秋のお彼岸、大分秋らしくなってきました。
高谷オカリナの里のアケビも食べ頃です。
9月29日(木)に、『MOMENT野外コンサート@高谷オカリナの里』が行われます。
その時にMOMENTとオカリナ講習会のメンバーとのコラボが企画されています。
コラボ曲は「もみじ」「里の秋」「埴生の宿」「いのちの歌」の4曲。
今回はその中の「里の秋」に関するエピソードについて書いてみようと思います。
里の秋 作詞:斎藤信夫 作曲:海沼實
1.
静かな静かな 里の秋
お背戸(せど)に木の実の 落ちる夜は
ああ母さんと ただ二人
栗の実煮てます いろりばた
2.
明るい明るい 星の空
鳴き鳴き夜鴨(よがも)の 渡る夜は
ああ父さんの あの笑顔
栗の実食べては 思い出す
3.
さよならさよなら 椰子(やし)の島
お舟にゆられて 帰られる
ああ父さんよ 御無事でと
今夜も母さんと 祈ります
「里の秋」は、太平洋戦争終戦直後の混乱期昭和20年12月に、外地からの引揚者・復員兵を励ますために作られラジオで発表された曲でした。
昭和21年から始まる「復員だより」のテーマソングになり、毎日ラジオから流されることになり、戦後の混乱期の国民の傷ついた心を浄化するように染み渡り、誰もが知る抒情歌になって行きました。
この「里の秋」には、元になった歌詞があります。
里の秋を作詞した斎藤信夫さんの「星月夜(ほしづきよ)」です。
星月夜 作詞:斎藤信夫
1.
静かな静かな 里の秋
お背戸(せど)に木の実の 落ちる夜は
ああ母さんと ただ二人
栗の実煮てます いろりばた
2.
明るい明るい 星の夜
鳴き鳴き夜鴨(よがも)の 渡る夜は
ああ父さんの あの笑顔
栗の実食べては 思い出す
3.
きれいなきれいな 椰子(やし)の島
しっかり護って 下さいと
ああ父さんの ご武運を
今夜も一人で 祈ります
4.
大きく大きく なったなら
兵隊さんだよ うれしいな
ねえ母さんよ 僕だって
必ずお国を 護ります
太平洋戦争開戦に沸く昭和16年に書かれた詩で4番までありました。
いかにも軍靴の音が聞こえてきそうですし、「お国のために命を賭ける」という考えの元、日の丸の旗を掲げバンザイをして戦地へ送り出した様子が目に浮かびます。
終戦後の昭和20年暮れに、NHKのラジオで復員兵や引き揚げ者らを励ます番組の企画の話が持ち上がり、そこで流す歌の制作依頼を受けたのが海沼實さんです。
番組の企画の話から放送日までは一週間しか無かった為、海沼實さんが適当な詩はないかと探していて見つけたのが「星月夜」でした。
ただ、3番と4番の歌詞そのままでは戦時中の内容になってしまうので、この部分を作り変えてほしいと斎藤信夫さんに頼み、新たに3番の歌詞を書き上げてNHKから放送されました。
この時にタイトルも「星月夜」から「里の秋」に変えられました。
敗戦して愚かさに気づき、父の無事を願う普通の子どもの姿が描かれた3番の歌詞を読むと、元の3番4番との違いがはっきりとわかります。
と言う訳で「里の秋」の元歌は、戦争高揚のために書かれた「星月夜」だったのです。
このようなエピソードがあった事を頭に入れて演奏すると、ただの抒情歌とは違う一味違った演奏が出来るのはないかと思い紹介させていただいた次第です。