先日の6月19日は生まれたてのホヤホヤ祝日でした。
その名は『Juneteenth・ジューンティーンス』。
アメリカ合衆国全土で奴隷にされた人々が解放された日、『奴隷解放記念日』です。
簡潔にまとめてくださっている記事からちょいと拝借させていただきました。
(全文はこちら→https://www.junglecity.com/live/life-basic/juneteenth/)
1865年4月:奴隷制度反対の北軍が勝利し、南北戦争が終結
1865年6月19日:北軍のゴードン・グレンジャー将軍がテキサス州ガルベストンに入り、同州でまだ奴隷として使われていた人々に南北戦争の終結と奴隷制度の廃止を通達。
※奴隷解放宣言が出されてから約2年半が経過していた。
※奴隷解放宣言が出されてから約2年半が経過していた。
"The people of Texas are informed that in accordance with a Proclamation from the Executive of the United States, all slaves are free."
「テキサス州の人々に、アメリカ合衆国の行政機関の宣言に従い、すべての奴隷が自由であることを通達する」
「テキサス州の人々に、アメリカ合衆国の行政機関の宣言に従い、すべての奴隷が自由であることを通達する」
これにより、6月19日を「アメリカで奴隷にされた人々が自由になった日」「奴隷解放記念日」として祝うようになりました。
奴隷制度は廃止されても、黒人に対する人種差別はさまざまな形で続いたため、キング牧師らが中心となり、1950年~1960年代の公民権運動を進めました。
1964年に人種差別を禁じる公民権法が制定されるまで、奴隷制度の廃止から約100年を要しました。
しかし、その後も問題が解決されたわけではなく、黒人差別がなくなったわけではありませんでした。
2020年5月25日にミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害されたことを受けて、構造的な人種差別をなくすことを求める運動が全米に広がったことで、改めて広く実感させられることになりました。
引用おわり
そもそも奴隷制度が廃止されるまでには、ものすごく時間がかかっています。
1862年の9月22日にリンカーン大統領が奴隷解放宣言を出したのですが、全州がそれに倣らったのは約3年も後の1865年。
当時は伝達手段がとても限られていましたし、反対派の人々による妨害活動も盛んに行われていました。
結局、奴隷解放宣言を最後の最後まで無視していたテキサス州ガルヴェストンに、北軍のゴードン・グレンジャー将軍が入り、奴隷解放宣言をしたことで、やっと全米においての廃止が決まったのでした。
その日が1865年の6月19日なのでした。
そういうわけで、テキサス州は奴隷制度廃止をぐずぐずと最後まで受け入れなかった州でしたが、ジューンティーンスを祝日として制定した最初の州でもあります。
といっても、奴隷制度廃止を受け入れてから、実に114年も後の1979年だったんですけども。
それ以来、47の州とワシントンD.C.で、州の祝日や行事としてみなされていますし、Twitter社やSquare社などのように、企業の祝日とする会社も出てきました。
そして前出に書いた『フロイド事件』が発端となって全米に広がった『BLM』運動がきっかけとなって、2021年6月17日に、バイデン大統領のもと、6月19日が連邦祝日として制定されたのでした。
アメリカは人種のるつぼ。
宗教、信条の異なる多様な人々がごちゃ混ぜになって暮らしています。
政治や法律も州ごとに違います。
一律に、というわけにはいかない部分が本当にたくさんあります。
みんな違ってみんないい。
そういう人たちが助け合い、支え合っていく。
それが隅々にまでできたら最高ですが、実現にはほど遠い現実があります。
特にトランプ氏によるド派手な国の二極化後は、夥しい混乱を蔓延らせました。
彼は最高裁に保守派の判事を立て続けに任命し、9人のうちの6人を保守派で固めました。
そして今日、とうとうのとうとう、保守派が1973年以降から虎視眈々と進めてきた『中絶権利を認めない社会』が、ここアメリカで、2022年のアメリカで再来することになってしまったのでした。
このお話をするにはまず、女性が妊娠中絶を行う憲法上の権利を認めた、アメリカ合衆国最高裁の「ロー対ウェイド事件判決」についてお話ししなければなりません。
この判決を詳しい解説はいろんな方がされていると思いますが、わたし個人としてはこの方のお話が分かりやすかったので、紹介させていただきます。
前半と後半に分かれていて、とても長い記事ではありますが、アメリカという国が中絶ということについて、国のみならず州規模でも、ありとあらゆる規制や束縛を試みたことを知ることができます。
記事中の一部をつまみ出しただけですが、それを読んだだけでもびっくりします。
同法は、女性が中絶を選択する前に、24時間待機させる、妊娠中絶の危険を伝えると同時に出産して子供を育てることの意味を説明する、夫の同意を得る、未成年の場合には両親の同意を得るなど、いくつかの義務を女性と医師に課すものでした。
妊娠の全期間を通じてこうした手続きを設けるのは、妊娠第1期と第2期の中絶の規制を原則として禁止するロー判決に反していました。
ケーシー判決は、最終的に中絶選択の権利を女性に認めるという、ロー判決の根幹の部分をくつがえさなかったのです。
ケーシー判決は、妊娠中絶を3期に分けて検討するというロー判決の構成を、憲法上の根拠がないという理由でほぼ完全に否定します。
特に胎児の生命の保護という州の義務を、第3期のみに限定する理由はなく、胎児の権利は妊娠の全期間を通じて尊重されねばならないと判示しました。
そしてペンシルヴァニア法の規定をほぼ全て合憲と判断します。
ただし、中絶の規制が、女性に「不当な負担(Undue Burden)」を強いることになる場合には違憲とするという、新しい解釈を採用し、中絶の選択を事前に夫へ伝えるペンシルヴァニア法の課する義務は、夫が家庭内暴力を振るう場合に、女性にとって不当な負担となるために違憲であるとしました。
2017年に就任した共和党のトランプ大統領は、たてつづけに3人の保守派の判事を任命し、最高裁は、保守派6人、リベラル3人という構成になりました。
ケーシー判決からおよそ30年ぶりに、圧倒的に保守派が多くなったのです。
「何人も適正な手続きなしに生命・自由・財産を奪われてはならない」(合衆国憲法修正第14条)
「生存の意義や意味について個人が自分自身で決定する権利」は自由の根幹をなし、この自己決定権には中絶選択の権利が含まれるという見解が、今日覆されてしまいました。
この記事を読んだのは今から3週間ほど前で、当時もすでにわたしの周りの女性たちは、とんでもないことになりそうで嫌だと、顔を合わせては話していました。
デモもあちこちで行われていました。
その嫌な予感がバッチリ当たり、今日、1973年に下されたこの判決を、最高裁がくつがえしてしまいました。
引き続き、全国で大きなデモが行われると思います。
そしてもう一つ、アメリカを分断する問題、銃についてです。
昨日今日と、この2日間で、二つの判断が下されました。
銃については、先日の小学校での銃乱射はもちろん、これまでにも事件が相次いでいることから、規制強化を求める声が高まっています。
すでに厳しい規制をしている州もありますが、銃所持は当然の権利だと言って、スーパーの壁にずらりと拳銃を並べ、子ども用から大人用まで、いろんな拳銃を売っても良い州もあります。
ニューヨーク州は、ここニュージャージー州と共に、銃規制がとても厳しい州です。
ところがその、『拳銃を持ち歩くことを厳しく規制するニューヨーク州法』は違憲である、とする判断を、昨日23日、連邦最高裁が下したのです。
そうです、あの保守派が6名の最高裁です。
銃に関する判決としては、ここ10年以上で最も重大なものとされています。
その一方で、同日、米連邦議会上院は、銃の安全対策を強化する重要法案を可決しました。
下院は銃規制に積極的な与党・民主党が過半数を占めていることから、法案の成立は確実だと思われます。
銃規制について後ろ向きな判決と前向きな法案の可決が同時に行われた6月23日でした。