほぼ同量で英国160億㎥、インド178億㎥となっている。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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