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(目次)
第6章:現代イスラームテロの系譜(20)
165 敵と味方を峻別する一神教(4/6)
イスラームの場合、原理主義はムハンマドの布教初期の精神に立ち返ろうと呼びかけるサラフィー主義、つまり復古主義である。原理主義者たちは教義と組織を近代社会に合わせようとしているのではなくむしろその逆である。
なぜそのような復古主義が大手を振ってまかり通るのか。それはイスラームがたかだか7世紀余り前、すでにある程度の世界規模の通商体制が整った14世紀に生まれたためと考えられる。原理主義者たちは7百年前の当時に戻ることが可能だと説く。キリスト教にも原理主義はあるが(元来「原理主義」という言葉は米国福音派の機関紙名が起源である)、キリスト教が生まれた今から2千年前は農耕牧畜の農奴社会の時代であり、生活のすべてを復古することはあり得ず、ただキリストの教えの原点に立ち返ろうということになる。ところがイスラームの原理主義者たちはできるだけ昔の生活を取り戻そうと本気で考える。
原理主義者たちは自分が絶対正しいと信じ込んでいるだけに拙速に自分たちの理想の実現に取り組む。この結果、彼らは対決する相手だけではなく、一般市民からも敬遠される。それでも彼らの勢力が衰えない間は、彼らは一般市民を無理やり従わせようとする。従わない者は「異端者」或いは「背教者」として暴力的に排除される。そして彼らの思想に同調或いは感化された過激な若者をテロリストとして利用し、自爆テロで命を落とした場合は「殉教者」として祭りあげる。教義に逆らえない一般市民はただただ過激な原理主義の嵐が通り過ぎるのを耐えて待つことになる。
(続く)
荒葉 一也
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