(注)本レポートはブログ「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
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11月27日、ウィーンで第166回OPEC総会が開かれた。総会直前の原油価格は前回総会(6月)時のバレル当たり100ドルから3割以上値下がりしており、石油収入の減少に音を上げた一部加盟国からは協調減産により3千万B/Dの生産枠を引き下げ原油価格の回復を求める声が上がった。
石油の需給環境を見ると、供給面ではリビア、イラクなどMENA産油国の政情不安、ロシア/ウクライナ問題或いはイラン核開発問題に対する欧米の経済制裁等による供給不安がささやかれ、一方では米国のシェール・オイルの大増産により供給不足の問題は無いとする見方もある。他方、需要面では景気回復の兆しが見えない欧州、中国など石油の需給が遅々として回復していない。このように石油をめぐる需給関係はかつてない不透明な状態にある。このため今回のOPEC総会の動向について世界中の目が集まった。NHKのニュースでも度々取り上げられるなど日本のメディアもこれまでになく注目したようである。
総会では結局3千万B/Dの生産枠を現状維持することが決まった。その結果、総会翌日の原油価格は70ドルを割り5年ぶりの安値となった。日本国内の論調としてはOPECの減産即ち原油価格の反転と言う図式が取りあえず回避され、むしろ一段の安値を歓迎する見方が大勢を占めた(それでも円高基調が原油の輸入価格高騰につながる現実は変わらないのであるが)。
しかし筆者はOPECの減産が価格の高騰につながるという仮説には懐疑的である。仮にOPECが減産すれば非OPEC産油国、特に米国のシェール・オイル開発業者は更なる増産に乗り出すであろう。サウジアラビアと並ぶ非OPECの大産油国ロシアも漁夫の利を狙う可能性が高い。筆者が何よりも懐疑的なのはそもそも現在のOPECは協調減産できるのか、と言う疑問である。これらの問題については本レポートの最後に触れるが、まずOPEC総会前後の動きを順を追って検証してみたい。
(続く)
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