(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0356IndonesiaOpecRejoin.pdf
2.インドネシアの石油生産等の推移と現状
インドネシアの昨年の(1)石油埋蔵量、(2)生産量、(3)消費量並びに1965年から2014年までの(4)生産、消費および精製能力の推移による需給ギャップを見ると以下の通りである。なおデータは国際石油企業BP社の「BP Statistical Review of World Energy 2015」を利用している 。
(1)2014年末の石油埋蔵量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-01.pdf参照)
2014年末のインドネシアの石油埋蔵量は37億バレルである。これは世界第27位に相当するが、1位ベネズエラ(2,983億バレル)、2位サウジアラビア(2,670億バレル)の70-80分の1程度にすぎず、OPEC加盟国の中で最も少ないエクアドル(80億バレル、世界19位)の半分以下である。
また埋蔵量(Reserves)をその年の生産量(Production)で割った可採年数(R/P)はわずか11.9年であり、これは米国あるいは中国と同程度で、OPEC加盟国の大半が50年以上(ベネズエラ、イラク等は100年以上)であることに比べて極めて低い。
このことはインドネシアに原油を増産する余力が乏しく今後石油の自給率がますます低下することを示している。(下記4項参照)
(2)2014年の原油生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-02.pdf参照)
インドネシアの昨年の石油生産量は85万B/Dであった。これは世界22位であり決して少ないとは言えない。OPECの加盟国と比べてもサウジアラビアの1,150万B/Dには遠く及ばないものの、エクアドル(56万B/D)あるいはリビア(50万B/D)を上回る生産量である。
(3)2014年の石油消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-03.pdf参照)
2億人近い人口を抱えるインドネシアの昨年の石油消費量は164万B/Dであり、これはフランス、英国を上回り世界13位の規模である。前項の生産量と比較してわかる通りインドネシアは生産量の2倍の石油を消費している。OPEC12か国の中で消費量がインドネシアを上回るのはサウジアラビアとイランの2か国だけである。
(4)1965~2014年の需給ギャップ
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-02.pdf参照)
1965年から2014年までの生産量と消費量並びに精製能力の推移を見ると、1965年は消費量12万B/Dに対し生産量は4倍の49万B/Dあり、また精製能力も2倍の24万B/Dを有していた。この時、同国は原油の輸出余力が40万B/D近くあり、さらに石油製品の輸出余力もあったことを示している。
その後インドネシアの原油生産量は急増し1980年代には160万B/D台に達し、1990年代末でも150万B/D以上の原油を生産していた。その間に国内消費量も急激に増加したが、輸出余力は維持しており、精製能力も国内消費の増加に対応して増強されてきた。しかし消費量と生産量あるいは精製能力のギャップは年々縮小し、1990年代後半にはついに消費量が精製能力を上回り、石油製品を輸入せざるを得ない状況が生まれた。
さらに2000年代に入ると生産量が激減する一方、消費量は従来と同じペースで拡大したため、2000年代前半にはついに輸入国に転落したのである。BP統計ではその分岐点は2003年であり、同年の生産量は118万B/D、消費量は122万B/Dであった。その後需給ギャップは年々広がり上記にも触れた通り昨年は生産量85万B/Dに対して消費量はほぼ2倍の164万B/Dに達している。単純計算ではインドネシアの石油自給率は50%と言うことになる。精製能力は110万B/Dにとどまり消費量より50万B/D少ない。
(続く)
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