今日は歯のクラウン治療の最終日。
これでやっと、両側の歯で噛みながら食べることができると、今までの不便さに耐えてきた自分を労いながら出かけた。
左下の奥歯の3本に問題が発生して、インプラントだのクラウンだの、やたらと費用のかかる治療を、1年以上も実費で受け続けてきた。
払った費用はゆうに50万円は超えている。
今日でとりあえず一息ついて、こんなカオスからせめて数ヶ月の間は遠ざかっていたい。
その日がやっとやって来たのだ。
そんな感慨にも似た思いに浸りながら、治療椅子に座ってパク先生を待っていた。
この1ヶ月は、半年以上も続いたインプラントの仕上げのクラウンが無事終わり、やれやれと思った矢先に、そのすぐ隣の親知らずの歯の詰め物が外れ、その歯もかなり痛んでいたので四角い土台になるまで削ってクラウンを被せる治療を進めていた。
今日はその治療の最終日だった。
でも、1週間前に受けた治療の後、ずっと左奥の頬の内側が痛かったので、そのことを伝えると、どれどれとチェックし始めたパク先生。
「まうみさん、あなた、この頬の内側の、しかも両側の、何か手術とか受けましたか?」
「え?手術?」
「ええ、手術です」
「いいえ、一度も受けたことがありません」
「うーん…おかしいなあ…では、この痛みはいつからですか?」
「えっと…先週に治療を受けてからだと思います」
「そんなはずはないと思いますよ。かなり前から継続していたはずです」
「…」
そういえば、たまにほっぺたの内側が痛んで、よく噛めなかったり大きな口を開けることができなかったりした。
そういう時はいつも、ああまた疲れ過ぎて頬の内側が腫れたのかな、それで噛んでしまったのかなと思っていた。
そう話すと、「これまでよく我慢してきましたね」と言って、中の様子を撮影しながら見せてくれた。
見るからに痛そうな映像を見て、一体何が起こったのかと首を捻っていると、
「あなたの親知らずの歯が頬の内側のギリギリにあって、それで無意識に噛んでしまっているのです。このままだともっと悪化すると思います。上下ともに抜歯した方がいいと思います」
みるみる青ざめるビビりのわたしを見て、「今すぐに決断しなくてもいいですよ、時間をとってよく考えてください」とパク先生。
「でも、抜かない限りこの痛みは続くのですよね」とわたし。
5分ほど考えた。
親知らずが4本とも残っていることがちょっとした自慢だったのだけど、長年の痛みから解放されるのなら抜いてもらおうと決心した。
「上の親知らずの抜歯は私でもできますが、下の親知らずは口内外科手術になるので専門医がすることになります。その際の専門医の施術料金はここよりは割高になりますが、一度に2本ともやってもらうと1日で済むというメリットがあります」
「パク先生、わたしは歯の保険を持っていないので、便利さのメリットよりも費用を少しでも減らしたいので、上の歯はパク先生にお願いします」
というわけで、呑気な気持ちで出かけたのに、いきなり血圧を測ったり誓約書にサインをしたりの大忙し。
心臓はもうバクバク、サインをする手も震える始末…。
麻酔をガツンと打ってもらわにゃ!いや、局部麻酔だけじゃなくて笑気麻酔も頼んだ方がいいかな?などと考えていると先生がやって来て、
「じゃあ始めましょう!」
え、ちょ、ちょっと待って、ちょっとちょっと!
歯茎を痺れさせるゼリーをチョイチョイと塗って、30秒もしないうちに局部麻酔を打って、またまた30秒もしないうちに抜歯作業を始めようとするパク先生?!
助手の人がわたしの肩を優しくトントンと叩いてくれるのはいいのだけど、わたしはもう完全にパニック状態。
でも痛くないのだ全然。
え?なんで?どうなってんの?
「ちょっと圧を感じますよ」と言いながら先生が力を込めた。
ものの5分もしないうちに、65年間わたしと一緒に生きてきてくれた親知らずさんが抜かれてしまっていた。
「あのー、その歯、家に持って帰ってもいいですか?」と聞くと、びっくりした顔されたけど、きちんと密封して渡してくれた。
抜歯代は200ドル。
でも、今日で終了するはずだったクラウン治療のために払ってきたお金は全額払い戻しにしてくれた。
それどころか、今日のパク先生に払うはずだった治療代の150ドルを、払わなくてもよいことにしてくれた。
パク先生がそう申し出てくれたそうだ。
なんて親切な人たちなんだろう。
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昨日すっかり葉桜に変身したぽんちゃんの、一番べっぴんさんだった時の写真。
曇り空でもべっぴんさん。
山ちゃんに背負ってもらってた猫柳さんの枝から、
知らないうちにこんなにも根っこが生えていた!これをどうしたらいいんだろうか…。
猫柳さんってどんな姿でもうっとりする。
1年半もののお味噌。
納豆のような匂いがする。
盛り上がりがハンパじゃない元気なニワトリさんたちが産んだ卵。
いつも同じところに姿を現して、しばらくポーズをとってくれるリスちゃん。
痒いところをスリスリしたり、
目にも止まらぬ速さでガシガシしたり、
前庭の春その2