石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇19)

2015-08-13 | その他

(4) パイプラインによる輸出入(2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G05.pdf 参照)
 2014年のパイプラインによる天然ガスの主な国の輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2014年に米国はカナダから746億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて423億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。この他国境をまたがるパイプラインが発達しているヨーロッパでは輸入した天然ガスを再輸出するケースも少なくない。本項で述べる各国の天然ガス輸出量或いは輸入量は輸出入を相殺したNETの数量である。

(世界のパイプライン貿易の4分の1を支配するロシア!)
(4-1)国別輸出量
 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は1,632億㎥、世界の総輸出量の25%を占めている。ロシアの輸出先は東ヨーロッパ及び西ヨーロッパ諸国であるが、ロシアとウクライナの天然ガス価格或いは領土を巡る紛争は西欧諸国にとってエネルギー安全保障上の問題となっている。

 第2位のノルウェーの輸出量は1,011億㎥(シェア15%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(528億㎥)、トルクメニスタン(416億㎥)、アルジェリア(235億㎥)であり、カナダの輸出先は米国、アルジェリアは地中海の海底パイプラインにより西ヨーロッパ諸国に輸出している。なお冒頭に述べたようにカナダは米国と相互に輸出入を行っており、Grossの輸出量は746億㎥である。

 上記5カ国による輸出量は全世界の6割弱を占めている。従来パイプラインによる輸出は北米大陸とヨーロッパ大陸が主流であったが、最近ではトルクメニスタンから中国への輸出、或いはドルフィン・パイプラインによるカタールからUAEへの輸出など北米、ヨーロッパ以外の地域でもパイプラインによる天然ガス貿易が拡大しつつあり、カタールのパイプラインによる輸出量は201億㎥に達し、アルジェリア、オランダに次いで世界第7位である。

(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)
(4-2)国別輸入量
 2014年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはドイツで850億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(469億㎥)、トルコ(411億㎥)、米国(324億㎥)、中国(313億㎥)、フランス(274億㎥)、ベルギー(268億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはアルジェリア及びロシアから輸入している。ウクライナを巡る対ロシア経済制裁問題では同国からの天然ガスの輸入が西欧各国の足並みの乱れの要因となっている。英国はかつて天然ガスの輸出国であったが最近では純輸入国に転落しており、パイプラインによるほかカタールからのLNG輸入にも踏み切っている。なお米国の輸入量はカナダとの相互貿易を差し引いたNETの数量である。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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