(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0342ImfWeoApr2015.pdf
(カタールの一人当たりGDPは日本の2倍以上!)
4.2015年の一人当たりGDP
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-B-2-10.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-B-2-03.pdf参照)
日本の一人当たりGDPは34,414ドル、米国は58,625ドル、ドイツは43,074ドルである。米国は日本の1.7倍、ドイツの1.4倍である。また韓国は29,683ドルであり、米国の2分の1、日本の9割弱である。BRICsと呼ばれ有力新興国であるロシア、中国、インドはそれぞれ9,572ドル、8,154ドル、1,942ドルであり、ロシア、中国は未だ1万ドルに達していない。インドは今年、来年と7%の高い成長率が見込まれるが、一人当たりGDPはまだまだ低く、日本の約20分の1、米国の30分の1に過ぎない。
MENA諸国の一人当たりGDPは国家間で大きな格差がある。LNGの輸出で潤うカタールの一人当たりGDPは79,501ドル、米国をしのぎ日本の2倍以上で世界のトップクラスである。MENAで一人当たりGDPが1万ドルを超える国はカタールのほかUAE(39,787ドル)、イスラエル(36,388ドル)、クウェイト(35,235ドル)、バハレーン(25,633ドル)、サウジアラビア(22,043ドル)、オマーン(15,796ドル)、レバノン(12,422ドル)およびトルコ(10,067ドル)の9か国である。
上位7カ国のうちイスラエルを除く6か国はGCC諸国であり、石油あるいは天然ガスの恩恵を受けていることがわかる。特に6か国の中で人口がバハレーンに次いで少ないカタールは他を大きく引き離している。GCC6か国の平均一人当たりGDPは36,000ドルであり日本を上回っている。
しかし同じ産油国でありながらリビア、イラク、イラン、アルジェリアなどは一人当たりGDPが5千ドル前後であり、GCCと大きな格差がある。MENAで最も貧しいのはイエメンであり同国の一人当たりGDP(1,592ドル)は実にカタールの50分の1にとどまっている。
なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口、特にGCC諸国のそれについては注意すべき点がある。例えばカタールの人口は約200万人とされており、同国の一人当たりGDP79,501ドルは同国のGDP(1,970億ドル。前項参照)をその人数で割ったものである。しかし同国人口のうち80%~90%はインドなど貧しい国からの出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は40万人足らずと言われる。通常、統計上の人口は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には表していないと言える。このことは同じように外国人比率が高いUAE或いはクウェイトについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。
このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、実態的に言えばカタール、UAE、クウェイトの一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界最高レベルであることは間違いないであろう。
(続く)
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