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(目次)
第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(1)
168 もう沢山!長期独裁に倦んだ大衆(1/4)
中東と北アフリカはMENAと総称されるが、このMENA地域が政変の少ない地域であったと言えば奇妙に聞こえるかもしれない。2011年のいわゆる「アラブの春」以来、この地域は激しい政治変動の嵐に見舞われている。しかし1973年の第4次中東戦争以降「アラブの春」までの40年近くMENA各国の政治は安定し、政変どころか政権交代さえなかった国が少なくない。各国で長期独裁政権が続いたのである。長期独裁政権はエジプト、シリアなどの世俗軍事政権だけではない。湾岸諸国を含めMENAに今なお残る君主制国家を含めてのことである。
MENA諸国はトルコ、イラン及びイスラエルを除きアラブ民族の国家であり、同時にトルコ、イランを含めムスリム(イスラーム教徒)が多数を占める国家群である。長期独裁政権を生む素地がアラブ民族と言う血(DNA)の絆とイスラームという信仰(心)の絆のいずれにあるのか、或いは両者があいまって政治的安定と言う名の長期独裁政権を生んで育てたのか。答えは簡単に出ないが、西欧諸国と比べた場合、どうしてもこの二つの要素が浮かび上がるのである。
そしてもう一つ、これらMENA諸国の政治的安定が各国の経済的繁栄や科学技術の進歩をもたらさなかったことも指摘できる(石油ブームで繁栄を勝ち得た湾岸諸国は例外)。似たような強権体制でありながらタイ、インドネシアなどの東南アジア各国が経済的繁栄を享受したのとは異なった道を歩んだのである。
(続く)
荒葉 一也
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