トルキ王子は椅子に座ったまま腕を組んで目を閉じた。突然目の前の電話の呼び出し音が室内に響きわたり全員に緊張感が走る。王子が受話器を取り上げると、タブーク空軍基地司令官の声が飛び込んできた。サウジアラビアの北西にあるタブーク基地はイスラエルを監視する要衝の地にあり、最新鋭のレーダーとコンピューターを積み込んだ早期警戒機AWACSが配備されている。タブーク基地司令官が早口気味に状況を伝えてきた。
「午前7時○○分、イスラエル空軍給油機1機と護衛の2機がヨルダン領空を通過中。○○分後にわが国とイラクの国境上空に達する見込み。3機の高度○○フィート、速度○○kmh。以上。」
「了解」
「作戦の成功を祈る。」
二人の司令官の間で短いやりとりが交わされた。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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