(注)本レポートはブログ「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0332OpecMeetingDec2014.pdf
3.総会当日:サウジがベネズエラを押し切る
11月27日、オーストリアのウィーンで第166回OPEC総会が開催された。先ず議長のAl-Ahirishリビア副首相から総括報告があり、来年の世界の石油需要は110万B/D増の9,230万B/Dになるとの見通しが示された。またこれに対する非OPECの供給量は140万B/D増の5,730万で米国の増加分が多くを占めると説明した。またOPEC原油のバスケット価格は6月の105-110ドル/バレルから30ドル以上値下がりしているが、価格の下落はファンダメンタルなものではなく、弱い需要、強いドル及び世界経済の不透明さによるものであるとの分析が示された 。
この議長報告に基づきその後5時間近く議論が続けられたが 、最近では珍しく長時間の会議であった。生産量の現状維持を主張するサウジアラビア始め湾岸産油国に対し生産量削減により原油価格の回復を目指すベネズエラなど非湾岸産油国との間の綱引きがあったものと思われる。閉会後、コミュニケが発表され3千万B/Dの生産枠を維持することが明らかになった。この生産枠は3年前の2011年12月の総会で決められたものであるが、これは加盟12カ国全体の生産枠であり国別割り当ては決められていない。このことからわかるとおり現在のOPECは厳密な意味で生産者カルテルの体をなしておらず、OPECは今や機能不全の状態であると一部でささやかれているのもあながち的外れでもない(この問題については減産・価格問題と共に本レポートの最後で触れる)。
なお、コミュニケにはこの生産量維持の他、次回総会を来年6月5日にウィーンで開催すること、及びバドリ現事務局長の任期を来年7月からさらに年末まで延長することも明記されている。事務局長の改選問題にはサウジアラビア、イラク、イラン3カ国の複雑な駆け引きがあり、現局長の任期は再三延期されているのである(紙数の関係で詳細は省略するが詳しくは前回、前々回の総会レポートを参照願いたい )。
会議はナイミ・サウジ石油相がラミレス・ベネズエラ外相に圧勝した形である。それは会議を終えて記者団に囲まれた両大臣の対応にはっきりと表れた。ナイミ石油相は満面に笑みをたたえ「It was a great decision(偉大な決定であった)」と述べたのに対し 、ラミレス外相は明らかに怒りの表情を含み会議の結論についてのコメントを拒否したうえで、「米国の生産姿勢は最悪であり、シェール・オイルは気候変動及び環境の観点から見て災難(disaster)である」と八つ当たり気味で会場を後にしたのである。
この決定を受けて原油相場は更に下げ足を早めた。最近の相場は米国WTI原油がバレル当たり65.84ドル、英国Brent原油は同69.07ドルで共に70ドルを割り込んでいる。産油国の財政均衡である1バレル当たりの原油価格は、UAEが74ドル、サウジアラビアは86ドルと言われ、健全財政を誇る湾岸産油国ですら既に採算点を割り込んでいる。イラク、イランに至っては均点がそれぞれ109ドル及び130ドルとされ、両国の財政は破たんへの道を突き進んでいるのである 。
(続く)
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