石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

トップ10目前のUAE-MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2019年版)(6)

2018-12-20 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

 

5.2015~2019年の順位の推移

(表http://menarank.maeda1.jp/13-T03.pdf 参照)

(図http://menarank.maeda1.jp/13-G02.pdf 参照)

 2015年から2019年までの5カ年についてMENA各国の順位の変遷を見ると、UAEが5年連続でトップに立っている。2013年まではサウジアラビアがMENAのトップであったが、2015年以降の同国の世界順位は49位→82位→94位→92位→92位と2016年に急落した後さらに低下し、過去3年間は90位台にとどまっている。これに対してUAEは22位→31位→26位→21位→11位と2016年を底に上昇傾向をたどり、特に前回から今回にかけてランクが急激にアップし、世界のトップ10入りが目前である。

 

UAEに次ぐのはイスラエルとトルコである。イスラエルの2015年以降の世界順位は40位→53位→52位→54位→49位と50位前後を続けている。これに対しトルコは2017年からMENAの順位が急速に上がり、2019年はイスラエルをしのぎMENA2位になっている。世界順位も55位→55位→69位→60位→43位と2017年を底に急激に上昇している。この結果、日本との順位の格差は縮まり、2015年には日本27位、トルコ55位であったのに対し、今回は日本39位、トルコ43位であり、両国の差はわずかになっている。なお中国は5年間を通じて毎年順位を上げ、2015年の96位から今回は46位になり、トルコ、イスラエルと共に日本の地位を脅かすまでになっている。

 

MENAの平均世界順位は98位(15年)→107位(16年)→109位(17年及び18年) →107位(19年)と2016年以降は世界100位以下に低迷している。UAEを除くGCC5カ国を見るとサウジアラビアは49位→82位→94位→92位→92位と順位の下落傾向が止まらず、カタールも50位→68位→83位→83位→83位と低迷から抜け出せない状態である。またクウェイトはここ数年100位台前後にとどまっており、有力な産油国であり豊富な石油収入によりマクロ経済は全く問題がないにも関わらず同じGCC加盟国であるサウジアラビア、UAE、カタールなどと比較して評価が著しく低い。

 

 因みに「アラブの春」で大きな変革を迫られた国々の過去5年間の世界順位の推移を見ると以下のとおりである。

 

 チュニジア:        60位 →  74位 →   77位 →  88位 →  80位

 イエメン:          137位 → 170位 → 179位 → 186位 → 187位

ヨルダン:        117位 → 113位 → 118位 → 103位 → 104位

 エジプト:         112位 → 131位 → 122位 → 128位 → 120位

  シリア:           175位 → 175位 → 173位 → 174位 → 179位

  リビア:           188位 → 188位 → 188位 → 185位 → 186位

 

上記のうちイエメンは2014年以降毎年下落しており「アラブの春」に続き国内が内戦状態に陥ったままであることが影響している。またシリア及びリビアもイエメンと同様の状況であり、競争力は世界最低ランクのままである。

 

(完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

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石油と中東のニュース(12月19日)

2018-12-19 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・リビアの最大油田El Shara、部族戦闘員の占拠で操業停止

(中東関連ニュース)

・シリア制憲評議会設立でロシア、トルコ、イランが合意

・サウジ来年度予算規模1.1兆リアル(2,950億ドル)、赤字幅1,310億リアル

・中国製武装ドローン、中東に出回る

 

 

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トップ10目前のUAE-MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2019年版)(5)

2018-12-19 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf

 

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

 

4.MENA6カ国及び日米韓の項目別比較(レーダーチャート)

(図http://menarank.maeda1.jp/13-G01.pdf 参照)

 図はエジプト、トルコ、イラン及びGCC3カ国(サウジアラビア、UAE、カタール)のMENA6カ国と日本、米国及び韓国の9カ国を上位グループ、中位グループ及び下位グループの三つに分け、各国の項目別世界順位をレーダーチャートとして表示したものである。レーダーチャートは最も外側が世界順位1位であり内側の中心は201位(実際の対象国数は190カ国)である。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の項目別順位の状況を示している。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が真円に近いほど各分野の世界順位が平均していることを示している。

 

(1)上位グループ:米国、日本、韓国

 韓国はほぼ全ての分野で世界のトップグループである。同国の総合順位は世界5位であり、電力事情及び契約強制力が世界2位であるほか、建設許可が10位、起業及び清算は11位など10項目の半数が世界のトップクラスにある。信用取得だけが低く世界60位であるが、全体として均整の取れた良好なビジネス環境である。

 

 米国は総合順位が8位で韓国をわずかに下回っている。米国が韓国よりも優れているのは登記(世界38位)、信用取得(同3位)及び清算(同3位)の3項目だけであり、その他の7項目の世界順位は韓国よりも劣っている。特に起業(世界53位)及び電力事情(54位)は韓国よりかなり見劣りがする。

 

これに対して日本は総合順位世界39位でベストテンに入る韓国、米国とかなりの格差があり、10項目についても世界順位は殆ど両国を下回っている。特に起業(世界93位)、信用取得(85位)、徴税(97位)などは米国、韓国いずれの国よりも低い。日本が両国のいずれかよりも順位が高い項目は電力事情(22位)が米国よりも高く、また清算項目(世界1位)のみが韓国(11位)及び米国(3位)を上回っている。

 

韓国及び米国のレーダーチャートが比較的真円に近い(つまりビジネス環境が平均して良好である)のに対して、日本の場合は起業(93位)、信用取得(85位)、徴税(97位)などが劣っており、レーダーチャートの円は小さく、形がいびつとなっている。

 

(2)GCC産油国グループ:UAE、サウジ、カタール

 UAE、サウジアラビア、カタールの産油(ガス)3カ国を比較すると総合順位ではUAE11位、カタール83位、サウジアラビア92位であり、UAEが2カ国を大きく上回っている。項目別に見ると起業の世界順位はUAE25位、カタール84位、サウジ141位で、3か国の格差が大きく特にサウジの評価が低い。建設許可及び登記の分野は3カ国とも比較的世界順位が高い。徴税分野ではUAE及びカタールが世界2位で評価が特に高い(サウジは78位)。UAEの場合は建設許可、電力事情、登記、徴税及び契約強制力の5分野が世界のトップテンに入っている。

 

反対にこれら3カ国は通関(UAE98位、カタール97位、サウジ158位)がいずれも世界平均を下回っている。3カ国の比較で見るとカタールは投資家保護(178位)及び契約強制力(同122位)の分野でUAE或いはサウジアラビアよりもかなり低く、一方サウジアラビアは起業(世界141位)、通関(158位)、清算(168位)などの分野が大きく劣っている。

 

(3)下位グループ:トルコ、エジプト、イラン

 中東の三大国トルコ、エジプト及びイランのビジネス環境の総合順位はそれぞれトルコ43位、エジプト120位、イラン128位でありエジプト及びイランのランクが低い。分野別の世界順位を見るとトルコが比較的順位が平均化しているが、エジプト及びイランは分野ごとの格差が大きい。

 

また3カ国の順位格差を見ると建設許可(トルコ59位、エジプト68位、イラン86位)、清算(エジプト101位、トルコ109位、イラン131位)の2分野は3カ国の格差が比較的小さいが、その他の分野では3カ国の格差が大きい。たとえば起業ではトルコ78位、エジプト109位、イラン173位と3カ国のビジネス環境には大きな違いがあり、同様に投資家保護についてもトルコ26位、エジプト72位、イラン173位と格差が大きい。契約強制力の分野ではトルコが19位で世界のトップレベルにあるのに対してイラン、エジプトはそれぞれ89位、160位でありトルコが抜きんでている。通関についても同様にトルコの42位に対してイラン121位、エジプト171位である。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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トップ10目前のUAE-MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2019年版)(4)

2018-12-18 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf

 

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

 

3.調査項目毎のランク(続き)

(表http://menarank.maeda1.jp/13-T02.pdf 参照)

(6)Protecting Investors(投資家保護)

 MENAで投資家が最も確実に保護されているのはサウジアラビアで同国の世界ランクは第7位である。これに続くのがUAE(世界15位)、イスラエル(同23位)、トルコ(26位)である。MENA第5位バハレーン(世界38位)と第6位モロッコ(同64位)との間には大きな開きがある。一方ランクが低いのはイラン(173位)、カタール(178位)、リビア(185位)などである。

(参考:日本及び中国64位、米国50位、韓国23位)

 

(7)Paying Taxes(徴税)

 この項目ではUAEが世界1位、カタール同2位、バハレーン5位、クウェイト7位でありGCC4カ国が世界のベストテンの上位を占めている。またオマーンも世界12位である。GCC各国では個人所得税が免除されているほか法人税も非常に低い。但し同じGCC加盟国でもサウジアラビアは78位で他の5か国よりかなり劣っている。なおこの項目のMENAの世界平均順位は82位であり10項目の中では最も高い。一方でイラン(149位)、アルジェリア(156位)、エジプト(159位)など税負担のレベルが高い国がある。MENAは一部の産油国とその他の国で徴税レベルの格差が大きい。

(参考:日本97位、米国37位、韓国24位、中国114位)

 

(8)Trading Across Borders(通関)

事業用の資本財を輸入し、或いは完成した製品を輸出するためには税関手続きが簡単であることが望ましい。この分野でMENAで世界順位が最も高い国はトルコの42位であり、次いでパレスチナ自治区(54位)、モロッコ(62位)、イスラエル(64位)となっている。評価が低いのはエジプト(171位)、シリア(178位)、イラク(181位)、イエメン(189位)である。

(参考:日本56位、米国36位、韓国33位、中国65位)

 

(9)Enforcing Contracts(契約強制力)

 この項目のトップはUAE(世界9位、以下同じ)で、これに次ぐのがトルコ(19位)、サウジアラビア(59位)、モロッコ(68位)の各国である。この分野のMENA各国の評価は総合順位とかなり異なっている。UAE、サウジアラビア以外のGCC各国は、オマーン(73位)、クウェイト(77位)、カタール(122位)、バハレーン(128位)となっている。

(参考:日本52位、米国16位、韓国2位、中国6位)

 

(10)Resolving Insolvency(清算)

 事業の撤退を決断した場合、清算手続きをスムーズに行う必要があり、起業(項目1参照)と同様外国投資家にとっては重要な要素である。この面ではイスラエルが世界29位でMENA地域では最も高い評価を得ている。これに続くのがチュニジア(67位)、モロッコ(71位)である。

 これに対しサウジアラビア、イラク、リビア及びパレスチナ自治政府は168位と評価が極めて低く、またエジプト(101位) 、トルコ(109位)、イラン(131位)などMENAには世界ランクの低い国が多い。MENAの世界平均順位は123位であり、これは10項目の中では最も低く、MENAは事業清算の難しい国が多いことを示している。

(参考:日本1位、米国3位、韓国11位、中国61位)

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(12月17日)

2018-12-17 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・カタール、伊Eniのメキシコ石油鉱区に35%参入

・カタール石油CEO:今後数年間に米国に200億ドル投資を予定

・オマーン、オクシデンタルに2鉱区の利権供与

(中東関連ニュース)

・カタール・ドーハ・フォーラム開催、河野外相ら各国外交官が出席。 *

・オマーン、カタール向け輸出2.8倍に急増

・UAE、中央銀行理事メンバー交代。総裁は留任

・Al Watania、韓国MECENIPCとCVケーブル製造合弁工場をリヤドに建設

*外務省プレスリリース「河野外相のヨルダン、カタール出張について」参照。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006877.html

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今週の各社プレスリリースから(12/9-12/15)

2018-12-15 | 今週のエネルギー関連新聞発表

12/11 出光興産 

ベトナム ニソン製油所が商業運転を開始しました  

http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2018/181211.pdf

12/11 コスモエネルギー開発 

アブダビ石油株式会社 創立50周年記念式典の開催について 

https://cep.cosmo-oil.co.jp/press/p_181211/index.html

12/11 Total 

Russia: Yamal LNG Starts Up Train 3 Twelve Months Ahead of Schedule And Achieves Its Full Capacity 

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/russia-yamal-lng-starts-train-3-twelve-months-ahead-schedule-and-achieves-its-full-capacity

12/12 出光興産/昭和シェル石油 

経営統合に関する関係当局の承認のお知らせ  

http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2018/181212.pdf

12/12 国際石油開発帝石 

本邦における調査・技術子会社設立について(お知らせ)  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2018/20181212.pdf

12/12 ExxonMobil 

ExxonMobil Makes Final Investment Decision to Develop West Barracouta Gas Project  

https://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-makes-final-investment-decision-develop-west-barracouta-gas-project

12/12 Total 

Total Strengthens Its Exploration Position In Mauritania  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-strengthens-its-exploration-position-mauritania

12/13 石油連盟 

月岡 石油連盟会長定例記者会見配布資料 

http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2018/index.html#id1839

12/13 国際石油開発帝石 

オーストラリア イクシス LNG プロジェクト 参加権益の追加取得について  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2018/20181213.pdf

12/13 Total 

Australia: in line with its discipline on capital allocation, Total reduces its stake in Ichthys LNG by 4%  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/australia-line-its-discipline-capital-allocation-total-reduces-its-stake-ichthys-lng-4

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石油と中東のニュース(12月14日)

2018-12-14 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・クウェイト石油相とKPC CEO、旧中立地帯の生産再開協議の為リヤド訪問

・インドのイラン原油輸入急減。輸入国別では6番目に陥落

・伊Saipem社、サイバーアタックのためサウジ、UAE、クウェイトのサーバーを停止

(中東関連ニュース)

・イエメン反政府フーシ派、ホデイダ港から撤退:国連調停の停戦協議

・サウジのSipchem石化がSahara石化を吸収合併。Saharaは上場廃止

・クウェイト、外国人の父母・義父母のビザ有効期間を1か月から3か月に延長

 

 


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トップ10目前のUAE-MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2019年版)(3)

2018-12-13 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf

 

 

(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

 

3.評価項目毎のランク

(表http://menarank.maeda1.jp/13-T02.pdf 参照)

評価の対象となっている10項目についてMENA各国のランクを概観すると以下の通りである。

 

(1)Starting a Business (起業)

 事業をスタートさせる難易度である「Starting Business(起業)」についてMENA諸国の中で最も起業しやすいとされた国はUAE(世界順位25位、以下同じ)である。これに次ぐのがモロッコ(34位)、オマーン(37位)、イスラエル(45位)の順である。これら4カ国を含めチュニジア、バハレーン、トルコ、カタールまでの8カ国が世界100位以内である。エジプト(109位)、サウジアラビア(141位)、イラン(173位)他の12カ国(含むパレスチナ)は100位以下であり、MENAの世界平均は109位である。

 因みに韓国は11位、中国28位、米国は53位であり、日本は93位とかなり低い。

 

(2)Dealing with Construction Permits(建設許可取得)

 進出先の関係政府機関から工場を建設するための許認可を取り付けるための難易度を見ると、UAE(世界順位5位、以下同じ)が世界のトップテンに入っている。これに続いてモロッコ(18位)、カタール(20位)が世界の上位に入っている。カタールに次ぐのはサウジアラビア(世界36位)であるが両国の間は少し開いている。同じGCC加盟国であるクウェイトは世界131位と順位がかなり低い。

 MENAでランクが最も低いのはリビア、シリア及びイエメンの186位でありこれは世界最下位に近い。MENAの大国であるトルコ、エジプト及びイランはそれぞれ59位、68位、86位で世界の中位クラスにとどまっている。

(日本44位、米国26位、韓国10位、中国121位)

 

(3)Getting Electricity (電力事情)

 企業特に製造業にとって進出先で安価で安定した電力が得られるか否かは事業の成否を決定する大きな要素と言える。MENAトップはUAE(世界順位1位、以下同じ)であり、MENA2位のチュニジア(世界51位)以下他のMENA諸国と大きな格差がある。チュニジアに続くのはモロッコ(59位)、トルコ(60位)、ヨルダン(62位)、サウジアラビア(64位)、オマーン(66位)、カタール(69位)が世界60位台に並んでいる。

(日本22位、米国54位、韓国2位、中国14位)

 

(4)Registering Property(登記)

 この分野ではUAEが世界7位である。UAEに続くのはカタール(世界20位)、サウジアラビア(24位)、バハレーン(26位)のGCC諸国が世界20位台に並び、MENAの上位を占めている(但しオマーンは52位、クウェイトは69位)。

 これに対して登記の難易度が高いとされているのは、リビア(187位)、アルジェリア(165位)、シリア(157位)などである。

(日本48位、米国38位、韓国40位、中国27位)

 

(5)Getting Credit(信用取得)

 パレスチナ自治区は世界順位が第22位であり信用取得に関してはMENAトップである。これに続くのはトルコ(世界32位)、UAE(世界44位)、イスラエル、エジプト(共に世界60位)であり世界190か国の上位を占めるのはこの5か国だけである。MENAの世界平均も116位であり、信用取得に関してはMENAは世界的に後進地域と言えよう。

(日本85位、米国3位、韓国60位、中国73位)

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(12月12日)

2018-12-12 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・ロシア、1月の生産量6万B/Dカット

・UAE、1月の原油生産削減。マーバン15%、上部ザクム・ダス5%

・リビア、有力港封鎖で原油輸出の不可抗力を宣言。原油価格アップ:Brent $60.19, WTI $51.16

・米エネルギー庁長官、サウジ石油相とOPEC総会後初の会談

・米エネルギー庁長官、イラク政府関係者と会談。イラク側はイランからの天然ガス輸入継続を要請

・11月のLNG輸出、豪州がカタールを抜いて世界一に。  *

*参考:国際石油開発帝石、イクシス出荷プレスリリース

    「BPエネルギー統計 4.LNG貿易」 


(中東関連ニュース)

・サウジ皇太子臨席で東部地区にエネルギーパーク起工式。第1期は2021年完成予定

・サウジ・リヤド空港に民営化のターミナル開設

・アブダビハリーファ港に中国旗はためく。コンテナ施設に3億ドル投資

・カタールとイラクが経済協力会議開催。ビジネス・カウンシル設立を合意

・クウェイト国営石油、入札事前包括資格制導入。各国のク大使館で申請書類受付

・クウェイト国営石油Ja'afar CEO退任。数日中に新陣容公表の見込み

 




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写真は語るシリーズ:サウジとカタールに決定的な亀裂

2018-12-11 | 中東諸国の動向

   12月9日、サウジアラビアの首都リヤドでGCC6カ国の代表が集まり第39回サミットが開催された。上の写真はその時のものである。画面には6人が写っているが、読者はこの写真のどこかがおかしいことにお気づきであろうか。6人が写真に納まっているため一見GCC6カ国の代表それぞれが写っていると見えるが、実は右端の人物はサウジアラビアのムハンマド皇太子であり、中央のサルマン国王と合わせてサウジアラビアは二人、その他はGCC各国の代表である。つまりGCC6カ国のうちの1カ国の代表が写真に登場していない。

 

 種明かしをすればそれはカタールからの代表なのである。カタールがGCCサミットに政府代表として派遣したのは外務担当国務相。昨年末のクウェイト・サミットを含めこれまでのサミットにはすべてタミーム首長自身が出席している。昨年6月にサウジアラビア・UAE・バハレーン及びエジプトがカタールと断交して以来、カタールはGCC内で孤立しており、特にサウジアラビアとは犬猿の仲である。そのためタミーム首長自身が今回のリヤド・サミットを忌避するのは理解できる。しかしれっきとした外務大臣(しかも王族)がいるにもかかわらず、カタールは格下の外務担当の国務大臣(非王族)を送り込んだ。上の写真でサルマン国王の両脇にいるのはクウェイト首長とバハレーン国王であり、左から二番目はUAE副大統領兼ドバイ首長、左端はオマーン外相でいずれも王族である。主催者のサウジ側がカタール代表をわざと外したのだろうか。カタール代表の国務大臣が自ら辞退したのかもしれない。真相は不明だが、いずれにしても会議でカタールが冷遇されたであろうことは想像に難くない。

 

 カタールとサウジなど4か国が断交した後に開かれた昨年末のクウェイトサミットでは、カタールはタミーム首長が出席したのに対し、サウジアラビアは国王或いは皇太子ではなく外相が代表となっており今回と全く逆の対応となっている。サミット主催者のクウェイト首長は会議前に両者の仲介の労を取ったが面目をつぶされた格好であった[1]。そして今回は一方の当事者サウジアラビアが主催を務めた結果がこれである。両者の対立は今や決定的な段階にあると言えよう。

 

 そもそもサウジアラビアとカタール両国間の摩擦の根は深く、遠くはカタールのアル・ジャジーラ放送によるサウジ王制批判報道に始まるが、最近ではサウジアラビアがシーア派イラン及びスンニ派のムスリム同胞団をテロ支援組織とみなし、カタールがこの両組織と密接な関係を有していると断定して、UAE、エジプトを巻き込みカタールと断交したことが対立の原因である。即ちカタール批判の理由がかつての報道の自由という民主的価値観から、テロをからめた宗教問題に変質したのである。民主的価値観は話し合いで妥協或いは解決が可能であるが、宗教問題による対立の解決は容易ではない。

 

 実は両者の対立が表面化したのはGCCサミットだけではない。それはサミット直前に開かれたOPEC総会でカタールが脱退を表明したことである。カタールの石油相は脱退表明の記者会見において、同国のOPEC脱退は今後天然ガスの生産増強と市場確保に力を注ぐためであり政治的な意図はないと語っている[2]。石油相の発言に間違いはないとしても、政治的意図が全くなかったと信ずる者は少ないであろう。OPECはサウジアラビアが牛耳っており、特に最近では非OPEC産油国のロシアと減産、高価格維持で共同戦線を張る一方、OPECカルテルを非難し低い原油価格を望む米国トランプ大統領の意向を忖度して一時は増産の姿勢を示すなど、サウジアラビアの石油政策はOPECの他の加盟国の意向を汲んでいない。カタールはそれを苦々しく思い、OPECのメンバーであり続けることに疑問を持ったと言えよう。

 

サウジアラビアとカタールの関係は修復不可能な状況にある。カタールはOPEC脱退に続きGCC脱退に走り始めたと見て間違いなさそうである。

 

(完)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com



[1] レポート「いよいよGCC解体か?-GCC首脳会議を振り返って」(2017.12.21付け)参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0429GccSummitDec2017.pdf 

[2] ‘Qatar will withdraw from OPEC effective January 2019: Minister’, The Peninsula on 2018/12/3

https://thepeninsulaqatar.com/article/03/12/2018/Qatar-will-withdraw-from-OPEC-effective-January-2019-Minister

 

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