石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(21)

2022-06-09 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年6月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

21. さまよう3羽の小鳥(2)

 

「マフィア」は饒舌であった。先の見えない不安感を忘れるために彼はひたすら喋りまくった。生まれ故郷ウクライナの農村での貧しかった時代。ソビエト連邦の崩壊をきっかけに新天地を求めてイスラエルに移住した一家。移住先で与えられた荒野の開拓地での父母の奮闘。一族の期待を背に空軍に入隊し優秀なパイロットとして頭角を現したこと。今回任務を完遂したことで無事帰還すれば名誉の勲章と昇格が待ち受けているに違いないこと等々-----

マフィアは「無事帰還すれば----」と言うと急に黙りこくってしまった。

 

「アブダラー」は二人とは対照的に終始寡黙であった。イラン領空を脱した直後から体に不調を感じ始めていたのである。2週間ばかり前、高熱を出し入院していた姪を見舞いに姉の嫁ぎ先近くの病院を訪れた。その後彼自身も微熱を出したが、幸い寝込むほどのことはなかった。ただそのことは仲間に伏せていた。もし体の不調を訴えればメンバーからはずされたに違いない。彼は3人のパイロットの一人に選ばれた栄誉を失いたくなかった。

 

アラブのミズラフィム出身である「アブダラー」は「エリート」のようなアシュケナジム出身者たちとは陰に陽に差別されてきた。そのため彼の友人の中には過激組織ハマスに身を投じる者も少なくなかったが、彼自身はイスラエル国民として生きる道を選んだ。「人は国家を選べない以上、国家とともに生きる。」それが彼の信念であった。そして軍隊に志願し忠実に義務を果たした結果、今回国家的使命を帯びたパイロットに選ばれた。そのため何としても今回の任務をやり遂げたかったのである。

 

彼はまだ独身である。両親は既に亡くなっている。彼の身内は姉とその娘のルルの3人だけである。それだけに彼と姉との結びつきは強い。そして姪のルルは彼によくなついていた。

 

そんなルルが数週間前に高熱を出し、「叔父ちゃん!叔父ちゃん!」とうわ言を言っていると姉が伝えてきた。彼はその週末に急いで病院に駆け付けた。幸いにも熱は引いており、ベッドに起き上がった姪に彼は絵本を読み聞かせてやった。姪は彼の腕を抱え込みうれしそうに聞き入っていた。付き添いの姉が「ルル!そんなにくっ付いちゃ叔父さんに風邪が移っちゃうよ。」と注意したが彼女は抱え込んだ腕を離そうとしなかった。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

 

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石油と中東のニュース(6月9日)

2022-06-09 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・ウクライナ穀物輸出問題で露・トルコ両国外相が協議

・イラン、IAEAの核施設監視カメラを撤去。核協議に暗雲

・イエメン:UN特別代表、Taez市解放問題で現地入り

・トルコのシリア領内クルド人攻撃計画に米が懸念表明

・シリアのクルド人部隊SDF、米国支援を背にトルコ対抗を表明

・イランで列車脱線事故。21人死亡、47人負傷

・米国務長官とカタール外相、イラン問題等で意見交換

・ベネズエラ大統領、トルコ訪問

・ヨルダンとUAE、ハイテクベンチャー対象の1億ドルファンド設立

・自宅でライオン3匹飼育のサウジ男性に罰金8百万ドル、懲役10年の罪状

・サウジ自然保護区で90年ぶりにオリックスの子供誕生

 

 

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ロシア経済制裁追随でChevron除く4社は深傷:2022年1-3月期五大国際石油企業決算速報 (9)

2022-06-09 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0560OilMajor20221stQtr.pdf

 

III. 過去2年間の四半期業績推移

 ここでは2020年4ー6月期以降2022年1-3月期までの8四半期の業績推移を比較する。

 

(過去8期累積でbpは300億ドルの赤字!)

1.純利益の推移

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-62.pdf 参照)

 2020年4-6月期はコロナ禍の影響でShell▲181億ドル、bp▲168億ドルを筆頭に五社全てが巨額の損失を計上した。続く7-9月期もExxonMobil、bp、Chevronは赤字となり、10-12月期はExxonMobil、Shell及びChevronが赤字になるなど各社いずれも最悪の四半期決算が続いた。2021年に入ってようやく利益を計上できるまでに回復、同年の1-3月期、4-6月期及び10-12月期は5社全てが黒字を計上している。例えば10-12月期はShellが115億ドルの利益を確保、ExxonMobil89億ドル、TotalEnergies及びChevron両社50億ドル台、bpも23億ドルの利益を計上している。2022年1-3月期もbp以外の各社の業績は堅調であった。このような中でbpのみは業績が低迷しており、過去8期のうち4期は欠損である。その累損額は▲288億ドルに達し、5社の中で唯一累積損益がマイナスになっている。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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