外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

シリアでビールを飲む(3)~私の行きつけの酒屋~

2009-10-05 02:04:59 | シリア
私が通常お酒を購入する店は、マルジェ広場付近のビジネスホテル街にあります(私がいつもマルジェ広場周辺をうろうろしているのがもうお分かりですね)。お店といっても小さくてドアもなんにもない、ささやかな空間です。通りに面して、大人の胸くらいの高さに小さなカウンターがあり、その向こう側には狭いスペースを隔てて、壁一面に様々な種類のお酒が優雅に並んでおり、通りかかる人々(敬虔なムスリム以外)を激しく誘惑します。昼間はたいてい口数の少ないハードボイルドな親父が店番をしており、夜になると彼の息子たち2人が交代します。この親父は口数は少ないものの、口を開くと真顔で冗談を言うので油断できません。夏のすごく暑い日に、「キイファック(調子はどう)?」と訊いたら、無表情のまま「バルド(寒い)」と返したりするのです。こっちが笑うと、彼も初めてにやりと笑います。その優しい笑顔がハート鷲掴み! というほどではありませんが、いい味を出していることは確かです。
ここでお酒を買うと、黒いポリ袋を二重にして入れてくれます。外から見ても中味が分からないように気を遣ってくれているのです。ムスリム多数派の国の酒屋ならではの気配りですね。そういえば日本のコンビニでは、生理用ナプキンを買ったとき、中味が外から見えないように別途紙袋に入れてくれたなあ。ちなみに親父はキリスト教徒です。シリアの酒屋はたいがいキリスト教徒が経営しているような気がします。
最近私は引っ越したので、この親父の店からは遠くなったのですが、新しい家は、宗教色が煮しめたように濃いムスリム地区・ルクナッディーンにあり、徒歩圏内にまだ酒屋が見つからないので(存在するかどうかも怪しい)、いまだにバスに乗って買いに行っています。
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シリアでビールを飲む(2)~家の外でビールを飲む~ 

2009-10-05 02:03:09 | シリア
個人宅、ホテルの自室以外の場所でビールを飲むのは、幾分難易度が高いと言えましょう。ダマスカスでは、キリスト教地区のレストランやカフェテリアで普通に飲めます。それ以外の地区でも高級ホテルのレストランやバーには確実にアルコール飲料が置いてありますし、観光客目当てのお洒落なレストランなどでも、お酒が楽しめるところがありますが、いずれにせよ値段はもちろん高めです。ダマスカス以外の都市についても同じことが言えると思います。
しかし、お洒落なお店なんかには出来るだけ足を踏み入れたくないわ、私はオヤジ率の高い、こきたない安居酒屋が好きなのよ!という人は(私のこと)どうすればよいのでしょうか。ダマスカスの中心地、新市街のマルジェ広場脇には「カルナック」という飲み屋があって、明るいうちからミックスナッツをつまみにビールが飲め(缶のまま出てくる)、客層も、暑苦しいアラブのオヤジが9割以上を占め、大雑把な内装も好ましい、感じのよいお店だったのですが、今年(2009年)の5月に久しぶりに行ってみたら、改装されて値段が上がり、それに反比例して客層のオヤジ率は下がり、若者向けの流行の音楽をガンガン鳴らす、比較的お洒落な店に成り下がっていました。人生はかなしいことでいっぱい。旧市街のバーブ・シャルキー(東門)の付近にも、すごく狭くてむさ苦しい飲み屋があるのですが、なぜかまだ足を踏み入れたことがありません。いつか行かなくてはならないとは思うのですが。
   私のささやかな夢は、マルジェ広場に隣接した公園で、昼下がりに芝生に座ってビールを飲んでくつろぐことですが、これを実行したら一体どんなことになるのか、想像するのがこわいです。思いつくのは、①警察に連行されて数日拘禁されるが、日本大使館の尽力により無罪放免 ②即刻国外退去 ③警察は出てこないが、周囲の人々に石を投げられる、などです。案外なにも起こらないのかもしれませんけどね。外国で一時的に暮らしていて困るのは、「やってもよいこと」と、「出来ればやらないほうが賢明なこと」、そして「やったら身が破滅すること」の判断が上手くつかないことです。そのため、石橋を叩きもせずにすごすごと引き返し、大人しく自宅で飲むことになりがちなのです。
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シリアでビールを飲む(1)~酒屋でビールを購入する~

2009-10-05 01:58:47 | シリア
純白の泡の帽子をふんわりかぶった、黄金色に輝くあの美しい飲み物は、シリアの熱い砂漠に良く似合うと思いませんか。富士には月見草が良く似合うのと同じことですね。

シリアはムスリムが大多数を占める国ですが、幸いなことにアルコールの販売は認められており、ビールを買うのは比較的簡単です。特に首都のダマスカスでは、キリスト教地区に行けば酒屋が軒を連ねているし、それ以外の地区でも、非常に敬虔なムスリム地区以外であれば、真面目に探せば見つかります。求めるものは与えられるのです。ダマスカス以外の土地を旅する際は、酒屋探しに結構骨を折ることになりますが、ラッタキアやタルトゥースなどの海岸沿いの開放的な都市ではすぐに見つかりますし、それ以外の街でも、キリスト教会の近くをうろつくなどすれば大抵なんとかなります。最近では酒屋のありそうな界隈の匂いを嗅ぎ分ける特殊能力が少しずつ身についてきました。ただし、ちょっと街を離れて田舎に踏み込んだら、酒屋など一生見つかりません。田舎は禁酒ゾーンです。私はビールを諦め、ワインやウイスキーなど、ぬるくても飲める酒をペットボトルに入れて携帯することにしています(瓶だと重いから)。人生、時には妥協も下準備も必要ですね。
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