ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

黒色すみれと青ひげ公の城

2025年01月21日 | 日本とわたし
心友のあけみちゃんから「友だちの黒色すみれさんが出るショーがマンハッタンのジャパンソサエティであるんだけど、どう?」という連絡をもらいました。
黒色すみれ?え?だれ?
全く知らない名前だったので、インターネットで調べてみました。
黒色すみれは個人名ではなく、ゆかさんとさちさんという、クラシックをしっかり学ばれた音楽家たちによるユニットの名前でした。
一体どうしてあけみちゃんが彼女たちと知り合ったのか、その馴れ初めを彼女から聞かせてもらいました。

それは、あけみちゃんの友人で津在住のカフェのオーナー、マイケルさんと黒色すみれとの出会いから始まります。
宮崎県出身のマイケルさんは、東大大学院で地方都市の再生について研究していた学者です。
彼はマーケティングに詳しく、中性的で、規格にとらわれない人で、ブラスバンドの演奏経験もある音楽愛好家です。
その彼がある場所で、福井県にある年縞博物館でカフェを営むよんよんさんに出会い、その後、彼女のインスタグラムをフォローしていたら、黒色すみれが博物館でライブをやることを知り、福井に出向いて行ったのでした。そしてマイケルさんは彼女たちをぜひ自分のカフェにも呼びたいと思い、津に彼女たちを招いたんだそうです。

余談ですがこの年縞博物館、かなりすごい博物館なんです。
まず、みなさんは『年縞』ってなんのことかわかりますか?
それは湖や沼などの底に、長い年月をかけて堆積した層が描く縞模様の地層のことなんです。
この博物館では、水月湖の湖底から採取された7万年分もの年縞を、ステンドグラス風に加工して展示しています。
その長さ、なんと45メートル!
この年縞ギャラリーでは、年縞の目盛りに沿って過去から現在へ、7万年の間に人類が経験したできごとを振り返ることができるのです。


さて、話を戻します。

黒色すみれのウィキペディアより:
『2004年にデビューした黒色すみれは、日本の音楽ユニット。ボーカル・ピアノ・アコーディオン担当のゆか、ヴァイオリン担当のさちの2人による女性デュオである。クラシック音楽やシャンソン、歌謡曲をベースに、大正ロマンの雰囲気を漂わせたレトロでノスタルジックな曲調を持ち味とした「ネオクラシックユニット」と銘打ち、メンバーは2人とも「永遠の14歳」を自称している』

ゆかさんはフェリス女学院大学音楽学部出身で、歌とアコーディオンとピアノ担当。北原白秋などの日本文学にも詳しく、物事の捉え方が面白い人。
さちさんは国立音楽大学器楽学部出身で、歌って踊れるメルヘンヴァイオリニスト。
彼女たちにはクラシック音楽出身者特有の頑なさがなく、枠にとどまらない音楽性やファッションセンスの幅広さから、オルタナティヴ・ミュージックや「ネオクラシックユニット」として紹介されることもあります。
2007年よりフランスを始めとするEU諸国で海外ツアーを開始、2008年にはアメリカでもライブツアーを行っています。
演劇界でも彼女たちの出演を望まれていて、自作曲はもちろん数多くのレパートリーを持っています。
ちなみに監督のティム・バートンは彼女たちの大ファンだとか。

自身のカフェでの黒色すみれコンサートの本番が近づいてきた頃に、あけみちゃんの家に行ったマイケルさん。彼は彼女のアトリエ(彼女は実に素晴らしい陶芸家です)を見て、ここでもコンサートをしたらいいんじゃないかと思いつきました。
あけみちゃんは30名限定のお客さまをお招きし、そのコンサートのために特別に作ったお菓子をお抹茶と一緒に振舞ったのだとか。
そしてゆかさんとさちさんは、たっぷり1時間半のフルコンサートを行ったそうです。
実にエキサイティングな出会いだと思いませんか?

さて、ここからが本題です。
厳しい寒波の到来間近だった週末の土曜日に、マンハッタンのジャパンソサエティに向かいました。
その日は朝からずっとボケていて、時間の感覚も途切れ途切れで、出かける寸前にちょっとひと眠りしようとしたりして、夫をイライラさせてしまっていたわたし。
あまりの寒さに冬眠でもしたくなったのか、自分でもよくわからなかったのですが、体調はあまり良くありませんでした。
いつもなら渋滞で困り果てる時間帯に行ったにもかかわらず、マンハッタンへのトンネルも街中も道路はスカスカです。
数日前から執行された渋滞税の効果が出ているのかもしれません。

ユニセフの近くにあるジャパンソサエティの建物は、そこだけが急に京都の一画に入り込んだような錯覚を覚えさせます。


この日のショーは、寺山修司の戯曲『青ひげ公の城』。

バルトークの歌劇『青ひげ公の城』を題材に、楽屋裏の事件や不条理なやりとりを描いた、メタフィクショナルな作品です。『青ひげ公の城』のヒロイン「七番目の妻」役を演じるために劇場にやってきた少女は、劇の内容について詳細を知らされないまま楽屋で待機することを命じられるのですが、そこを脱け出して、他の俳優たちや、舞台監督、大道具といった裏方スタッフと関わっていきます。劇中の台詞や場面が挿入されながら、楽屋裏での様々な人間模様や事件が展開されていき、劇と現実が交錯してゆきます。その混乱にマジシャンやエアリアルフープのダンサーの本格的な演技が差し込まれ、劇は実に目まぐるしくエネルギッシュに展開していきます。

そこに黒色すみれのお二人が登場です。



いやもう、ゆかさんの第一声を聴いた瞬間、心地良さと歓喜が同時に押し寄せてきて瞳孔が開きっぱなし。
あの発声の独特さは聴いたことがありません。さちさんのヴァイオリンもノリノリです。
黒色すみれ(ネオクラシックユニット)の音楽と寺山修司による実験的なアングラ演劇のコラボの公演は大成功で、満席の観客も大興奮。


ちなみに出演者は全員女性です。


全員がまさに弾け飛んでいて、楽しくて可笑しくて、元気をいっぱいもらいました。
次回は女性だけの歌舞伎の公演を提げてニューヨークに来る、とおっしゃっていたのでとても楽しみです。
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1月前半の四方山話

2025年01月16日 | 友達とわたし
クリスマスのお祝いに使われたもみの木が歩道に横たわるようになると、年が変わり、もう浮かれた季節は終わったんだなあという気分になります。

うちも息子たちがまだ家に居た頃は、毎年もみの木を買って飾り付けをしていました。
生のもみの木は、家の中に運び入れた瞬間から、それはそれは心地良い森の香りを振りまいてくれます。
ただ、大酒飲み、もとい、大水飲みなので、お水の補充が大変です。
そしてうちには猫が2匹いるので、彼らが飾りにアタックしないよう、しょっちゅう気をつけていなければなりません。
そんなこんなで面倒になって、もう10年ほど前から購入しなくなりました。
毎年もみの木の季節になると、気楽さと共に一抹の寂しさを感じます。
ちなみに、このもみの木を飾って祝うのはクリスチャンの家庭で、うちのように家族の誰かが元クリスチャンだったりしても祝いますが、ユダヤ教の家庭では一切祝いません。
だからクリスマス=もみの木、というわけではないのだということを、こちらに来て初めて知りました。

1月には特別に楽しい行事がありません。
子どもたちも大人も、2日から平常のスケジュールで学校や会社に行きます。
わたしのレッスンも2日から始まりました。
なので親友のAちゃんと、ガールズランチに出かけることにしました。
彼女はわたしより少しだけ年上の、とても優秀な家のトータルデザイナーです。
人気者なので、70歳になるというのにあちこちから依頼が来て、飛び回っています。
元々忙しい上に、ドッグショー運営にも関わっているので(彼女の家にはチャウチャウが3匹とでっかいプードルがいます)、週末も予定がてんこ盛り。
年中暇なしの彼女を誘うのは至難の業なのです。
彼女は絵画や音楽に造詣が深く、その界隈の著名人たちとの関わりも多く、普通では聞けないエピソードをいっぱい持っている人です。
だからわたしは彼女の話を聞くのがすごく楽しくて、なんとかして彼女に会えないかといつも隙を狙っているのです。

隣町のフレンチレストランでブランチを食べてから、坂道を上ったところにある美術館に行きました。
この町で暮らしていた頃に、生徒の発表会をこの美術館のホールを借りて行っていたのですが、使用料金が爆上がりしたのでそれっきりになっていました。
この美術館の近辺に暮らすようになってからもう25年も経つのに、美術品を観に行くのは今回が初めてです。
館内の面積はそれほど大きくないので、美術品の数は限られていますが、だからこそ一品一品を丁寧に、心置きなく楽しむことができました。
もちろんAちゃんが横で、一作一作について話してくれるのを聞きながらですが…。
そしてこの館は、ネイティブアメリカンの美術工芸品の展示に力を入れていることで知られている美術館であることも知りました。
彼らの作品の細やかなことったら!特にビーズ細工の美しさと言ったら!
その素晴らしさを写真に撮ってお見せできないのが残念でなりません。

帰りの階段を降りていたら、こんな作品が。
影が箱の形になるように作られているのが面白い!


週末は、すごく好きな友人カップルに会いに行きました。

なかなか会えなくて、気がついたら2年ぶりとか3年ぶりとか言って会うんですが、だから子どもたちが飛び級に大きくなっていて、会うたびにびっくりさせられます。
息子のK君は16歳。超ハンサムな上に水泳で鍛えたたくましい体と落ち着きのある雰囲気。いやあ、女の子が放っておかないだろうなあ😅。
娘のAちゃんは7歳。恥ずかしがり屋さんだけども、お話を書くのが好きで、今回はわたしたちのために人形劇を披露してくれました。


お父さんのGさんが相手役。お話がとてもよくできていて面白かったけど、何よりこの親子愛あふれる姿に感激しました。
お母さんのKちゃんが作ってくれたお料理を美味しくいただきながら、あれやこれやと話は尽きず、いつものように別れ難い思いを吹っ切って家に戻りました。

翌日の月曜日は、待ちに待ったピアノの鍵盤の修正と調律をしてもらいました。
調律師のマーティンは陽気なイタリア人。
前に長年の間調律をしてもらっていたアルバートのお弟子さんで、アルバートから引き継いでもらった人です。
生徒用のピアノは25歳。
オーバーホールとはいかないまでも、鍵盤のあらゆる部分を点検し、修正してもらうことになりました。
時間は2台で8時間。


響きがうんとまろやかであたたかになり、鍵盤の負荷が少し増したので、小さな音を出すのが今までより容易にできるようになりました。
これで生徒たちから文句を言われることは少なくなるでしょう😅。
たまに言われてたんですよね、先生はずるい!わたしたちのピアノよりうんといい音が出るピアノ弾いてる!って。
いやいや、これは実力と経験の差です、って言いたかったけど、実際にピアノ自体に差があったので、今までは言えませんでした。
これからはほぼ平等です。
文句は言わせないぞ〜!
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2025年、新年のごあいさつ

2025年01月02日 | 家族とわたし
あけましておめでとうございます。
2025年が始まりました。

というところでいきなりですが、ちょっとお見苦しい写真をば。


地下室の味噌壺置きの近くを通るたびに、なんとも言えない嫌〜な臭いがしてたのですが、その原因がコレでした。
いつから始まっていたのか全く知らないのですが、味噌の納豆化と言えばいいのかなあ、見た目も臭いも強烈です。
慌てて重しの塩を取り外し、中を確かめてみました。

色はほぼ黒に近い焦茶ですが、カビ一つ無く、5年間じっくり熟成した美味しそうなお味噌になっていました。
うちには4つの、同じサイズの壺があるのですが、この壺以外は空っぽです。
今月のうちにお味噌を仕込まねばなりません。

年末の30日は、長男夫婦の引っ越しの手伝いに行ってきました。
前日まで雨降りが続いていたのに、いきなりの快晴☀️しかも春先みたいな暖かさです。

彼らがこれまで住んでいたアパートは、セントラルパークのすぐ横にあり、買い物や通勤には便利なのですが、建物がとても古いのでゴキブリの巣窟になっていました。
長男は虫が大の苦手で、ゴキブリはその中でも特別級。
それに加え、なぜか隣近所で工事が頻繁に行われ、その騒音で不眠症になったりと、心身ともにストレスマックス。
それでエイっと決心して、引っ越すことにしたようです。

引っ越した先のアパートメントはいわゆるタワマンと呼ばれる新築ビルで、20階の角部屋の部屋一面の窓の向こうに、空が表情を刻々と変えていくのを見ることができます。


お疲れさん会に連れて行ってもらったホットポットのレストランで、お腹いっぱいいただきました。



翌日の大晦日の夜に、椅子の組み立てを始めました。

これまで愛用していた、まだ就職して間もない息子たちが共同で買ってくれた椅子を、とうとう決心して捨てることにしました。

なんでこんな悲惨な姿になったかというと、一時期、猫たちの爪研ぎ場になってしまったからです。
姿はこんなですが、なにしろ座り心地がとても良く、しかも息子たちからのプレゼントだったので、15年もの間、どうしても捨てきれなかったのでした。
ずっと布を被せて誤魔化してきましたが、とうとうお別れです。
長い間ありがとう。

そして今日は2025年の元旦。
25年前に亡くなった父、2年半前に亡くなった義父、そして1年前に亡くなった伯母に、お祝いのお裾分け。

大晦日の夜中に、餅つき機さんについてもらったお餅を焼いて、黒豆をゴリゴリと押し込み、焼き海苔に包んでいただきました。

お昼からは久しぶりに映画館に行ってきました。
ティモシー・シャラメがボブ・ディラン役を演じた映画『名もなき者 / A Complete Unknown』です。
いやあもう、本当にいい映画でした。
なんかこう、観ている最中も、観終わってからもずっと、映画と現実の狭間から動きたくないような、なんとも言えない余韻が心の中に漂っていました。
ティモシーのディランはもちろんのこと、ミュージシャン役を演じた役者さんたちの演技と演奏がもう素晴らしくて、いやあ、役者さんってほんとすごいなあと、しみじみ感心したのでした。
夫は家に戻ってから長い時間、デュランの昔のインタビュー動画を観たり、自分でギターを演奏しながら歌ったり、浸る浸る、それを見てわたしはギターってやっぱりいいなあ、手軽で、などと僻んだり…。😊
みなさんにも是非是非、ほんとにおすすめの映画です。

街中では、ニューオリンズで起こった事件を悼んでか、新年を祝う国旗が半旗になっていました。
1月6日からはトランプ政権が発足します。
気を引き締めて、けれども平常心を保ってコツコツと、毎日の暮らしを積み上げていきたいと思います。
今年もどうぞよろしくお願いします!
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