石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

現地記事転載:「トランプ大統領のガザ地区パレスチナ人国外移送提案(1) ガザ地区住民の現状」

2025-01-28 | 今日のニュース
(原題) Why Trump proposal on Palestinian displacement from Gaza rings alarm bells in the region
2025/1/26 Arab News (by Reuters)


ドナルド・トランプ米大統領が、15か月に及ぶ戦争で荒廃したガザ地区からヨルダンとエジプトがパレスチナ人を受け入れるべきだと示唆したことで、ガザ地区住民だけでなく近隣諸国の間でも懸念が高まっている。この提案は、戦前の人口が約230万人だったガザ地区のパレスチナ人の間で、沿岸部から追い出されるのではないかという不安を強める可能性が高く、また、こうした大量移転がもたらす不安定化はアラブ諸国の懸念をかき立てることになるだろう。

懸念の背景は?
パレスチナ人は、1948年のイスラエル建国をめぐる戦争中に70万人が家を追われた「ナクバ」、つまり大惨事に長い間悩まされてきた。多くの人々が追い出され、ヨルダン、シリア、レバノンを含む近隣のアラブ諸国に逃げた。彼らとその子孫の多くは今も難民キャンプで暮らしている。ガザに避難した人々もいる。最近の紛争では、ガザで前例のないイスラエルの爆撃と地上攻撃が行われ、都市部が壊滅している。

ガザ住民のほとんどは、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃後に開始されたイスラエルの攻撃で何度も避難している。パレスチナ保健当局によると、それ以来ガザでは4万7000人以上が殺害されている。

パレスチナ人はこの紛争中どのように移動してきたか?
イスラエルは2023年に攻撃を開始する前に、北部ガザのパレスチナ人に対し、南部の安全地域とされる地域に移動するよう指示した。攻撃が拡大するにつれ、イスラエルは彼らにさらに南のラファに向かうよう指示した。

戦争の後半には、ラファでの作戦を開始する前に、イスラエルは、中央ガザのデイル・アル・バラの西部から南部のハーン・ユニスとラファまで、海岸沿いに12キロ(7マイル)に広がるアル・マワシの新しい指定人道地域に移動するよう指示した。国連の推計によると、世界で最も人口密度の高い地域の1つであるガザの人口の最大85%がすでに家を追われている。

ガザからの大規模な移送はあるのか?
ガザ地区のパレスチナ人の多くは、1948年のような恒久的な避難につながる恐れがあるため、たとえ可能だとしても飛び地を離れるつもりはない、と語っている。一方、エジプトは、数千人の外国人、二重国籍者、その他少数の人々がガザ地区から出ることを許可した以外は、国境を厳重に封鎖している。

エジプトや他のアラブ諸国は、パレスチナ人を国境を越えて追い出そうとするいかなる試みにも強く反対している。しかし、今回の紛争の規模は、過去数十年間のガザ地区の危機や激化をはるかに上回っており、パレスチナ人にとっての人道的惨事も同様だ。

紛争の初期の頃から、アラブ諸国政府、特にエジプトとヨルダンは、パレスチナ人が将来国家を建設したいと考えている土地、つまり占領下のヨルダン川西岸地区とガザ地区から追い出されてはならない、と述べてきた。パレスチナ人と同様に、彼らは国境を越えたいかなる大規模な移動も「二国家解決」(イスラエルの隣にパレスチナ国家を創設するという構想)の見通しをさらに損なわせ、アラブ諸国がその結果に対処させられるのではないかと恐れている。

イスラエル政府と政治家は何を言っているのか?
イスラエルの当時の外務大臣で現在は国防大臣を務めるイスラエル・カッツ氏は、2024年2月16日、イスラエルはパレスチナ人をガザから追放する計画はないと述べた。イスラエルはパレスチナ難民についてエジプトと調整し、エジプトの利益を損なわない方法を見つけるだろうとカッツ氏は付け加えた。

しかし、イスラエル政府の一部の発言は、パレスチナ人とアラブ人の新たなナクバへの恐怖をかき立てている。極右のベザレル・スモトリッチ財務大臣は、パレスチナ人のガザからの「移住を奨励する」政策と、イスラエルが同地域に軍事統治を課すことを繰り返し求めている。

(続く)

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今年及び来年の世界の成長率3.3%、前回見通しとほぼ変わらず:IMF世界経済見通し (上)

2025-01-28 | 今日のニュース
IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook Update、January 2025)」を発表した。 このレポートでは全世界、EU、ASEANなどの主要経済圏及び日米中印など主な国々の2023年(実績)から2026年(予測)まで4年間のGDP成長率が示されている。

本稿ではまず世界、主要経済圏、主要国の今年の成長率を概説し、次いで前回2023年10月の経済見通に比べどのように見直されたかを点検する。さらに3年間(2024、2025及び2026年)の成長率の変化を合わせて検証することとする。

*WEOレポート(日本語版): 

(今年の世界の成長率3.3%、EU圏は前回見通しを下方修正、米国は上方修正!)
1.2025年のGDP成長率
 今回1月見通しでは今年の世界の成長率は3.3%とされており、前回10月の3.2%とほぼ変わらない。これは主に米国の上方改定と他の主要国の下方改定が相殺されたためである。

1-1.主要経済圏の成長率
 経済圏で見るとEU圏の2025年の成長率は1.0%であり、10月の1.6%より▲0.6%低下している。中東・中央アジア諸国も3.9%から3.6%に引き下げられている。これに対してASEAN5カ国は4.5%から4.6%とわずかながらも上方修正されている。EU圏は後に触れる通り経済回復が遅れているドイツが、また産油(ガス)国が多い中東・中央アジア諸国はエネルギー価格の停滞が成長の足を引っ張っているようである。

1-2.主要国の成長率
 国別では今年の成長率は米国2.7%、日本1.1%、ドイツ0.3%、英国1.6%、中国4.6%、インド6.5%、ロシア1.4%である。中国はかつて高い成長率を誇っていたが、昨今は5%未満の成長率が続いている。ヨーロッパ諸国は上記の通りEU圏の成長率が1%台、中でもドイツは0.3%の成長にとどまり、また英国も世界平均を大きく下回っている。ロシアの2025年成長率1.4%は昨年10月の見通しとほぼ変わらない。

 一方アジアではインドが世界平均を2倍近く上回る6.5%と世界最高水準の成長を達成すると見込まれ、ASEAN5か国も4.6%の成長率が見込まれている。中東産油国のサウジアラビアの今年の成長率は世界平均と同じ3.3%であるが、昨年10月の見通しと比較すると▲1.3%の大幅下方修正である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
      前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
                     Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
                     E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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(SF小説) ナクバの東(62)

2025-01-28 | 今日のニュース
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(59)

第22章 さまよう3羽の小鳥(3)「アブダッラー」の異変(2/2)


「何でもありません。任務が終わって緊張が解けたためと思われます。」
実のところ「アブダラー」は緊張が解けた訳ではなかった。彼には気がかりなことが一つ残っていた。操縦する戦闘機の胴体に抱えている小型核ミサイル---------。

<これだけは無事に基地に持ち帰らなければ> 彼は心の中でそうつぶやいた。

ペルシャ湾上空をホルムズ海峡へと向かう戦闘機は母国からますます遠ざかるばかりである。彼は前方に拡がるペルシャ湾の紺碧の海と真青な空をただじっと凝視した。

(続く)


荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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