(石油関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)
1/16 Shell
Shell agrees to sell Nigerian onshore subsidiary, SPDC
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2024/shell-agrees-to-sell-nigerian-onshore-subsidiary-spdc.html
1/17 INPEX
ノルウェー王国 2023年APAラウンドにおけるライセンスの落札について
https://www.inpex.co.jp/news/2024/20240117.html
1/17 bp
Murray Auchincloss appointed bp chief executive officer
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/murray-auchincloss-appointed-bp-chief-executive-officer.html
1/18 chevron
chevron direct investment fund ltd. confirms Kazakh investments
https://www.chevron.com/newsroom/2024/q1/chevron-direct-investment-fund-ltd-confirms-kazakh-investments
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第4章:中東の戦争と平和(19)
105 アフガン戦争勃発:呉越同舟の米国とアラブ(5/5)
ソ連駐留軍は次第に追い詰められ1988年に遂に撤退した。アラブ・イスラム諸国はソ連の無神論との宗教戦争に勝利し、米国はソ連社会主義とのイデオロギー戦争に勝利したのである。アフガニスタン戦争はソ連の崩壊をもたらし米国では宗教社会学者のフランシス・フクヤマが「歴史の終わり」なる論文を発表、米国一強時代が出現し、永遠の世界平和が訪れるかのごとき幻想がふりまかれた。
しかしアフガニスタン戦争はそれまで歴史の陰に隠れていた多くの問題が表面化する負の側面も併せ持っていた。米国はソ連の次の目標として中東アラブ諸国に政治の自由化と民主化を強要した。それは自由化、民主化の衣を着た西欧イデオロギーの押し付けであったが、その背後に宗教面のキリスト教福音思想と軍事面のネオコン思想があった。
一方、イスラーム諸国ではイラン革命が勃発、シーア派指導者ホメイニによる宗教政治が出現、これはスンニ派アラブ諸国との対立を生みだし、イラン・イラク戦争につながる。さらに同じスンニ派アラブ諸国の内部で世俗主義と原理主義が衝突、原理主義の内部では更に過激なテロリズム思想が蔓延し手の付けられない混乱を引き起こすのである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0595GazaJan2024.pdf
どうなる?戦後のパレスチナ統治
ガザ戦争は圧倒的な軍事力を有するイスラエルが勝つことは間違いない。但し、ハマスも敗北宣言しないであろう。イスラエルは戦後ガザを直接統治することはない、と明言している。直接統治がリスクの高いことは誰の目にも明らかである。今回の戦争でガザの住民の反イスラエル感情が極限に達しており、その結果ハマスの残党あるいは過激化した若者による新たな都市ゲリラ活動が始まるであろう。彼らを武器面で支えるのはイラン、シリアなどであり、経済的に支援する周辺アラブ国民もなくならない。イスラエルの報復を恐れる湾岸アラブ諸国は、義勇軍を派遣する気は毛頭なく、物的な支援及び金銭的寄付(ザカート)に力を注ぐ。それは豊かな湾岸諸国のパレスチナ人に対する罪滅ぼし、或いは免罪符であろう。
戦後のパレスチナ統治は戦前と寸分変わらない姿になる。否、戦前よりさらにパレスチナ人に過酷な「天井なき牢獄」となるであろう。彼らは生存に必要な最小限の環境で、全く自由を奪われた生活を送る。そこに見える景色はナチス時代の「強制収容所」そのものであり、違うのは「ガス室」が無いことくらいであろう。パレスチナ人に対する人種差別(アパルトヘイト)がさらに過酷な様相を帯びる。パレスチナ人の心中にはこれまで以上の怒りと絶望が沸き立つに違いない。
ガザのパレスチナ人には全く未来が無いのであろうか。数十年単位で見る限り彼らに明るい展望は開けない。ただ言えることは歴史は百年、千年単位で動くものであり、イスラエルのユダヤ教徒が未来永劫繁栄を続け、一神教の「約束された民」としてこの世の終末を迎えられるとは思えない。パレスチナのアラブ人も同じ一神教のイスラム教徒である。同じ一神教徒なら世界の終わりに同じように救われるはずである。(逆に言えば多神教のヒンズー教徒、悟りの仏教徒、共産主義の無神論者たち一神教徒以外のすべての人間がこの世の終末で地獄の責め苦に会う、ということになるのであろうが。)
しかしすべてことは有為転変する。奢れる者は久しからず。生者必滅。今日の「善」は明日の「悪」。人間世界に「絶対」はない。
無責任で暗い結論と読者の顰蹙を買うことは承知の上で、安易に平和を期待する進歩的文化人の自己陶酔は避けたいと思うばかりである。
以上
本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
(石油関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
・中国経済指標が期待下回り原油価格下落。Brent $77.71, WTI $71.79。
・OPEC:2025年の石油需要前年比185万B/D増の見通し。
(中東関連ニュース)
*外務省プレスリリース参照。
・クウェイト内閣発足。王族入閣は2名。「門戸開放」策で外相に初の民間人。
・米、紅海で船舶襲撃のイエメンフーシ派をテロリストに再指名。
・日本郵船、三井OSK、川崎汽船、揃って紅海運航停止を決定。
・イランの越境攻撃でパキスタンが大使召還措置。両国関係険悪に。
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第4章:中東の戦争と平和(18)
104 アフガン戦争勃発:呉越同舟の米国とアラブ(4/5)
この戦争でアラブ諸国から多数の義勇兵が参加したが、その最大の人物こそサウジアラビアのオサマ・ビン・ラーデンである。世界中で彼の名を知らない者はほとんどいないであろう。また彼の素性と死に至るまでの経緯も良く知られているが、ここではアフガン義勇兵になるまでの経歴を簡単に紹介する。
ビン・ラーデンは1957年、サウジアラビアのジェッダで生まれた。彼の父親はイエメン出身で若くして聖都マッカの門前町ジェッダに移住、路上の行商から身を起こし、サウジアラビアの初代国王となるアブドルアジズに取り入り、オサマ・ビン・ラーデンが生まれたころはサウジ国内最大の建設財閥になっていた。父親は多数の妻を娶り、ビン・ラーデンは17番目の息子であるが、11歳の時に父親が飛行機事故で死亡、当時の金で3億ドルの遺産を相続したと言われる。
彼はその後イスラーム神学校(マドラサ)に入学、過激なイスラーム原理主義に傾倒した。そして22歳の時に義勇兵としてアフガニスタンに入った。アフガニスタンにはサウジアラビアの援助によるマドラサが多数建設され、ムジャヒディン(ジハード戦士)たちはイスラーム原理主義思想に洗脳されていた。そこに3億ドルを抱えてビン・ラーデンが乗り込んだのであるから彼がすぐに頭角を現し、外国人義勇兵のトップに立ったのは当然の成り行きであった。
(続く)
荒葉 一也
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(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
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欧米・イスラム諸国の本音と本性
自国の偉大さを信じ、親子兄弟が戦場で戦っている現状で、大多数のイスラエル国民はテロリスト・ハマスのせん滅が戦争終結の必須条件であると確信している。戦時体制下、しかも勝利が確実であると自他ともに認めるなかでは無条件即時停戦など問題外であろう。平和を標榜するだけのひ弱な知識人は排除され投獄される。戦争とはそういうものである。
それではガザ戦後処理の利害関係者(ステークホルダー)である欧米或いは周辺イスラム諸国の対応はどうであろうか。問題は本音と建前の使い分けである。
ヨーロッパ各国は、ガザ紛争がイランを含む中東全域に拡大し、それを導火線にヨーロッパでイスラムテロが頻発することを恐れている。しかし強力な仲介者がいない中でただ人道的停戦を求めるだけではナンセンスである。それが戦争の現実というものであろう。一方、平和の掛け声の陰で米国、フランス、ドイツなど先進軍事大国は大量の兵器を輸出し、防衛産業は我が世の春を謳歌している。彼らの本音と建前のギャップは小さくない。
周辺イスラム諸国の本音と建前はもっと単純である。彼らはアラブ・イスラム国家としてのパレスチナの独立を支持し、無辜の女性や子供を大量殺りくする(ジェノサイド)イスラエルを非難する。そして人道的な支援は惜しまない。
しかしパレスチナが政治的に独立し、自分達と対等になることを望んでいるとは思えない。特にサウジアラビア、UAEなど湾岸の専制君主国家にとっては、民主化されたパレスチナとシーア派イランの挟み撃ちにあう可能性が高い。パレスチナが形式的な独立を保ちながら、イスラエル支配のもとで周辺国の食料や医療支援に頼って細々と生きていく。それが周辺アラブ諸国の本音であろう。無気力と腐敗が広まっている現在のヨルダン川西岸パレスチナ自治政府の姿と重なる。
各国は国連安保理の呼びかけに応じないイスラエルに経済制裁を課するでもなく、ただ2国家共存論を唱えるだけである。さらにイスラエルの非人道性を声高に叫びながら、その一方安保理で拒否権を発動してイスラエルを擁護する米国の姿勢(二枚舌外交)を前に国連は機能不全に陥っている。そしてロシアと中国はイスラエルと欧米を非難し、ハマスの過激な行動に自制を促すものの自らは傍観者の立場を変えない。結局、国際政治の舞台でこの2か国が漁夫の利を得ている感がある。
(続く)
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荒葉一也
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(アラビア語版)
(目次)
第4章:中東の戦争と平和(17)
103 アフガン戦争勃発:呉越同舟の米国とアラブ(3/5)
しかしムスリムたちにとって共産主義の無神論は理解に苦しむどころか悪魔の思想である。唯一神アッラーのためにアフガニスタンのムジャヒディン(ジハード戦士)は共産主義政府に立ち向かった。その闘争に共鳴したのがアラブ諸国のムスリムたちであった。豊かな湾岸産油国のムスリムたちはモスクで礼拝を済ませた後、遠いアフガニスタンのジハード戦士たちのために出口に置かれた義援箱にお金を入れた。ザカート(喜捨)はムスリムの宗教的義務であり、彼らは喜んで寄付したのであった。その性格上戦争を支援するための寄付金は公にすることができず、いくつかの銀行を経てマネーロンダリング(資金洗浄)された。モスクを通じた戦費の調達とその送金方法は後々イスラーム過激派に対する資金ルートに変貌して中東各国政府や欧米諸国を悩ませるのであるが、この当時はむしろ黙認或いは奨励されていた。
さらに米国がこの戦争で反政府ゲリラを支えた。米国は彼らにミサイルなどの武器弾薬或いは軍事衛星で得られたソ連駐留軍の動きなどの機密情報をパキスタンを通じて反政府側に与えたのである。このようにアフガニスタン戦争ではアラブ諸国がヒト(義勇兵)とカネ(戦費)を与え、米国がモノ(近代兵器)とインテリジェンス(情報)を与え、共同してソビエト社会主義政権に対抗したのである。イスラームとキリスト教という真っ向から対立する陣営の共闘体制はまさに「呉越同舟」であった。
両陣営がソビエト社会主義打倒を目指した思想の背景は全く異なる。アラブ陣営には共産主義の無神論に対する強烈なアレルギーがあった。彼らはソ連が「悪魔」の国でありこれを打倒することはジハード(聖戦)であった。そもそもアラブ民族の「血」とイスラームの「信仰」が体にしみこんでいる彼らにはイデオロギーという「智」が入り込む余地はないのである。これに対して米国は自由主義対社会主義、資本主義対共産主義という明確なイデオロギー思考に立ってソ連を打倒し世界の覇権を握ることが目的であった。1975年に泥沼のベトナム戦争を終結し、同じ年に先進国サミット(G7)で世界経済の覇権を確かなものにした米国にとってソ連は最後の敵であり、アフガニスタン戦争はその最前線というわけである。
(続く)
荒葉 一也
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