3.原油価格の推移(2022年夏~2024年現在) (図2-D-2-02参照)
OPECプラスの協調減産の見直しに最も大きな影響力を与えるのは石油価格の動向である。米国EIAの月別統計で見ると、2022年1月に87ドル/バレルであったBrent原油価格は3月に100ドルを突破、6月には123ドルまで高騰したが、その後急速に下落、9月には90ドルと年初の水準に逆戻りした。
OPECプラス最大の産油国であるサウジアラビアは財政が均衡する原油価格は85.8ドルと言われ価格の下落に敏感である。またウクライナとの戦争で戦費調達に頭を悩ませるロシアも原油価格の下落を見逃すことはできなかった。
そこで両国はOPECプラスの全加盟国に呼びかけ11月以降2百万B/Dの協調減産を行うこととした。しかしその後も原油価格は下げ止まらず同年12月にはついに81ドルまで下がった。減収分を増産で補おうとする一部加盟国の議論を抑え、ロシアとサウジアラビアは更なる減産による価格アップを狙った。その結果が2023年5月からの9カ国による166万B/D自主減産である。これにより原油価格は幾分上向き始めた。そこでサウジアラビアは更なる追加措置として100万B/D自主減産を率先して実施、他国にも呼びかけ、2022年6月、8カ国による220万B/Dの追加減産を推進した。
3度にわたる合計586万B/Dの減産により今年4月に原油価格は90ドル/バレルまで戻ったものの現在は一進一退を繰り返している状況である。このことはOPECプラスの価格支配力が低下していることを意味している。かつて1970年代の二度にわたる石油ショックの頃、OPECは世界のエネルギー市場を意のままに操っていたが、現代ではOPECの原油供給シェアが低下しただけでなく、原油から天然ガス、さらには自然エネルギーなどエネルギー市場を取り巻く環境が変化し、OPECプラスの神通力も衰えた。このことが次項に述べる通りOPECプラス自身の結束力を弱めているように見受けられる。
(続く)
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