アンマン山には、非常にハイレベルな猫おじさんがいる。
今日の午後ダウンタウンのスークへ買いものに行った帰り、私はアンマン山の上へ向かう急勾配の果てしない階段を、えっちらおっちら登っていた。
階段を登るのって、なんてしんどいことでしょう・・・。
少し立ち止まって休憩しようかと思っていた矢先、階段脇の建物の水色の扉の前に、猫が丸まっているのに気づいた。
建物脇にも何匹かたむろしている。


これはよい猫スポットだ。
私が嬉々として写真を撮っていると、不意に水色の扉が奥へ少し開いた。
すると猫たちが次々と押し寄せてきて、扉の隙間の暗がりにスルリと入り込もうとする。
何が起ころうとしているのだろう?

見守っていると、中から一人の男性が出てきた。
温和そうな顔をした、落ち着いた中年男性だ。
足元を猫たちが取り巻き、うろちょろ動き回っている。
彼は扉の前に立っている私の視線に気づき、自分はこの猫たちに毎日エサをやっているのだと説明してくれた。
つまり彼は猫おじさんなのだ。

私も猫が好きなんです、と力を込めて言うと、彼は私を家の中に招き入れた。
薄暗くてひんやりした、質素な部屋の壁際には大きな木の机があって、その上にコーンビーフの親戚っぽい加工肉の大きな缶詰が整然と並んでいた。
猫おじさんは缶詰を指差して言う。
「自分は食べないけど、猫にやるためだけにこれを買ってるんだよ。
毎日2回ずつエサをやるんだ。お昼ご飯と晩御飯としてね」
「何匹くらい集まるんですか?」と聞いてみると、
「大体40匹くらいかな」とのことだった。
40匹~!
貧しそうなのに、彼は猫のエサにかなりお金をかけている。
そして餌付け対象の猫は約40匹。
ううむ、これは相当な猫道楽だ・・・。
彼と猫の写真を撮らせて欲しいと頼むと、快く承諾してくれた。
その様子を見て集まってきた近所の子供たちも、ついでに撮ってあげる。



1時間後くらいに夕方のエサやりをするから、よかったら見においでと言われたが、ちょうど天気が崩れてきて、小雨が降りだしたので、また次回にさせてもらうことにした。
家に帰りつき、さきほど撮った写真をうっとりと眺める。
40匹の猫を相手のエサやり風景・・・
考えただけで興奮する。
次に行くまでに、新しいカメラと精神安定剤を用意するべきかしら?
猫おじさん、残念ながら名前を聞きそこねてしまったので、とりあえず「アブー・キッタ」と命名しました。
アラビア語で「猫のお父さん」という意味です。
