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(目次)
第6章:現代イスラームテロの系譜(17)
162 敵と味方を峻別する一神教(1/6)
強引にイラク戦争に突入したブッシュ大統領は、フセイン政権をイラン及び北朝鮮と並ぶ「悪の枢軸」の一翼と決めつけ、「世界は米国側につくか、テロ側につくかのいずれかだ!」と叫んだ。あいまいさを許さぬ二者択一である。それは正義と悪の対決であり、宗教的に言えば神と悪魔の対決である。この場合もちろん米国が正義であり神(God)の代理人である。これに対してイラクは悪であり悪魔の代理人ということになる。そこには一神教のキリスト教が構造的に有している敵と味方を峻別する論理がある。
これを逆にイスラームの立場から見れば全く同じことが言える。つまりイスラーム諸国にとって正義は自分たちにあり自分たちこそ神(アッラー)の代理人である。そして米国や他のキリスト教西欧諸国は悪であり、悪魔の手先であると言うことになる。「悪魔の詩」事件がその好例である。英国の作家サルマン・ラシュディが1988年にムハンマドの生涯を題材にして著した小説がイスラームを冒涜するものだとして、当時のイランの最高指導者ホメイニ師が著者、発行者はもとより外国の翻訳者にまで死刑を宣告、日本語翻訳者の筑波大学助教授が何者かに殺される事件が発生した。
(続く)
荒葉 一也
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