外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

2019年チュニジア・トルコ・イタリア旅行記(5)~チュニス2日目最終・酒とカタルシス編~

2019-10-29 08:36:03 | チュニジア

 

今回はチュニス2日目の分の最終回。

 

 

朝ホテルを出たのは11時と遅かったが、スークなどを3,4時間歩き回ってすっかりくたびれたので、スーパーでビールを買ってホテルに戻り、軽く飲んでから夕食まで昼寝しようと思い、フランス門からすぐのところにある「マガザン・ジェネラル」に行った。しかし、それらしき棚には前日と同様ノンアルコールビールしか見当たらない。

気配が悪い・・・

 

心象風景

「rain clouds」の画像検索結果

 

 

平静を装いつつ、暇そうに立っていた若い男性の店員にビールはどこかと尋ねると、「今日はヒジュラ暦(イスラム暦)の元日だから売ってない」と返された。

 

 

心象風景

「陰の風が吹き滅の雨が降る」の画像検索結果

 

 

前日は金曜日だから法律でアルコール類の販売は禁止されていると言われたが、今日もヒジュラ暦の元日だからやはりアルコールはご法度らしい。なんとタイミングの悪い・・・「明日は土曜日だからあるって昨日言われたのに~」と苦情を言っても、「ないものはない」と言われるに決まっているので言うだけ無駄である。

 

一応もう一軒のスーパー「モノプリ」にも行ったが、やはりアルコールはなかった。しかし、私が絶望した表情を浮かべているのに同情してくれたのか、店員の一人が「販売は禁止だけど、飲食店で飲むことはできるよ」と言って、「カフェ・ド・パリ」というアルコールを置いている店を教えてくれた。

 

心象風景

「sole dopo la pioggia」の画像検索結果

 

カフェ・ド・パリは新市街のメインストリート、ハビーブ・ブルギバ通り沿いにあり、モノプリからさほど遠くなかった。名前の通りパリっぽいこじゃれた外観で、通りにテーブルが並べられ、日よけの赤いパラソルが広がっている。ただし、座ってるのは男性ばかりで、あまり爽やかさはないが。

 

中に入ってみたら、午後の中途半端な時間だったせいか、けっこう空いていた。そして、アルコールを飲んでいる人は一人も見当たらなかった。

 

心象風景

「sole prima la pioggia」の画像検索結果

 

 

年配のベテランっぽい陽気なウエイターのおじ様に話しかけてみる。

 

み「ビールありますか?」

おじ「今日はないよ」

うう、やはり・・・

み「どうしてないの?(知ってるけど一応聞く)」

おじ「イスラムの祝日だから」

み「チュニジアはダウラ・マダニーヤ、ガイル・ディーニーヤ(宗教を基盤としない世俗国家)だとずっと思ってたのに~」

おじ「いやいや、チュニジアはダウラ・イスラーミーヤ・アラビーヤ(アラブのイスラムの国)だぞ」

み「(アラブの国なのは当然だけど、が~ん)・・・で、あなたは酒を飲まないの?」

おじ「飲まないね。普段は酒を出すけど、自分は飲まない」

み「他の店員さんたちも?」

おじ「いや、たいていの奴が飲むね」

み「飲む人もいるんだ、アルハムドゥリッラー(よかった)」

(「アルハムドゥリッラー」は本来アッラー=神を称える言葉なので、こういう会話で使うのは不適切だが、怒らなさそうな相手だったので敢えて言ってみた)

おじ「ハハ、うちには置いてないけど、通りの向こう側のハナーホテルでは飲めるよ」

そう言いながら、斜め向かい側にある大きなホテルを指さして教えてくれた。

 

大きいホテルに行けば酒が飲めることはわかっていたが、高そうなのでこれまで私は敬遠していた。しかし、今日はもう疲れたし、そうも言っていられない。それに、道端などでおじさんたちに聞きながら探し物をする「おじさん方式」では、教えられた場所に行くのがルールなのだ。(個人的なルールです)

 

というわけで、ハナーホテルに到着。無骨なようなモダンなような、形容しにくい建物だ。

 

フロントでストレートに「ここに酒が飲める店はありますか?」と聞いたら、「すぐそこにありますよ、ほら」とフロアの奥にある店を教えてくれた。

 

入ってみると、重厚な雰囲気のカフェのようなパブのような内装で、シャバーブ(若者たち)やそのへんのおっちゃんたちは来なさそうだった。ホテルの宿泊客やビジネスマン、少し経済的に余裕のありそうな人が来る感じ。でもメニューを見たら、ビールが200円前後で特に高くない。物価が安いって、素晴らしい。

 

チュニジアビール「セルティア」。少し酸っぱくて美味しくないが、この時は美味しく感じられた。

 

 

イチジクの蒸留酒「ブハー」 特にイチジクの風味や香りはせず、純粋にアルコールの味がした。

 

とりあえず酒心は満たされたので、イタリア人のバリスタと言っても通りそうな、こちらの表情を見てなんとなく言いたいことを察してくれる接客のプロっぽいウエイターさんにチップを置いてホテルに帰る。もう夕方になっていた。くたびれた・・・

 

1時間ほど横になって休んでから、夕食をとるために重い腰を上げてまた出かける。観光客はつらいよ・・・

 

アルコールが置いてある飲食店を探して新市街を歩いたのだが、それらしき店はなかなか見つからない。しかし、暗い気分でとぼとぼ歩いている時、目の前の建物の小さな窓からハチの巣をつついたような大きなざわめきが聞こえてくるのに気が付いた。なにこのバズってるところは、と中を覗くと、広い店内を若者やおじさんたちが埋め尽くして、ビールを飲みながら賑やかに談笑しているのが目に入った。おお、飲み屋だ~! やっぱりあるんだ、酒が飲める店~ そうよね、イスラムの祝日だろうがなんだろうが、友達と酒を飲んで騒ぎたい人たちも大勢いるよね、そりゃそうよね!

 

私の心の中の乾ききった砂漠に突然現れたオアシス

 

 

女性の姿は全くなく、入ってさらし者になりながら飲む根性は出なかったので、入り口のドアの前に立っていた男性に酒を売ってもらえるか聞いてみた。もちろんOKだとのことなので、チュニジアの赤ワインと小瓶のビールを1本ずつ買う。ワインは30ディナール(約1150円)とやけに高かったが、文句を言える立場ではないので黙って支払う。

 

酒が買えた瞬間、勝手のわからぬ見知らぬ国で道に迷いながら歩き回った疲れと閉塞感が一気に消えて、世界が光に満ちて見えた。カタルシスとはこのことか。やはり、強く求めて真剣に探せば、たいていの物は見つかるのだ。よく見ると、その店の周辺には同じようにバズっている飲み屋が何軒かあった。そういう界隈なのだろう。

 

カバンは重くなったが、気分は軽い。胃も軽かったので、地球の歩き方に載っていた安食堂「モハメド・アビド・パスタカサ」で夕食をとった。安食堂なのでアルコールはないが、後でホテルで飲めばいいので全然かまわない。1人で来ている女性客も2人いた。ヨルダンやシリア等では、1人で食事する女性客の姿を見た記憶がない。チュニジアはやはりアラブ諸国の中では女性の権利・社会進出の点で進んだ国なのだろう。レバノンの次くらいかな?

 

「メルゲーズ」というソーセージ(羊か牛)のクスクスを頼む。水も頼んで9.5ディナール(約360円)。

 

スパイシーなメルゲーズも、柔らかくなるまで煮込んだ野菜も、味が染みたクスクスも美味しかった。クスクスは粒が小さいのでパスタやパンなどよりも喉を通りやすい。日本でも私はカルディで買ったクスクスを常備していて、ちゃんと料理する時間がない時、お湯で戻したクスクスに出来合いのトマトソースなどをかけて食べたりする。クスクスは同量のお湯をかけて5分ほど蒸らせば食べられるので、米や麺類よりも便利なのだ。

 

帰り道、猫たちにエサを振りまきながら歩いていたら、ちゅ~るがなくなってしまった。もっとたくさん持ってくるべきだった。

 

ホテルに戻ったら、部屋でお酒タイム。テレビをつけてアルジャジーラにチャンネルを合わせ、ワインを開ける。ビールと同様あまり美味しくないが、いいことにする。とにかく酒が買えたんだし、長い一日の終わりにこうしてベッドで酒を飲みながらアルジャジーラを観ているのだ。これ以上何か求めたら罰が当たると言うものだ・・・

 

戦利品

 

 

これでチュニス2日目の日記は終わり。3日目以降はさくさくと進みたいものだ・・・

 

(続く)

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