ハリークリフ/著 熊谷 玲美/訳 「物質は何からできているのか アップルパイのレシピから素粒子を考えてみた」読了
素粒子物理学について書かれた本だ。「標準モデル」という理論では、銀河や恒星、惑星、そして人間までもがわずか数種類の粒子からできているというもので、そうした粒子は原子や分子の内部で数種の基本的な力によって互いに結合しているとされている。
原子核の重量はその原子質量の99.5%を占めるのだけれども、その大きさは原子そのものの3万分の1しかない。原子核はいくつかの陽子と中性子によって構成されているが、その中性子は原子核という安全な領域の外では短命で不安定であり、15分しか寿命がないという。それを過ぎると自発的に崩壊して1個の中性子が陽子1個、電子1個とニュートリノに変わってしまう。
陽子はプラスの電荷を持っているのでお互いに電気的には反発をし合う。しかし、その間の距離が1000兆分の数メートル以内になるとまったく新しい引力が働くようになる。これを「強い核力」という。陽子同士の反発力というのは1000兆分の1メートルの距離で5キログラムのダンベルに働く地球の重力に相当するそうだ。大した力でもなさそうだが、その力がかかっている陽子の重さは0.0000000000000000000000000017キログラムしかないのである。
その反発力を乗り越えて強い核力を働かせようとするには陽子が超高速で動き回っている必要がある。それには数千万度というような高温が必要になるのだが、そんな場所というのは宇宙のなかでは唯一、恒星の中なのである。
こういった素粒子についての一般向け書籍というのはいくらでもあると思うのだが、この本の面白いところは、アップルパイを構成している素粒子はどこからどうやって生まれ、それが原子に形作られていく過程を料理のレシピに例えていることだ。そして厨房は宇宙であり、恒星であるとしているのである。そこになぜアップルパイが出てくるのかというと、1980年、多分僕も観ていたのだと思うが、カール・セーガンの「コスモス」の第9話の冒頭のシーンにアップルパイが登場し、カール・セーガンが「アップルパイをゼロから作りたかったら、まず宇宙を発明しなければなりません。」と語ったことかららしい。
著者もそれに倣い、素粒子の世界をアップルパイから遡って行こうとしているのである。
まずはアップルパイを構成している物質を探るため、それを燃やすことから始まる。炭素らしきものが見えてくるが、それをさらに細かく砕いてゆくと、炭素原子の中の構造が見えてくる。原子核と電子だ。さらに詳細に見てゆくと原子核は先に書いた通り、陽子と中性子が見えてくる。陽子と中性子を構成しているのはクォークである。
クォーク同士は「強い力」で結合して陽子や中性子を作り出している。強い力を生み出すはグルーオンという粒子である。強い力の仲間(かどうか知らないが・・)に「弱い力」というものがある。これはベータ崩壊という、中性子が1個の陽子と電子、そして反ニュートリノに変身させる力だそうだ。素粒子の間に働く力にはそのほかに重力、電磁気力と合計4個の力がある。
「クォーク」の存在を予言し、名前を付けた科学者はマレー・ゲルマンという人だそうだが、命名のきっかけとなったのは、アイルランドの作家が書いたファンタジー小説に出てくる呪文のような一文だったらしい。
この本の特徴は素粒子物理学という訳のわからない話をこういった面白いエピソードやそれを発見した科学者たちのちょっと普通ではない日常生活の面白さ、その現象を一般人でもわかるようなたとえ話で解説してくれているのだが、それでもこんな奇妙な世界はまったく理解ができない。しかし、その奇妙さゆえにか、なぜだか引き込まれてしまう。
ここからはかなりそれを端折って多分こんなことだろうと勝手に解釈しながら書いていくのだが、結局、すべての物質を構成しているもの(この本ではアップルパイの材料リストと呼んでいる。)は電子とアップクォーク、ダウンクォークの三つに絞られるという。厳密にいうと、これらの素粒子をくっつけるためのグルーオンという粒子も必要らしいが、とにかう三つがメインらしい。
そしてこれらの粒子の正体というのが物質ではなく、「場」と呼ばれるものに生じる「さざ波」であるというのである。例えば、電子というのは「電子場」の中に生じたさざ波だというのである。
この「場」であるが、三つどころか、標準モデルの中では25種類もあるそうだ。強い力を生み出すのもグルーオン場から生まれるグルーオンなのであり、電磁力が働くのも電磁場があってからだこそというのである。真空は何もない空間ではなく、「真空のエネルギー」で満たされているというが、このさざ波で満たされているというとなのだろうか・・?
宇宙戦艦ヤマトの主エンジンは波動エンジンという名前が付けられているがこのさざ波をエネルギー源にしているとしたら、本当は「さざ波エンジン」というべきかもしれない。あんまりパッとしない名前ではあるが・・。
しかし、実はこれはさざ波どころではない。真空のエネルギーにはこんな秘密があるらしい。
『まったく粒子がない量子場でも完全に静かなことはないという事実がある。静かな池の水面がきらきらと揺らめいているみたいに、量子場はいつも小さく振動している。そうした小さな振動の原因はハイゼンベルクの有名な不確定性原理だ。この原理は、ある場が厳密にゼロのエネルギーを持つということを許さない。代わりに空っぽの場はゼロの値の周りをつねに揺れ動いていなければならない。
理論的には、こうした量子的な振動にはエネルギーがある。どのくらいのエネルギーかというと、それはその量子場をどのくらい近くで見るかによるという。不確定性原理のおかげで、量子場にズームインして、それを短距離から見るほど、そうした振動のサイズはどんどん大きくなる。これが意味するのは、無限に近いところまでズームインすれば、その振動は無限に大きくなって、真空に無限のエネルギーを与えることになる。
実際には無限にズームインはできない。それは極めて短い距離になると重力が作用し始めるからだ。この特別な距離はプランク長と呼ばれ、大体、1メートルの1兆分の1の1兆分の1のさらに1兆分の16である。プランク長とクォーク1個の大きさの比は、クォーク1個と人間の身長の比に等しい。
プランク長はこれほど小さいので、この距離で見る量子場のエネルギーは無限とは言わないが非常に大きく、1立方センチメートルの空っぽに見える空間には、観測可能な宇宙にあるすべての星を何度も繰り返し吹き飛ばすのに十分なエネルギーがある。』というのである。
ということは、宇宙戦艦ヤマトはミクロなサイズになればなるほど強力な破壊力を得られるようになるといことだろうか。沖田艦長の声が甲高くなればなるほど波動砲の威力が増してくる・・。これは面白い・・。
う~ん、もっとわからなくなってくる。そして、このような不思議な波に質量を与えているのがヒッグス粒子であるというのである。ヒッグス粒子であるのでヒッグス場というところにできたさざ波ということになるのだがなんだか想像がつかないのである。とりあえずは何もかもが「波」であるということだろうか・・。それでは僕の体もすべて波でできているといのだろうか・・。まさにやっぱり、「一切は空」である・・。
そして、クォークから電子や陽子たちが作られる機会というのは宇宙の歴史のなかで唯一、ビッグバン、すなわち宇宙の始まりのその瞬間しかなかったと考えられているそうだ。
ビッグバンの1兆分の1秒後にヒッグス場ができて素粒子に重力を与える。そして100万分の1秒以内にクォークと反クォーク、電子と陽電子というものが生まれることと対消滅することを繰り返した。しかし、どうしたことか、100億個に1個という割合で粒子が生き残った。この100億個に1個の不均衡がこの宇宙が存在する理由らしい。
う~ん、やっぱりわからない。しかしひとつだけ確かなことは180億年前、ある一点から同時に現在の宇宙のすべての物質が生まれたということは僕の体を作っている物質と天野アキちゃんを作っている物質は180億年前から100万分の1秒経ったころにはまったくお隣同士だったということだ。おお、これは僕とアキちゃんも兄弟だといってもいいのではないか!兄弟よりも恋人でありたいとは思うのだが・・。
まあ、そんなことはどうでもよい、次に考えなければならないのは100億個にひとつの不均衡についてだ。この不均衡が成り立つ条件はサハロフの条件と呼ばれ、
① 反クォークよりも多くのクォークを作り出せるようなプロセスが存在しなければならない。
② 物質と反物質の対称性が破れていなければならない。
③ この生成物プロセスが起こったときには、宇宙は熱平衡から外れていなければならない。
すでにその意味はまったくわからなくなっているのでとりあえず書いているだけである。ただ、この中の対称性の破れというものを発見した科学者はノーベル賞をもらったというのだから、世紀の大発見であったということは間違いがない。そして、この破れの要因となっているのが、粒子というのはスピンをしていて、その回転方向には左利きと右利きがあって、弱い力は左利きの粒子を好む傾向があるので対称性が破れたのであるというのだが、やっぱりまったくわからない。
それに加えて、スレファロンというものがあって、これは反物質を物質に変える働きがあり、1兆分の1秒後のヒッグス場には泡があり泡の外ではスレファロンが反クォークをクォークに変換することによって、反クォークよりもクォークのほうが多くなったというのである。
どうだ、まったくわからないだろう・・。
そんなチンプンカンプンな状況の中に畳み掛けるように、「超対称性理論」なるものが襲いかかる。もう、まったくお手上げなのである。
しかし、こういう話というのはあくまでも理論上の話であって、実験や観測でそれを見るということはなかなか叶わない。こういった現象を観測するための施設というのがコライダーと呼ばれる加速器である。陽子や電子を光の速さ近くまで加速し衝突させてそこに発生する現象を観測するものだが、クォーク間に引力が働き始めるという特別な距離であるプランク長スケールで何が起こるかということを観測しようとするとそこには小さなブラックホールができてしまい、真実は「事象の地平線」の中に隠れてしまうので観測できなくなるというのである。
ということで、この本のテーマであるアップルパイを作っている素粒子がどうやって生まれたのかというのは事象の地平線の向こうに隠れてしまって見つけることができないという結論になってしまう。
これは「還元主義」という、哲学から科学が枝分かれした500年前頃からずっと続いてきた、「世界を説明するためには、それを基本的な材料に分割してゆけばよい」という考え方の限界を示している。
ここからが著者が一番伝えたかったことのように思えるのだが、世の中には、「素粒子物理学は何の役に立つのかという意見がある。しかし、基礎研究の知識がいつか役に立つということの可能性を無視してはいけない。」ということである。
今は還元主義的な実験と観測を続けるべきである。いつかきっと物質の構成単位とその起源を解き明かすときがくるのかもしれず、その結果は、人類を宇宙の果てまで連れていってくれるのかもしれない。しかし、素粒子物理学の基本的な理論や様々な粒子の存在の予言は50年も前に作られたものであるがいまだにその実体は欠けらさえも見つけられていないといってもいいかもしれない。素粒子のすべてが解き明かされたとしても、そのあとには宇宙の95%を占めるダークマター(ドンケル・マテリエ)が控えている。
「標準モデル」さえも宇宙の真理のほんのひとつのパーツに過ぎないのかもしれないのである。
しかし、太陽が膨張を始めて人間が地球に住めなくなる頃までには、まだ億年単位で残っている。きっとそれまでには人類はブラックホールの内側を覗くことに成功して宇宙のどこかに脱出することができているのかもしれない。
そうなると、やっぱり数百億円という各国の加速器の建造費というのも無駄ではないのかもしれない。
出てくる数式は1つだけで文章も平易だし、その内容は下手なSF小説を読んでいるよりもはるかに面白い。とりあえず書き留めた内容のほかには、玄理論、多重宇宙、重力波いろいろな話題が取り上げられている。しかし、僕のポンコツ脳ではうまく書くことができない。億年単位で読み込んでみても僕には理解ができないだろう。僕の人生ははるかに短いのである。
今回もよくわからない素粒子についての質問をAIにしてみると、彼らも世界中からたくさんの質問が相次いでいるので疲れているのか、「詳しくはウイキペディアを見てください。」というような答えが返ってくる。「リンクじゃなくて書き出しをしてくれますか。」ともう一度聞きなおすと、「もちろんです。」と答えが返ってきた。本当に誰かと会話をしているようだ。AIというものがAIと呼べるほど発達するまでにどれくらいの年数がかかったのかは知らないが、人間はここまでやれるのならきっといつかは素粒子の世界も解明してしまうのだろうと思ってしまうのである。
素粒子物理学について書かれた本だ。「標準モデル」という理論では、銀河や恒星、惑星、そして人間までもがわずか数種類の粒子からできているというもので、そうした粒子は原子や分子の内部で数種の基本的な力によって互いに結合しているとされている。
原子核の重量はその原子質量の99.5%を占めるのだけれども、その大きさは原子そのものの3万分の1しかない。原子核はいくつかの陽子と中性子によって構成されているが、その中性子は原子核という安全な領域の外では短命で不安定であり、15分しか寿命がないという。それを過ぎると自発的に崩壊して1個の中性子が陽子1個、電子1個とニュートリノに変わってしまう。
陽子はプラスの電荷を持っているのでお互いに電気的には反発をし合う。しかし、その間の距離が1000兆分の数メートル以内になるとまったく新しい引力が働くようになる。これを「強い核力」という。陽子同士の反発力というのは1000兆分の1メートルの距離で5キログラムのダンベルに働く地球の重力に相当するそうだ。大した力でもなさそうだが、その力がかかっている陽子の重さは0.0000000000000000000000000017キログラムしかないのである。
その反発力を乗り越えて強い核力を働かせようとするには陽子が超高速で動き回っている必要がある。それには数千万度というような高温が必要になるのだが、そんな場所というのは宇宙のなかでは唯一、恒星の中なのである。
こういった素粒子についての一般向け書籍というのはいくらでもあると思うのだが、この本の面白いところは、アップルパイを構成している素粒子はどこからどうやって生まれ、それが原子に形作られていく過程を料理のレシピに例えていることだ。そして厨房は宇宙であり、恒星であるとしているのである。そこになぜアップルパイが出てくるのかというと、1980年、多分僕も観ていたのだと思うが、カール・セーガンの「コスモス」の第9話の冒頭のシーンにアップルパイが登場し、カール・セーガンが「アップルパイをゼロから作りたかったら、まず宇宙を発明しなければなりません。」と語ったことかららしい。
著者もそれに倣い、素粒子の世界をアップルパイから遡って行こうとしているのである。
まずはアップルパイを構成している物質を探るため、それを燃やすことから始まる。炭素らしきものが見えてくるが、それをさらに細かく砕いてゆくと、炭素原子の中の構造が見えてくる。原子核と電子だ。さらに詳細に見てゆくと原子核は先に書いた通り、陽子と中性子が見えてくる。陽子と中性子を構成しているのはクォークである。
クォーク同士は「強い力」で結合して陽子や中性子を作り出している。強い力を生み出すはグルーオンという粒子である。強い力の仲間(かどうか知らないが・・)に「弱い力」というものがある。これはベータ崩壊という、中性子が1個の陽子と電子、そして反ニュートリノに変身させる力だそうだ。素粒子の間に働く力にはそのほかに重力、電磁気力と合計4個の力がある。
「クォーク」の存在を予言し、名前を付けた科学者はマレー・ゲルマンという人だそうだが、命名のきっかけとなったのは、アイルランドの作家が書いたファンタジー小説に出てくる呪文のような一文だったらしい。
この本の特徴は素粒子物理学という訳のわからない話をこういった面白いエピソードやそれを発見した科学者たちのちょっと普通ではない日常生活の面白さ、その現象を一般人でもわかるようなたとえ話で解説してくれているのだが、それでもこんな奇妙な世界はまったく理解ができない。しかし、その奇妙さゆえにか、なぜだか引き込まれてしまう。
ここからはかなりそれを端折って多分こんなことだろうと勝手に解釈しながら書いていくのだが、結局、すべての物質を構成しているもの(この本ではアップルパイの材料リストと呼んでいる。)は電子とアップクォーク、ダウンクォークの三つに絞られるという。厳密にいうと、これらの素粒子をくっつけるためのグルーオンという粒子も必要らしいが、とにかう三つがメインらしい。
そしてこれらの粒子の正体というのが物質ではなく、「場」と呼ばれるものに生じる「さざ波」であるというのである。例えば、電子というのは「電子場」の中に生じたさざ波だというのである。
この「場」であるが、三つどころか、標準モデルの中では25種類もあるそうだ。強い力を生み出すのもグルーオン場から生まれるグルーオンなのであり、電磁力が働くのも電磁場があってからだこそというのである。真空は何もない空間ではなく、「真空のエネルギー」で満たされているというが、このさざ波で満たされているというとなのだろうか・・?
宇宙戦艦ヤマトの主エンジンは波動エンジンという名前が付けられているがこのさざ波をエネルギー源にしているとしたら、本当は「さざ波エンジン」というべきかもしれない。あんまりパッとしない名前ではあるが・・。
しかし、実はこれはさざ波どころではない。真空のエネルギーにはこんな秘密があるらしい。
『まったく粒子がない量子場でも完全に静かなことはないという事実がある。静かな池の水面がきらきらと揺らめいているみたいに、量子場はいつも小さく振動している。そうした小さな振動の原因はハイゼンベルクの有名な不確定性原理だ。この原理は、ある場が厳密にゼロのエネルギーを持つということを許さない。代わりに空っぽの場はゼロの値の周りをつねに揺れ動いていなければならない。
理論的には、こうした量子的な振動にはエネルギーがある。どのくらいのエネルギーかというと、それはその量子場をどのくらい近くで見るかによるという。不確定性原理のおかげで、量子場にズームインして、それを短距離から見るほど、そうした振動のサイズはどんどん大きくなる。これが意味するのは、無限に近いところまでズームインすれば、その振動は無限に大きくなって、真空に無限のエネルギーを与えることになる。
実際には無限にズームインはできない。それは極めて短い距離になると重力が作用し始めるからだ。この特別な距離はプランク長と呼ばれ、大体、1メートルの1兆分の1の1兆分の1のさらに1兆分の16である。プランク長とクォーク1個の大きさの比は、クォーク1個と人間の身長の比に等しい。
プランク長はこれほど小さいので、この距離で見る量子場のエネルギーは無限とは言わないが非常に大きく、1立方センチメートルの空っぽに見える空間には、観測可能な宇宙にあるすべての星を何度も繰り返し吹き飛ばすのに十分なエネルギーがある。』というのである。
ということは、宇宙戦艦ヤマトはミクロなサイズになればなるほど強力な破壊力を得られるようになるといことだろうか。沖田艦長の声が甲高くなればなるほど波動砲の威力が増してくる・・。これは面白い・・。
う~ん、もっとわからなくなってくる。そして、このような不思議な波に質量を与えているのがヒッグス粒子であるというのである。ヒッグス粒子であるのでヒッグス場というところにできたさざ波ということになるのだがなんだか想像がつかないのである。とりあえずは何もかもが「波」であるということだろうか・・。それでは僕の体もすべて波でできているといのだろうか・・。まさにやっぱり、「一切は空」である・・。
そして、クォークから電子や陽子たちが作られる機会というのは宇宙の歴史のなかで唯一、ビッグバン、すなわち宇宙の始まりのその瞬間しかなかったと考えられているそうだ。
ビッグバンの1兆分の1秒後にヒッグス場ができて素粒子に重力を与える。そして100万分の1秒以内にクォークと反クォーク、電子と陽電子というものが生まれることと対消滅することを繰り返した。しかし、どうしたことか、100億個に1個という割合で粒子が生き残った。この100億個に1個の不均衡がこの宇宙が存在する理由らしい。
う~ん、やっぱりわからない。しかしひとつだけ確かなことは180億年前、ある一点から同時に現在の宇宙のすべての物質が生まれたということは僕の体を作っている物質と天野アキちゃんを作っている物質は180億年前から100万分の1秒経ったころにはまったくお隣同士だったということだ。おお、これは僕とアキちゃんも兄弟だといってもいいのではないか!兄弟よりも恋人でありたいとは思うのだが・・。
まあ、そんなことはどうでもよい、次に考えなければならないのは100億個にひとつの不均衡についてだ。この不均衡が成り立つ条件はサハロフの条件と呼ばれ、
① 反クォークよりも多くのクォークを作り出せるようなプロセスが存在しなければならない。
② 物質と反物質の対称性が破れていなければならない。
③ この生成物プロセスが起こったときには、宇宙は熱平衡から外れていなければならない。
すでにその意味はまったくわからなくなっているのでとりあえず書いているだけである。ただ、この中の対称性の破れというものを発見した科学者はノーベル賞をもらったというのだから、世紀の大発見であったということは間違いがない。そして、この破れの要因となっているのが、粒子というのはスピンをしていて、その回転方向には左利きと右利きがあって、弱い力は左利きの粒子を好む傾向があるので対称性が破れたのであるというのだが、やっぱりまったくわからない。
それに加えて、スレファロンというものがあって、これは反物質を物質に変える働きがあり、1兆分の1秒後のヒッグス場には泡があり泡の外ではスレファロンが反クォークをクォークに変換することによって、反クォークよりもクォークのほうが多くなったというのである。
どうだ、まったくわからないだろう・・。
そんなチンプンカンプンな状況の中に畳み掛けるように、「超対称性理論」なるものが襲いかかる。もう、まったくお手上げなのである。
しかし、こういう話というのはあくまでも理論上の話であって、実験や観測でそれを見るということはなかなか叶わない。こういった現象を観測するための施設というのがコライダーと呼ばれる加速器である。陽子や電子を光の速さ近くまで加速し衝突させてそこに発生する現象を観測するものだが、クォーク間に引力が働き始めるという特別な距離であるプランク長スケールで何が起こるかということを観測しようとするとそこには小さなブラックホールができてしまい、真実は「事象の地平線」の中に隠れてしまうので観測できなくなるというのである。
ということで、この本のテーマであるアップルパイを作っている素粒子がどうやって生まれたのかというのは事象の地平線の向こうに隠れてしまって見つけることができないという結論になってしまう。
これは「還元主義」という、哲学から科学が枝分かれした500年前頃からずっと続いてきた、「世界を説明するためには、それを基本的な材料に分割してゆけばよい」という考え方の限界を示している。
ここからが著者が一番伝えたかったことのように思えるのだが、世の中には、「素粒子物理学は何の役に立つのかという意見がある。しかし、基礎研究の知識がいつか役に立つということの可能性を無視してはいけない。」ということである。
今は還元主義的な実験と観測を続けるべきである。いつかきっと物質の構成単位とその起源を解き明かすときがくるのかもしれず、その結果は、人類を宇宙の果てまで連れていってくれるのかもしれない。しかし、素粒子物理学の基本的な理論や様々な粒子の存在の予言は50年も前に作られたものであるがいまだにその実体は欠けらさえも見つけられていないといってもいいかもしれない。素粒子のすべてが解き明かされたとしても、そのあとには宇宙の95%を占めるダークマター(ドンケル・マテリエ)が控えている。
「標準モデル」さえも宇宙の真理のほんのひとつのパーツに過ぎないのかもしれないのである。
しかし、太陽が膨張を始めて人間が地球に住めなくなる頃までには、まだ億年単位で残っている。きっとそれまでには人類はブラックホールの内側を覗くことに成功して宇宙のどこかに脱出することができているのかもしれない。
そうなると、やっぱり数百億円という各国の加速器の建造費というのも無駄ではないのかもしれない。
出てくる数式は1つだけで文章も平易だし、その内容は下手なSF小説を読んでいるよりもはるかに面白い。とりあえず書き留めた内容のほかには、玄理論、多重宇宙、重力波いろいろな話題が取り上げられている。しかし、僕のポンコツ脳ではうまく書くことができない。億年単位で読み込んでみても僕には理解ができないだろう。僕の人生ははるかに短いのである。
今回もよくわからない素粒子についての質問をAIにしてみると、彼らも世界中からたくさんの質問が相次いでいるので疲れているのか、「詳しくはウイキペディアを見てください。」というような答えが返ってくる。「リンクじゃなくて書き出しをしてくれますか。」ともう一度聞きなおすと、「もちろんです。」と答えが返ってきた。本当に誰かと会話をしているようだ。AIというものがAIと呼べるほど発達するまでにどれくらいの年数がかかったのかは知らないが、人間はここまでやれるのならきっといつかは素粒子の世界も解明してしまうのだろうと思ってしまうのである。