(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.4.
前田 高行
(価格重視かシェア重視かー揺れ動くOPEC!)
(3)石油生産量の推移とOPECシェア(1965~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G02.pdf参照。)
1965年の世界の石油生産量は3,180万B/Dであったが、その後生産は急速に増加し、1980年には6,296万B/Dとほぼ倍増した。その後価格の高騰により石油の消費は減少した結果、1985年の生産量は5,746万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。
1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,798万B/D)以降急激に伸び2000年に7,493万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,191万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ2016年の生産量は9,215万B/Dに達している。
地域毎のシェアの変化を見ると、1965年は北米の生産量が32%でもっとも多く、中東26%、欧州・ユーラシア18%、中南米14%、アフリカ7%と続き、アジア・大洋州は3%とシェアが最も小さかった。しかしその後北米の生産が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)が急成長したため、現在(2016年)では中東のシェアが34%と最も高い。北米は1980年代には欧州・ユーラシア地域にも追い抜かれ2000年代半ばまでその状態が続いたが2016年のシェアは21%となり再び欧州・ユーラシア(19%)を上回っている。これはシェール・オイルの生産が急増したためである。
石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は44%であり、第一次オイルショック(1973年)前には50%近くに達した。しかし80年代前半にシェアは急落し85年には30%を切った。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大して40%台のシェアを維持している。2000年以降2016年までのシェアはほぼ42%~43%で前後している。
2014年後半から石油価格が急落する中でOPECは価格よりもシェアを重視する方針を打ち出したが、OPECのシェアは思ったほど伸びなかった。その背景にあったのは近年急激に生産を拡大し価格競争力をつけてきた米国のシェール・オイルであった。シェールオイルの追い落とし策としてOPECが掲げた低価格政策は2016年半ばに行き詰まりを見せ、OPEC産油国の中にはベネズエラのように財政に行き詰る国も出てきた。このためOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んでOPEC・非OPEC協調減産の体制を作り上げ、今年(2017年)初めから合わせて180万B/Dの減産を来年3月まで継続することを申し合わせた。これにより今年を含む今後当面はOPECのシェアが下がることは避けられそうにない。
なお長期的な需給で見ると石油と他のエネルギーとの競合の面では、地球温暖化問題に対処するため太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。さらに石油、天然ガス、石炭の炭化水素エネルギーの中でもCO2排出量の少ない天然ガスの人気が高い。このように石油の需要を取り巻く環境は厳しいものがある。その一方、中国、インドなどのエネルギー需要は今後も拡大するとする見方が一般的である。基幹エネルギーである石油の需要は底堅く、今後も増えていくものと予測される。
供給面で特筆すべきことはシェール・オイル、サンド・オイルなど「非在来型」と呼ばれる石油が商業ベースで生産されるようになり、特に米国におけるシェール・オイルの生産には目を見張るものがある。このような技術的要因に対して政治的・経済的な要因についてはイランに対する経済制裁が緩和され同国の生産は急速に回復している。その一方でリビア、ナイジェリア、イラク等の有力産油国では治安が悪化するなど相反する要因がある。米国のシェール・オイルは石油価格に敏感に反応し、スイング・プロデューサーの役割を果たすと考えられており供給面における不確定要素は少なくない。
(続く)
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