石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(23)

2022-06-21 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年6月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

23. 米軍乗り出す(1)

 カタールのウデイド空軍基地はアフガニスタンからアラビア半島、さらにインド洋全域を作戦地域とする米中央軍の前線司令部である。そこはペルシャ湾周辺諸国に睨みを利かす重要な航空基地であり、イラク撤退後はイランが監視対象となっている。

 

ペルシャ湾沿岸は世界有数の産油地帯であり、ペルシャ湾とその出口のホルムズ海峡、さらにインド洋に至る海上ルートは「タンカー・シーレーン(石油タンカーの航路)」として世界のエネルギーの大動脈となっている。このためシーレーンの安全確保は米国の国益の為にも重要である。と言ってもエネルギーに関する限り米国自身がペルシャ湾の石油に依存する割合は小さい。最も影響を受けるのは日本や韓国など極東の同盟国である。米国としてはこのエネルギーの「シーレーン」を守ることで日本や韓国に恩を売っていると言える。

 

しかしペルシャ湾地域において米国がシーレーン以上に重視していること、それはイランを封じ込め地域における米国の威信を揺るぎないものにすることである。30年前、ホメイニ師によるイスラム革命政権が成立して以来、米国にとってイランは不倶戴天の敵である。ホメイニ以前のイラン・パーレビ―(シャー)体制の時代に、米国はイランに近代兵器を大量に売り付け、イランを「ペルシャ湾の警察」に仕立て上げることで地域の治安を任せていた。

革命直後、テヘランの米国大使館がホメイニ支持の革命防衛隊によって一年以上占拠されるという事件があった。これにより米国の威信はいたく傷つけられた。当時の米国カーター政権は救出作戦を試みたが、救出ヘリコプターの不時着と言うお粗末な結果で失敗し、米国政府は恥の上塗りをした。これが今も米国民の脳裏から消えない深いトラウマを残した。

 

このため米国はその後のイラン・イラク戦争では軍事偵察衛星によりイランの動きを探り、その情報をイラクに流しイラン叩きを支援した。当時のイラクのフセイン独裁政権は米国にとって到底受け入れがたいものであったが、「敵(イラン)の敵(イラク)は味方」と言う訳だ。そのことが結果的にフセイン政権を助長させ、後のクウェイト侵攻、湾岸戦争さらにはイラク解放戦争へとつながったのは歴史の皮肉という他はない。

 

このようにイラン及びアラブ諸国に対する限り米国外交は行き当たりばったりであり地域に混乱をもたらした罪は大きい。しかし米国の外交は別の意味では一貫していた。イスラエルを支えること、そのことこそが米国の中東における絶対的ともいえる外交方針だったからである。それが中東に更なる混乱をもたらしていることも間違いのない事実なのであるが--------。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

 

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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石油と中東のニュース(6月21日)

2022-06-21 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・供給不足見込みで原油価格上昇。Brent $114.13, WTI $110.17

・サウジの4月原油輸出過去25カ月で最大の738万B/D、生産は1,044万B/D

・中国原油輸入量、ロシアの安売りで19カ月ぶりにサウジと首位入れ替わる

(中東関連ニュース)

・イスラエル連立内閣崩壊、10-11月に3年間で5回目の総選挙へ

・サウジ皇太子、エジプトを公式訪問、ヨルダン、トルコにも歴訪

・UAE、スーダンの紅海沿岸に60億ドルで港湾建設

・CNNのアラビア語 Business放送、年内スタート予定

 

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