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ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

日本の原子力規制委員会って、ほんまは『原子力(ムラにここまで)寄生(しても)いいん会』?

2014年07月31日 | 日本とわたし
日本の原子力規制委員会というのは、もしかして、

原子力(ムラにここまで)寄生(しても)いいん会?

友人の幸雄さんが、こんな記事を紹介してくれました。

彼のコメントごと、ここに転載させていただきます。

↓以下、転載はじめ

これもまた(↓)の「最終処分場」の記事と同じです。
-----------------------------------------------------
溜息が出てきます。
結局、この構図は変わりません。
身の回りにある自然や環境が、「在って当たり前」としか思わない人達の大量消費の付けが、掛けがえの無いものに廻ります。
「交付金」とか、「風評被害」とか、言い始めるのは、何時だって押し付ける側です。
その場に居て、押し付けられる側にとっては、「手打ち金」、「口止め料」であり、「実害」です。


http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014073190070625.html

最終処分場 また突然提示 指定廃棄物「名水の里になぜ」

東京電力福島第一原発事故で発生した、「指定廃棄物」の最終処分場について、
環境省は30日、栃木県内の候補地として、塩谷(しおや)町寺島入(てらしまいり)の国有地を選定し、見形(みかた)和久町長に伝えた。
しかし、事前説明もない突然の提示に、住民は反発
国は、栃木のほか千葉、茨城、群馬などの県でも、最終処分場をつくる方針だが、
事故から3年以上がたった今も、首都圏の負の遺産が、解消される見通しは立っていない。 
(神田要一、大平樹)

選定に当たっては、各県ごとに手順を作り、地元の事情に配慮する姿勢を強調した。
しかし、栃木県で二度目となる今回も、反対運動を避けようと、経過をこの日まで公表せず、
逆に、住民の反発を招いた



◆栃木・塩谷町 住民反発「自然が売り」
豊かな湧き水を誇る町が、最終処分場建設の候補地に-。


「水田をやっているので、水の安全が心配。
建設に反対だが、どうやって反対すればいいのか」と、途方に暮れた様子だった。
---------------------------------------------------------------------

どうも彼らは、自分達が作った物には、人の命を天秤に架けるくらい御執心ですが、
自分達が作れない物には、敬意や興味は無いようです。
そもそも、住民の避難計画など、政府に提言も無く、自治体に丸投げです。
 
田中委員長は、
コア(デブリ)キャッチャーや格納容器の二重化は、設計段階からでないと、難しいんだね」と言い、
首相の『世界で最高』『最も厳しい』は政治的な言葉のアヤだ」とも言いました。

大賛成です。
だから、そんな物は廃炉にすべきです。
なんで、其処まで解っていながら、こんな愚かで真逆な結論を出すのでしょうね。
 
汗をかいた事も無い、机上の屁理屈に凝り固まった輩に、
劣悪な環境で頑張る作業員の被曝線量上限を、見直す権利などはありません。


http://www.asahi.com/articles/ASG7Z40X5G7ZULBJ006.html

作業員の被曝線量の上限、見直し検討 原子力規制委
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数万人の命を救った『蚊とりボトル』!ど~ん!

2014年07月31日 | ひとりごと
今年の夏は、かなり過ごしやすい。
冬がとんでもなく厳しかったので(大雪と極寒)、今年の夏は多分、とんでもなく暑くなるであろうと、たくさんの人が身構えていた。

子どもたちの学校が夏休みに入る頃(6月の中旬から末)、だんだんと蒸し暑くなり、夕方には雷雲が立ちこめる日が続いた。
ちょうど、家猫の体調がかなり悪化してきた時期と重なったので、中古でガタがきている窓用エアコンを、複数の部屋に慌てて取り付けて、
普段なら絶対にしない、2階と1階、合わせてみっつのエアコンのスイッチを同時にオンして、
すっかり弱っている彼女が、少しでも過ごしやすくなるようにと、温度調整に躍起になったりした。

それなのに、彼女が逝ってしまってから、じとじとと雨が降る日が続き、それが明けたと思ったら、なんと爽やかなこと?!
もうちょっと長生きしてたらよかったのに…などと、ついつい思ってしまって、
いや、この爽やかさは、普通に暮らせるという奇跡をいただいている者だからこそ、こんなふうに気楽に享受できるのであって、
彼女のように、深刻な複数の病に苛まれている生きものにとっては、長生きの勧めなど、全くの余計なお世話なのだと自分を戒める。


さて、こんなに爽やかであっても、やっぱり夏には蚊が現れる。
特に、雨が多かった初夏の間にドドーンと繁殖しまくったようで、いろんな種類の蚊が飛んでいる。
まあ、今年はついに、首から上を虫から守る網を買ってあったので、それに加えて長袖長ズボン&分厚い靴下、そして庭作業用の手袋を身につけると、
おっしゃ~、どっからでもかかってらっしゃいっ!という気分で、外に出ていられる。
もちろん、いくら爽やかといっても夏なので、作業した後はもう、汗まみれだけども…)

こちらの蚊は、ちょっとライトな色あいの、弱々しい感じがするけれどもけっこうしつっこいのと、
白黒のストライプの、いかにも吸い込んだ血のタンクになりそうな、デカめのヤブ蚊と、
いつ集ったのかも、いつ刺したかもわからないぐらいにチビっこい、真っ黒な蚊、とかがいる。
そして、何年かに一度は、
ウエスト・ナイル脳炎を感染させる、おっとろしい蚊がやってきたりする。

もともと、蚊に異様な敵意を持ってしまうわたしとしては、どんな蚊であってもイヤなのである。
蚊はなぜか、わたしを狙って集まってくる。
甘いもんをよう食べるからや。
頭以外、毛が少ないからや。
などと、適当な理由を考えて人は笑うけれど、イヤなもんはイヤなのである。
なので毎年、夏前になると、蚊をやっつけるために、あるいは寄せ付けないために、ウンウンと知恵を絞る。

長年そんなことをやってきて、化学を使ったものは、やっぱり体に良くない、という結論に達した。
蚊が嫌う成分が入っているからといって、それを燃やしたり熱を加えたり、またはスプレーしたりして、空気中に拡散させると、
蚊だけではなく、人間や動物ももちろん、それを吸い込んだり取り込んだりする。
すると、後で、なんともいえない違和感が、鼻から喉、肺や皮膚に残る。
蚊取り線香は、その中でも一番、自然に近いと言われているけれども、旦那もわたしも、その煙でいっぺんに体調が悪くなってしまう。


前置きが長ーーーくなってしまいました。
実は、これを先日、Facebookのページ上で見つけて、とっても感激したのでした。
なので、みなさんにもおすそわけします!

↓以下、転載はじめ

数万人の命を救った「蚊とりボトル」とは?
ペットボトルで簡単に蚊を撃退する方法




蚊が媒介するウイルス性の熱性・発疹性疾患であるデング熱は、患うと時には生命を脅かすこともある感染病です。
フィルピンでは、毎年、このデング熱によって、小さな子供を中心に、約22,500人が命を落としています。

そんなデング熱の感染を、少しでも予防するために、
フィリピンのマニラ首都圏で、浄水や下水処理サービスの提供を行っているマイニラッド社が、
オリジナルの“蚊とりボトル”を開発し、市民に配布しました。

同社は、“蚊とりボトル”セットを、何百人もの市民に配布し、組み立て方を教え、各々軒先に配置してもらうよう呼びかけたのです。

結果、“蚊とりボトル”は大きな効果を上げ、世界保健機構西太平洋事務局がまとめた、2013年2月のデング熱流行状況によると、
フィリピンでのデング熱感染例は、前年同月比55%も減少し、4866件となり、致死率も、前年同月比38%減少しました。

蚊による病気の媒介は、実はとても深刻で、下の画像でもわかるとおり、1年間に最も人間を殺している生き物ランキングで、圧倒的1位を獲得しています。
その数、なんと年間72.5万人です。



どの家庭でも簡単に用意できる材料で作ることができる、画期的な「蚊とりボトル」。
大きな病の感染を食い止めた、とても小さな、そして偉大な「アイデア」でした。

<作り方>

“蚊とりボトル”の仕組みは至ってシンプル。

材料はこれだけ

・ペットボトル(1.5~2.0lのもの)
・水:200ml(40℃ぐらいのお湯)
・ブラウンシュガー:50g(砂糖でOK)
・イースト:1g(ドライイーストでOK)


① ペットボトルの口を切りとる


② きれいな「水」と「ブランウシュガー」と「イースト」を入れる


③ 切り取ったペットボトルの口を逆さに差し込んだら完成
黒い紙やビニールで周りを覆うとさらによい





あとは軒先や庭に置くだけ。
ブラウンシュガー、イースト、水が混ざることで二酸化炭素が発生し、蚊をおびき寄せ、
ボトル内に侵入した蚊は抜け出すことができず、そのままボトル内で死んでしまうという仕組みです。

注意点としては、雨水が入らないような場所、蚊の好む日陰の涼しいところに設置すると良いようです。
また、2週間に1度ぐらいは、衛生上交換したほうが良いでしょう。

みなさんも、今年の夏から、この「蚊とりボトル」を、庭やベランダに設置してみてはいかがでしょうか。


コメント (4)
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ガザの「封鎖解除しろ」「占領をやめろ」そして「殺すな」と、世界はイスラエルに訴えなければいけない

2014年07月30日 | 日本とわたし
文字起こししました。
体力気力ともにエネルギー切れになってしまいましたので、文字の強調などの校正はまた後ほど。
とにかく、読んでください。

パレスチナ情勢が、そしてガザに暮らす人たちの実態が、とてもよくわかります。



報道するラジオ
『パレスチナ情勢 ~ガザの人たち~』




*LightSpace100(脱原発一票)さんの画像をお借りしました。

水野晶子アナウンサー:
今日の特集テーマは『パレスチナ情勢〝ガザの人たち〟』というふうに銘打って、お送りしようと思います。
まずはお一方、ゲストがこのスタジオにお越し下さいました。
パレスチナ問題などを専門に研究してこられました、京都大学大学院教授の岡真里さんでございます。

さっそくですけれども、ラジオネーム『月見団子』さんという方がいらっしゃいまして、
この番組はもう、リスナーの方からどんどんと質問を受けながら、やり取りしながらお送りする番組なんですが、
この方は、
「今夜のテーマ、パレスチナ情勢は、日本人には最も難しいテーマではないでしょうか。
どうか、分かりやすくお伝えください、お願いします!」と、
わたくしも、この月見団子さんと同じように、お話ししていただけたらと思っております。

そして今日、お電話でつながせていただきます、もうお一方、ゲストがいらっしゃいます。
日本国際ボランティアセンターの現地代表でいらっしゃいます、今野泰三さんです。

今野さんはいつもは、どこで活動していらっしゃることが多いんですか?


今野氏:
わたしはいつもは、エルサレムとガザ地区で活動しています。

水野アナウンサー:
今、一時、日本に帰国中だというふうに伺っているんですけども、いつまであちらにいらっしゃったんでしょうか?

今野氏:
7月の16日まで

水野アナウンサー:
あ、そうですか!じゃあほんとに、1週間前の状況を、肌でご存知だということですね。
どうか今野さん、今日はよろしくお願いしたいと思います。
今日は、岡さんと今野さんに、それぞれいろんなお話を伺っていきたいと思うんですが、
まずは先ほどのニュースでもお伝えしました通り、7月8日から始まった、ガザへのイスラエルの軍事攻撃によって、ほんとにたくさんの方が亡くなり、痛めつけられている状態、
そしてその中には子どもたちが、多く存在しているということ。
で、このパレスチナ問題って、アラブ人の立場、ユダヤ人の立場、それぞれ思い、言い分があると思うんですね。
今日は、こういう空爆で、今本当に命を落とす、あるいは落としそうな状況になっている、ガザ地区にいる子どもたちの目線で、この問題を見たらどうなのかという視点で、ぜひ教えていただきたいと思っているんですけど、
ま、そんな子どもたちが今、それこそ空爆が行われているようなガザ地区に、なんで住み続けていなければいけないのか、
というところから、伺っていいですか、岡さん。

岡氏:
なぜ住み続けていなければいけないのか…。

水野アナウンサー:
たとえば、逃げたらええやないかって、わたしなんか分からない者は思うわけですけど。

岡氏:
まず、ガザは、非常に小さい地域なんですね。
地中海の岸辺にしがみついているような形の、長方形の、縦が40km、短い方が4kmから10km、というような、

水野アナウンサー;
えー?そんな狭いとこなんですか?
長い方を車で走っても、1時間で行けちゃうし、短い方だったら4kmから10km、

岡氏:
もう徒歩で、1時間ぐらいで行けてしまうという、

水野アナウンサー:
そんな狭い地域がガザ…。

岡氏:
そうなんです、そこに今、180万の人々が、言ってみれば、イスラエルの封鎖によって閉じ込められています

水野アナウンサー:
180万人って…平野さん、神戸市民よりちょっと多いぐらいの、それぐらいの人がそんな…、

平野氏:
密集度からいうとすごいですね。

岡氏:
そうですね、360平方にまんべんなく居たら、だいたい1平方5000人ということで、だいたい横浜市の人口密度と同じぐらいなんですが、
しかしまず、イスラエルは、境界線に沿って300mから1.5kmぐらいの地帯を、ガザのパレスチナ人の立ち入り禁止区域にしていまして、
もうそれだけでも、ガザの全体の30%ぐらいになっていて、

水野アナウンサー:
ガザ地区の中は、パレスチナ人が自由に行き来できるんだと思ってたんですが、

岡氏:
イスラエルの入植地が撤退した後は、まあそうなんですけれども、しかしそういうバッファゾーンという、パレスチナ人が立ち入ったらもう、
境界線上に駐留している戦車から砲撃されたり、監視塔から発砲される、ということになっています。

水野アナウンサー:
そこに立ち入っただけで発砲される?

岡氏:
そこには、パレスチナ人の家や農地もあるわけですが、ですからそういう人たちはみんな、立ち退きを余儀なくされていて、

水野アナウンサー:
自分の家にも入れない、農地にも入れない

岡氏:
そうです。あるいはもう、命の危険をおかして農作業をすると。
で、そういう人たちが、ガザの180万の人口の8割が、67年前にパレスチナを追われて難民となった、
故郷を、パレスチナの村を追われて、ガザに難民としてやってきた人たちとその子孫
なんですね。

水野アナウンサー:
あのね、すみません、もっとそもそものところで伺って申し訳ないんですけど、
イスラエル、という国がありますね、地図で見たら、アラビア半島の付け根みたいな所にある、
サウジアラビアなんかから見たらもう、小さい小さい面積の所ですよね。
で、そのイスラエルという国とパレスチナっていうのは、どういう関係、どういう地域になっているんですか?

岡氏:
あの、イスラエルとパレスチナではなく、そこは歴史的にはもともと全部、パレスチナだったんです。
そこに、1948年に、ヨーロッパで第二次世界大戦後、ナチスの支配から解放されて、でも故郷に帰ることができなくて難民となっていた、ヨーロッパのユダヤ人難民問題を解決するために、
パレスチナをふたつに分割して、そこにヨーロッパのユダヤ人の国を作る
という、そういう国連総会で決議が採択されて、
その結果、ここにユダヤ国家を標榜するイスラエルが、パレスチナ全土の77%を占領するかたちで出来て、
で、その時占領できなかったガザ地区と、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区が、1967年に占領されて、
ですから今、そういう意味では、全部イスラエルに占領されている、という形
になっています。
で、その48年のユダヤ国家建国の過程で、要するに可能な限り純粋なユダヤ国家を作るために、もともとそこに暮らしていた、イスラム教徒とキリスト教徒のパレスチナ人を、民族浄化して、
ま、その結果、70万から100万と言われる数のパレスチナ人が難民となって


水野アナウンサー:
じゃああの、ヨルダン川の西側の岸、西岸と言われる所の地域が、パレスチナ人が今住んでいる地域としては、比較的広い地域なんですかね。

岡氏:
まあそうですね。

水野アナウンサー:
で、ガザっていうのは、ちょっと離れたとこにありますよね。

岡氏:
飛び地のように。

水野アナウンサー:
飛び地みたいなもんですか。
で、さっきおっしゃった、もう縦が40キロほどで、横は4キロとか10キロしかないような狭い地域、
そこに、今おっしゃったような、家を追われた、土地を追われた難民の多くの人が、ガザ地区に住んでると思ったらいいんですか。

岡氏:
まあ180万のうち150万がそうです
で、あのもう60年以上経っても、60年以上前に作られた難民キャンプに住んでいる人たちも何十万といまして
例えば、地中海に面しているので、ビーチ難民キャンプと呼ばれている所があるんですが、
そこは、0.5平方キロに8万7千人が、これちょっと数字としては古いんですけれども、ですから今はもっと増えていると思うんですが、暮らしている。
これ、1平方キロに換算したら、18万近くですよね。
もうだから、ガザというのは、世界でも最も人口が過密な地域のひとつとなってる、
そこが今、無差別に爆撃され、砲撃されている、という状況です。

水野アナウンサー:
そんな、世界一人口密度が高いような地域に空爆したら、そりゃあもう、子どもたちにも及ぶ、

岡氏:
しかも、ガザの人口の44.7%だったかな、14才以下なんです。
半分近くが14才以下ですから、こういう形で爆撃したら、多くの子どもたちが犠牲になるというのは、もう当然のことなんですね。

平野氏:
そういうようなことが当然分かっていながら、やってるわけですね。

岡氏:
もちろんです、もちろんです。

平野氏:
そのきっかけが、自分たちの国の少年3人が、誘拐して殺されたと、いう言い分ですね。

岡氏:
というふうに言われていますけれども、実は、もうこれはほんとに、今回の軍事行動を起こすために、イスラエル政府が口実として、道具として利用している、と言わざるを得ないのは、

平野氏:
というのは?

岡氏:
6月の始めに、7年間分裂していたハマースとファタハが、歴史的和解をして

水野アナウンサー:
ちょっと待ってくださいよ、こっから分からなくなるんですよ。
ハ、マ、ス、とファ、タ、ハ、これは何の名前なんですか?

岡氏:
えっと、そうですね、まあ、ハマースというと、日本のマスメディアでは必ず、ガザを実効支配しているイスラム原理組織ハマースが、とか言って、
なんにも分からない人でもそれを聞いていたら、なんかこう、おどろおどろしいグループが、力にものを言わせてガザを制圧して、支配しているような印象を受けると思うんですが、
ハマースというのは政党のひとつで、イスラム主義を掲げる政党です。
で、そのハマスが、2006年のパレスチナの評議会選挙で、まああの日本の、今の総選挙にあたるようなものですね、それで勝利して、政権与党になったんですね。
この選挙は、アメリカのジミー・カーター元大統領が、近来稀に見る民主的な選挙だったと、お墨付きを与える選挙だったんですが、
しかし、アメリカやイスラエルは、ハマースをテロリストグループだと言っていて、
で、その自分たちがテロリストだと見なすグループを、政党を、代表に選んだパレスチナ人に対する集団懲罰として、自治政府に対する給与を凍結し


水野アナウンサー:
給与凍結…?兵糧攻めみたいなもんですね。

岡氏:
自治政府に対する給与っていうのは、国際社会の援助で、イスラエルの銀行を通して給付されていたので、
で更に、ハマースがガザを実際に統治し始めると、完全封鎖に踏み切って、とういう状況なんです。

水野アナウンサー:
はぁー、その完全封鎖の状況などを、あちらでボランティアで活動してらっしゃる今野さんに伺いたいんですけども。
今野さん、このガザの完全封鎖というのは、具体的にはどんな状態に、ガザってなってるんですか?

今野氏;
ガザの完全封鎖は、7年前から始まりました
ガザ全体が、高い壁で、鉄の、コンクリートの壁で囲まれてまして、

水野アナウンサー:
何メートルぐらいの壁なんですか?

今野氏:
5メートルから8メートルぐらい

水野アナウンサー:
えーそんな高い壁で、囲まれてるんですか、その狭い地域が?!

今野氏:
はい、全体が囲まれていて、イスラエルの軍艦が、海の側も完全に封鎖しています

水野アナウンサー:
じゃ、ガザ地区に居る人は、ガザ地区以外に出ることは、どうやってできるんですか?

今野氏:
基本的に出ることはできないですが、エジプト政府の許可をもらって、エジプト側に出られることもありました。

水野アナウンサー:
例えば、ガザ地域から他の所に仕事に行くとか、病院に行くとか、そういうことはできないんですか、普段?

今野氏:
全くできないわけではないんですが、ガザは、外の病院に行くにしても、許可を得なければいけなくて、
その許可を得るのに、まあ少なくても2週間はかかる


水野アナウンサー:
えー?そんな、急病人どうするんですか?

今野氏:
急病人はガザの中で、治療してもらうしかないっていう状況でした。

水野アナウンサー:
そしたらその、医療とか薬品とか、そういった物はどうなんですか?

今野氏:
イスラエルによって封鎖されているために、医薬品にしても食料にしても、手術に使う道具にしても、すべて許可を得ないといけないので、
そのため、ガザの中では、医薬品がもうずっと、今回の攻撃が始まる前から足りなかったです。

水野アナウンサー:
あー7月8日以前からも、医薬品は足りなかったし、手術に使う道具も足りないんですか?

今野氏:
はい、当時攻撃が始まる前に、ガザの病院の院長さんにお聞きしたところでは、
150種類から250種類ぐらいの医薬品と、手術に使う道具が足りないというふうに言っていまして、
で、患者さんが、手術を受ける場合は、もう病院にそういった、薬だったり糸だったり針だったりが足りないので、自分で、薬局で買って持ってきてくださいと、
で、それが、お金が払えない人はもう、手術ができませんという、そういうふうに言われていたと聞いています。

水野アナウンサー:
手術の道具さえ、自分で揃えなきゃいけない…。
例えば物を得るもの大変でしょうけれども、物を得るためのお金ですよね、
そうした経済的な問題は、ガザ地区の皆さんはどうなんでしょう。

今野氏:
ガザ地区は、失業率が非常に高くなっていまして

水野アナウンサー:
何%ぐらいですか?

今野氏:
30%を超えると言われてまして、女性と若者は、ま、50%ぐらいだと言われています。
それであの、70%は働いているんですけれども、働いていても、給料が非常に安い、あるいは給料が払われないということが常にありまして
そのため、貧困ライン以下の生活をしている人が、ガザの人口の40%。
更に、安定的に食料を得られる人は、3分の1

水野アナウンサー:
へぇーっ? 3分の2の人は、食料の不安がいつもあるってことですね。

今野氏:
そうですね、はい。

水野アナウンサー:
食べられない、医療を受けられない、仕事は無い、お金が窮乏すると、そんな状況が続いていた中での今回の空爆が、イスラエルから行われているわけですけど、
この攻撃の状況を、今野さんはどんなふうに、何か情報を得てらっしゃいますか?

今野氏:
地上侵攻が始まる前の空爆の時から、現地に、私たちが事業をしている企業のスタッフがいますので、
彼女たちに、あるいはその、タクシードライバーだったり、知り合いに電話して、常に安否を確認していたんですけども、
私が話を聞いたのは、先ほどニュースにも出てきた、ベイトハヌーンという町に住んでいるスタッフの女性なんですが、
1週間前に来た時に、もうすでに、家の周りを爆弾がどんどん落ちてくると。

水野アナウンサー:
えー!家の周りに爆弾がどんどん落ちてくる!

今野氏:
はい。
それでまあ、イスラエル軍は事前通告をしているというふうに、まあメディアでは報じていますが、実際は警告無しの爆撃も多く、
例え警告があっても、その爆撃の1分前に警告があるので、逃げ後れて亡くなる方もいらっしゃった
ということです。

水野アナウンサー:
1分前に警告されてもねえ…逃げられない方が多いですよね。
それに、やはりその、人口密集地で、イスラエルはその、標的を狙っているという言い方をしているようですけども、
実際に巻き込まれてる民間人の方が多いようですが、そのあたりはどうですか?

今野氏:
国連の発表では、今800人ほどの方が亡くなられてまして、そのうちの7割から8割が、戦闘に関わっていない民間人と言われてまして、
そのうちの5人に1人は、17才以下の子どもだと、いうふうに言われています。

水野アナウンサー:
さきほど、今野さんもおっしゃった、ベイトハヌーンという所のスタッフと連絡を取っておられるという、
このベイトハヌーンは、国連が建てた学校に、今回砲弾が落ちて、少なくとも15人が亡くなった、という報道になっているんですよね。
国連が建てた学校というのは、具体的には、どんな人たちがどういう形で集まってらっしゃるんですかね。

今野氏:
国連が作った学校は、もともとガザの、難民のパレスチナ人のために作った学校なんですが、
イスラエル軍は、家から出てけと、これから攻撃するから、家から出てってどこでもいいから行け、というふうに警告しまして、
それで、攻撃されて殺されたくない人は、もう逃げる場所が無いので、とりあえず国連だったらまあなんとか安全かもしれないっていうふうに考えて、国連の学校に逃げて行ったわけです。

水野アナウンサー:
ここなら安全かもしれないと、やっと見つけた所で、このような攻撃を受けたということですけど、
イスラエル側はね、ハマースをつぶすためにやっているんだ、というような発言をしてますよね。
そのハマースというのは、先ほどの岡さんの説明では、政党であって、選挙では勝った政党なんだと、いうところまでは分かったんですけど、
実際にこの、ガザ地区でのハマースってのは、どういう存在なのでしょうか?

今野氏:
ガザ地区でのハマースの存在は、選挙でハマースが政党として勝ちまして、でまあ選挙で勝ったので内閣を作って、政府を運営している存在でした

水野アナウンサー:
なんかすみません、わたしのイメージでは、テロリストというイメージがあるんですけど、どうなんですか実際は、あちらで?

今野氏:
政府を運営しているのと同時に、ハマースの中にも、政治部門と武装部門というのがありまして、
行政を担っているのは政治部門、それ以外の武装闘争を担っているのが、武装部門としてありました


水野アナウンサー:
でも、ガザ地区の普通の人々からは、一定の支持もあるなんていうことも聞くんですが、それはどういうことなんですか?

今野氏:
ひとつはその、ハマースは、もう20年以上、まあハマースになる前からずっと、NGO的な活動をしていまして
困った人々、貧しい人々、あるいは孤児、老人に対して、慈善活動をずっとしてきました
そのため、そういった困った人たち、政府が助けてくれない人たち、あるいはイスラエルが何もしてくれない人たちに対する、そういう慈善活動をしていたので、
そういうところで信用がすごくある
、というふうに言われています。

水野アナウンサー:
慈善活動をしていた、そのあたりに、まあ草の根にこう、いろいろと支持があるという歴史があるわけですね。
少しずつガザの様子が分かってまいりました。
今、お二人のお話を聞いておりますと、岡さん、すごく狭い地域に閉じ込められて、
それも、10メートルほどあるようなコンクリートの壁に閉じ込められている人たちが、空爆を受けるということは、

岡氏:
まさにガザは、よく言われるんですけれども、世界最大の野外監獄であるということです。

水野アナウンサー:
野外監獄!

平野氏:
これはだけど、イスラエルからしてみれば、空爆の目的が、いわゆる住居とかビルの下にあるトンネルを潰すために、空爆をしてるんだという言い方がありますよね。

岡氏:
トンネルというよりも、ロケット弾を、ハマスその他の武装勢力が、イスラエルに向けて発射する、その発射装置があるとか、
あと、まあそうですね、イスラエルにつながってるトンネルを破壊するとか、

平野氏:
それはその、イスラエル側に行って、例えば自爆テロをすることを防ぐ、まあ自衛的な措置だというような言い方をしてるようなんですけども、
トンネルってそんなに、そんな目的で、ほんとに頻繁に使われてるんですか?

岡氏:
北部の国境には、確かに、イスラエルに侵入するトンネルがありまして、
そこからイスラエル兵を拉致して、それによって、不当に逮捕されている、パレスチナ側の政治犯の釈放との、捕虜交換、それを要求する

だからそういうことは起きています。
自爆テロは起きていません

ただ、トンネルに関して重要なのは、むしろ南部の、エジプト国境の所にある、というかあったトンネルで、
でもそれが、文字通り封鎖されているガザにとっては、ライフライン、命綱でした
そのエジプトのトンネルを通して、食料だとか医薬品だとか、生活必需品がもう全く入ってこない
ガザは生産もできない
それがしかし、昨年エジプトの軍事クーデターの後、エジプト側からほとんどすべて破壊されて、という状況です。

平野氏:
要するに、ハマスの母体がイスラム同胞団っていうんですか、今回のエジプトの政権をとった側なんですね。

岡氏:
えっと、あの、アラブ革命で、ムバラクが追放された後ですね。
ムスリム同胞団出身のムルシ大統領の頃は、非常にその、地下トンネルのトンネル経済、まさに文字通りの地下経済が、活発化していたんですけれども、
もうあの、昨年の7月以降、機能しなくなったんです。

水野アナウンサー:
日本国際ボランティアセンターの今野さん、ガザ地区の中の様子を、もう少し教えていただけたらいいと思うんですけどね、
そのハマスは、ロケット弾を発射している、攻撃もしている、それでもまだ、一定の人気があるって、どういう状況なんですか実際は。

今野氏:
ええとですね、ハマスが人気があるかどうかっていうのは、まあ微妙なところがありまして、
もともとは、ハマスが政権をとる前に、政権政党だったファタハが、すごい国際援助を受け、それを自分のポケットに入れると、腐敗してると、
すごい評判が悪い中で、それに反対する人たちが、ハマスに投票した。

それでハマスが政権をとったんですが、今度ハマスが政権をとったら、ハマスはテロリストだと、いうふうに国際社会に言われまして、
まあそれで、国際的にボイコットされた

それで封鎖が始まったので、ハマスが政権をとったことで、まあ結果的にガザの人々は、生活が一気に悪化したっていうのが、現実としてあります。
なので、必ずしも、ガザのパレスチナ人みんなが、ハマスを支持しているわけではないと、私は思っています。

水野アナウンサー:
先ほど、ガザの人々が、医療品や食料品も少ないとおっしゃいました。
例えば水とか電気とか、そうした基本のインフラなんかはどうなんでしょう?

今野氏:
基本のインフラは、今回の攻撃は始まる前は、1日に8時間電気が来て

水野アナウンサー:
1日8時間だけ、

今野氏;
残りの16時間は停電するというのは、まあ日常でした

水野アナウンサー:
へぇー暑い時にクーラーをかけられないなんて、そんな感じあるんですか?

今野氏:
ええそうですね、エアコンもあれですし、冷蔵庫も使えないので、生鮮食品を買ってもすぐ腐ってしまうとか、
後はあの汚水処理ですね、汚水処理ができないので、停電している間は、どこも下水場があふれてしまうので、
仕方なく海に流したり、地上に流していた
と。
それによって、もうガザ全体が汚染されているっていうのは、状況としてありました。

水野アナウンサー:
水はどうなんですか?

今野氏:
水も、汚水を垂れ流すだけなので、それによって水も汚染されてしまい、水道水は汚染されているので、全く飲むことはできない

水野アナウンサー:
ああ、飲み水も大変なんだ…。
あの、そんなに今までからもね、大変な所だったガザが今、死傷者の方が増えているわけなんですけれども、
岡さん、なんで今、こんなことになってるんですか?

岡氏:
6月のはじめに、分裂していたファタハとハマスが和解して、それで、パレスチナの統一政府が発足したんです。
で、この時ハマスはすごく譲歩して、できた統一政府の内閣の中に、要するに党派の人ってのはいないんですね。
で、しかしこれはもう、イスラエルにとっては、今まで分裂していて力を削がれていたパレスチナが、一致団結したわけですから、これはすごく政治的に脅威になると。
それで、イスラエルとしては、この統一政府というものを切り崩すために、最初は外交的手段で、孤立化させようとしたんですけれども、
それがうまくいかなかったので、要するに軍事攻撃
ですから、イスラエル少年の3人が誘拐されて、ということが、仮に無くても、遅かれ早かれ、この軍事攻撃は起きていた。

水野アナウンサー:
イスラエルとしては、軍事攻撃を何かのきっかけを持ってやりたかったんじゃないかっていう見方ですか?

岡氏:
そうです、そうです、そうです。

水野アナウンサー:
はー…だけどこれ、停戦しなきゃいけないという、国際的な世論というのは当然出てくる。

岡氏:
もうこれだけ凄まじい形で、ほんとにあの、ジェノサイドですよね。

水野アナウンサー:
大量殺戮。

岡氏:
で、その停戦に関しては、エジプトが仲介して停戦案を示したところ、ハマスがそれを拒否したとして、
日本の主流メディアの報道を見ていますと、これだけパレスチナ人の犠牲者が出ているのを、
停戦案をイスラエルは受け入れたのに、ハマースが、要するに封鎖解除が条件になっていない、と言って拒んだからだと、
まるでハマースに、パレスチナ人の犠牲者拡大の非を、責任を期すような論調だと思うんですけれども、
しかし、この封鎖っていうのは、数日前に、パレスチナの市民社会の学者とかジャーナリストとか、知識人の100名以上が署名した、世界に向けてのアピールが出まして、
封鎖というのは、生きながら死ぬことなんだと。
仮に停戦になったとしても、それが攻撃前の、あの封鎖の状態に戻るんだったら、それはもう、生きながら死ね、というのに等しいと。
で、我々はその、封鎖解除を伴わない、そんな停戦はいらないという、そういう声明を出していて、
ですから、ハマースが、あくまでも封鎖解除にこだわるというのは、これはもう、ガザの人々の総意であると言っていいと思うんですね。

また、日本のメディアが報道していないのは、
エジプトの訂正案をハマースが拒んだその翌日に、ハマースの方から、10年に及ぶ休戦協定を申し出ているんです。
イスラエルが、10の条件をのむのであれば、10年間の休戦協定を結ぶと。
で、その10の条件というのは、例えば、
農民が自分の農地で、安全に農業ができること、
漁師が領海内で、安全に操業できること、
イスラエルは、ガザの経済発展を邪魔しないこと、
でその、いろんな物資の出入りだとか、人間の出入りを認めること、
つまり、一言で言えば、封鎖の解除なんですよ。


しかし、イスラエルはそれに応答をせずに、地上戦に踏み切ったわけです。
だから、受け入れていれば、その10年間の、長期的な地域的安定につながった
それよりも、イスラエルとしては、地上戦で大量にパレスチナ人を殺して、
そしてなんとか、その封鎖解除を条件としない停戦をのませる
というね、そちらを選んだ、ということになります。

水野アナウンサー:
今野さん、この封鎖が解除されなかったら、ガザ地区の人々はどうなってしまうって、今野さんは実感なさいます?

今野氏:
今のガザの人々の8割が、何らかの国際援助に頼って生きています
ただその国際援助も、ほんと基本的な食料、ギリギリの食料しか入ってませんので、栄養失調の子どもが非常に多い
食べ物は、死なない程度には入りますけど、ほんと飼い殺し状態で、仕事も無い希望も無い外にも出れない、
その10年後20年後に何があるんだってのは、全く見えない状況
です。
なのでそういう状況にまた戻ってしまうというのは、ガザの人々にとっては、また同じような地獄の日々が続くっていう意味では、
岡先生がおっしゃったように、ハマスの停戦条件がガザの人々の総意だというのは、私もそう思います。

水野アナウンサー:
岡さん、イスラエルはそこまでしてね、停戦より攻撃を選ぶ
なんでそれでまた封鎖という、そこまでのことをやらなきゃいけないんですか?

岡氏:
もうあの、封鎖を継続することによって、先ほどの今野さんの話にもありましたように、食うや食わず、そのもう1日を生き延びるのがようやっと、という状況
今日生き延びるための日銭を、どうやって稼ぐかだけに、人間のあらゆるエネルギーが、思考が注がれる
そういう状況の元で、例えば主権を持った独立国家の樹立であるとか、祖国への帰還であるとか
そんな、要するに政治的な主張ができるようなね、余裕は無くなりますよね。
それが狙いです。
つまり、パレスチナ人の政治的な主体性を、抹殺するということ
です。

平野氏:
これ、天井無き監獄という言葉で象徴されますけど、今ここにきてようやく、アメリカのケリー国務長官がイスラエルに入ったり、国連事務総長が入ったり、
これあの、見通しはどうですかね。

岡氏:
いやあでも、ケリー国務長官が言っているのは、封鎖解除というようなことを条件としない停戦を受け入れろ、ということを迫るわけですから、
それは言ってみれば、二つの死のうちのいずれかを選べ、
つまり、今ここで、ひと思いに殺されるか、あるいは封鎖の元で、緩慢に死刑になっていく、
どっちを選ぶか、そういうこと
ですね。

今殺されたくなければ、封鎖解除なんて贅沢言わずに、四の五の言わずにこの条件をのめ、というような、もうこれヤクザの言い分だと思います。

ですから、単に「殺すな」「停戦しろ」ではなくって、もうこれは「封鎖を解除しろ」
「占領をやめろ」「封鎖をやめろ」、そして「殺すな」ということを、声を大にして、国際社会が、つまり私たちが、イスラエルに対して訴えていかなければいけないんだと思います。

水野アナウンサー:
あの封鎖ってね、私が思ってたよりも、ほんとに激しいものなんだっていうのを、今日伺って思ったんですけど、
なんでまあそこまでのね、封鎖をすることになったのか、これ、7~8年前からなんですよね。
なんでそんなことに至ったんですか?

岡氏:
これはあの、先ほども言いましたように、ハマースが評議会選挙で勝利をした

アナウンサー:
ということは、イスラエルは怯えたわけですか、ある意味。
これでハマースがどんどん力をつけて、政治的に躍進していったら、もうどんどん自分たちに対して、政治的に圧力かけてくると、それは困ると。

岡氏;
そうです。
ファタハが選挙で負けたのは、要するにファタハに政権を任せておく限り、パレスチナの独立国家なんてできないと。
イスラエルやアメリカの言いなりになっている。
だったら、ハマースに政権を、ちょっと任せてみようかという形で選んだところ、

水野アナウンサー:
ハマスは、武力も軍事も肯定してるわけですよね。
それでもやっぱり、いろいろな手を使ってでも、武力行使っていうことも、ハマスは認めているんではないんですか?
ロケット弾を打ってるっていうのは。

岡氏:
いやでも、これはもう、封鎖されている状況の元で、そもそもそこは占領地なわけですね。
イスラエルに占領されている。
で、そこで、狭ーいガザの中に閉じ込められて、しかも封鎖をされていて、いったいそのイスラエルはハマースから、花束を贈られることを期待しているんでしょうか
つまり、そういう状況に置かれて、私はあの、ハマースが撃つロケット弾攻撃も、市民に対する無差別攻撃になりますから、それは国際法上戦争犯罪ですけれども、
しかし、こういう状況に置かれて、そういうロケット弾を撃ってくる。
それはなんか、当然の反応ではないか

しかも、

水野アナウンサー:
そこまで追い込まれてしまうように、イスラエル側がもっていったという意味ですか。

岡氏:
そうですね、日本の報道だと、あたかもハマースが最初にロケット弾を撃って攻撃している、と聞こえるんですけれども、
2012年の攻撃の後の停戦の中で、この20ヵ月の間に、実は、イスラエルによるガザに対する空爆の方が、はるかに多いんです。
で、そっちのことが、ほとんど日本では報道されていません。

水野アナウンサー:
あの、ラジオネーム『わく』さんという方が、聞いてくださっています。
これ、アメリカがちゃんと止めようとしないじゃないですかと。
どういうことなんですかって聞いてらっしゃるんですね。
アメリカは、ずっとイスラエルの肩を持っているんですよね。

岡氏:
はい、まあいくつか理由があるんですけれども、
ひとつは、アメリカ国内の、クリスチャン・シオニストと言われる人たち、イスラエルを支援するキリスト教徒の人たちの勢力が、非常に大きいということ、
それから、たくさんの、イスラエル・ロビーと言われる、イスラエルを応援するユダヤ系の人たちも、圧力団体として居て、
その結果、これらの人たちを敵に回してしまうと、大統領にも上院議員にもなれない
というような、

水野アナウンサー:
あ、自分の保身ができないんですね。

岡氏:
そういう構造がもはやできてしまっていて、これ、20年前は違っていたと思います。
アメリカが、もうここまでだと、もうこれ以上は、アメリカは許さないということを言えば、イスラエルも言うことを聞いてたのが、
今はもう、アメリカすら、それを止めることができないという状況です。

平野氏:
オバマ政権は、歴代の大統領より、イスラエルに対しては弱腰であると、いう評価が出てるんですが、やっぱりそうなんですか?

岡氏:
ま、今申し上げたような状況の元で、もう完全に、イスラエルには何も言えないし、言ったところでイスラエルが言うことを聞かない、という状況ですね。
ただ、そんな状況の中で、アメリカの主流メディアの論調自体も、今は変わってきていて、

平野氏:
そうですね、それともうアメリカだけではなくて、今回その、国際世論というんですか、
例えばロンドンでデモが起きたり、ドイツで起きたり、なんかこう広がりがかなり出てきてるようなね、

岡氏:
市民レベルではそうですね、こんなもう、要するにジェノサイドが繰り返されて、この5年半の間に3回
しかも、今までにも増して、なり振り構わない無差別な攻撃で、大量に人が殺されている
あのもう、5年前の攻撃は、あれよあれよという間に、こういう事態が進行しましたが、
やっぱり、3度もジェノサイドが繰り返されて、これを許しているのは私たち自身だという、そういう認識が国際社会の中に広がっているからだと思います。

水野アナウンサー:
私たちの問題だと。
今野さん、それこそ私たち、今日本がね、あるいは日本人が、できることってなんだと思われます?あちらで活動してらして。

今野氏:
そうですね、今はほんとに、人の命を救うってことが最優先なので、JBCの方でも、緊急支援の呼び掛けをしていますが、
怪我をした人々が病院に運ばれても、薬品が無い状態ですので、そこにまず、命を救うために、医薬品を入れるために
イスラエルに対して圧力をかけていく、声を上げて、緊急人道支援物資がガザに入るようにするように、要求していくということが、ひとつあると思います。
で、それをするためにはやはり、日本政府に対しても、イスラエル政府にそういう形で圧力をかける
封鎖を解除して、物が入るようにするように要求してもらうってことを、私たちが働きかける必要があると思います。

水野アナウンサー:
ラジオネーム『猫一匹』さんという方がおっしゃってるんです。
「現地の負傷者に対する医療活動の提供などは、おおいに言いたいところですけど、武力の提供をここでやってはいけませんよね」
とおっしゃってるんですけど。
つまり、日本から、間接的にではあるにせよ、武器が渡るんじゃないかと、いう話をおっしゃってるんだと思うんですね。
武器の輸出を、安倍政権は今、積極的に行ってますね。
そしてまあ、アメリカに武器が輸出されるということも、一部決まりましたが、そのアメリカから、じゃあこの戦闘状態の所に入っていくんじゃないかって。
こういう話もあるようなんですが…。
今野さんはどうですか、現地見てらして。

今野氏:
そうですね、イスラエルはこれまで、まあ今の攻撃が始まる前から、ガザ、あるいはレバノン、あるいはシリア、いろんな周辺諸国で、アメリカの武器を使ってきましたので、
今日本政府が、アメリカのF35っていう最新戦闘機に、部品を入れるっていう話もしていますし、
ミサイルにも、日本の技術を入れるってことを言っています。
で、その武器をイスラエルに、ま、本当は、紛争国に売らないっていうふうに、日本政府は言っているはずなんですが、
でもイスラエルは例外だと、いうふうに言ってますので、というのはアメリカが、イスラエルに対して武器を売るのはもう間違いないので、
それを止めてしまうと多分日本政府としては、アメリカに武器を供給できないということもあると思うんですけど、
もしその、日本の技術の入ったアメリカの武器がイスラエルに行った場合は、イスラエルは間違いなくそれを、民間人に向けて使うので、
まあそうなると、ほんとメイド・イン・ジャパンの武器が、民間人に対して使われるというのは、もうすぐそこに来ていると、わたしは思っています。

水野アナウンサー:
そうですか…。
あの、スタジオにいらっしゃる岡さん、『闇夜のカラス』さんというラジオネームの方はね、
武器輸出三原則がまあ、変更されましたよね。
日本製の武器で、パレスチナの子どもたちが殺傷される恐れが、現実になってきてますけど、
それを阻止するために、私たちにできること、ありますか?


岡氏:
……はぁ、もうこれは私たち自身が、市民として、国民として、日本政府に対して、それを絶対に反対であるという、その声を上げること、だと思います。
政府というのは、国民の代表なんですから、私たち自身の、それは責任だと思います
で、封鎖が解除されなければ、今回の攻撃が停戦になったとしても、また必ず、数年後には確実に、同じような攻撃が行われます
最新鋭の兵器の開発というのは、まずガザの人たちを実験台にして開発し、
そして今これは、世界に向けて、開発された最新兵器の威力を知らしめるショーとして行われている側面もある
わけです。
ですから、そういうことが、くり返し起こることになります

水野アナウンサー:
自分とガザの人々の関係が、やっと見えてきたような気がいたします。
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行きたい!⇒『Projection -音の投影-』ピアノ・松尾久美/ヴァイオリン・田代裕貴

2014年07月30日 | 音楽とわたし


突き抜ける伝統シリーズ vol.3
アドバンスコープADSホール

三重県名張市松崎町1325-1

2014年81日(金)
19:00開演 18:30開場
全席自由  1500円


100名限定コンサート
(平成26年度アドバンスコープADSホール主催事業)

Projection -音の投影-

【ピアノ】
松尾久美

【ヴァイオリン】
田代裕貴


【演奏曲目】
ベートーヴェン
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.12-2

アダムス
「ロード・ムービーズ」より“Relaxed Groove”

ベルト
フラトレス

プロコフィエフ
ヴァイオリン・ソナタ第1番 へ短調 Op.80



8月だからと油断していました。
気がついたら、もう8月ではありませんか!
こんなギリギリになってのお知らせですが、

このふたり、もうほんっとに、ほんとのほんとに素晴らしい(表現の仕方がありきたり過ぎて歯痒い!)演奏家なので、
ぜひぜひ、もしまだ席があったら(お知らせが遅れたこと、心から申し訳なく思ってます!)、生で感じに、聴きに行ってください!

わたしは久美ちゃんのピアノを、練習も本番も含めて生で聴いて、可能ならオッカケ隊になりたい!と本気で思いました。
言葉ではうまく言い表せないんです。
胸の奥の、自分でも気がついていなかったいろんな感情の扉を、
時には荒々しくバンバンと打たれて戸惑ったり、時にはあたたかな手のひらで撫でられて潤ったり、
気がつくと涙ぐんでいたり、微笑んでいたり、眉間にシワを寄せていたり、
からだとこころに、ダイレクトにしみ通ってくる音に、六感までもが満たされる、という感じ。

ぜひぜひ!!

リハーサル中のふたり

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安倍さん、あなたの『世界で最も』が、どれほど軽薄で嘘っぱちなものか、それがよく分かりました

2014年07月29日 | 日本とわたし
安倍さんは、なにかというと、『世界』という言葉をよく使います。
安倍さんの言う『世界』とは、いったいなんのことを意味してるのでしょうか。
『世界で最も厳しい』
『世界で最も優れている』
彼の言う世界がどれほど粗末で嘘っぱちなものか、それがこのビデオにはよく表れています。

毎回、申し訳がないのですが、Daily Motionのビデオを、ここに載せることができません。
いつものように、紫色の大文字をクリックしていただくと、別画面にビデオが出てきます。
ビデオを止めて、数枚写真を撮ってみましたが、どれもピンぼけで見にくいものばかり…申し訳なく思っています。


日本の原発というものが、いかにいい加減で、無責任な考え方の元に成り立ってきたか、
しかも、あの凄惨な事故を経験してもなお、ほとんど改善されることもなく、この先も続けられようとしているか、

そして、スリーマイル島とチェルノブイリの事故後、それらの事故を教訓に、設計段階から考え抜かれた数々の安全対策が、欧米の原子力業界には存在していること、
メルトダウンは起こり得るものだという認識で、それに対する対策はもちろん、
過酷事故が起こり、『メルトダウンに至る事象の始まりから12時間は、格納容器保護のために人的対応に依存してはならない』というように、
事故の対処に当たる人たちの、被ばくの軽減にまで踏み込んだ規定が、原発の設計基準には組み込まれています。

規制当局の容赦ない審査。
極めて高い要求。
それに右往左往する企業に見切りをつけて、離れていく金融機関。

でたらめな使い方で長年良い思いをしてきた国々も、皆が気づき始めたことで、これまでのいい加減なやり方では通用しなくなり、
きちんとしようとすると、とんでもない額の費用がかかるので、原発から撤退し始めているのは当たり前のことです。

けれども、原発が、そんな危険でどうしようもないものだということを、まだ知らない国には、
窮屈で厳しい規制や基準から外れた、以前造っていたような原発を、どんどん売り込んで大もうけする。
もうそれぐらいでしか儲からなくなった以上、ダブルスタンダードと言われようが言われまいが、会社を守るためなら行け行けどんどん!

原発をたくさん抱え込んでしまっている国は、なにも日本だけではありません。
けれども、地震大国が、ここまでの数の原発を、それもご丁寧に、国をグルッと囲むようにして建てているというのは、
やはり誰が考えても、世界一阿呆な現象だと思います。

建ってしまっているものはしようがない。
けれど、稼働はしていない。
二度と、一基たりとも、燃料に熱を入れないこと。
一日でも早く、廃炉作業を開始すること。

廃炉には、90年かかります。
これは、前に、鈴木耕さんが書いたコラムで読んで、覚えた数字です。
廃炉先進国といわれるイギリスの現状を、毎日新聞の記事と照らし合わせながら、紹介してくださっていました。
 
↓以下、転載はじめ

廃炉作業の費用と期間に隠されている
原発の真っ黒な現実。
廃炉だけに特化した「廃炉庁」を早急に作れ!


毎日新聞(8月19日付)の特集記事が興味深い。
イギリスの原発廃炉作業に関する2面にわたる特集だが、それを日本の場合と比較して調べているところがなかなかいい。
 
まず、イギリスの例ではこんな具合だ。

「解体先進国」英の原発
稼働26年 廃炉90年


世界で最も廃炉作業が進む原子力発電所の一つ、英ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット、炭酸ガス冷却炉、2基)の作業現場に入った。
1993年の作業開始から20年。
責任者は、「既に99%の放射性物質を除去した」と説明するが、施設を完全に解体し終えるまでに、なお70年の歳月を要する。(略)
 
65年に運転を開始し、91年に停止した。
原子炉の使用済み核燃料(燃料棒)は、95年に取り出されたが、圧力容器周辺や中間貯蔵施設内の、低レベル放射性物質の放射線量は、依然高い。
このため、2026年にいったん作業を停止し、放射線量が下がるのを待って、73年に、廃棄物の最終処分など、廃炉作業の最終段階に着手する。(略)


なんとも気が遠くなるような話だ。
これまでに20年間を費やして、廃炉作業を行ってきたが、最終処理まであと70年かかるという。
つまり、合計で、90年の歳月が必要ということになる。
しかも、これは、深刻な事故を起こしたわけでもなく、普通に運転をして、普通に廃炉作業に入った原発で、
なおかつ、23.5万キロワットという、小さな原発である。
それでも、これだけの時間が必要なのだ。
 
問題はそれだけではない。
大きくのしかかるのが、「廃炉費用」だ。
このトロースフィニッド原発の廃炉にかかる総費用は、約6億ポンド(約900億円)になるという。
だがこれは、現段階での試算。
あと70年間に、それがどうなるかは、実は誰にも分からない。
 
この費用問題について、同記事は次のように書く。

(略)事故を起こした東京電力福島第一原発1~4号機を除けば、国内の商用原発で廃炉作業が実施されているのは、
日本原子力発電東海原発(出力16.6万キロワット、炭酸ガス冷却炉)と中部電力浜岡原発1号機(54万キロワット、沸騰水型)、同原発2号機(84万キロワット、同)の計3基にとどまる。
 
日本原電は、東海の廃炉費用を、計850億円と見込み、2020年度までに終了させる予定。
中部電は、浜岡1、2号機の2基で、841億円かかると想定し、36年度までに終える計画だ。(略)
 
一方、福島1~4号機の廃炉費用は、「青天井」になっている。
東電は、4基の廃炉処理に、これまで9579億円を投じたが、放射性汚染水問題については収束のめどが立たないうえ、
溶けた燃料の回収・保管には、新たな研究開発費用が必要となる。(略)


だいたい、この廃炉費用の、各電力会社の概算が怪しい。
ほんとうに、こんな見積もりで、廃炉は可能なのか?

↑以上転載おわり


原発を稼働させるのはもうやめましょう。
やめさせましょう。
日本が本気にならないと、そのためには、日本に暮らしている人たちが本気にならないと、
この、日本のからだを腐らせてしまう恐ろしいバケモノを、根こそぎ引っこ抜けません。

報道ステーションのビデオの文字起こしをしました。
ビデオは、↓下記の紫色の太文字、または文字をクリックしてくださると、別画面に出てきます。

報道ステーション
『原発の〝世界最高基準〟驚きの現実…日本は遅れていた!』

http://www.dailymotion.com/video/x225181_原発の-世界最高基準-驚きの現実-日本は遅れていた_news?start=229

古館アナウンサー:
新聞のテレビ欄では何回も、今日はこの特集をお送りします、と告知していたにも関わらず、ずっとなかなかできなくて、今日に至ったんですが、
世界の原発の安全基準について見てみよう、ということで、
この写真は、『十万年後の安全』という映画でも有名になりました、フィンランドのオンカロ、最終処分場の方ですね。



こちらがあまりにも有名というところがありますけれども、同じ所に地続きで、オルルオト原発、こちらもあるんですね。



この原発と日本の原発を、比較してみます。


欧州基準から見ると…、
日本の原発は〝安全〟か?


今月16日
安倍晋三総理大臣
ま、世界でも、最も厳しい安全規準に則ってですね…」

川内原発が審査に〝合格〟したその日ー
総理は、世界で最も厳しい規制基準だと、胸を張った

原発の新規制基準⇒〝世界で最も厳しい〟とは本当なのか?

我々は、最新鋭の原発建設が進むフィンランドで、その答を探した。


原発の〝世界最高基準〟
驚きの現実…日本は遅れていた


田実万紗子リポーター:
ヘルシンキから車で3時間あまり走ってきました。
ここから先、さらに進んだ所に、オルキルオト原発があります。



深い森を抜けると、目的地(フィンランド・オルキルオト/5月下旬)に辿り着く。
初夏とは思えないような、冷たい風が吹き付けていた。
ボスニア湾に面した広大な敷地の一角で、オルキルオト3号機の建設が進む。

すでに稼働している1、2号機。
そして、地中深くに核のゴミを埋める、最終処分予定地『オンカロ』も、併せ持っている。



2005年着工の3号機は、世界最大の原発メーカー、フランスのアレバなどが受注した。
EPR(欧州加圧水型炉)と呼ばれる次世代の原子炉だ。


田実万紗子リポーター:
まず驚かされるのが、原子炉格納容器です。
こちら、ご覧ください。
ドームのようになっているのですが、日本の原発にも似ていると思うんですけれども、
実はあのドームの部分ですね、鉄筋コンクリートで2重の構造になっています


ここには、設計段階から考え抜かれた、数々の安全対策があった。


パシ・トゥオヒマー広報部長・TVO(電力会社):
あそこは、2重のコンクリートが被さった2重構造です。
ですから、何が起きても、突き破られることはありません。
内部で、また外部で、何が起きても、影響を及ぼすことがないように造っています。


建物の2重構造は、テロ対策の一環でもある。
核燃料を燃やす原子炉容器に、それを囲む格納容器。


ここでは、原子炉を守る格納容器が、2重の構造になっているのだ。




9.11の(同時多発)テロの後、欧米で安全規準が強化され、航空機の衝突に耐えられる構造が求められるようになった。


2重の格納容器という発想は、日本の基準には無い

福島の事故を受け、日本の新基準で義務付けられた、フィルターベント
事故の際、格納容器が破損しないよう圧力を下げる装置で、放射性物質を取り除くフィルター(排気設備)がついている。
(日本)国内の導入は始まったばかりだが、ヨーロッパではすでに〝標準装備〟だ。


STUK(フィンランド規制当局)・キルシ原子炉規制部門チーフ:
重大事故をコントロールする対策は、スリーマイル島(米国)とチェルノブイリ(旧ソ連)の事故後、1980年代が終る頃に定められました
稼働中の原発にも、1990年代に、対策を講じています


さらに驚いたのは、メルトダウンを想定した対策だ。
格納容器の底に、コア・キャッチャー(Core Catcher)という受け皿が用意されている
コア・キャッチャーは事故の際、原子炉容器の底を突き破って溶け落ちた核燃料を、まず受け止める。


そして、引き延ばすように広げて、高温の燃料を冷やし、格納容器の外に漏れ出すのを防ぐ
のだ。


広げて冷やすとは、いったいどういうことなのか。

これは、フランスで建設中の、同じ型(EPR)の原発(フラマンビル原発3号機)で撮影された、コア・キャッチャーの映像。








超高温に耐える素材でできていて、広さは170平方メートル。


核燃料を薄く引き延ばし、熱を逃がしやすくする。

特別な化学材料が用いられ、ここで冷却し、封じ込める。


事故が起きるたび、その教訓を活かし、2重構造やコア・キャッチャーなどを取り入れてきたヨーロッパ
原発の設計基準には、メルトダウンに至る事象の始まりから12時間は、
格納容器保護のために、人的対応に依存してはならない
と、規定されている



電力会社TVO・エサ・マンノラ顧問:
何よりも最優先に考えているのは、安全であることです。
重大事故が起きた場合、例えば、福島のようなケースでは、数時間、人の手を使わなくてもよいようにとは、考えています。


これだけ厳しい基準となれば、当然、金がかかる。
とんでもないことになっていた。


田実リポーター:
原子炉での重大な事故を想定し、あらゆる対策を施した、最新鋭の3号機。
ただ、安全審査が厳しいこともあり、何年も、工事が遅れてしまっています


規制当局の容赦ない審査によって、オルキルオト原発(3号機)の工事は長期化している

オルキルオト3号機
2005年着工
2009年稼働の予定は、大幅に遅延


追加措置も指摘され、コストはみるみるうちに膨れ上がった
その額は、当初の3倍規模、1兆円を超すと言われている。
世界をリードしてきた原発メーカー・アレバだが、ドル箱(高収益)の送電網部門を、丸ごと売却する窮地にまで、追い込まれてしまった。
当局の要求レベルは、それほど高い



アレバ・アレキシス・マランシック執行役員:
安全性を向上させるのに金をかけるのは、良い悪いの問題ではない。
安全面への投資をやめれば節約にはなるが、建設はおろか、原発は存在できない。


巨大企業をもってしても、厳しい安全要求には従う他ない


佐藤暁氏・原子力コンサルタント(元GE技術者):
日本の安全規準とか、それからまあ、それを発電所に導入する仕組みがですね、周回遅れ、
追いついたというならばですね、まあ、ヨーロッパの10年前、ぐらいですか。


〝世界で最も厳しい基準〟だと、自画自讃する政府


しかし、規制委員会の田中委員長は、言葉を濁す。

田中俊一委員長(原子力規制委員会):
その、世界最高水準とか世界最高とかってのは、やや政治的というか言葉の問題なんで、具体的ではないんですよね。

そして、コア・キャッチャーなど、海外の最新技術については、
「既存の施設に追加するのは難しい」「具体的な技術指定はしない」とした。

Q. コア・キャッチャーや2重の格納容器を、今後要求していく考えはないのか。

田中委員長:
2重格納容器とかコア・キャッチャーってのは、設計段階から入ってかないといけないんで、ちょっとそう簡単ではないわね



だが、諸外国は、現実に起こり得る『危険』に対し、常に高い意識で、何重もの工夫を積み重ねてきた


佐藤氏:
基準からですね、ほんとは、もう一回作り直さないといけないぐらいだと思うんです。
ですけれども、もうだいぶその(原発の適合審査)先に進んできちゃってるわけですよね。
ここから何をやったらいいのかと、ヨーロッパ、アメリカと比べて明らかに欠けているところ(視点)を、
きちんと洗い出して見ていかないといけない
と思います。


古館アナウンサー:
管さんに伺う前に、ひとつ、あのフィンランドのあそこの地層は、18億年前から動いていないと言われる、強烈な岩盤、その前提がちょっと違い過ぎるんですけど、
あとどうでしょう?


姜尚中氏(国際政治学者):
聖学院大学学長。東アジア情勢に詳しい。
近著に『心の力』小説『心』

やっぱりこう、観てて思ったのは、結局◯◯の違いで、人間の命に対する考え方が、根本的に違うんじゃないかなと。
ですから、やっぱり人間の命が、安く見積もられている、としか思えないんですよね。
基本的に、事故は起きるもんだと、人間がやるものは、事故は必ず起きるわけで、
で、起きるという前提でコア・キャッチャーを造ったり、つまり、炉心溶融が起きても、核燃料をしっかりと捕捉して、それを冷やして封じ込めると、
それからまあ、格納容器の2重構造を造ってですね、まず人間がもう十(←まうみ注・十ではなく)数時間、何も加えなくてもいい状態にある

前あのー、東海村でしたかね、あの原発事故が起きた時には、バケツで汚染水を汲み上げてたわけですよね。
そうするともう、人がそこで、莫大な被ばくを帯びるいるわけですから、
結局、人間の命というものが、やっぱりあまく見られているという感じですね。
で、その根本的な違いはやっぱりあるんじゃないかと。
ですからこれはもう、生命観の問題で、その問題を解決しないと、安倍総理の言ってらっしゃること、
例えば『アンダーコントロール』にせよ、あるいは今回の『世界一厳しい基準』にせよ、やっぱりこれ、言葉のあやで実態をくぐり抜けようとしていて
本人もそう、なんか信じ込みたいのかどうかは分からないんですけど、まあある種、言霊の世界に自分を追いやっているとしか思えないんですよね。
だから、事態をしっかり見ないといけないし、その上で、やっぱり採算が合うのか合わないのかという問題ではなくて、
原発を進めるということは採算が合わないと。
で、合わなくてもやる、ということであれば、今回のような、フィンランドのようなことになるわけで、
採算もたくさん取りたい、そして進めたい、これは実はもう、水と油で、どちらかを選ばなければいけないわけで、
最終的には、採算が合わないならどうしたらいいか
やっぱり脱原発を求めるしかないわけですよね。
ですから、資本主義社会においては、採算、つまり経済性というのが一番優先されるわけですから、
自ずからそういうふうになっていくんではないかと。


古館アナウンサー:
さらにもう一つ、ちょっと穿つ過ぎと言われるかもしれませんが、正確に調べ抜いたわけじゃないんですけど、
ヨーロッパもずるいなって思うところがあって、
フランスのアレバでもそうですけれども、あれだけの、何兆円とかかってしまうっていう現実がありながら
あれはヨーロッパ向け、のような気が一瞬してですね、
新興国に向かっては、もうちょっと割安な原発をどんどん売って、儲けてるんではないですかと。
そこまで原発のことってのは考えないと、さっきの、命に関わってくると思っちゃうんですよね。


姜氏:
だからヨーロッパも、ヨーロッパという枠組みの中での一つの価値観と、しかも西ヨーロッパと東ヨーロッパは違いますけど、
やっぱりそういう西側諸国の高い水準は、ヨーロッパの外側に行くと、いわば、かなり低く見積もられるし、
で、そういうダブルスタンダードですよね、
そういうものを無くしていくならば、自ずから原発は限界がある、そうなるわけですよね。
ですからまあ、ちょっとこう、ある種の偽善的なものも、そこにつきまとってますよね。
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トラブルが起きた時住民の安全を守るというのが、日本の規制基準の中には入ってない。これで世界最高?

2014年07月28日 | 日本とわたし
Daily Motionビデオ『泉田知事・「日本の原子力の新規制基準は、国際標準を満たしていない」』を、字起こししました。

いかに、地元や近隣にお住まいの方々にとって、避難が難しいものであるか、そのことをとても具体的に、分かりやすく語っておられます。
ぜひ、地元や近隣以外にお住まいの方にも、その実態を知っていただきたいと思います。

ビデオを、ここに載せることができません。
右横の文字⇒http://www.dailymotion.com/video/x21yrvk_泉田知事-日本の原子力の新規制基準は国際標準を満たしていない-第5層がそっくり抜けている_newsをクリックしてください。
別画面で観ていただけると思います。


2007年7月16日
新潟中越沖地震

新潟県を、震度6強の地震が襲いました。

柏崎刈羽原発 3号機火災発生

地震の影響で原発が止まるという、世界で初めての事態
この経験から、柏崎刈羽原発に、免震重要棟が造られました
そして、福島に免震棟が完成した8ヵ月後……、

ーー2011年3月11日・東日本大震災ーー

この時、もしも免震重要棟が完成していなければ、(福島第一原発事故の)被害はさらに広がったはずです。


東日本大震災三周年記者会見
安倍晋三首相:
独立した原子力規制委員会が、世界で最も厳しいレベルの規制基準に基づいて、徹底的な審査を行い、
これに適合すると認められた原発について、再稼働を進めていく方針
であります。


先週、原子力規制委員会は、九州電力川内原発について、新しい規制基準を満たしている、とする審査結果を発表。
安全審査をクリアした原発は、再稼働を進める方針の安倍政権。
泉田裕彦新潟県知事に、『再稼働議論の前にやるべきこと』を伺います。


露木茂アナウンサー:
7月16日、先週の水曜日ですが、この中越沖地震から7年目の追悼式が行われました。
もちろん、泉田知事も出席をされています。
さて、そうした中で、原発が地震により被災した世界初のケースとなった、この中越沖地震を、もう一度振り返ってみたいと思います。


黒塚まやアナウンサー:
では、改めて、ゲストを紹介します。
新潟県知事の泉田裕彦さんです。
*泉田裕彦
1962年生まれ
新潟県加茂市出身
通産・経産省を経て、2004年から新潟県知事

そしてコメンテーターは、BS11の二木啓孝解説委員です。


露木氏:
2004年の、知事に就任される前日でしたか?


泉田知事:
30時間前ですね。


露木氏:
30時間前に、中越地震が起きたわけですよね。
で、その3年後に、先ほどご覧いただいた、中越沖地震が起きたわけで。

あの、これは私事ですが、メディアの世界に入って2年目の6月に、新潟地震が起きているんですよ。
で、やっぱり新潟って、地震が多い所だなという印象があって、
で、1985年に、1号機が運転を開始しましたよね、柏崎刈羽で。
その時僕は、「えー……大丈夫なのかな」と、微かな不安を覚えた記憶があるんですが……。
知事は、もう原発が稼働してから知事におなりになったわけですけれども、
やっぱりこの地震を、どんなふうに受け止められましたですか?


泉田知事:
2007年の中越沖地震の時は、まず情報のやり取りが大変だったんです。
というのは、住民の皆さんから見ますと、停電がかなり広範囲で発生しました。
そうするとテレビが映らない、ラジオは普段聞かれない、ということになると、
遠くの方は、原発から火災が発生してると分かっているのに、近くの方にはなかなか情報が伝わらない、という状況でした。

で、一応、新潟県庁と柏崎刈羽のサイトには、ホットラインがあるんです。
我々も実は、報道で初めて、この火災を知ったんですが、ホットラインが機能しなかったんですよ。
で、なんで機能しなかったのかというと、ホットラインがある部屋、これが地震でドアが歪んで、開かなかったと。
中に入れないんで、ホットラインに辿り着けなかったんで、県庁との間の回線が使えなかったと。


露木氏:
そうすると、刈羽刈羽の原発敷地内から、外に対してのそういう情報発信というのは、無かったわけですか?


泉田知事:
一応、本店経由でつないでもらってたんですけれども、それにしても第一報は、テレビで「燃えてるよ」というのが分かる、というような状況だったんです。
それだと対策が執れないわけですから、なんとかしてくれ、ということで造ってもらったのが、さっきVTRにあった免震重要棟、ということになります。


露木氏:
そうですか。
まあこの後、IAEAも調査に入りましたよね。
僕は、IAEAのアドバイスで免震重要棟ができたのだと思っていたんですが、そうじゃないないんですね。


泉田知事:
そうじゃないです。
県庁との間の、ダイレクトのホットラインを確保するためにやってほしい、ということで造ってもらったんです。


露木氏:
耐震構造で、ドアが歪んだりしないで、ちゃんと連絡網が整備されて活きてるような建物を造らなきゃだめだと。


泉田知事:
それで、同じ東京電力の施設で、新潟にだけ免震重要棟があるのは変だよね、ということで福島にも造ることになって
で、完成したのが、これもVTRに出た通り地震の8ヵ月前だったんで、あの時も、もういいじゃないかっていう話があったんですが、
でも、いざという時に連絡設定ができないと困るから、どうしてもやってくれということで、あの時はやってもらったんで、福島にも免震重要棟があった、ということだと思うんです。


露木氏:
二木さん、やっぱりこれ、企業としては、免震重要棟を造るためには金がかかるわけで、そりゃあなるべくコストをかけない方がいいだろう、というふうに考えるわけですが、
一応東京電力は、柏崎刈羽と福島第一第二に、免震重要棟を、中越沖地震を教訓に造ったんですよね。


二木氏:
同じ東京電力だから、新潟県知事が造ってくれ、と言うことだったんで造った。
造って8ヵ月後に、例の3.11があって、大変な原発事故があったんですが、
皆さん、ご記憶にあると思うんですが、免震重要棟がナショナルセンターになってたんですよね。
吉田所長以下、もう必死にやってということで、あの時に免震重要棟が福島第一原発に無ければ、全員強制的に退避となると、
あの原発は全部、自動的にメルトダウンを起こしていた
となると、
だいたい想定する範囲は、東京が全部入ってしまうということなので、今こういう形で放送は多分できなかったということです。
もちろん、我々は避難しなければいけない、という状況は、


露木氏:
東京に人が住めなくなっていたと、あれが無ければ。


二木氏:
そうなんです。
後から考えるとゾッとして……それと7年前に新潟の、あの教訓を得て免震重要棟を造ったことが、
まあ、極端に言えば、東京が助かっている、とも言えるということだと思いますね。


露木氏:
今のこの、お二人のお話を伺って、やっぱりあの、起きた事故を教訓としてどう活かしていくか、ということだと思うんですよね、結論は。


泉田知事:
規制基準の話が出てますけど、この免震重要棟は、当時規制基準に入って無かったんです。
それからもうひとつ、このフリップにも出てますけども、消防車がそもそも無かったんですよ。

*中越沖地震を踏まえた対応

免震重要棟の設備
◎震度7クラスの地震に対応
◎非常用自家発電機を設備
◎通信、コンピューター等の設置

消火設備の信頼性向上
◎埋設配管の地上化
 自衛消防隊の強化
◎化学消防車の配置


で、あの、当時、2007年の時の火災で何が起きたかというと、消火栓の水、ここを使って消すはずだったんです。
ところが、地震で、構内に1メートルぐらいの段差ができて歪む、ということがあって、消火栓の水がうまく出なくなったんです。
結果として、世界に配信された絵は、消防隊が退避したんです、消せないから。
原発から火が吹いているにもかかわらず誰もいないっていうのは、専門家の目から見ると、放射能漏れが起きているというふうに見えるそうです。
それで、大変なことが起きているということで、新潟に世界中から電話がかかってきて、
知り合いの人は早く帰れみたいな話が、どんどん広がっていったというようなことだったんです。
それで、消防の仕組みぐらいはしっかりやってくれと、いうことで、この消防車も配備することになったんですよ。
で、これが無いと、覚えてらっしゃるかどうかわかりませんが、福島の原発も、消防注水やってましたよね。
ちゃんとできたかどうか、怪しいですよ。

緊急自動車も、柏崎刈羽消防からサイトに到達するのが大変なんです。
住宅が道路の上に倒れている
そして、道路に段差がある
そこに人が全部出てきますので、大渋滞になるんですよ。
全く動けないような状況になっている中で、緊急自動車が行くというような事態になりましたので、
これはやっぱり中に無いとだめだ、と。
で、あったおかげで注水もできる、というようなことだと思うんですね。


二木氏:
確かあの、7年前の地震というのは直下型でしたね。
そうすると、ドーンと段差ができるから、道路だけじゃなくて敷地内にも入れないし、給水管も全部断線してしまうということなので、
相当これは、原子力の建屋の安全性の問題じゃなくて、いざ事故が起きた時のバックアップをどうするか、というのが、すごく気になりますよね。


露木氏:
この7年前の時には、発電所内の自衛消防隊も、今(泉田知事が)おっしゃったように、全く機能しなかったわけで、
つまり、施設を造る、設備を造っても、後はそれを動かすのは人ですよね。
その人が動かなかったわけですよね。
まあ、動けなかった、という条件もあったんでしょうけど。

柏崎刈羽は、世界最大級の原子力発電所なんですが、日本の原子力発電所をもう一度おさらいしておきましょうか。


黒塚氏:
日本には17カ所、54基の原発があるわけなんですね。

北海道・泊
青森 ・東通
宮城 ・女川
福島 ・福島第一(470万KW)/福島第二
新潟 ・柏崎刈羽(821万KW)
茨城 ・東海第二
石川 ・志賀
福井 ・敦賀/高浜/大飯/美浜
静岡 ・浜岡
島根 ・島根
愛媛 ・伊方
佐賀 ・玄海
鹿児島・川内


新潟県の柏崎刈羽原発は、1号機から7号機までありまして、総出力821万KW、福島第一原発が、1号機から6号機までで、総出力470万KWですので、
これだけでも見て分かるように、およそ2倍近くの総出力があるんですね。


露木氏:
こうした中で、今地図でもご覧いただきました一番左にあります、鹿児島県の川内原発、これが審査合格第一号、ということになったわけですけれども、
これをまず、泉田知事、他県のことではありますけれども、どうふうに評価、というか見ておられますか?


泉田知事:
柏崎刈羽とは型式も違う原発ですし、新潟県知事として、責任を持って情報収集分析をする立場に無いんで、コメントはできない、というのが正直なところです。
一般論で申し上げれば、この規制基準、よく安全規準っていって言われることがあるんですが、これはあくまでも規制基準なんです
規制基準が、設備、それから断層、ここに特化した審査しかしてなくて、国際基準に達していないというところが問題だと思っています。
IAEAの、これは深層防護、インターナショナルスタンダードがあるんですけども、
国際規格で言うと、第5層がそっくり抜けているんです。

’露木氏:
第5層と言いますと?


泉田知事:
第5層というのは、トラブルが起きた時に、住民の安全を守るというのは、基準の中にIAEAは入っているんですが、日本の規制基準の中には入ってないんです。
それから、メルトダウンとか重大事故が起きた時に、どう対応するか。
法制度とか安全文化というところ=4層もあやしい、という状況になっていますので、

例えば米国であれば、避難ができないような原発は、そもそも造ったけど稼働できなかった、というようなこともあるんですが、
日本はこれ、規制委員会が、自治体をいろいろ縛る指針は出しているんですけども、後は知らない、ということで丸投げになっていて
基準のところの第5層、それから第4層についても、疑問が残るというような状況になっていると。
せめて国際規格でやってほしいというふうに思っています。


露木氏:
だけど安倍さんは、世界一厳しい基準だって、繰り返し繰り返し言ってますよ。


泉田知事:
これは、例えばフランスの最新型の原発は、メルトダウン事故が起きる前提でやっているんですよ。
それを、わかりやすいように線香花火に例えるんですけど、線香花火で火事を起こさないようにするにはどうするか。
下にバケツ、水を入れて置いておくでしょ。
そうすると、万が一落ちても、ジュッとすぐ消えるじゃないですか。
これを、メルトダウン事故が起きた時に同じようにしてくれるのが、コアキャッチャーと言うんですけど、このコアキャッチャーがついてるんですよ。


日本原子力学会HP掲載資料より

で、日本の原発は、古いですからついてない。
線香花火に例えると、足の上で線香花火やっているようなもんなんです。


露木氏:
ええ、足にポトッと落ちるでしょ。


泉田知事:
そうそう、火傷するでしょ?
だから、風がこないように衝立を作りました。
それから、手が震えないようにサポートを入れました。
ええ、これで世界最高ですと言われても、落ちる時は落ちるんですよ。
じゃあアメリカはどうしているのかと言うと、バケツに水を入れた人が脇に立っていて、落ちた時は火傷する前に水をかけてくれるんだけれど、
日本はそこをやらないっていう、基準に入ってないんです。
だから、世界最高になってないんです。



露木氏:
わかりやすい例をあげていただいて。


二木氏:
もともと我が国の原発線香花火は、落ちない前提なんですね、落ちない前提なんですよ。
だからここは違う。

で、今、原子力規制委員会のこの設置法、原子力施設だけじゃなくて、他の住民の安全の問題、
今、泉田知事がずっと、県民の安全のためにどうなのか、とおっしゃっていることというのは、
例えば、1つはこの、「原子力利用における安全の確保に関すること」、これは当たり前だと思うんですが、
もう1つ、「原子力利用における安全の確保に関する事項について勧告し」、
つまり、この勧告の中に、多分、この住民の安全、周辺の安全とか、
いざ線香花火が落ちた時の住民のケアの問題で、私はここに包含されると思うんですけれども、
多分ここは、排除しちゃっている
ということなんでしょうかね。


露木氏:
自治体にお任せ、ということなんですか?


泉田知事:
いや、お任せじゃないんですよ。
邪魔になっているんです、はっきり言うと。
指針というのを出していて、この指針に従ってやって下さいということを、原子力規制委員会が、自治体に強いています
それが、不可能なことを要求しているという状況なんで、それで計画が立てれないんです。
ちょっと例で申し上げると、ヨウ素剤の配布。
これですね、5キロ以内は事前配布なんですけれど、5キロから30キロ圏、これは、事故が起きた時に配布することになっているんです。


露木氏:
新潟の場合は40?


泉田知事:
44万人。


露木氏:
44万人分!事故が起きてから、ヨウ素剤を配る


泉田知事:
そうです。
福島の事故はですね、8時間半でベントをするという判断を、もうしているんです。
だから、夜中であっても雪が降っても、8時間半、これは8時間でも遅いという指摘があるので、もっと早く配らないといけない。
ところが、事故が起きた時に、どういう指示が出るかと言うと、5キロから30キロ圏は屋内退避、という指示が出るんです。
つまり、放射性プルームがやってくるんで、被爆しないように家に居て下さいねっていう指示を出しておきながら、44万人に配って回る人は誰なんでしょうかと。


露木氏:
それは不可能でしょ。


泉田知事:
不可能でしょう、論理的に。
だって、中越沖地震の時、道路に段差ができて、車が渋滞して、緊急自動車も通れないような時に、
8時間半以内に、44万人に、どうやってヨウ素剤配るんですか
と。
そんなのできないに決まっているわけで、それをやれっていう指針を出しておいて、それで後は自治体の責任ですって言われても……。
丸投げじゃない
んです。
やるところを縛っておいて、出来ないような指針を作っておきながら、対策を取れって、
だからこれは、相当無責任じゃないか
と思っています。



二木氏:
今度、川内原発が、原子力規制委員会の安全基準というのが、再稼働(ありき)の(まあ安全かどうかは別にして)安全規準なので、
我々、例えば近隣の県民住民からすると、いざ何か起きた時に大丈夫だったら、安全基準だと思うんですが、
今の知事の話を聞くと、これは全然別ものなんですね。


泉田知事:
別ものなんです。
で、更に言うと、新潟県の場合東京電力なんですけれども、
東京電力はですね、3月11日、2011年の当日ですね、あの地震の午後5時の段階で、既に進展予測をして、メルトダウンは認識していました。
数時間でメルトダウンだと
だからこそ、吉田所長は、消防注水を検討・指示しているわけです。
更に、3月14日だったと思いますけど、本店と、それから福島のサイトの間でやり取りをしていて、
原子力本部長から、「メルトでいいですね?」という問いかけに対して、「結構です」という答えが出ているんです。
つまり、3月の早い段階から、メルトダウンを認識していたのにも関わらず、2ヶ月それを隠したわけです。



露木氏:
ずーっとそれを認めませんでしたよね。はい。


泉田知事:
だから、正しい情報を出してくれないと、逃げようがないんですよ、自治体の方は。
従って、情報をちゃんと出してくれるかどうかっていうことも、大変重要な要素で、
そんなのは、別に放射能があるから近づけないっていう話じゃなくて、いつでも検証できるわけなんですけど、
その検証をしていないということから、情報が正しく出るかどうかも疑わしい

更に、もう1つ指摘したいのは、民間人を残して、福島フィフティって言われて、あの事故の収束に努力した現場が世界から賞賛されましたが、
本来、現場にいるはずの、保安検査官、国家公務員が、先に退避しているんですよ。
いてもしょうがないと
で、結局、健康に影響があると思うから、国家公務員の方は退避して、民間人をサイトに残したわけです。
それは、どういう手当てしたんでしょうかと。
被爆してもいい、という決まりにしたんでしょうかと。
国家公務員法を直したんでしょうかと。
この辺りって、全然やってないでしょ。
労働安全衛生法っていう法律があって、これ、被爆の上限線量を決めているわけです。
決めてるんだけれども、民民の契約で、それを超えた時に対処できるんでしょうかと。
そんな契約、無効ですよね、法律に違反するの。
じゃあどうするんですかと。
またあの泥縄で、60歳以上は死んでもいいんだと、俺も行く、みたいな話になっちゃうのか
いざという時にどうするのかという議論が、全くなされてない


露木氏:
何にも決まってないわけですね……はあ……。


二木氏:
今、知事がおっしゃっているのはここですよね。
例えば、労働環境法をどうするのか、専門部隊をどうするのかと、この部分というのは、安全規準の中には含まれない


泉田知事:
含まれないです。


二木氏:
だからそうすると、イチエフ、福島第一原発のあの事故から、対策は執られてないというふうに見ていいんですか?


泉田知事:
そういうことです。
田中規制委員長は正直だ、と思います。
規制基準は、事故が起きる前提でできているんです。

更に言うと、規制基準は緩まっていて、以前は敷地の外で被ばくしないようにっていう基準があったんですけども、
今は、一基当たりの原発からは、100テラベクレルまで出てオッケーの基準になってるんです。
100テラベクレルって、ピンとこないでしょ。
これは、甲状腺等価線量でいうと、300ミリシーベルト以上の被ばくをするんです。


露木氏:
300?!……。


泉田知事:
つまり、健康に影響し得る放射性物質が出ていきますよというのでオッケーになってるんです、この基準は。
だから、事故は起きる可能性がある
更に、健康に影響のある放射性物質が、敷地内に流れますという前提で、
じゃあどうやって収束させるのか、どう避難するかっていうことを対処してない基準というのが、この規制基準なんです。
安全規準じゃないんです。



露木氏:
その300ミリシーベルトが流れ出ますよって、言ってるわけですか。


泉田知事:
だから、柏崎刈羽は7基あるから、掛け7なんです。
それでオッケーっていうことが、クリアしたっていう意味ですから、全然安全じゃないんです。


露木氏:
はぁ……。


二木氏:
川内原発の審査の時に、田中委員長が、まあ正直というか、びっくりしたのは、
「わたしの口から安全とは言えません」と言うのは、正直なんですね、あれは。


露木氏:
安全とは違いますってね、はっきり言いましたよね。


泉田知事:
正直だけど、職務怠慢なんです。
なぜならば、原子力規制委員会は、原子力利用の安全を確保することっていうのが任務になってますから。


露木氏:
ええええ、そうですよね、そうですよね、はぁー。


二木氏:
もうひとつ、これはぜひ知事にお伺いしたいんですが、
いざ何かが、実際事故が起きた時の、じゃあ誰が指揮を執って避難させるのかというところなんですけれども、
この、原発事故については、原子力災害対策特別措置法に基づいて、官邸総理が指示をしますと。
それから、例えば、火災とか洪水とか、一般的な災害については、災害対策基本法で、市町村長、組長が指示しますと。
すると、3.11からの福島第一原発の事故は、原発・津波、それから地震という、まあもちろん火災も発生した、
極めて複合的な問題になってきた時に、これ、誰が指示を出すのかと。


泉田知事:
そうなんです。
まず、原発事故はどんな時に起きるの?と。
何にも無い時に起きる例もあります、チェルノブイリみたいに。
でもたいがい、2007年の中越沖地震でもそうでしたけど、地震だ津波だテロだっていう時に、やっぱりトラブルになるんだと思うんですね。
そうすると、今新潟に、4000人以上の方がまだ、福島等から避難されてきていますが、
3カ所目、4カ所目、5カ所目、6カ所目の避難所です、っていう人が、多くいらっしゃるんです。
なんでそうなるかっていうと、最初地震で、津波で、とても住んでいられないんで、避難指示が市町村長から出たわけです。


露木氏;
まず命からがら、最初の避難所に逃げました。


泉田知事:
そうすると、その後で、半径2キロだ、10キロだ、20キロだっていう、


露木氏:
だんだん広がっていきましたよね。


泉田知事:
行き先を指名しないで、同心円で、総理が避難指示を出したと。
官邸が避難指示を出したわけです。
そうすると、せっかく逃げた所から更に逃げろっていう話になって、で、更にそこにも居られないからっていうことで、転々としてやって来られる、ということになったわけです。

でもこれ、世界的に見たら異常だと思うんですけど、結局、本部がふたつ立ち上がったんですよ。
事務局が、災害対策特別措置法、災対法ですね、こちらの方は、内閣府が事務局をやります。
災害対策基本法、こちらは内閣府が事務局をやって、
原災法は、当時は原子力安全保安院、今は原子力規制庁が事務局をやる
、ということになりますので、
別々の指揮系統で指示が来ると。
だから混乱するんです。

私、2004年の中越地震の時、あの山古志村の全村避難というのをやったんですが、
「全部避難してください、後、どこに行くか知りません」、なんていう指示はしませんよ。
ちゃんと受け入れ先はこの方向で、どの集落の人はここへ、どの集落の人はここへということを決めてから、避難をしていただきました。


露木氏:
それがだって、現場の責任者の執るべき方針ですよね。


泉田知事:
だから、例えば官邸が、54基、まあ50基ですかね、この原発の地理を全部熟知して、行き先まで避難できるんでしょうか?


露木氏:
ま、総理が指示するわけですからね。


泉田知事:
難しいでしょ。
やっぱり現場に詳しいのは市町村長ですけど、ただ市町村単位でいうと、原発の災害が複合災害で起きたら、もっと広範囲に影響が及ぶんで、そこだけではなかなか難しい。


露木氏:
その市町村の区域を越えますよね、当然。


泉田知事:
例えば、今回東京電力でしたけど、これが他の電力会社だったら、あのテレビ会議のシステムって東京に無いわけですよ、本社が別だから。
 
二木氏;
ああそうか。


泉田知事:
だからそうなると、総理が駆けつけて、なんていうこともできないわけで、
自然災害と原子力災害を一括して、自治体がやることは、原因が原子力であろうと、津波であろうと地震であろうと、住民の保護が仕事なんで、関係無いんですよ、いっしょなんですよ。
だから、法体系を一体化してくれないと、必ず混乱するわけです。
せっかく現場が指示して、避難体制をとっても、あらぬ所から「半径30キロから出てください」と言われても、そりゃあ混乱します、で、行き先どうするんですかというようなことも決めなくてはいかんので、
やっぱり指揮系統は一本化する、それも役所が別々だから、違う指示が出るわけですよ。


露木氏:
なるほど。


泉田知事:
南相馬なんて特に酷くて、ファックス一本届いてないんです。
なぜかというと、事業者行政やってきた保安院から指示をしたんで、どういう自治体がどこにあるかも把握してなかったという、お粗末さなんですよ。


二木氏:
今の知事のお話を聞くと、当然一本化すべきなんですが、逆になぜ一本化しないのかというと、これ、もう一回上がっていくと、
ここに、原発をどうしても再稼働したい人がいて、一本化すると、住民の安全の(責任を負う)この自治体の人と、どうしても対立しちゃうんじゃないかなと、
つまり、一本化すると対立しちゃうから、二本化しといた方が、こっちを稼働させやすい、そういうふうに邪推してしまうんですが。


露木氏;
住民はいい迷惑じゃないですか。


泉田知事:
実は私、政府の中央防災会議のメンバーなんですが、中央防災会議って、総理と全閣僚が出て、民間から5人入るっていう、そういう会議なんですけど、
原子力の話は、この中央防災会議を通らずに、総理に上がっちゃうんですよ。


露木氏:
え?


泉田知事:
それはちょっと、いくらなんでも、中央防災会議の主旨が歪んでるんだと思うんですけども、
ただ現実は、


露木氏:
何のための中央防災会議なんですか、それは。


泉田知事:
一応、一本化してくれっていうのは、政権交代の前の防災大臣、平野防災大臣の時は、直接経験されてるんで、
3回目の改正をやると、一本化やりますよっていうのを、中央防災会議でも言ってもらってた
んですが、
やっぱり、当時直接経験していない方が役職に就くと、そこが伝わらないんですよね。



露木氏:
なるほどー……。


泉田知事:
で、今もこの二本立てで行っちゃってる、という現実があるわけですよ。


露木氏:
なんかあの、まあ、制度もそうなんですけど、制度の立て付けにも問題があるんですが、
やっぱりそこを動かしている人に、えらい問題がありそうな気がしますね。


二木氏:
そうだと思いますよ。
だから、例えば、泉田知事の場合はまず、再稼働論議の前にやるべきことがあるでしょうと。

この前の、滋賀県知事選の時、これはまあ、三日月さんが勝ったんですが、
あの時っていうのはやっぱり滋賀も、福井原発の近くなんで、避難をしなければいけない
これはもう自治体が考える。
4万7千人ぐらい、避難させなきゃいけない
そうすると、バスで移動させると。
そうすると、最低1000台要ると。
で、県内で500台しか確保できない
あと500台を、国でなんとかしてくださいね、って言うんですが、返事が来ないという……。

自治体の組長の人っていうのはやっぱり、そういう住民の命と安全を考える。
すると、どうしてもどっかでこう、すれ違うかなっていう感じがしますね。


露木氏:
でもそれは考えて欲しいし、そういう職務におられるわけだから。
で、バスが500台あるったって、バスが果たしてそこに、運転する方がちゃんと来てくれるかどうかだって、わかんないわけでしょ


二木氏:
なんかこう、再稼働だ安全だって言われても、今の話聞いてると、ちょっと違うかなって。


露木氏:
再稼働の前に、議論すべきことがたくさんあるっていう感じはしますね。
まああの、アメリカの科学者が、日本の面積当たりの、地震の発生率っていうのは、世界平均の30倍だって言うんですよね。
やっぱりそれで地震が多い。
しかも、新潟県は、冒頭でも申し上げた通り、特に地震が多い。
そういう中で、原子力発電所を抱えている。
そうするとその、地震によって、原発に何かが起きた時に、住民をどう安全に避難させるか、
まずその道路を確保する。
それから、屋内退避の場所を、きちんと作る。
いろんな方法があると思うんですけれども、今一番、例えば避難する時に、大事なことって何ですか?


泉田知事:
3.11の時に、福島からSOSをもらって、バスを派遣しました。
でも、運転手さん、中へ入ってくれないですよね。
で、更に、中越沖地震の時のイメージっていうのは、特に被災された地域の皆さん、ずっと頭の中に入ってるんですが、
高速道路も使えなかったんです。
高速道路に段差ができちゃって使えないんで、段差の所をどうするかっていうと、
とりあえず緊急自動車とか、トラックを通せるように、わだちの所だけでもこう積んで、通れるようにするんですよ。
でそれ、建設会社の人が、外で作業をしてくれるからできるんであって、もし、屋内退避指示が出たらどうなるかというと、直らないんです高速道路が


露木氏:
誰が作業してくれるんです?


泉田知事:
直らないまま避難するっていうことになっちゃうんですよ。
じゃ、外から来てくれるのかっていった時に、同じ話で、屋内退避指示が出ている所、つまり、健康に影響し得る被ばくをする所に、誰が入ってくれるんでしょうと。
でいった時に、装備は?責任は?っていう話、法律が全然整備されてないわけです。
ですからこのあたり、例えば米国であれば、予め、サイトに、物を届ける人っていうのは決まっていて、
いざっていう時には、私が行きますって、サインしてある
んですよ。
更にもう一回、実際行く時に、もう一度サインするという形で、もう躊躇する人はいませんよね。
装備も持っているし、そういう役割だと思っているから。
日本の場合は、消防が行ってくれるんでしょうかと。
それとも警察、機動隊がやるんでしょうか
それとも、新しく部隊を作るんでしょうか
自衛隊でしょうかと、いう議論すら為されていないし。
東京都のハイパーレスキュー隊が行きましたよね。
あれは、東京都だけは唯一、自治体で知事が指示できる部隊なんですけど、それ以外は、市町村消防なんですよ。
そうすると、コンビナートに対応できる消防っていうのは、新潟県は、新潟市と上越市の二つしか持っていない。
じゃ、他の自治体に行ってくれるんでしょうかと。
そんな指示、できるんでしょうかと。
それも、被ばくをする、放射能に対応する装備も持っていない人、で、建設会社の人は、工事をしてくれるんでしょうかと。

いうことになると、そもそももっと酷い状況っていうのは、もうイメージとして浮かんじゃうんですよね。


露木氏:
もう、穴だらけですねえ。


二木氏:
今の形だと、それぞれの市町村で賄うしかないんですか、要するに自治体で。


泉田知事:
あの、消防でやろうとすると、そういうことになりますけど、議論すらできないんですよ、そもそも
他の所、自治体消防ですから、市町村ごとの消防であって、まあ応援はしますけど、
命の危険、健康のリスクを背負って行くっていうところを、想定しているわけではありませんから、
じゃ、誰がやるんでしょうか、ということになると思います



二木氏:
今のお話を聞いてて、福島第一原発規模(の事故)が起きた時どうするか、という話をして、
今、知事、新潟なんで、雪降りますよね。
そうすると、相当積もった場合っていうのは、どういうふうに避難するとか、駆けつけるとかって、
まずそこから始まるのかなっていう感じがしますけど。


泉田知事:
もう、雪もそうですよね。
でも、地震があって、原発が事故を起こす複合災害の時は、雪が無くても道路は通れませんから、そもそも。
更にそこに雪があったら、ディザスター(災難)が拡大すると。
更に難しい対応を求められる、ということだと思います。


露木氏:
原発を造る時には、地元の合意とかということをね、しきりに気にしたりしてやるわけですけれども、
できてしまうと、なんか今お話を伺ってると、後はもう、その地元でご自由にやってくださいっていうような、
なんかそんなことでこう、丸投げされちゃっても、方法が無いですよね。


泉田知事:
これは、ひとつは、やはり避難の指針を見直すっていう、原子力規制委員会が仕事をすると、知恵はあり得るんだと思います。
例えば、シェルターですよね。
いわゆる、核シェルター
小学校区単位なのか、それとも、これ、地元の方からは、自宅に作る時に補助を出して欲しいっていう話もあるんですが、
例えば動けない、病気の方を抱えているご自宅とか、高齢者の方を抱えている所は、家の中で避難できる場所を作りたいっていう声もあるし、
じゃ、マスク配っておくんですかねとか、いろいろ対策っていうのは、ほんとは考えないといけないはずなんですが、
逃げられる、という前提になってます


露木氏:
避難しなさい、と言っているわけですからね。


泉田知事:
だって、避難できなかったっていうのは、ああ、2007年の中越沖地震見れば明らかな訳ですから、
複合災害の時はどうするの?というのは、さっきのフリップで、2系列になってちゃダメなんですよ。
原子力災害は原子力災害だけ、自然災害は自然災害だけ、といってやってるから、複合災害の時どうするかっていうのを考えられない、ということなんです。


露木氏:
その、シェルターを作るっていう、そういう方向性は、新潟の場合は進んでるんですか?


泉田知事:
とりあえず、今進めているのは、5キロ圏内の病院とか特養施設、ここはフィルターを入れて、与圧をして、
福島の免震重要棟と同じように、一気に動かさなくてもいいと、
例えば1週間程度そこに籠れる、という仕組みを作っています。



露木氏:
中に(放射性物質が)入ってこないと。


泉田知事:
ただ問題は、誰が助けに行くんでしょうかと。


露木氏:
孤立しちゃいますよね。


泉田知事:
誰が物資を運ぶんでしょうか?っていうところは、考えてもらわないと困るわけです。


露木氏:
そっかー……ねー……。


二木氏:
そうやってみるといろんな問題があるんですが、逆にですね、知事に対する批判もいっぱいあると思うんですっよね。
例えば、例えばですよ、国がやろうとしていることについて、例えば東京電力に、再稼働の申請を出さないで欲しいというお話があったと思うんですけれども、
まあ、そういう主旨っていうのはこれ、行政としては違憲行為ではないかっていう見方をする人がひとつと、
もうひとつは、これだけエネルギー不足になってきていて、年間4兆円ぐらいの、官房長官は国富という言い方をするんですが、お金が流れていっちゃってると。
泉田知事は、国のエネルギー政策をどう考えているのか、という批判もあると思うんですよ。
このへんはいかがですか?


泉田知事:
まず、安全協定を結んでますので、東京電力とは。
これは例えば、公害防止協定で違反した企業については、環境を汚さないように、司法手続きを経て差し止め請求をした、なんていうのもあるわけですよ。
だから、もともと安全協定を結んでいる自治体が、住民の安全を守るために事業者とやり取りするっていうのは、これは当然のこと、ということだと思います。

で、もうひとつ、エネルギー政策なんですが、私は、エネルギー供給計画に携わったことがあるんですけれども、
どういう需要があって、どういうふうにエネルギーを供給していくのかっていうのは、かなり専門的な知識、リスク、これはあの、カントリーリスクとか、
あと、値段とか価格とか量っていうのを、総合的に見た上で決めていくものだと思います。
従って、まず、最初にやらないといけないのは、福島の事故の検証と総括、これをやった上で、このリスク評価をして決めていくべきもの、そういうことじゃないかと思います。


露木氏:
総括をしないことには、教訓をどう活かすかっていう方向性が決まりませんよね。


泉田知事:
そういうことですね。


露木氏:
まずその総括が、まだできていないと。
にもかかわらず、再稼働への動きだけが、どんどん先行していると。
川内原発の審査が終了したということは、おそらく、柏崎刈羽の審査が、これから加速度的に早まる可能性がありますよね。


泉田知事:
いやあ、それは規制委員会が判断することでしょうから、まあ規制委員会に聞いていただければと思います。
結局、国の方も、エネルギー供給については、数字を入れられなかったわけですよね。
それはやっぱり、検証総括をちゃんとしてないからできないわけで、
やっぱり教訓というのを次の時代に渡していく、次の事故で大きな犠牲を出さないようにするっていうことが、まず大事なんじゃないでしょうか。


露木氏:
あの、原子力規制委員会は専門家ばっかりですけども、やっぱりそこには、もっと多くの人が加わって、
オールジャパンで、知見を集約して、やっていかないとダメですね、さっきお話があったように。


泉田知事:
結局、供給側だけではなくって、放射能を浴びるかもしれないっていう人を代表して、対応していく仕組みっていうのを、ぜひ規制委員会で作って欲しいなと思います。
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地震大国日本の原発は、もう二度と、動かしてはならない!

2014年07月27日 | 日本とわたし
責任者であるはずの誰もが、自分は、あるいは我々は責任を取らないと、はっきりと、ぬけぬけと、公の場で表明していて、
それを、報道はそのまんま、疑問を提示したり抗議したりするような態度すら見せずに、タラタラと報じ、
それを、市民はそのまんま、ため息ついたり腹を立てたりしながら、タラタラと読む。

あんな、今だにどうしようもない、何一つうまいこといってない、ものすごく酷い汚染を作り続けている、複数の原子炉の事故を起こした当事国日本の政府と電力会社は、
そんなことはもう昔のことみたいに、無かったかのように、経済や電気のために再稼働ったら再稼働!とばかりに、ゴリ押ししている。

審査をしている連中は、ズブズブの寄生人の寄り集まりで、
原発政策なんて言葉だけで、そこには政策もなんも無くて、
権力とカネをふんだんに使い、ウソとデタラメを吹聴し、なんのこっちゃわからんがやった方がええとばかりに、
けれども、なんか重大な事故が起こった時の逃げ道と、責任が被ってこんようにする法律を、きっちり作っておくことだけは抜かり無い原発マフィア。

そんな連中が、今だに原発の関係者としておっきな顔してる。

このおかしさ、この体たらくさ、この誤りの罪深さを、いったいどんな言葉にして表したらいいのやろう。
 
何日かごとに、大飯原発3、4号機の原発運転差し止めの、福井地裁の判決文を読む。
この判決文を目で読むと、頭がすっきりする。
この判決文を声に出して読むと、心ががっちりする。

ツィッターで、要約文を見つけた。
全部を読む時間の無い時のために、全部を読むには時間が足りない方のために、ここに載せておきます。


主文:
被告(関西電力)は、原告(周辺住民166人)に対する関係で、大飯原発3、4号機を動かしてはならない

人格権は、憲法上の権利(13条、25条)であり、人格権の根幹部分に具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて、侵害行為の差し止めを請求できる
侵害形態が、多数の人格権を同時に侵害するとき、差し止めの要請が強く働くのは当然である。

福島原発事故で、原子力委員会委員長は、原発から250キロ圏内の、住民避難の可能性を検討した。
チェルノブイリ事故も同様で、この数字を過大と判断することはできない。

原発稼働は、電気を生み出すための、一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するもので、憲法上は、人格権の中核部分よりも劣位に置かれる
原発の危険性の本質、もたらす被害の大きさは、福島事故で十分に明らかになった
本件訴訟は、かような事態を招く具体的危険性が、万が一にもあるのか、が判断の対象

原発の安全性をめぐる問題のいくつかを、電力会社の自主的判断に委ねたとしても、裁判所の判断が及ぶ
新規制基準の対象になる事項も、審査の適否の観点からではなく、(人格権の理に基づく)裁判所の判断が及ぶ

止める、冷やす、閉じ込めるの、3つがそろって初めて、原発の安全が保たれるが、本件原発は、冷やすと閉じ込めるに欠陥がある。

1260ガルを超える地震が起きた場合には、打つべき有効な手段がほとんどないと、被告が自認している。
地震学会は、このような地震を、一度も予知できていない
大飯原発には、1260ガルを超える地震は来ない、との想定は不可能。
到来する危険がある

被告は、700ガルを超える(だが1260ガルに至らない)地震が来た場合、事象と対応策のイベントツリーを想定しているが、
事象が重なって起きるから、想定事態が困難
夜間も昼間も、同じ確率で起きる
所長が不在か否かが、大きな意味をもつ。

福島事故でも、地震がいかなる箇所にどのような損傷をもたらしたか、確定できていない
事故のときに確定できたとしても、電源喪失から炉心損傷開始まで5時間余、それからメルトダウン開始まで2時間もない。
たとえば非常用発電装置で、実際に、原子炉を冷却できるかどうかをテストするというようなことは、危険すぎてできようはずがない

複数の設備が同時に使えなくなったり、故障するのは、機械の性質上、当然考えられる
設備が複数あることは、地震の際の安全性を高めるものではない
大飯原発に通じる道路は限られていて、外部からの支援も期待できない。

被告は、700ガルを超える地震はまず考えられないというが、現に、想定以上の地震が、10年足らずの間に4つの原発で5回も起きた。
安全余裕があるから危険はないというが、不確定要素が比較的安定していた場合を意味するにすぎない

被告は、主給水ポンプは安全上重要な設備でないから、耐震安全性を確認していないというが、主給水ポンプは、主給水を供給するのが役割。
それを安全上重要な設備でないというのは、理解に苦しむ主張だ。

地震大国日本で、基準地震動を超える地震が、大飯原発に到来しないというのは、あまりにも楽観的と言わざるをえない

使用済み核燃料は、1000本以上プールにあるが、(プールを守る)原子炉格納容器のような堅固な設備はない。
福島事故では、4号機の使用済み核燃料プールからの放射線汚染が、東京都のほぼ全域や横浜市の一部まで、250キロ以遠に及ぶ可能性があった。

福島事故で、核燃料プールが破断を免れ、がれきがなだれ込むなどによって、使用済み核燃料が大きく損傷しなかったのは、誠に幸運と言うしかない。
使用済み核燃料を閉じ込める設備は、膨大な費用を要するのに加え、深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しの下に、対応が成り立っている

本件原発の安全技術や設備は、万全ではないのではないか、という疑いが残るというのにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的見通しのもとに、初めて成り立つ脆弱なものと言わざるをえない

被告は、原発稼働で、電力供給の安定性、コストの低減につながるというが、
きわめて多数の、人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題を並べて議論したり、議論の当否を判断すること自体、法的には許されない

コスト問題に関して、国富の流出や喪失の議論があるが、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることこそが国富の喪失であると、当裁判所は考える。

被告は、原発稼働が、CO2の削減に資するもので、環境面で優れていると主張するが、
福島事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であり、環境問題を原発運転継続の根拠にするのは、はなはだしい筋違いである。

以上、250キロ圏内に居住する原告は、原発の運転によって、直接、人格権が侵害される具体的な危険があると認められるから、原告の請求を認容すべきである。
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淋しさと嬉しさとゆれ惑う心と

2014年07月27日 | 友達とわたし


数日前の朝、目が覚めると、右の白目の部分が真っ赤になって膨らんで、トロリとした粘膜みたいなので覆われていた。
猫の毛のアレルギーが出た時の症状だ。
さてはショーティ、わたしが寝てる間に、右目のとこにスリスリしにきたか?



家の中がシンとしている時にふと、トトン、という音が聞こえる。
少し高い所から降りた時の、肉球の音。
雨が降り続いたり、かと思うと、めちゃくちゃ心地良い東海岸特有のサラサラの快晴が続いたり、かと思うと、気温が30℃近くまで上がりじっとりと蒸し暑い日が続いたり、
そんなふうにお天気が変わるたびに、彼女に話しかけている自分に苦笑する。



彼女を埋めた場所に、種類の違う白い紫陽花を植えた。
すると、彼女の最期の10日間、ずっと彼女を守ってくれていた白いボンボリ紫陽花が一輪、
丁度彼女が座っていた所を懐かしむように、その花の部分を少しずつ伸ばしてきてくれた。



ショーティがいなくなってしまったまま、なのに他のことは何ひとつ変わらずに、時間が過ぎていく。




猫好きのエリオットと、長崎出身のとしちゃんが、4月のカーネギーの舞台裏で盛り上がった時に約束した、我が家訪問を実行してくれた。
彼らは、それはそれは相性の良い、そしてとてもすばらしい音楽を奏でるバイオリンとピアノ弾きさんたち。
特にエリオットのバイオリンは、としちゃんとコンビを組んだことでみるみる良くなった、というのはわたしの感想。
もともとその素質があったのだろうけれども、あの伸び方は尋常ではなくて、心のあり方が技術に響いた、という感じがする。
としちゃんは、なんというか、ほんとはいろいろと抱えているし、悩んでもいるのだろうけれども、
人や物事に接した時に、とにかく良いところをまず見つけ出して、それを喜ぼうとする人で、一緒にいるだけで気持ちが晴れ晴れとしてくる。

お土産のシャンペンと???


なんという発想であろうか……紙袋に入らなかったからというので、強力なガムテープを使ってホレこの通り。




めちゃウマのチョコレートケーキなのであった♪


久しぶりに、大量のみじん切りキャベツと豚肉のお好み焼きを作りながら、シャンペンも飲みながら、ほんでもっておしゃべりしながら、
台所でいたり、玄関ポーチの蚊帳の中でいたり、居間で過ごしたりした。



どういう話の流れだったか覚えていないが、角隠しの話題になり、どんなものかよく分からないエリオットに説明しようと、旦那が「まうみの結婚式の写真を見せたら」と言い出した。
え~……。
三階の物置まで行って、超~久しぶりに、金銀の糸で鶴の絵柄が施された、結婚式だぞ!と言わんばかりの重たい写真アルバムを取り出した。

うわっ!若っ!
そりゃそうや。35年も前のわたしなんやもん。
それにしても暗い、というか、笑い顔がほとんど無くて、エリオットの目の中に?マークが点灯し始めた。
ちょいと酔っぱらっていたのも手伝って、ほんでもって彼が聞き上手だということもあって、波瀾万丈話の開幕と相成った。



もうそろそろお開きにしようという時に、旦那が急に、ギターを弾き始めた。
いつも演奏くれてありがとうと、彼らに対してお返しの気持ちで。
薄暗い部屋の中に流れるギターの音は、なんだかいつもより柔らかで、耳からスウッと心にしみ込んでいった。
オリジナルの『3時のおやつ』を聞くたびに、大津の古い畳の部屋を思い出す。

ほんとに楽しかった。
あっという間に時間が過ぎた。
また来てね。



これまでのことをたくさん話すと、その夜はなかなか眠れなくなる。
息がうまくできなくて、だから気功瞑想をやってみたり、温かい飲み物を飲んでみたりするのだけれども、
こんな年になっても尚、こんなふうな反応が、体や心の中に出てくることに驚く。

ゆっくりしよう。

旦那が、ホールフーズで見つけてきた『京とうふ』のプチカップケーキ。
抹茶味やゆず味、やっぱりちゃうわ~、まがいもんと。


昨日、出しそびれたカンタロープ。夕張メロンのおっかさんやそうな。


さて、裏庭の、今年はショーティの看取りですっかり植えそびれてしまった畑をチェック。


実は、思いっきり油断していて、グラウンドホッグ一家の食糧にされてしまったキュウリくん。


たったの一晩で、見るも無惨な姿に成り果てていたけれど、なんとか復活してくれつつある。


ムクゲの花といっしょに、なぜかわざと集めたように落ちていた、木の皮と落葉。


明日からまた、一週間が始まる。
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「国際世論も声をあげないと、そして米国が、拒否権を使うことをやめないといけない」JVC今野泰三氏

2014年07月26日 | 日本とわたし
昨日の記事の後編です。
今野氏の目から見た中東の、特にパレスチナとイスラエルの現実、『ハマース』や『イスラエル兵』の姿。
そして、安倍首相が、紙芝居のようなパネルを使い、得意なウソ話を展開させた『集団的自衛権』によって助けてもらえる人の立場である今野氏が、
痛烈に、安倍首相の無知を批判しています。

↓以下は引用

もし、NGO職員が巻き込まれたら、日本政府は、自衛隊を派遣して、イスラエル軍から私を守ってくれるのでしょうか。
あるいは、ハマースから私を守ってくれるのでしょうか。
そんなことしないでしょう


まず、できないですね
私は、イスラエルとパレスチナの例しかあげられないですが、
一つは、イスラエル政府が、自衛隊がイスラエルの領土、領域に入ることを、認めるわけがない
もし、認めるとしたら、自分たちに都合がいいから認めるのであって、それは、イスラエル側に都合のいい軍隊としての機能です。

そして、もしそれをしてしまったら、アラブ諸国から、イスラエルを支援しにきた国、と思われるわけです。
それで、私がガザに入ったら、攻撃される可能性はあるし、ガザではなくても、そのレッテルを一度貼られてしまったら
他のアラブ諸国から、「日本の軍隊はガザに侵攻した、アラブの敵である」と見なされます
イラク、シリア、エジプトにいる日本人が、いつどこにいても、そういう目で見られて、危険な目にあう可能性があります

それで、危険な目にあったら、また自衛隊を派遣するんですか?
派遣したら、同じことの繰り返しですよね。

「どうせ、日本はアメリカの後ろにくっついているだけなんだろう」と、たまに言われることもあります。
今は「たまに」でも、それが増えていくと、日本のパスポートは安全ではなくなるんだろうなと思います。
そうなった場合、安倍首相がいっている「日本人を守るために」という理由が、逆転してしまいますよね。
集団的自衛権を行使したからこそ、危険に晒される日本人が増える
それは、国民を守ることになるのですか?
その理由は、筋が通っているんですか?と、私は疑問に思うし、問いたい
ですね。

↑以上、引用おわり

そしてさらに、日本製の武器や技術が、人を殺すことに使われることが、表立って知られるようになります。
そのことの意味、危機感を、下記のように語っておられます。

↓以下、引用はじめ

安倍政権は、民主主義を盾にして、民主的に選ばれた政府だから変えていいと、閣議決定をしてしまった
それを止められなかったのは、非常に残念です。
このまま行くと、日本の武器や技術が入った、米軍の戦闘機『F35』がイスラエルに供給されるという話なので、F35は間違いなく、ガザや西岸で使われる。
レバノンやシリアでも、使われることは目に見えている。
日本の技術が、人を殺すことに使われる、数年後に、現実になる話だと思います。

それに対する危機感は、日本社会には伝わりにくいと思います。
「ガザでひどいことがおきている、かわいそうだ、なんとかしたい」と思っても、
まさか日本の一流企業の技術が入っているなんて、思ってもいないでしょうし、そういう状況を、おそらく想像できないと思います。
でも、それは間違いなく、目の前にある現実で、それとセットで、集団的自衛権の話がある
アメリカ軍と一緒に戦争に行きましょう、という話。

想定しているのは中国だと思いますが、アメリカが日本の助けを必要とするのは、イランやアフガニスタン、イラク
こういう地域に、アメリカ軍と一緒に行ったら、完全に敵ですよね。
アラブ社会やムスリム社会からしたら

↑以上、引用おわり

前置きが長くなりました。

↓以下、転載はじめ

パレスチナで支援活動を続ける、JVC今野泰三さんインタビュー
【後編】 ~共存は可能なのか?日本の集団的自衛権が招くもの

(聞き手:ぎぎまき)
2014/07/21
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/155398

7月18日、3日前に帰国したばかりという、日本国際ボランティアセンター(JVC)の今野泰三さんに、パレスチナ・イスラエル問題について話を聞いた。
前編では、普段のガザの暮らしや、イスラエル市民の感情についてお伝えしたが、
後編では、パレスチナとイスラエルを行き来する今野さんの目線で切り取った、「ハマース」や「イスラエル兵」の姿についてお届けする。
また、今野さんはまさに、安倍首相が救出の対象とした、「海外の紛争地で働くNGO職員」の一人である。
インタビューは当然、日本の集団的自衛権の話にまで及んだ。

----------------------
記事目次
ハマースとパレスチナの人々
イスラエル兵について
解決策はどこに
情報戦
イスラエル国内の歴史教育

----------------------


■ハマースとパレスチナの人々

Q. ハマースについて教えて下さい。
彼らはどういう存在で、パレスチナの普通の市民とはどういう関係なのでしょうか。



ジャバリヤ市でJVC事業の一部として、栄養失調児の検査をするパート ナー団体アルドゥ・アル・インサーン(AEI)のスタッフ(右)と、ボランティアをする地元女性(左)。
2014年5月20日ー写真:今野泰三


ハマースの正式名称は、「イスラム抵抗運動」。
パレスチナ人のグループです。
イラクのISISやヒズボラとは全然違う組織で、パレスチナ人の民族的な権利や、ムスリムであるという権利を求めていく、というのが一つ根幹にあります。

ハマース憲章が常に問題になるのですが、そこには、「パレスチナの土地がイスラームのワクフ(寄進地)」である、と書かれています。
ハマースは、オスロ合意にも反対していましたが、現実政治を見ていると、イスラエルはもう存在しているし、2国間でも仕方ない、と。
強い国だからそれはそれで認めて、自分たちの民族的な自決権を認めてもらう、
東エルサレムに関しては、自分たちの町であり首都であることを認めてもらう、
西岸からの入植者は全部撤退する、
グリーンラインを境界とする二国間でも仕方ないんじゃないかという人たちも、ハマースの中にちらほら出てきています。
しかし、イスラエル軍は、「ハマース」という理由だけで、そうした人々まで暗殺してきたのですが。

今、ハマースが、停戦の条件として挙げているのは、難民の帰還権については全然挙げていなくて、
基本的には、オスロ合意の取り決めを、イスラエル側がちゃんと守れということを言っている。
その内の一つは、封鎖の解除、それも一方的な解除ではなく、国連と第3ヶ国が管理、監視した元での封鎖の解除です。
後は、港の解除。
後は、海も4方向封鎖されているので、5kmくらいしか自由にいけない。
5kmだと漁業が全然できないので、それをもう一回戻して欲しい、ということですね。


Q. オスロ合意の取り決めに戻るというのは、真当な要求に聞こえますが。

民間人に向けてロケットを撃つ、ということは戦争犯罪なので、それは認められないと思いますが、
今、ハマースが要求していることの中身自体は、その大部分において、国際法に基づいた正当な要求だと思います。

ただ、ハマース=テロリストというレッテルが、世界中に貼られているので、何を言っても聞いてくれない、というのが現状だと思いますね。


Q. イスラエル政府は、ハマースの要求に耳を傾ける気はあるのでしょうか。

実際は、水面下では常に会っている、というか、全くコンタクトがないわけではないみたいですね。
全くコミュニケーションを取らないと、誰もコントロールができなくなるので。
ハマースもイスラエルも、公式上は、お互い認めてないが、微妙な関係にはあるようです。

今は、エジプトが介入して、ハマースのメンバーと西岸の自治政府の役人、イスラエル政府の役人で、停戦交渉をしている。
お互い、国民の感情が常にあるので、気を使って慎重に物事を進めないといけない、というのがあって、表には出てこない話だと思います。

その中で今、民間人がガザで殺されているので、何とか早く止めなければいけないし、止める義務が、イスラエル政府にもハマースにもあると思います。


Q. ハマースのメンバーにあったことはありますか。

誰がハマースか分からないんですよ。
ガザの場合は、自治政府がハマースなので、ハマースが自治政府を運営しているのですが、
政府の役人や警察官の中には、ハマースのメンバーや支持者もいれば、そうではない人もいます。
少なくとも、ハマースがやっている政府に、雇用されている人たちです。
その中で、ハマースのメンバーもいれば、そうじゃない人たちもいて、そうなのかなと思う人もいれば、そうじゃないという人たちもいる。
良く分からないというのが、実際問題。

区別があまりつかない。
彼らも、区別されたくないと。
なぜなら、暗殺の対象になるので。
だから、本人たちも言いません。
後、ハマースのシンパとメンバーと、政府に雇用されている人たちというのは、それぞれやっぱり立場が違う。
微妙な違いがあるので、難しいですね。

一般市民でも、ハマースを支持している人もいれば、支持してない人もいる。
嫌いな人もいれば、好きな人もいる。
一定ではありません。
ただ、ハマースに関して指摘されていることは、これまでの20年間、貧しい人たちに、イスラムの価値に基いて奉仕活動をしてきた。
施設を立ち上げて、老人や孤児、貧しい家庭に、色々支援をしてきたし、彼らが社会に参加する場所を提供してきた。
家族的なつながりを作り上げてきた、という指摘もされているので、そういう意味では、社会に浸透しているのではないかと思います。

ファタハを支持している人たちや、左派のPFLPとかDFLPを支持している人たちもいて、
彼らは2007年以降、相当、ハマースに弾圧されてきたので、拷問にあったり、NGO団体を潰されたりしてきた。
だから、彼らはハマースが嫌いです。
ただ、それを表立って言ってしまうと、それで逮捕されて、何をされるか分からないので、黙っているという状況ですね。
背景は、複雑です。


Q. イスラエル国内では、ミサイル警報がなる度に、市民はシェルター(防空壕)に避難していましたが、ガザにはあるのですか。

ないと思います。
そもそも、建設機材やコンクリートが入ってきていないので、普通の家も建てられないんですよね。
家をどうやって作っているかというと、破壊された家から廃品回収して、鉄骨を伸ばしてコンクリにして、もう一度作っている。
シェルターを作る余裕は、ほとんどないと思います。
少なくとも一般家庭には。
あったら、こんなに死なないと思います。


■イスラエル軍について

Q. イスラエル軍は、ハマースが学校や民家に武器を隠している、と主張しています。
どれだけ正しい情報を持っているのでしょうか。


ある程度は持っていると思います。
スパイ、協力者、「コラボレーター」と言いますが、パレスチナ人の弱みにつけこんで、イスラエル側に取り込む、ということはずっとしてきています。
それは、金銭的なやりとりや、病気の息子がいて、病気の息子をイスラエル側で治療して欲しければ、協力しろといったように
具体的に、電話がかかってきたとか、そういう話は、よくパレスチナ人からも聞きます。

でも、正確に100%得ていたら、今のようにはならない。
ハマースからのロケット弾が止まらないというのは、それだけ把握できてないからとも言えます。


■イスラエル兵について

イスラエルは男女、100%徴兵制です。
私が留学していた時は、兵役が終わった学生でも、年に1回は、予備兵として徴兵に行っていましたね。
軍人は、制服を着れば命令が絶対。
自分が正しいか間違っているかというのは、そもそも問題にはならない。命令に従うことが大義だから」、という風に話していましたね。

もちろん、個人的な悩みはあると思いますが、外国人とシェアできるものではないと思います。
トラウマ的なものもいっぱいあって、第二次レバノン戦争に行った人はすごい経験をしたと、
悪夢で寝られない、友だちが殺された、殺したとか、そういう話はいっぱい聞きました。


Q. 今後、どんな展開になると思いますか。

地上侵攻が始まってしまったら、民間人が、なお一掃巻き込まれます。
ハマースって言っても、普段は普通の格好をして、家でお茶を飲んでいる普通の人たちなので、イスラエル兵にしたら全く区別が付かない
そういう中で、どういう作戦で、地上侵攻するのか分からない。
そこに、ハマースが待ち受けているわけではないので、どうやって見つけだすのか。

イスラエル政府は、ハマースを滅ぼすと言っていますが、年々、ハマースが発射する数は増え、飛距離は伸びており、本当に滅ぼせると思っているのか、私は疑問です。


Q. 「自己防衛」といいながら、それが自己防衛に繋がっていない。
どこかで自分たちの首をしめる結果を招いていると考えているのでしょうか。


イスラエル軍は、ガザを占領しているのは、イスラエルではなくハマースだと言ってますから、
ハマースが全面的に悪い、自分たちが絶対的に正しい、と思っている。
だから続けるだけだ、という信念
ですよね。

もちろん、イスラエル社会には、長期的な安全保障につながらない、と思っている人たちはいて、違う方法で話をすべきだ、と言っていますけど、
その意見が、どの程度影響力があるのかは、今はちょっと疑問です。
若い人たちの中で、反アラブ感情、人種差別に近いものも、根強くなっているのも現実です。
そうなると、アラブ人とは、どんなに交渉しても話し合いでは解決できないんだから、武力でやるしかないという考え方が強くなる
私個人は、それがイスラエルの安全保障につながるとは、全くもって思わないですけど。


▲イスラエルの首都、テルアビブで行われていたガザ空爆と占領に反対する市民と右派との衝突

【関連記事】
イスラエルの平和運動は今―アダム・ケラー講演会


Q. イスラエルの世論は、軍や政府の決断にどれだけ影響力を持っていますか。

影響は受けていると思います、イスラエルは民主国家ですから。
今は、少数の右派政党をかき集めて、なんとか作った右派政権で、左よりも右の言うことを聞いておかないと、
ネタニエフ首相のポジションは維持できない
、という現実があると思います。


■解決策はどこに

Q. 今野さんが考える、1日でも長く平和が続くための理想的な手段とは何でしょうか。

一つは、武力は使わない。
お互いに。
それが理想ですが、解決策があったら、とっくに解決していると思います。


Q. 今回の空爆で、イスラエルが、新兵器を使っているのではないか、という指摘も出ています。

ガザは、武器の実験場になっている部分はある、と思います。
兵器、あるいは、戦略の実験場ですね。
都市でのゲリラ戦に対する、闘い方を実践する場所として使われてしまっている部分があって、
イスラエルとアメリカ軍の関係もすごく強いですし、実戦経験というのは、ヨーロッパやアメリカに売れるものなのだと思います。

軍事の専門家ではないので分かりませんが、イスラエル軍は、毎回違う戦略を使ってきます。
毎回違う武器を使って、一番効果的な闘い方を常に探している、という印象は受けますね。
今回も「KNOCK ON THE ROOF」と言って、小型のミサイルを打ち込んで、攻撃することを事前に知らせてから、大きいミサイルを打ち込むという戦略を取っています。
それは、前回はありませんでした。
民間人をなるべく殺さずに、いかに、テロ組織を壊滅させるかという戦略として、多分考えられていると思います。

イスラエルが買っている武器は、全部アメリカの武器なので、それを、人が実際に住んでいる場所で使える国なんて、世界のどこにもありませんが、
ガザの場合は、それが平気で使えてしまう
国際社会も、批判はするけど、本当に止めようとはしませんし。


■日本の武器輸出と集団的自衛権

Q. ガザの人たちにしてみればふざけた話ですが、日本も他人事ではなく、集団的自衛権や武器輸出の話がありますね。

今回の空爆が始まってから、在テルアビブの日本大使館からは、情報がなかなか入ってきませんでした
大使館の仕事は、邦人を守ること、法律上も、そうなっているし、そういう意識でやっているのだとは思いますけど。
電話がかかってきたときに、「ガザに行かないでください」とまず言われました
当然だと思いますが、その時ちょうど、集団的自衛権の話が出ていて、
安倍首相が、「紛争地で働くNGO職員の安全を守るために、集団的自衛権が必要なんだ」と話していたので、
「何かあったら、自衛隊が送られるんですよね」と、電話口で皮肉を言おうと思いましたが、やめました(笑)。


もし、NGO職員が巻き込まれたら、日本政府は、自衛隊を派遣して、イスラエル軍から私を守ってくれるのでしょうか。
あるいは、ハマースから私を守ってくれるのでしょうか。
そんなことしないでしょう


まず、できないですね
私は、イスラエルとパレスチナの例しかあげられないですが、
一つは、イスラエル政府が、自衛隊がイスラエルの領土、領域に入ることを、認めるわけがない
もし、認めるとしたら、自分たちに都合がいいから認めるのであって、それは、イスラエル側に都合のいい軍隊としての機能です。

そして、もしそれをしてしまったら、アラブ諸国から、イスラエルを支援しにきた国、と思われるわけです。
それで、私がガザに入ったら、攻撃される可能性はあるし、ガザではなくても、そのレッテルを一度貼られてしまったら
他のアラブ諸国から、「日本の軍隊はガザに侵攻した、アラブの敵である」と見なされます
イラク、シリア、エジプトにいる日本人が、いつどこにいても、そういう目で見られて、危険な目にあう可能性があります

それで、危険な目にあったら、また自衛隊を派遣するんですか?
派遣したら、同じことの繰り返しですよね。

安倍政権は、民主主義を盾にして、民主的に選ばれた政府だから変えていいと、閣議決定をしてしまった
それを止められなかったのは、非常に残念です。
このまま行くと、日本の武器や技術が入った、米軍の戦闘機『F35』がイスラエルに供給されるという話なので、F35は間違いなく、ガザや西岸で使われる。
レバノンやシリアでも、使われることは目に見えている。
日本の技術が、人を殺すことに使われる、数年後に、現実になる話だと思います。

それに対する危機感は、日本社会には伝わりにくいと思います。
「ガザでひどいことがおきている、かわいそうだ、なんとかしたい」と思っても、
まさか日本の一流企業の技術が入っているなんて、思ってもいないでしょうし、そういう状況を、おそらく想像できないと思います。
でも、それは間違いなく、目の前にある現実で、それとセットで、集団的自衛権の話がある
アメリカ軍と一緒に戦争に行きましょう、という話。

想定しているのは中国だと思いますが、アメリカが日本の助けを必要とするのは、イランやアフガニスタン、イラク
こういう地域に、アメリカ軍と一緒に行ったら、完全に敵ですよね。
アラブ社会やムスリム社会からしたら

【関連記事】
安倍政権とイスラエルの「協力」が集団的自衛権の対象に!? ~ガザ空爆を続けるイスラエル、日本政府は過去に「武器輸出」の可能性を示唆


Q. そうなった場合、パレスチナの支援活動を続けるのは難しくなりますか。

それは分からないですね。
難しくなるかもしれないです。
日本人に対する見方は、変わってしまうと思いますから。
今は、日本人は、自分たちを傷つける人たちではないと、好意的に見られています。
ヨーロッパやアメリカみたいな、何を考えているか分からない政治的な理由で、支援する人たちとは違って、自分たちと同じ目線で、何とかしたいと思って来ていると。
信用できる人たちと思われているのは、政治的な部分で目立たないからでしょうね。


Q. アラブ諸国全体でそう見られているのですか。

でも、それも少しずつ変わって来ていて、イラクに派兵されたことは知られていますし、
「どうせ、日本はアメリカの後ろにくっついているだけなんだろう」と、たまに言われることもあります。
今は「たまに」でも、それが増えていくと、日本のパスポートは安全ではなくなるんだろうなと思います。
そうなった場合、安倍首相がいっている「日本人を守るために」という理由が、逆転してしまいますよね。
集団的自衛権を行使したからこそ、危険に晒される日本人が増える
それは、国民を守ることになるのですか?
その理由は、筋が通っているんですか?と、私は疑問に思うし、問いたい
ですね。


■情報戦

Q. パレスチナとイスラエルの話に戻りますが、今回、パレスチナを支持する人たちが、シリアの内戦写真や合成写真などを、SNS上で拡散したことが目立ち、それがBBCでも報じられました。
情報戦について教えて下さい。


パレスチナを支持する人たちの間で、本当に、現状を世界に伝えたいという意思があるのであれば、慎重に事実確認をして伝えるべきだと思います。
誤った情報は、逆効果になってしまいますので。

一方、イスラエル政府の中にも、宣伝省みたいな省庁があり、国の正当性を高めるための戦略が取られています
イスラエルのネット新聞、Ynetも報じていましたが、今回のイスラエルの攻撃の正しさを、ブログやネットで情報発信するために、400人がボランティアで集められたと。


Q. 興味深かったのが、例えば、NHKの報道一つを取って、
イスラエル支持者からは、NHKはアラブよりの報道しかしないという声が目立ち、パレスチナ支持者からは、NHKはイスラエル寄りだ、という真逆の批判がありました。


中東がそういう場所だから、というのは乱暴な言い方かもしれませんが、
例えば、クルド人からしてみれば、イスラエル万歳なんですね。
アラブ人をやっつけているイスラエル人万歳と。
クルド人はそれまで、アラブ世界で抑圧されてきたので、イスラエルを熱烈に支持したりする。
シリアでもシーア派、スンニ派問題があり、レバノンでもあれだけの内戦状態で、泥沼の殺し合いをしていたりする。
一つの正しい意見というのは、多分、中東には存在しないのだと思います。

ただ、パレスチナ人からしてみたら、イスラエルが建国されたことで、自分たちが追い出されて、難民にさせられて、さらに封鎖されてどうにもならない
人間の最低限のレベルで暮らし、人間性を否定させられるような生活を強いられている、という現実の中で、
彼らから見えているものは、彼らにとってはやっぱり正しい


それを、イスラエル人が受け止めるかどうかというのは、イスラエルの問題で、
それを受け止めないという選択を今は取っていますけど、それがいつまで続くのでしょうか。
本当に、イスラエルの安全保障にとって正しい道なのかどうかは、第三者から見ていると、このままでいいのか疑問に思います。

イスラエルの中で育っているイスラエル人は、軍隊に行き、イスラエルが常に攻撃に晒され、ユダヤ人は常に差別されているという意識が、やはりすごく強い
それは、教育の中で植え付けられたものであるし、家族の歴史がそもそもホロコーストの歴史を持っていることもあります。
イスラエル以外に帰るところはないのだから、守らなければいけないという意識がある。
それに、軍隊でやってきたことを否定すると、自分の人生を否定することにもなるので、そこは否定できない
そうした色々な事情があるとは思います。
それを守るために、イスラエルの一方的な主張が正しいと、言い続ける気持ちも分からないでもありません。
ただ、現実としては、世界はそのように動いてない。
だから、あまり過剰になってしまうと、自分たちに跳ね返ってくるのだと思います。


Q. イスラエルが孤立してしまうと?

そうなんです。
ただ、孤立するということは、ある意味、イスラエルにとっては、自分たちの正しさでもあります
国を守る理由にもなるし。
残念ながら答えはないというか…。
よくユダヤ人がいうのは、
いくら非ユダヤ人のいうことを聞いても、結局お前たちはユダヤ人だと言われるし、聞かなくても、やっぱりユダヤ人だねと言われる。
どっちにしても、そこからは逃れられない
」と。

それを、第三者がどうこうするというのは、難しいです。
ただ、一つ、JVCとしては、国際人権法は守られるべきだという立場です。
なので、そういう意味で、イスラエルが何を言おうが、ハマースが何を言おうが、やっていることが国際方に違反すれば「違反」だということ。
それだけの話です。
裁判をして決着をつけて、イスラエルが、国家として国連で承認された国である以上、国際法は守るべき立場にあるので、
一般の民衆の感情は横に置いておいて、国際法は守らなければいけない
じゃないと、イスラエルの立場も悪くなりますよ、ということですよね。


Q. 国際法に違反しているイスラエルに対し、国際世論がもっと声をあげるべきだと。

国際世論も声をあげないとですし、アメリカが拒否権を使うことをやめないといけない

ただ、ヨーロッパとアメリカは、もう解決策を出しています。
イスラエルとパレスチナの二国間、主権を持った二つの国
西岸とガザで、パレスチナ人たちの主権を認めるということは、欧米社会はすでに宣言しています
イスラエルが、占領地ではない、ガザは危険だといくら主張しても、世界はそういう流れになっているわけで、
後は、どう実現するかという方法論や、タイミングの部分で、意見が割れています。
イスラエルの安全保障と、どう両立するかで、意見の対立が起きているということです。


■イスラエル国内の歴史教育


◆ジャバリヤ市でJVC/AEI事業の活動(地元で入手可能な安価で新鮮な野菜・果物を使って栄養価の高い料理の作り方を教え、
子どもの栄養失調を改善・予防することを目的としたクッキング・デモンストレーション)に参加した子どもたち。
2013年11月21日ー写真:今野泰三



Q. 今野さんはいつパレスチナに戻るのですか。
前回と全然違った街の風景が広がっているのでしょうね。


8月末に戻る予定です。
復興するのも早いですよ。
慣れている、という言い方は悪いですけど、破壊されて直して、破壊されて直してと、彼らはやってきています
破壊されると、復興支援や国際援助も入ってくるので、仕事も生まれる。
悲しい話
ですが…。

そうでなければ、ガザが、どんどん忘れられているといくと思います。
ニュースにはなりませんが、空爆はこれまでも、日常的に行なわれてきたし、去年度も、イスラエル軍による攻撃で、25人が殺されています
ある意味、空爆と封鎖が、日常化しています
希望もなにもない状況の中で、大規模の空爆をうけて初めて、世界の注目を浴びるという、皮肉な状況があるんです。


Q. イスラエル市民が、今以上にガザの現状を知ることは必要でしょうか。

ガザは、イスラエル人にとっては、恐怖の塊というか、怖いというイメージしかないと思います。
でも、いくら相手を潰そうとしても、同じことをやったら、違う勢力が出てくるだけです。
人を、一方的に殺しても、なんとも思わない人たちはいません。
それは憎しみに変わり、苦しみに変わり、それが違う形で出てくるだけで、繰り返されるだけ
ではないでしょうか。

最近、イスラエル国内で、歴史をちゃんと教えないということが、問題になってきています。
何もないところに2000年をかけて、ようやく自分たちの土地に戻り、国を作った、
そういう歴史として教えると、パレスチナ人の言っていることは理解できない、と思うんですよ。

パレスチナ人にしてみれば、国ができて、追い出されて、今に至る
それを、ちゃんと教えないといけないと思うんですよ。
実は、それを教えている学校が、出始めています。
左派の私立校ですが、教科書は、ある程度、自分で作って教えられるので、
イスラエル、パレスチナの歴史両方を教えましょう、という取り組みも行なわれています
ユダヤ人とアラブ人の共存を目指す村を作ったりと、そういう試みが少しずつ広がっていけば、他に解決策がないという中で、変わってくると思います。


■共存を懐かしむパレスチナの人々

パレスチナ人も言うほど、ユダヤ人を嫌いなわけではないんです。
彼らは反ユダヤ主義者ではないですし。ユダヤ人だから反抗しているわけではない
単に、自分たちを追い出して、今だに追いだそうとしてることに抵抗している
それを理解した上で話し合っていけば、何かしらの解決策はあると思っています。

パレスチナ人の原則的な立場としては、併合は違法であり、受け入れられないと言っていますけど、
少なくとも東エルサレムに住むパレスチナ人の中には、「イスラエル政府の方がましだよね」という意見もあります
イスラエルが経済的にも上ですし、技術も持っているし、知識的にも上だったりするので。
はっきりは口に出さないけど、併合を受け入れている人たちは、少なからずいます。

ガザについても、67年から93年、オスロ合意までは、イスラエル側で働いていた人たちは何十万人といたので、
今の40代~60代の人たちは、いい思い出を持っているんですよね。
イスラエル人と一緒に働いて、「ガザにイスラエル人が遊びにきて魚を食べていった」と、私にも話してきます。
「ああいう時代が良かった」、「戻りたい」と。

そういう関係を作る努力をしていかなければいけなくて、
その為には、まず、ガザを封鎖して、ひたすら苦痛を押し付けるような状況は終わりにしないと、問題解決には一歩も近づかない
逆に遠のくと思います。
少しずつ封鎖を解除していき、パレスチナ人に生きるスペースを与える、息ができる生活の場を与えるというのは、
安全保障上も、人道的にも、道義的にも絶対に必要
だと思います。


Q. 以前、「プロミス」という映画で、イスラエルとパレスチナの子どもたちが交流するというプロジェクトがありましたね。

私も、交換留学などをやればいいな、と思っているんですよね。
プロミスのような活動も、小さい時から長く続ければ、やはりそこは人間同士なので、意味があると思います。
やっぱり考えるわけじゃないですか。
仲の良かった人たちが向こうにいて、そういう目にあっていたら。

映画「プロミス」http://www.amnesty.or.jp/aff/about/archive_2009/promiss.html


Q. 一人の人間が考えること、行動することには意味があると。

私はそうだと信じています。
それが集まって初めて、物事が変わっていくと思うので。(取材・文:ぎぎまき)

↑以上、転載おわり
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「イスラエルが「安全保障上、必要」と言うと、それですべてが許されてしまう」JVC今野泰三氏

2014年07月25日 | 日本とわたし
もう一度、2回に分けて、ガザのことを書きます。
あの地域の問題について考えるには、わたしの知識は足りなさ過ぎます。
なので、とにかく、分かりやすく説明してくださっているものを読めるだけ読んで、まず知ることから始めないとと思っています。
ガザのことばかり考えているのではないのですが、こんなふうに、物事を選んで行動していくしか、わたしには術がありません。
その時その日、選んだことを中心に、考えたり書いたり行動したりしていますが、
わたしの思いは、日本はもちろんのこと、世界中で、さまざまな理由で苦しめられている、命を奪われている子どもたちに向けられています。
あまりにも広範囲であまりにも多い……本当に、世界は変わらなければならないと思います。
そのためには、わたしたちひとりひとりが、変わらないといけないと思います。

この記事も、岩上氏が主催するIWJウェヴジャーナルに掲載されていたものです。
このIWJを応援したくて、わたしは有料会員になったのですが、毎日送られてくるニュースは読み応え満点で、その量もとても多く、完全に読み終えられないまま翌日を迎える、という日も少なくありません。
財政難が続く中、それでも勢力的に、わたしたちが知るべきことをコツコツと取材し、分かりやすくまとめ、伝えてくださる責任者の岩上氏と、彼を支えるスタッフのみなさんを、どうか応援してください!

↓以下、転載はじめ
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/155290

パレスチナで支援活動を続ける、JVC今野泰三さんインタビュー
【前編】 ~2年ごとの攻撃、イスラエル政府の狙いとは?

(聞き手:ぎぎまき)
2014年7月21日

イスラエルがガザ空爆を開始したのは、奇しくも日本では七夕にあたる7月7日。
あれからすでに、2週間が経とうとしている。

15日には約200人だったパレスチナ人の死者の数は、イスラエル軍が地上侵攻を始めたことで、19日現在、300人を越え、その数は激増した。
イスラエル側の民間人の死者は2人、兵士の死亡者数も増え続け、軍が手を緩める気配はない。
これ以上、被害が拡大しないよう、一日も早い停戦を願うばかりだが、解決策はどこにあるのか。

7月18日、イスラエルの大学で政治学を学び、2年前からパレスチナ現地で支援活動を続けている、日本国際ボランティアセンター(JVC)の今野泰三さんに、
ニュースからは伝わってこない、普段のパレスチナ人とイスラエル人の、素顔についてうかがった。
前編では、中東問題に興味を持ったきっかけから、今野さんが知るガザの日常と、イスラエル社会についてお伝えする。

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記事目次
汚染された水を飲んで命をつなぐガザの人々
世界はガザの暮らしを想像することはできない
イスラエル政府とイスラエル社会
反ユダヤ主義とヨーロッパの責任

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Q. 日本国際ボランティアセンター(JVC)とはどんな活動をしているNGO団体ですか


▲日本国際ボランティアセンター(JVC)、パレスチナ現地代表の今野泰三さん。
インタビューを行なったのは7月18日。
今野さんは3日前に帰国したばかり。


1980年、当時、カンボジアからタイの国境に難民が押し寄せていて、彼らを支援しようと集まったボランティアが作ったネットワークが、元々の始まりです。
カンボジアから逃れてくる難民をいくら助けても、そもそも、何で難民になるのかが分からないと問題の解決にはならないと考え、
当時、日本政府は反対していましたが、難民たちが暮らしていた農村に入り、根本的な問題解決に取り組み始めました。


Q. 今野さんがJVCに努めることになったきっかけは

大学生の頃に、バックパッカーとして、パレスチナ、イスラエル、レバノン、シリアを訪ねていた年に、9.11同時多発テロが起きました。
ニュースで報道されている中東のイメージと、自分が見てきた中東のイメージが、あまりにもかけ離れていたことに驚き、中東問題に興味を持ちました。

2007年に、イスラエルのヘブライ大学に留学する機会を得て、2年弱留学し、ヘブライ語、アラビア語と、イスラエル政治を勉強しました。

パレスチナにNGOスタッフとして駐在し、働き始めたのは、2年前の6月です。
それから現在に至るまで、パレスチナ担当として、現地代表を努めています。
イスラエルがガザを空爆した今月7日は、ちょうど、JVCのエルサレム事務所にいて、ガザに入る許可証を申請している最中でした。その間に空爆が始まったので、今回はガザには入れず、現地の友人や同僚に、状況を聞いていました。


■汚染された水を飲んで命をつなぐガザの人々

Q. ガザの人たちからはどんな話を聞いていましたか

「怖い、本当に怖い」と。
イスラエル軍が、どこでも構わず攻撃してくると。
自分が住んでいるのは町の中心部だから、周辺部よりは安全だが、周辺部に住む親族や兄弟の地域は、今回の攻撃で、4、5回攻撃されている。
親族が2家族殺されて、いとこの女性と、女性の息子と娘が殺された、と言っていました。
もう1つの家族は、自宅にいたところを、6人家族全員、家ごと爆破されたそうです。

ガザは、23区より狭い面積に、180万人のパレスチナ人が住む、人口密集地帯です。
停電が続き、1日8時間しか電気が通ってないことから、下水施設が稼働せず、水道水が汚染されている
それでも、外に出て水を買いに行くのも危ないので、仕方なくその水を飲まないといけないと言っていました。


Q. 今回の空爆は、イスラエルの3人の入植者が行方不明になったことが発端だ、と言われています。
その事件について教えて下さい


パレスチナのヨルダン川西岸(以下、西岸)には、国際法に違反する形で、イスラエル人入植者が、60万人近く暮らしています
今回は、3人の男子生徒が、ヘブロン近郊にある入植地の学校から、ヒッチハイクで帰る途中、行方不明になりました。

イスラエル軍は、捜索活動と呼ばれるものを展開しましたが、
実際にやっていたことと言うのは、夜中に突然家に入り、バスタブやベッドを倒し、何百人ものパレスチナ人を裁判なしで連れていき、要するに誘拐して、監禁しました
その人たちが、事件に関わっているかもどうかも分かりません
そもそも、それは問題にもされません
それに対して、パレスチナ人の青年たちが、投石して抵抗し、軍は、ゴム弾や手榴弾を使って、鎮圧しました。
何人も死者、負傷者が出ました



Q. 軍のこうした強行的なやり方は、イスラエルでは報道されていたのですか

報道されていました
個人的に、イスラエルのメディアは、そこまで酷いとは思っていません。
右派の新聞もあれば、左派の新聞もある。
報道の自由は、ある程度保たれています
左派の中には、軍の強引なやり方に反対する人たちや、そもそも入植地に住んでいる人たちが悪い、という意見もありました。

※【ハアレツ紙】
A crisis explained: The kidnapping that sparked the latest round in the Israeli-Palestinian conflict


Q. なぜ刑事事件として扱わず、軍が介入するのでしょう

占領下であるから、というのはあります。
軍が好きな時に入って、好きなようにできるのは、過去40年間の、パレスチナの西岸とガザの現状です。
それは根本的に変わっていません。
その延長線上で、今回の強引なやり方も起きたと思います。
イスラエル政府は、3人が行方不明になった時点で、これは政治的目的による誘拐なんだと、しかもハマースがやったんだと決めつけましたが、未だにその証拠は出てきていません
犯人も逮捕されたのか、暗殺されたのか分からないまま、犯人の家とされた2軒が爆破されて、それでなんとなく終わってしまっている

法律で云々、証拠はこうで、この人たちが犯人ですという裁判は、全く行なわれないまま、今に至っています


Q.3人の遺体が見つかってから、イスラエル右派の市民が、報復として、パレスチナ人の男の子を生きたまま焼き殺すという事件も起きました

これについて、イスラエル政府は、殺人事件として扱っています。
そのうち6人がこれまでに捕まって、3人が現在裁判にかけられています。


Q. しかし、これだけでは終わらない。
なぜ、イスラエル政府は、ガザを空爆したのでしょうか


今回、イスラエル政府は、欧米社会に対し、イスラエル国民が誘拐されたのに、なぜ声をあげないんだという圧力を相当かけていたみたいで、
それで結局、欧米社会が折れて、一方的に、誘拐事件だけを扱って非難するということになりました
西岸で死者や逮捕者が出たり、家がぶっ壊されたりしたことについては、欧米社会は黙って見ていました

イスラエルが、「安全保障上、必要」と言うと、それですべてが許されてしまう
ヨーロッパでも、国によって対応は違いますが、ドイツはホロコーストの歴史があり、イスラエルに厳しいことを言うのは避けています。
他の国も少なからず、言い過ぎれば、逆に「反ユダヤ主義」と言われてしまう可能性があるということと、
アメリカが親イスラエルなので、アメリカ寄りのヨーロッパの国々は気を使って、悪いことは言わない、という両方の側面があるのではないでしょうか。


■世界はガザの暮らしを想像することはできない


パレスチナ周辺地図―著作者:現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター"


Q. ガザと西岸における、普段の生活とはどんなものですか

東エルサレムの人たちは、イスラエルに併合されてしまっているので、ある意味どこにも行ける。
西岸にもいけるし、イスラエル側にも行けます。
仕事も西岸でもできるし、イスラエル側でもできるので、イスラエルに比べると経済レベルは低く、住宅建設の厳しい制限や分離壁による社会的・文化的な疲弊も深刻ですが、
それでも、経済的には、西岸やガザよりも全然いい


その次に、西岸には、国際援助が入ってきているので、入植地や分離壁によって一方的に土地が奪われ、占領による精神的プレッシャーはとても大きいですが、それでもそれなりに生活はできています。
ガザに関しては、完全に封鎖されて、7年が経ちます
ガソリンもほとんど入ってこない、物資も入ってこない、そもそも働く場所もない
農業が重要な産業でしたが、イスラエルは、建設した壁から内側にさらに2km、ガザの人々の立ち入りを禁止しました。
そこに農地があるので、今は使えなくなっています。

面積率で言うと約30%、さらに狭くなったことになります。


Q. 何を根拠に境界線を移動させたのですか

安全保障が目的、という主張ですね。
つまり、テロリストがやってくるから、自分の国の安全を守るためだと。
でも、立ち入り禁止区域を、一方的にガザの中に作るというのは、ガザをもはや占領していないというイスラエルの主張とは、矛盾するようにも思います。

1993年のオスロ合意にまで、話は戻ります。
オスロ合意は交わされましたが、ハマースや、イスラミック・ジハードと呼ばれる勢力が、これに反対しました
その理由は、国際法で保証されたパレスチナ難民の権利のほか、
違法な入植地や、イスラエルが一方的に併合した、東エルサレムに関する交渉を全て棚上げにし、占領の終結をもたらさない合意内容だったからです。
反対勢力は、イスラエル人やパレスチナ自治政府を、攻撃するようになりました
その対抗手段として、イスラエルは、ガザを封鎖し始めました
当時から、封鎖はすでに始まっていたんです。

ガザから、一日何十万人という労働者が、イスラエル側に行っていたので、
その人たちが入れないようにしようと、検問所を作り、イスラエルはガザを切り離した

そこから段々、切り離しが強化されていき、ガザや西岸からの自爆攻撃が激化したこともあり、2002年に壁の建設が始まりました

なお、西岸内での分離壁の建設は、国際法違反であり、建設された壁は全て撤去されなければならないと、
ちょうど10年前に、国際司法裁判所が、意見勧告を出しました


▲ガザ地区からの人の出入域を管理するエレズ検問所と、ガザ側のパレスチナ自治政府検問所をつなぐ、イスラエル軍による一方的な「緩衝地帯(Buffer zone)」に設置された通路。
2013年11月20日―写真:今野泰三



Q. ガザの暮らしは今野さんの目にどう映りましたか

ガザの人たちの暮らしは、何もないです。
仕事もない、食料もない、希望もない、水もない。

人間がこういう状況で生きていたら、どうなってしまうのか…。
日本人はもちろん、世界の多くの人には、想像はできないと思います。
もちろん、それでも笑顔はあります。

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Q. ガザに住む人たちの顔をしっている今野さんですが、イスラエル軍による地上侵攻も始まりましたが、今、どういう思いを抱いていますか

自分の知り合い、同僚、友人が、誰がいつ殺されるか分からない。
ニュースを見る度に、名前を確認します。
苗字を見れば、誰々の親族ということが分かる。
自分の問題として、身近に感じるということです。

死者のうち、民間人が、7~8割を占めます。
イスラエル軍は「逃げろ」といいますが、ガザには逃げ場がありません
誰がいつ、殺されるか分からない。
そういう恐怖の中で、実際にそこで一緒に働いてきた人たち、ボランティアでいいから、一生懸命ガザを変えていきたいという思いでがんばって来た人たちが、
本人が悪いかどうか関係なく、無差別に、恐怖のどん底に落とされている
状況は、本当に見ていて辛いです。


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■イスラエル政府とイスラエル社会

Q. 今野さんは、イスラエル政府の真の目的は何だと思いますか。
中には、パレスチナ人がいなくなるまで虐殺するのがイスラエルの目的だとする、極端な見方も存在しています


イスラエル政府が、パレスチナ人を皆殺しにしようとしているとは、私は思えません
そういう意見は、あまりにも歴史を知らないというか。
イスラエル側が、パレスチナ人を間化している、という指摘はありますが、イスラエル人だって、パレスチナ人を殺したくて殺しているわけではないと、私は思います。
自分たちが悪いことをしていると思っている人たちもいれば、反対している人もいる。
イスラエル政府も、そんなことをしたら世界中から非難を受けて、自分たちの国の存続が危うくなるということは、十分分かっているはずです。

イスラエルを批判する人たちの中には、イスラエルが巨大な国だというイメージを持っている人がいるようですが、
たかだか人口800万人で、その内ユダヤ人口は600万人、アメリカ、ヨーロッパや日本と比べたら、本当に小さな国です。
そういう国がそういうことをしてしまったら、後がないんですよ。
今、欧米、特にアメリカの支援があってこそ、かろうじて成立している国ですから、
そんなことをしてしまったら行くことがないというか、自ら自分の首を占めるだけなので、皆殺しにしようとかは考えてないと思います

ただ、常に、パレスチナ人を追い出そうという政策を、政府や軍が取ってきたことは、証拠として書かれています
建国前からずっと今に至るまで、政策としてやってきたし、そういう発言もしてきました。

西岸の場合は、右派が、自分たちが祖先から受け取った場所である、それを譲るわけには行かない、だからできれば併合したいけど、
併合すると、そこに住んでいる住民に、市民権を与えないといけない、
市民権をあげてしまうと、自分たちがマイノリティであって、民主的という論理が破綻してしまう。
土地もあきらめたくない、市民権もあげたくない、一つの解決策としてパレスチナ人を追い出そう、という声も常に出てきているという事実はある。



Q. イスラエル政府は、ガザを徹底的に攻撃して、ハマースを降伏させるのが目的なのでしょうか

数年間黙ってくれていたらいい、という考えだと思います。
10年、20年先は見てない。
ガザに関しては、4年前に約1500人が殺され、2年前には約170人が殺され、今は約230人くらいがすでに殺されています
2年に1回のペースで起っているんですよ。
だから、2~3年大人しくしてくれていたらとりあえずいい、という感じの作戦でしかなくて、長期的に問題を解決しようというのではおそらくないと思います。


Q. 先日、イスラエルの極右議員が「パレスチナの母親は皆殺しにすべき」という発言をしたと報道されました

今、イスラエル政府は、右派の連立政権ですけど、右派の人たちは、そういう発言はちょこちょこしますよね。
ガザが海に沈んでしまえばいい」と発言した議員もいました。
ガザはなかったことにしたいんだ、と思いますよ。
常に、自分たちのいる国に戻りたい、と要求してくるわけですよ。
切り離して自分たちの問題にしたくない、という本音はあるのでしょう。

ガザからは、入植地も軍も撤収した。占領もしてないのに、なんで攻撃してくるのか意味がわからない」、というのが、イスラエル人の本音なのではないでしょうか。
多くの市民は、ガザに行ったこともないので、一般市民とハマースの区別も難しい、ガザの状況を知らないと思います。


Q. 空爆を開始してからイスラエルの一般市民は、ガザの現状を理解していると思いますか

今、ちょうどヘブライ語のニュースを読んでいますけど、ガザの中が今どうなっているか、報道を控えているような印象もあります。
知ってしまうと、世論が変わってしまうかもしれない
自分たちの権利、正当性に関わってくる問題なので、読者も触れたくないのでは。


Q. もし正確に知っていたら、イスラエルの世論は変わるでしょうか

基本的に「選択肢がない」、と思っている人が多数です。
やっていることがいいと思っていないイスラエル市民は、沢山いますし、入植地、占領が良くない、と思っている人たちもいる
けれど、それよりも恐怖心が先行してしまうのは、ユダヤ人の歴史があって、ホロコーストの歴史があり、反ユダヤ主義の歴史がある
私が会ったイスラエル人が、よく言うことですが、
ガザから撤収したのに、あいつらはロケットを撃ってくる。
自分たちがどんなに妥協をしようが、アラブ世界の反ユダヤ主義はなくならないし、反イスラエル感情もなくならない
そこで妥協してしまったら、自分たちの安全は危うくなるから妥協できない
と。

悪いことしているのは分かっているし、民間人と武装勢力は区別したいけれど、
そういうことをしている余裕がないというか、仕方ないんだという考え方ですね。
対パレスチナというよりは、対アラブ諸国。
そこにイランとか、全部入ってきてしまうので。


■反ユダヤ主義とヨーロッパの責任

難しいと思うのは、実際、「イスラエル」と「ユダヤ人」とを、本人たちも区別してないし、世界も区別していない人があまりにも多い
イスラエル政府とユダヤ人が、同一視されていますね。
イスラエル人が、パレスチナ人に対して暴力をふるうと、ヨーロッパやアメリカで、反ユダヤ主義が盛り上がるという、とてもいびつな状況にある。
パレスチナ人より、イスラエル人を嫌いになっては駄目だと思います。
反ユダヤ主義が盛り上がれば盛り上がるほど、イスラエル国内では、国の正当性が高まる

※イスラエルによるガザ空爆後、フランス国内で高まる反ユダヤ主義ー
【ibtimes】Israeli-Palestine Conflict: French Synagogues Attacked as Jews Lament Anti-Semitism Rise

やっぱりイスラエルは必要なんだと。
どんな手段を使っても、イスラエルという国がなければ、我々は、全世界から同じような目にあう時に、避難所が必要になるという世論になる。
そういう意味で、イスラエルを批判するのであれば、同時に、反ユダヤ主義も、徹底的に批判する義務があるし、闘う義務がある

それを、ヨーロッパはちゃんとやってきてないですよね。
ヨーロッパは、自分たちの反ユダヤ主義という歴史を、パレスチナという土地に押し付けて、
イスラエルという国を作らせて、すべては解決したと言ってしまっている

そんなわけはないだろう、と。
ヨーロッパの責任は大きい、と思いますよ。…【後編へ続く】
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