3.営業キャッシュフロー
(アラムコの営業C/FはExxonMobilの2.6倍、ENEOSの20倍!)
(1) 2023年(度)営業キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-04.pdf 参照)
2023年(度)の営業キャッシュフローを比較するとENEOSは1兆103億円(70億ドル、換算レート:145円/ドル)であり、出光は3,770億円(26億ドル、換算レート:144.6円/ドル)であった。メジャー5社はExxonMobilが554億ドルと最も大きく、次いでShell(542億ドル)、TotalEnergies(407億ドル)、Chevron(356億ドル)、bp(320億ドル)であった。一方、アラムコの営業C/Fはこれら各社を大きく上回る1,434億ドルであり、これはExxonMobilの2.6倍、ENEOSの20倍である。
(営業の稼ぐ力をそがれているENEOS/出光!)
(2)2019年(度)~2023年(度)営業キャッシュフローの推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-14.pdf 参照)
2019年(度)から2023年(度)までの5年間の営業キャッシュフローの推移を見ると、アラムコ及びメジャーズと邦系2社の動きは大きく異なる。即ち、アラムコ及びメジャーズ計6社は2019年から2020年にかけて急落した後、2021年、2022年はV字回復し、2023年は減少している。これは売上高或いは原油価格の推移(前項2(2))と非常に近似している。
これに対してENEOS及び出光はメジャーズと全く逆に、2020年度は前年度よりキャッシュフローが増加しており、2021年度は大きく減少、2022年度は営業C/Fがマイナスであり、これはC/Fの流れとしては極めて異常と言える。
同年のENEOS決算説明資料を見ると、法人所得税・消費税の支払い等による資金減少要因が税引き前利益等の資本増加要因を上回ったため、としており、出光も同様の説明を行っている。政府の指導によりガソリン等の末端価格の激変緩和措置に伴い支払い消費税が増加した等の特殊要因があったためである。このような措置は原油及び製品価格の激変から消費者及び石油精製企業双方を保護しようとする政府の政策によるものであり、メジャーズと異なる極めて特殊な操業環境の結果である。両社の営業の稼ぐ力がそがれていると言えよう。
年(度)別の推移を具体的に見ると、2019年はアラムコが1,111億ドルと突出して多く、メジャーズではShellの422億ドルが最も多く、他の4社が200億ドル台であった。ENEOSの営業キャッシュフローは47億ドルにとどまり、出光の場合は▲3億ドルであった。
2020年(度)にはアラムコ及びメジャーズ5社は大幅に減少したが、邦系2社は逆に前年度を上回るキャッシュフローを生み出している。但し金額的にはメジャーズで最も少ないChevronよりも低い水準にとどまっている。2021年、22年にかけてアラムコ及びメジャーズの営業キャッシュフローは大幅に改善し、2022年(度)のアラムコのC/Fは過去5年間で最も多い1,862億ドルに達した。メジャーズの中ではExxonMobilが768億ドルで最も多く、次いでShell(684億ドル)、Chevron(496億ドル)、TotalEnergies(474億ドル)、bp(409億ドル)であった。
(続く)
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