昨日の夜から3週間ぶりの大雨が降って、今日は1日中蒸し蒸しと暑い日になった。
なぜか?
それは、雲女がここにやって来たからだ。
彼女は、結局この家に3度訪れてくれたただ一人の人なのだけど、
冬に来たら大雪、夏に来たら雨雲、とにかくただ者ではない。
昨夜はいきなり夜中に気圧が変わり、どんどん湿ってきて、何度も何度も起こされた。なんてデリケートなわたし……。
なので、時差ボケているのはいったいどっち?みたいな1日になった。
夕飯後、台所の小さなテレビをつけたら『サウンド オブ ミュージック』が始まっていて、
彼女もわたしも旦那も、子供の頃から何度も何度も観たというのに、またまたハマって最後まで観てしまった。
そしてドレミの歌を聞いた時……父のドレミを思い出した。
父は、8年前の冬、わたし達が渡米することを決心した直後、末期の胃ガンが見つかって、あっけなく逝ってしまった。
彼には、いろんなことで、いろんな思いをさせられたけれど、なんとも魅力のある人で、どうしても憎めなかった。
それになによりも、彼がわたしをとても愛してくれているのがいつだってひしひしと伝わってきて、
そういう絶対的な愛情はなかなか人からもらえないものなので、わたしも彼が好きだった。
父とわたしと弟と3人でお風呂に入ると、必ず軍歌を合唱した。
「こっこは~おっくに~のな~んびゃくり~、は~なれ~てと~お~きまんしゅうの~」
温泉タオルを水面に浮かし、それで風船を作って遊んだ。
そして彼はなぜだか、おならでいろんな特技(と言えるのかどうか)を披露してくれた。
その中の1番の自慢が、ドレミおならと、花火おならだった。
今から思うと、彼の隠れた努力が忍ばれるのだけど、なんだってそんなことをしようとしたのか、今だにとても疑問なのである。
彼はおもむろに家族を居間に呼び集め、
「ええな、静かにせえよ。いっぺんしかできんことなんやから」と言って、仰向けになって両足を静かに上げた。
わたし達が息をひそめて緊張していると、なんとも奇妙な音が3回、プウ、プウ、プウ。
「どや、ドレミやったやろ、な、ドレミって聞こえたやろ、おい、まうみ、どや?」
どや?って聞かれても……。きっと父は、絶対音感のある娘に証明させたかったに違いないけど、
目の前で両足上げて、おなら3連発をかます父親を見つめる子供の気持ちも考えて欲しいものである。
わたしはかなり悩んでから「う、うん、多分」と答えた。
確かに音程はあった。けれども、下手に褒めたら、次はファまで挑戦しそうなので、ここは慎重にしないといけないと思った。
ちなみに、花火おならは、おならをした瞬間にライターの火を近づけて、一瞬だけ青い火を作るという特技。
そんなこと、なんで自慢したかったんやろ?
とうとう聞けないままに、彼は亡くなってしまった。
ドレミの歌の、ある小さな思い出でした。
なぜか?
それは、雲女がここにやって来たからだ。
彼女は、結局この家に3度訪れてくれたただ一人の人なのだけど、
冬に来たら大雪、夏に来たら雨雲、とにかくただ者ではない。
昨夜はいきなり夜中に気圧が変わり、どんどん湿ってきて、何度も何度も起こされた。なんてデリケートなわたし……。
なので、時差ボケているのはいったいどっち?みたいな1日になった。
夕飯後、台所の小さなテレビをつけたら『サウンド オブ ミュージック』が始まっていて、
彼女もわたしも旦那も、子供の頃から何度も何度も観たというのに、またまたハマって最後まで観てしまった。
そしてドレミの歌を聞いた時……父のドレミを思い出した。
父は、8年前の冬、わたし達が渡米することを決心した直後、末期の胃ガンが見つかって、あっけなく逝ってしまった。
彼には、いろんなことで、いろんな思いをさせられたけれど、なんとも魅力のある人で、どうしても憎めなかった。
それになによりも、彼がわたしをとても愛してくれているのがいつだってひしひしと伝わってきて、
そういう絶対的な愛情はなかなか人からもらえないものなので、わたしも彼が好きだった。
父とわたしと弟と3人でお風呂に入ると、必ず軍歌を合唱した。
「こっこは~おっくに~のな~んびゃくり~、は~なれ~てと~お~きまんしゅうの~」
温泉タオルを水面に浮かし、それで風船を作って遊んだ。
そして彼はなぜだか、おならでいろんな特技(と言えるのかどうか)を披露してくれた。
その中の1番の自慢が、ドレミおならと、花火おならだった。
今から思うと、彼の隠れた努力が忍ばれるのだけど、なんだってそんなことをしようとしたのか、今だにとても疑問なのである。
彼はおもむろに家族を居間に呼び集め、
「ええな、静かにせえよ。いっぺんしかできんことなんやから」と言って、仰向けになって両足を静かに上げた。
わたし達が息をひそめて緊張していると、なんとも奇妙な音が3回、プウ、プウ、プウ。
「どや、ドレミやったやろ、な、ドレミって聞こえたやろ、おい、まうみ、どや?」
どや?って聞かれても……。きっと父は、絶対音感のある娘に証明させたかったに違いないけど、
目の前で両足上げて、おなら3連発をかます父親を見つめる子供の気持ちも考えて欲しいものである。
わたしはかなり悩んでから「う、うん、多分」と答えた。
確かに音程はあった。けれども、下手に褒めたら、次はファまで挑戦しそうなので、ここは慎重にしないといけないと思った。
ちなみに、花火おならは、おならをした瞬間にライターの火を近づけて、一瞬だけ青い火を作るという特技。
そんなこと、なんで自慢したかったんやろ?
とうとう聞けないままに、彼は亡くなってしまった。
ドレミの歌の、ある小さな思い出でした。