石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇17)

2015-08-11 | その他

(3) LNG貿易(続き)
(2011年以降常に全世界のLNG輸出の3割以上を占めるカタール!)
(3-2) 2006年~2014年の国別輸出量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G03.pdf 参照)
 2006年に2,111億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、特に2010年及び2011年の2カ年はそれぞれ前年比24%及び10%と言う二桁台の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年に初めて前年比で減少し、その後も伸び率は低い水準にとどまっている。2014年のLNGの輸出総量は3,330億㎥であった。これは2006年の1.6倍であり、この間の年平均成長率は6.1%を記録している。

 国別で見ると2006年当時はカタール、インドネシア及びマレーシア3カ国の輸出量は300億㎥前後で全世界に占める割合は14%とほぼ同じであったが、その後カタールの輸出量が急伸し、2014年のカタールの輸出シェアは31%と全世界の3割を占め、2位のマレーシアあるいはオーストラリアの9.5%を大きく引き離している。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。

 この時期、米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが 、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況である。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し日本の輸入量は落ち着きを見せ始めており(次項参照)、一方ロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、オーストラリアではLNG輸出基地が建設中であり、さらに米国でも輸出基地の建設が具体化するなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。このためカタールはヨーロッパの市場開拓を積極的に行っている(6-1「カタールの輸出入の動向」で詳述)。

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量の減少に歯止めがかからず2011年の386億㎥をピークに2014年は217億㎥とわずか3年で4割近く輸出が減っている。同国の天然ガスは生産量が頭打ちの傾向にある一方、国内の消費量は増加している。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは必定であり、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したように(その結果OPECを脱退している)、いずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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