劉 慈欣/著 大森 望、立原 透耶、上原 かおり、泊 功/訳 「三体Ⅱ 黒暗森林(上)」読了
「三体」の続編だ。第Ⅱ部は上下巻に分かれている。
ケンタウルス座α星系に住む“三体文明人”は自らの星系の寿命が尽きようとしているとき、地球から発射されたメッセージを受け取った彼らは地球を侵略して移住しようと考える。三体文明人が放った陽子サイズのスーパーコンピューター「智子」を通して地球人が得た情報は、彼らは光速の10%の速度を持つ1000隻余りの宇宙艦隊を派遣しそれは450年後に地球に到達するという。(光速の10%の速度なら40年で到達できそうなものだが、加速と減速を要するので450年かかるという設定になっている。)
地球よりもはるかに進んだ文明の侵略者の前に地球人は一時絶望する。
というのが第Ⅰ部のあらすじだ。
第Ⅱ部は主人公も変わり、天文学者から社会学者に転じた若い学者である。
450年後の危機を前に、国連は、安全保障理事会を元に国連惑星防衛理事会という組織を立ち上げた。陽子サイズの「智子」は、どこへでも移動し、地球上のすべてのコミュニケーションを傍受できる。また、陽子サイズであるがゆえ、地球圏でおこなわれる各種の物理実験、これは三体文明に対抗するための新たなテクノロジーを開発するために必要なのであるが、その実験に干渉し正しい実験結果を出させないようにできる。そのことが地球人のテクノロジーの開発の足かせになる。
また、量子フォーメーションのゆらぎを利用したリアルタイム通信を続けている地球三体協会(この組織は三体文明を主と崇め、一枚岩とは言えないが、地球は三体文明によって滅ぼされるべきだと考えている。)から、三体文明人は個々のコミュニケーションはテレパシーのようなものでおこなわれ、お互い隠し事ができない。よって、地球人に理解できる“欺瞞”という概念が理解できない。また、地球上のすべてのコミュニケーションを傍受できる「智子」でも、人の心の中で考えることを知ることができない。という情報を得る。
それを受けて、「面壁計画」というものを立案する。これは、三体文明に打ち勝つため、4人の面壁者を選出し、それぞれの面壁者がひとりで頭の中で作戦を練るというものだ。
そうすることで「智子」に知られることなく、すなわち三体文明に知られることなく打倒策を練ることができるのだ。しかし、使えるテクノロジーは現代のテクノロジーの延長でしかない。また、面壁者の存在を知った三体文明人は地球三体協会を使い面壁者の作戦を暴くため破壁人を送り込む。そのうちのひとりは破壁人に作戦を暴かれ自殺してしまう。ふたりは自分が立てた作戦に必要なテクノロジーが出来上がるまで人工冬眠に入り、最後のひとり、この物語の主人公であるが、最初、他の3名と異なり、社会的な地位も名誉もない自分が選ばれたことに戸惑い義務を放棄しようとする。しかし、自分が心の中に作り上げた理想の女性とうり二つの女性が現れその女性が主人公に未来を託すと言葉を残して失踪したことで考えを改める。
他の3名とはまったく異なるアプローチで50光年先にある星系に三体世界へメッセージを送った同じ方法で謎めいた呪文を送るよう指示する。その直後、個人の特定の遺伝子を標的にしたウィルスに冒され昏睡状態に陥る。そして、死を目前にして国連惑星防衛理事会によって人工冬眠状態に処置される。未来の医学の進歩に賭けて。
何かの答えが出るのは早くても100年後だ。しかし、彼がそのときに生きていないとその呪文の意味は解かれない。
そしてもうひとりの主人公である中国軍人は創設された宇宙軍に入隊する。
中国は自らの力で宇宙艦隊を組織し、三体危機に対峙しようとしている。艦隊の建造にあたり、高性能で航続距離の長い戦艦を建造するため反対する科学者を暗殺する。そして志を同じくする将校たちを人工冬眠させ未来へとたくす・・。
というのがかなりネタバレだがあらすじである。
しかし、異星人が襲来したり異常気象に立ち向かうのはもっぱらアメリカ合衆国であったが、この小説ではそれが中国になっている。米中の軋轢というのが話題になっているけれどもおそらくこの小説のようにそれほど遠くない時代には中国が世界をリードしているに違いないと思うのだ。テクノロジーを発達させるためには独裁というのは好都合に違いない。誰にも反対されずに危険な実験もできるし、人の命も惜しまない。リソースも使い放題だ。
時代は変わってしまった感がある。
しかし、宇宙人がやってきてそれを撃退したとしても何の利益もないとなるとそれもどうなるか。まあ、勝ち抜けたときには本当に世界の覇権を握れるという利得のために中国は頑張ってくれるのだろうか。
次の1冊が楽しみだ。
「三体」の続編だ。第Ⅱ部は上下巻に分かれている。
ケンタウルス座α星系に住む“三体文明人”は自らの星系の寿命が尽きようとしているとき、地球から発射されたメッセージを受け取った彼らは地球を侵略して移住しようと考える。三体文明人が放った陽子サイズのスーパーコンピューター「智子」を通して地球人が得た情報は、彼らは光速の10%の速度を持つ1000隻余りの宇宙艦隊を派遣しそれは450年後に地球に到達するという。(光速の10%の速度なら40年で到達できそうなものだが、加速と減速を要するので450年かかるという設定になっている。)
地球よりもはるかに進んだ文明の侵略者の前に地球人は一時絶望する。
というのが第Ⅰ部のあらすじだ。
第Ⅱ部は主人公も変わり、天文学者から社会学者に転じた若い学者である。
450年後の危機を前に、国連は、安全保障理事会を元に国連惑星防衛理事会という組織を立ち上げた。陽子サイズの「智子」は、どこへでも移動し、地球上のすべてのコミュニケーションを傍受できる。また、陽子サイズであるがゆえ、地球圏でおこなわれる各種の物理実験、これは三体文明に対抗するための新たなテクノロジーを開発するために必要なのであるが、その実験に干渉し正しい実験結果を出させないようにできる。そのことが地球人のテクノロジーの開発の足かせになる。
また、量子フォーメーションのゆらぎを利用したリアルタイム通信を続けている地球三体協会(この組織は三体文明を主と崇め、一枚岩とは言えないが、地球は三体文明によって滅ぼされるべきだと考えている。)から、三体文明人は個々のコミュニケーションはテレパシーのようなものでおこなわれ、お互い隠し事ができない。よって、地球人に理解できる“欺瞞”という概念が理解できない。また、地球上のすべてのコミュニケーションを傍受できる「智子」でも、人の心の中で考えることを知ることができない。という情報を得る。
それを受けて、「面壁計画」というものを立案する。これは、三体文明に打ち勝つため、4人の面壁者を選出し、それぞれの面壁者がひとりで頭の中で作戦を練るというものだ。
そうすることで「智子」に知られることなく、すなわち三体文明に知られることなく打倒策を練ることができるのだ。しかし、使えるテクノロジーは現代のテクノロジーの延長でしかない。また、面壁者の存在を知った三体文明人は地球三体協会を使い面壁者の作戦を暴くため破壁人を送り込む。そのうちのひとりは破壁人に作戦を暴かれ自殺してしまう。ふたりは自分が立てた作戦に必要なテクノロジーが出来上がるまで人工冬眠に入り、最後のひとり、この物語の主人公であるが、最初、他の3名と異なり、社会的な地位も名誉もない自分が選ばれたことに戸惑い義務を放棄しようとする。しかし、自分が心の中に作り上げた理想の女性とうり二つの女性が現れその女性が主人公に未来を託すと言葉を残して失踪したことで考えを改める。
他の3名とはまったく異なるアプローチで50光年先にある星系に三体世界へメッセージを送った同じ方法で謎めいた呪文を送るよう指示する。その直後、個人の特定の遺伝子を標的にしたウィルスに冒され昏睡状態に陥る。そして、死を目前にして国連惑星防衛理事会によって人工冬眠状態に処置される。未来の医学の進歩に賭けて。
何かの答えが出るのは早くても100年後だ。しかし、彼がそのときに生きていないとその呪文の意味は解かれない。
そしてもうひとりの主人公である中国軍人は創設された宇宙軍に入隊する。
中国は自らの力で宇宙艦隊を組織し、三体危機に対峙しようとしている。艦隊の建造にあたり、高性能で航続距離の長い戦艦を建造するため反対する科学者を暗殺する。そして志を同じくする将校たちを人工冬眠させ未来へとたくす・・。
というのがかなりネタバレだがあらすじである。
しかし、異星人が襲来したり異常気象に立ち向かうのはもっぱらアメリカ合衆国であったが、この小説ではそれが中国になっている。米中の軋轢というのが話題になっているけれどもおそらくこの小説のようにそれほど遠くない時代には中国が世界をリードしているに違いないと思うのだ。テクノロジーを発達させるためには独裁というのは好都合に違いない。誰にも反対されずに危険な実験もできるし、人の命も惜しまない。リソースも使い放題だ。
時代は変わってしまった感がある。
しかし、宇宙人がやってきてそれを撃退したとしても何の利益もないとなるとそれもどうなるか。まあ、勝ち抜けたときには本当に世界の覇権を握れるという利得のために中国は頑張ってくれるのだろうか。
次の1冊が楽しみだ。